読んだ本の紹介です。紹介欄は感想や紹介したい部分を書いたものです。

過去ログ (その11) 87 冊

平成21年1月2日〜平成21年12月23日

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No 読んだ日 書       名 著   者 おすすめ度
1424 2009-12-23 新参者 東野 圭吾 ★★★
1423 2009-12-19 巡査の休日 佐々木 譲 ★★★★
1422 2009-12-16 後悔と真実の色 貫井 徳郎 ★★★★★
1421 2009-12-11 ニサッタ、ニサッタ 乃南 アサ ★★★★★
1420 2009-12-6 聖域 大倉 崇裕 ★★★★
1419 2009-12-2 極北クレイマー 海堂 尊 ★★★★★
1418 2009-11-30 鉄の骨 池井戸 潤 ★★★★
1417 2009-11-28 棟居刑事の恋人たちの聖地 森村 誠一 ★★★★
1416 2009-11-24 ファミリーポートレイト 桜庭 一樹 ★★★★
1415 2009-11-20 天地人 上・中・下 火坂 雅志 ★★★★
1414 2009-11-17 ラットマン 道尾 秀介 ★★★★
1413 2009-11-15 ラストダンス 堂場 瞬一 ★★★★
1412 2009-11-12 英雄の書 上・下 宮部 みゆき ★★★★
1411 2009-11-10 沈黙の森 馳 星周 ★★★★
1410 2009-11-8 外事警察 麻生 幾 ★★★
1409 2009-11-5 家族 小杉 健治 ★★★★
1408 2009-11-2 舶来屋 幸田 真音 ★★★★
1407 2009-10-30 刺客長屋 森村 誠一 ★★★★
1406 2009-10-27 電子の標的 濱 嘉之 ★★★★
1405 2009-10-22 捜査官 末浦 広海 ★★★★
1404 2009-10-20 デパートへ行こう 真保 裕一 ★★★★
1403 2009-10-18 今日を生きる 大平 光代 ★★★★
1402 2009-10-16 罪深き海辺 大沢 在昌 ★★★★
1401 2009-10-9 砂冥宮 内田 康夫 ★★★★
1400 2009-10-4 暴雪圏 佐々木 譲 ★★★★★
1399 2009-9-20 祖国なき忠誠 翔田 寛 ★★★★★
1398 2009-9-15 炎の経営者 高杉 良 ★★★★
1397 2009-9-12 水神 上・下 帚木 蓬生 ★★★★★
1396 2009-9-10 同期 今野 敏 ★★★★★
1395 2009-9-8 ジーン・ワルツ 海堂 尊 ★★★★
1394 2009-9-7 ゆりかごで眠れ 垣根 涼介 ★★★★★
1393 2009-9-4 WE LOVE ジジイ 桂 望実 ★★★
1392 2009-8-23 アマルフィ 新保 裕一 ★★★★
1391 2009-8-18 煉獄の使途 上・下 馳 星周 ★★★★
1390 2009-8-13 家、家にあらず 井 今朝子 ★★★★
1389 2009-8-9 一枚摺屋 城野 隆 ★★★★
1388 2009-8-6 薄暮 篠田 節子 ★★★★
1387 2009-8-3 新・野生の証明 森村 誠一 ★★★★
1386 2009-8-1 八つ花ごよみ 山本 一力 ★★★
1385 2009-7-30 ジバング島発見記 山本 兼一 ★★★
1384 2009-7-28 汚染列島 バンデミックス・イブ 吉村 達也 ★★★★★
1383 2009-7-24 乱反射 貫井 徳郎 ★★★★★
1382 2009-7-20 IN イン 桐野 夏生 ★★★★
1381 2009-7-15 なぜ紫の夜明けに 吉村 達也 ★★★★★
1380 2009-7-10 白夜街道 今野 敏 ★★★★
1379 2009-7-5 CC: カーボンコピー 幸田 真音 ★★★★
1378 2009-7-1 君が悪い 新堂 冬樹 ★★★
1377 2009-6-27 くじら組 山本 一力 ★★★★
1376 2009-6-25 夜の光 坂本 司 ★★★
1375 2009-6-23 武士猿 今野 敏 ★★★★
1374 2009-6-20 靖国への帰還 内田 康夫 ★★★★
1373 2009-6-14 沈底魚 曽根 圭介 ★★★★
1372 2009-6-9 晋平の矢立 山本 一力 ★★★★
1371 2009-6-5 殺し合う家族 新堂 冬樹 ★★★★
1370 2009-6-2 猫を抱いて象と泳ぐ 小川 洋子 ★★★★
1369 2009-5-31 君が降る日 島本 理生 ★★★
1368 2009-5-27 大江戸人情花火 稲葉 稔 ★★★★
1367 2009-5-24 チームバチスタの栄光 海堂 尊 ★★★★
1366 2009-5-21 利休にたずねよ 山本 兼一 ★★★★
1365 2009-5-18 ゆうとりあ 熊谷 達也 ★★★★
1364 2009-5-14 特命 麻生 幾 ★★★★
1363 2009-5-12 骨の記憶 楡 周平 ★★★★★
1362 2009-5-10 ブラックペアン1988 海堂 尊 ★★★★
1361 2009-5-5 アンチエイジング 新堂 冬樹 ★★★★
1360 2009-5-2 死刑基準 加茂 隆康 ★★★★★
1359 2009-4-30 悪いことはしていない 永井 するみ ★★★★★
1358 2009-4-27 神の狩人 柴田 よしき ★★★★
1357 2009-4-25 ストロベリー・フィールズ 小池 真理子 ★★★★
1356 2009-4-20 不倫純愛 新堂 冬樹 ★★★★
1355 2009-4-13 ユグドラジルの覇者 桂木 希 ★★★★
1354 2009-4-9 廃墟 建築士 三崎 亜記 ★★★
1353 2009-4-7 武士の尾 森村 誠一 ★★★★
1352 2009-4-5 煤霞 黒川 博行 ★★★★
1351 2009-4-2 反乱する管理職 高杉 良 ★★★★
1350 2009-2-18 棟居刑事の使命の条件 森村 誠一 ★★★★
1349 2009-2-13 粗茶で一服を 山本 一力 ★★★★
1348 2009-2-10 ほうき屋 上・下 山本 一力 ★★★★
1347 2009-2-5 告白 湊 かなえ ★★★★★
1346 2009-2-1 臨床真理 柚木 裕子 ★★★★★
1345 2009-1-29 草祭 恒川 光太郎 ★★★★
1344 2009-1-26 素行調査 笹本 稜平 ★★★★★
1343 2009-1-23 まず石を投げよ 久下部 羊 ★★★★★
1342 2009-1-21 断絶 堂場 瞬一 ★★★★★
1341 2009-1-19 チーム 堂場 瞬一 ★★★★
1340 2009-1-16 仮想儀礼 上・下 篠田 節子 ★★★★★
1339 2009-1-6 金融腐食列島【完結編】消失 第4巻 高杉 良 ★★★★
1338 2009-1-2 みのたけの春 志水 辰夫 ★★★★
1380 白夜街道
Date: 2009-7-10

おすすめ度 ★★★★

 今野 敏 著  文芸春秋  発行:2006年3月

 ロシア人のテロリスト、ヴィクトル・タケオビッチ・オキタが入国したと入管から連絡があった。警官の倉島はなぜ外務省がその人物にビザの発給をしたのか外務省に出向く。
 しかし、問題のある書類はちゃんとはじいていると言うが、職員は皆仕事に追われ通過してしまう可能性があるのではと思った。
 ビザは商用ビザ日本側の招聘者がいるという。ウツミ貿易である。ヴィクトルが日本で一人殺していた。ヴィクトルは日本人に成りすまして4年前にも入国していた。しかし、ヴィクトルは指名手配も起訴もされていなかった。
 外務省の河中廉太郎が殺された。河中はヴィクトルといっしょに来日したペデルスキーと接触したようだ。その翌日体調不良を理由に入院した河中はその後高熱嘔吐頻脈の状態となり死んだ。
 死後大分たってから捜査本部が立った。テロの可能性があるということだった。
 ウツミ貿易は暴力団のフロント企業だった。調べるうちに日本の国益のために働かなければならない外務省官僚がロシアの国益のために、情報を流すことで河中は見返りを期待したらしい。しかし、ロシアに近づきすぎ殺されたらしい。
 ロシアへの捜査に倉島と牛場が行くことになった。
 ペデルスキーはペデルスキーは屋根から逃げたが、倉島は「銃撃戦で死亡したという書類を作ってもらいましょう」と牛場に言う。
 倉島はヴィクトルとも会う。そして河中を殺したペデルスキーは死んだことにする。要はマスコミや世間が納得しなくてもそれが事実だと言うしかなかった。
 倉島と牛場は日本に戻ってきた。
1379 CC: カーボンコピー
Date: 2009-7-5

おすすめ度 ★★★★

 幸田 真音 著  中央公論新社  発行:2008年11月

 東邦生命広報部に研吾がまた帰ってくると言うことを聞いた香純は3年前のことを思い出していた。香純が離婚を決心する前に揺れていた時期に七歳年下の研吾とたった一度だけ救いを求めた。
 研吾が20代の新人のころ香純が広報担当者としてのノウハウを教えた。
 香純は離婚した。夫の永澤一憲とは彼の母親みちのもとで香純は働いていた。仕事も面白くなり、妻と仕事の狭間で心痛するあまり、妻の部分を免除してもらいたいという気持ちで離婚した。
離婚後の条件はこれまで同様にナガサワ・エージェンシーで働くことだった。
 元夫は社長になりみちは引退した。最近、みちの様子がおかしいとお手伝いの者から伝えられ、みちの介護にも当たった。少し記憶のずれが見られた。息子の名前も忘れるほどだった。
 香純はみちをずっと尊敬しており、介護は苦ではなかった。
 そんなおり、東邦生命の保険金不払い問題を払拭するための広告を研吾の推薦のおかげでナガサワが担当することになった。香純の提案でコマーシャルに電話番号を入れた。
 電話は思いのほか対応できないほどの反響を見せた。一時この不祥事をたたく声も聞かれたが、次に起こったのは業績の伸びである。除々に伸びつつあった。
 そこへ「東邦生命 クビ切り反対 死ね 山里香純」と書かれた脅迫状が届く。
 一憲は、母の手帳に書かれたこれまでの仕事のスケジュールに30年ほど前に父とは別の人に魅かれた母の姿を見つける。脅迫は母ではないかとも思った。
 しかし、それは一憲を思う博子の嫉妬のせいだった。
 一憲は、最近香純が研吾と復活したことを知る。一憲と香純は会社のことや母みちとのことで会うことが増えた。そして、ふたたび香純に婚姻届を見せる。
1378  君が悪い
Date: 2009-7-1 

おすすめ度 ★★★

 新堂 冬樹 著  光文社  発行:2009年2月

 竹林は赤羽の「コンコルド」で週4回のペースで通いつめていた。お目当ては桃華だった。その桃華に鉄さんという男が尻を触っている様子だった。頭にきた竹林は鉄と争いになる。
桃華の「出入り禁止にする」という言葉に二人とも喧嘩をやめる。
 鉄は閉店後、竹林の家を訪ねた。再び争いになり、竹林が鉄を撲殺してしまう。処理に困った竹林は風呂で鉄を解体する。ビニール袋につめていったんは冷蔵庫に入れる。
 翌々日、桃華が訪ねてくる。鉄を探していた。強引に冷蔵庫を開ける。桃華も竹林に呆気なく絞殺される。二人分になったが夜通し処理に当たる。翌日、車を借りてダンボールにいれ車につめているところで近所の主婦が「不要になったのならほしい」と無断でダンボールをあける。
 自宅に連れ込み、主婦も後頭部を床に何度も打ちつけ殺してしまう。前の二人をいったん冷蔵庫に戻し、入らなくなった主婦を入れるために新しい冷蔵庫を購入する。
 主婦の夫が訪ねてくる。まだ殺したことを知らない。夫はとりあえず手足を縛ってクローゼットに入れた。
 竹林は中学校の教師だった。5年間の結婚生活も妻の暴言とともに崩壊した。
 「自分の失敗を人のせいにする。自分を正当化するために自分は悪くない。悪いのはいつも相手なのよ」
 あれから2年。竹林の生活は荒れた。アル中先生と呼ばれるようになり、生徒からも同僚からも嫌煙されていることは知っている。
 主婦の夫には遺書を書かせ、大量の睡眠薬を飲ませて殺した。遺体は寝袋にいれ、車で海に捨てに行った。
 「ワクワクピーチルーム」という覗き部屋のライターを近所の家に落としたようだ。それを刑事が調べいるらしい。
 歌舞伎町に行く。ピーチルームの店長が「竹林さん」と名前を覚えていた。とっさにこの店長も連れ出し、山梨の山の中で穴を掘り撲殺し埋めた。
 冷蔵庫の遺体を小さく刻みトイレに流した。ところが途中で詰まってしまった。最後の肉片を流そうとするときだった。刑事の二見がやってくる。とっさに二見も殺してしまう。
 床下を開けたとき、×印の扉の中に冷蔵庫があった。麻袋にくるまれたものがあった。
 思い出した。妻の典子とかわいがっていた犬だった。煙草の火をつけたとき、流れ出たガスで出火した。妻をおいて逃げるわけに行かなかった。
1377 くじら組
Date: 2009-6-27

おすすめ度 ★★★★

 山本 一力 著  文芸春秋  発行:2009年3月

 1853年室戸岬津呂浜の漁師たちがクジラが岬を越える前に捕ろうと狙っていた。津呂組20人を束ねる禅太郎33歳は1年で120両も稼ぐ。土佐藩士の年俸と同じである。
 クジラは冬から春に掛けてが漁期である。1月21日体長57尺(17メートル)のマッコウクジラを1日がかりの死闘の末仕留めた。
 禅太郎は船の中央に煙穴のある船を見た。海を走る真っ黒い船。同じ頃、土佐中浜村の万次郎は1841年に出漁中、無人島に漂着後アメリカの捕鯨船に救助される。そして9年後戻ってきた。
 万次郎から煙を吐く船の話も聞いた。
 ヤギ丙がマッコウクジラにかぶりつかれ右腕と右足を失って命まで落とした。「マッコウクジラ成敗に全力を尽くせ」という大目付様の書状が届く。
 嵐の日、鼻先に深い×の印の刻まれたマッコウクジラが近づいてくる。黒船というクジラだ。クジラは嵐の海で人間を助けた。クジラを仕留め曳航する綱で自分たちの命が救われた。
1376 夜の光 6月27日(土)
Date: 2009-6-25

おすすめ度 ★★★

 坂本 司 著  集英社  発行:2008年10月

 高校生の4人組。天文部の男女2人ずつのグループである。ジョーと呼ばれる中島翠。
 ビオトープで蛍を見たという。蛍は幼虫でも光るのかと話したところ皆で見に行く。水の中で青白く光るもの、それは携帯だった。防水パックに包まれたものだった。皆が季節外れの蛍と期待していたが外れた。
 ギィこと安田朱美は家族のことで悩んでいた。優しかった父がリストラされ、父の性格が変わった。酒を飲むようになり家族に毒づくようになった。姉もグラスを投げつけられ顔を怪我をしたこともあった。姉はさっさと大学を推薦で決め家を出て行った。
 自分も早く出て行こうと思う。
1375 武士猿
Date: 2009-6-23

おすすめ度 ★★★★

 今野 敏 著  集英社  発行:2009年5月

 琉球王朝を祖とする朝基は、小さい頃から猿と呼ばれていた。唐手で長男しか手を教えられないがなんとか兄に勝ちたいと掛け試しをやった。
勝っても身分の高い出で御殿の坊ちゃんとの試合に相手が手加減をしたと思われていた。
 次第に掛け試しが本気であることが分かり、強さはうわさになっていった。
 「手というのは首里王府を守るためのものだ。みだりに手を用いてはならない」と父に言われるが、猿は「沖縄の武士は誰にも負けないを証明するためのものだ」と反論する。
 落ちぶれた武士が棒を持って暴れるのに対峙する。猿が勝つ。しかし、手をやるものは棒の技も習得する必要があるとかつての師に教えを請う。
 薩摩の島津藩から首里を守るために運天ナビーという女が沖縄に来ていた。猿は運天ナビーと戦う。ナビーはしなやかな獣になったような気配を漂わせている。かかって来ないがこちらのわずかなうごきに反応する。にらみ合った。そして「殺し合いをお望みですか」と言われる。猿はここでやめにしようと提案する。死の覚悟を教えられていると運天ナビーはいう。すっかりナビーに魅せられたが近々嫁に行くという。
 猿にも縁談が来たおなじナビーという別のおとなしい娘だった。名前が気に入って夫婦になる。
 猿は大阪に出る。薩摩の示現流にも勝つ。ロシア人のやるボクシングにも勝つ。猿はいつも頭に沖縄士族のために誰よりも強くなろうという強い意志があった。
 猿は東京の講道館柔道部で教えるようになる。また東洋大学で唐手を教える。鉄道省への出張稽古もした。
 久しぶりに帰宅した我が家で待っていた妻と子。子は父親に「手を教えてください」という。
1374 靖国への帰還
Date: 2009-6-20

おすすめ度 ★★★★

 内田 康夫 著  講談社  発行:2007年12月

 武者滋が眼を覚ますとそこは病院のようなところだった。名前と生年月日を聞かれた。生年月日が大正12年9月20日だというと米兵たちは「オーマイゴット」と笑いあっている。
 聞くとここは厚木基地内で現在は2007年6月20日だという。23歳で海軍の夜間戦闘機月光に乗っていたのがつい先日である。
 基地内で情報が直接届かないが、そとでは正体不明の飛行物体が厚木基地に着陸したという報道がなされていた。
 武者が62年前の戦争中からタイムスリップしてきた。
 やがて武者は記者会見をした。タイムスリップしたことを半信半疑な様子だった。
 1ヵ月後、武者は外出を許された。街の変わりぶりに驚いた。戦争に負けたこと。自分の両親も妹も自分が出兵してすぐの空襲で死んだことを知る。「死んで靖国で会おう」という兵士たちの合言葉が、いまでは首相が靖国に参拝すると問題になることに驚く。まして戦犯との合祀が問題になっていると聞き、さらに驚く。日本は亡くなった以上は神として祀ろうとするところがあったはずだ。
 家康も信長も戦いのたびに多くの人を殺してきた。それでも死ねば神として祭られている。
 恋人だった有美子に会った。結婚してすでに夫は他界していた。武者の家の墓を守ってくれたのは有美子だった。自分は出兵した時の若さである。有美子は高齢になっていた。
 やがて月光が整備されて再び乗れるという。武者はそれに乗って上空を舞い上がる。相模湾上空を突き進んだ。雲塊のなか稲妻が走る。雲が切れると敵機B29が見えた。武者はそれをめがけて突っ込んでいった。
1373 沈底魚
Date: 2009-6-14

おすすめ度 ★★★★

 曽根 圭介 著  講談社  発行:2007年8月

 公安部外事二課の刑事部屋に召集された刑事たちは、朝毎新聞の「中国に機密情報漏洩、現職国会議員が関与か 米国亡命の中国人外交官が重要証言」の記事に関連して国家機密を漏洩しているという与太話に気にかける価値もないと課長は言った。
 三十代後半の長身の女性凸井美咲が外事二課にあたら二配属された。現場指揮を執るという。
 大物の沈底魚が日本に潜っているといううわさである。沈底魚は一般市民として暮らし指示があるときに工作員として働くようだ。それがなんと国会議員であるという。その暗号名はマクベスである。
 先週日本大使館に封書が届き機密漏えいの書類が入っていた。
 マクベスは衆議院議員の芥川健太郎ではないかとにらむ。芥川は総理にしたい政治家でずっと一位を維持していた。しかし、マクベス捜査は進展がなかった。
 凸井は五味一家の反対を押し切って若林をマクベス捜査に復帰させた。
 しかし若林は二重スパイ工作をしていた。そして撃たれた。
 若林には病気の娘がいた。そこをつけ込まれた。
1372 晋平の矢立
Date: 2009-6-9

おすすめ度 ★★★★

 山本 一力 著  徳間書店  発行:2009年4月

 深川で蔵の取り壊しを生業とする晋平のところへ日本橋につながる大路の老舗の商家の旦那五人衆から火事で焼けた蔵の解体を頼みに来た。
 晋平は引き受けるが、17棟の蔵を今月中に壊せという。普通なら40日は掛かる。晋平は引き受ける。
 蔵のひとつに穴が開いていた。その蔵の番頭もいなくなってしまった。穴には船箪笥があったようだ。壁に塗りこめられていた。火事の際それを持ち出し恩人のもとに届けるといういわれがある。十一のときに命を助けられた先代が壁に塗りこんだものだ。先代は船箪笥につかまり命を助けられた。恩人はおこんという女だった。書付の元へ寺の過去帳を調べて訪ねる。そこにはおこんのむすめおこながいた。そして番頭もおこなの所に来ているという。
 蔵を壊していると宝を狙うやつも出てくる。仕事場を踏み荒らされた晋平は怒った。西川たち3人の同心がふたが開いたままの木箱のそばにいた。「どうやら無駄骨に終わったようだ」という。6箱合わせても十両にもならない。1箱は土が入っていた。
 掘り出し物をさばいてカネにしようと目論んでいたが外れた。土は飯能の盆栽用の土だった。槌にしては値打ちのあるものだったが2両ほどするものであった。
1371 殺し合う家族
Date: 2009-6-5

おすすめ度 ★★★★

 新堂 冬樹 著  徳間書店  発行:2009年3月

 喫煙を注意し逆に生徒に殴られ眼窩底骨折で重傷を負った貴子は退院後、勤務先の中学校を辞めた。
 就職を探していた貴子は健康食品の会社に入る。社長という富永と関係ができやがて夫婦になるが、富永の会社でのやり方は詐欺まがいで社員に対してもスタンガンでバチバチと脅すことがあった。健康食品もうまくいかなくなった富永は貴子を連れて博多へ行く。
 博多では偽の宝石商になり、社員として飯島孝を雇う。孝はこれから地獄が始まるとも知らず出勤してきた。孝が宝石をなくしたように仕向けトイレに監禁する。その後、全裸で鎖につないでリビングのフローリングのところに移動させる。失禁したものを舌でなめろと強要する。その姿を写真に撮りまだ幼い孝の息子優太に見せる。優太まで連れて来て父親の首輪と足輪をはめられた姿を見せる。父親の食事はドックフードを与えた。
 そのうち、富永は貴子の父親敏郎も呼び出し、監禁した。繋がれた孝に敏郎の性器をくわえさせる。優太はそれをみてしゃっくりをあげて泣く。
 貴子は孝に電流を当て殺してしまう。風呂場に入って孝を解体する貴子。
 敏郎は家に電話をかけ妻の節子を呼び出す。節子も監禁され、富永が命じて優太が敏郎に電流を当てる。敏郎は風呂に監禁される。そして父の敏郎も死ぬ。貴子に敏郎の死体の解体も命じる。
 母親の節子は頭がおかしくなる。優太が隙を見て逃げ出す。警察が踏み込んでくる。
 死刑が確定した貴子。富永は法廷で自分の都合のいいように弁舌をしたり、わざと意味不明のことを言ったりした。 
1370 猫を抱いて象と泳ぐ
Date: 2009-6-2

おすすめ度 ★★★★

 小川 洋子 著  文芸春秋  発行:2009年1月

 少年は祖母と弟3人でデパートに行く。祖母と弟が買い物をしている間、少年はいつも屋上の象の立て札のところにいた。立て札には「象が大きくなりすぎて屋上から出られず37年間の一生をこの屋上で終えた」という内容が書かれていた。
 少年は象を想像した。後から後から想像は膨らんでいった。
 少年の両親は離婚し、母に引き取られて祖父母の下にやってきたが2年前に母も亡くなった。家具の修理職人の祖父と間口の狭い古い家に4人で住んでいた。
 少年はバスの中で生活するマスターと知り合う。マスターは少年にチェスを教えてくれた。マスターは甘いおやつを用意して待っていてくれた。マスターは中古のバスの出口から出るのがやっとというほど太っていた。
 少年はチェスの試合にも出た。商品券をもらえた。ある日、チェスをする男と試合をした。少年が勝った。しわくちゃなお金をもらえた。
 そのことをマスターは悲しそうに話題にした。少年はマスターの胸の中で泣きながら賭けチェスはもうしないと誓った。悲しかった。
 翌日マスターはバスの中で死んでいた。バスは壊され、マスターはクレーンで吊り上げられて外に出された。
 少年はパシフィック・海底チェス倶楽部で、リトル・アリョーヒンとして働いた。リトル・アリョーヒンは少年の名前だった。マスターが使っていたテーブルチェス盤と駒を使いチェス盤の下にもぐりこんで相手の打つ手をよんでいた。少年にそっくりの人形が相手と対峙していた。盤の下で少年は対局するのである。駒を動かすのも駒を取り出すのも人形がやった。人形の操作は少年がするのである。
 リトル・アリョーヒンは人々のうわさになった。
 でも、少年はそこを辞めて「チェスの上手な人を求む 老人専用マンションエチュード」の広告を見てエチュードに行く。リトル・アリョーヒンは老人相手にチェスをするのが仕事となった。
 ところが、小さな火事がもとでリトル・アリョーヒンの人形の中から少年が死体となって発見される。
1369 君が降る日 6月 4日(木)
Date: 2009-5-31

おすすめ度 ★★★

 島本 理生 著  幻冬舎  発行:2009年3月

 隆一が自動車事故にあったことを知らせる電話で病院に向かった志保。彼は友人の五十嵐が運転する車に乗り飛び出した子どもを避けようと左にハンドルを切った。
 五十嵐は助かったが隆一はその後なくなる。隆一が母子家庭だった一家を支え酔うとしていたことを知り、五十嵐は隆一の母のやっている店を手伝う。無期限で隆一の弟はすぐに仲良くなったが、母親のほうは複雑そうだった。
 志保も一緒に店を手伝った。隆一の母は喫茶店をやっていた。
 母親は志保に「二人きりになるとどうしても・・・。ありがたいと思うけど五十嵐君をみていると隆一を思い出しちゃって」と声を詰まらせる。
 五十嵐は母親の気持ちを感じ福岡へ帰っていった。志保も誘われるまま福岡へ行く。
 五十嵐から、隆一が付き合っていると聞く前から志保のことを思っていたことを聞かされる。
 志保は五十嵐に一生責めながら生きるのではなく、自分を許してあげて開放してあげてという。
 志保は何かを変えたいと福岡へ来たが、決別して大学を続けるために東京に戻る。隆一のことを思った。志保は20歳。隆一が付き合っていないかもしれない未来に今自分がいる。
1368 大江戸人情花火
Date: 2009-5-27

おすすめ度 ★★★★

 稲葉 稔 著  講談社  発行:2007年3月

花火職人の清七は旦那から暖簾分けの話を聞く。清七にはまだ兄弟子も番頭もいる。なぜ俺がと疑問が沸く。しかし、「番頭も兄弟子も高齢だ、適任はお前しかいない。鍵屋の存続を願って暖簾分けをする。この地に他の地からの花火屋が進出しないためだ」といわれる。
 清七は心きめこの申し出を受ける。店を辞めるにあたって25両と今月の給金と祝儀で他に15両もあった。店も広小路に近い荒物屋の後を店にした。鍵屋の称号は名乗らないで玉屋とした。
 清七は妻のおみつと人手を探した。鍵屋を辞めてぶらぶらしていた2人ともう一人を雇った。
 妻のおみつの勘定では手が回らなく昔番頭をしていたと言う徳蔵を雇った。細かい数字に強く頭も低いことから助けられた。
 夏には花火も揚げられた。おみつも最初の子は駄目にしたが、2回目には男の子が生まれた。
 店は順調に大きくなっていった。そこへ、鍵屋の旦那が死んだと知らされる。弔問に行った清七を番頭の惣次郎は追い返す。鍵屋をしのぐ大きさになった玉屋の甘えが許せないという。
 その帰り作蔵から自分への暖簾分けは旦那と清七の母の間に生まれたのが自分だったことを知る。俺は妾の子だったのだ。旦那が父だったのだと知る。
 わが子が成長し徳蔵の後をついで勘定を任せられるようになったとき、玉屋は火事に見舞われる。「今後、花火に手を出してはならない。所払いを申し付ける」と白洲で裁かれる。
 その後、鍵屋弥兵衛が訪ねてきて、火をつけたのは鍵屋の若い職人だったと詫びてきた。それを御上に申し出るというのを清七は制す。
 火事はもう裁きを受けている。鍵屋が申し出ると江戸には花火屋が無くなってしまうと。
 暖簾分けから34年。これでよかったと清七は思う。そして父を思った。
1367  チーム・バチスタの栄光
Date: 2009-5-24

おすすめ度 ★★★★

 海堂 尊 著  宝島社  発行:2006年2月

 高階病院長から告げられた言葉は「桐生手術チームの調査をお願いした」ということだった。
バチスタ手術はすでに30例を数える。当初の15例はすべて成功するという華々しいスタートだった。ところがこのところ3例が術死が続いた。失敗である。次回の手術も3日後にある。
 田口は東城大学医学部付属病院に勤務する。
チームバチスタは助教授になった桐生恭一が42歳のときに立ち上げた心臓外科手術チームである。栄光の7人ともてはやされた。ところが27例、29例、30例と死亡が続いた。
 そして32例目も術死した。
 厚生労働省大臣官房秘書課付技官 白鳥圭輔が東城大学病院にやってきた。田口を通じて病院の状況を把握していく。白鳥はチームのメンバーに個別に調査を広げていった。
 そして桐生に「今すぐチームバチスタを解散させるべきだ」と告げる。
 田口は白鳥から「犯人の尻尾をつかんだ」と電話を受ける。
 「犯人はお前だ!」という指の先に麻酔科医の姿があった。
1366 利休にたずねよ
Date: 2009-5-21

おすすめ度 ★★★★

 山本 兼一 著  PHP研究所 発行:2008年11月

 利休は1畳半の茶室にこもった。そこへ利休の切腹を見届ける使者も入った。介錯の広さもない。
 利休は秀吉と知り合って30年。70歳になっていた。秀吉からの賜死の理由は2つ。大徳寺に安置された利休の木像が不敬であること。茶道具を高値で売っているとされたことである。木像は寺が置いたものであり、茶道具はいいがかりもはなはだしい。使者が謝ればというのを断り切腹する。
 秀吉は利休の美にかかわることならば誰にも憚らない、己も豪も曲げない一徹な男も珍しいと思っていた。利休の美しさに求める姿は気迫に満ちていた。
 「帝の驚いた顔がみたい」という秀吉の言葉に利休は金の茶室を作ることを提案する。三畳の茶室に檜の板の上に三貫目の金の延板を貼った。釜も台座もすべて金にした。見事なものであったが、秀吉は利休の心のうちを見ていた。利休の冷ややかな眼。下賎な好みと眼がそう語っている。秀吉はあの男があれほどまでに自分の審美眼に絶対の自負を持っているのか。悔しいがあの男の眼力は外れたことがない。あっぱれ天下一の茶人である。しかし、好まなかった。
 利休も自分が死なねばならぬ理由は何もなかった。しかし、なぜあの男に頭を下げねばならぬ。女と黄金にしか興味のないあの下種な男が天下人になった。あの禿鼠に美というものの恐るべき深淵を見せ付けてやりたかった。美しいものには力がある。
 枯れ寂れた床に息づく椿のつぼみの神々しさ。釜の湯音。黒茶碗の幽玄の美。
 私が額づくのはただ美しいものだけだ。

 1591年2月28日利休屋敷 一畳半の茶室で利休は逝く。
  
1365 ゆうとりあ
Date: 2009-5-18

おすすめ度 ★★★★

 熊谷 達也 著  文芸春秋 発行:2009年3月

 団塊の世代の克弘は3月で定年を迎え4ヶ月ぶりに同じく定年で辞めた北川に誘われて有楽町で会う。
 北川は会社を立ち上げるので手伝ってほしいという。
 定年前でやめた河村はロックバンドを作って楽しんでいる。
 克弘は妻が見つけた金沢の郊外の500坪の土地に家がついて1千万の農家を買い引っ越す予定である。
 克弘は金沢東インターを降りてその土地を見に行き、そこに越すことにした。最近はじめた蕎麦うちをやってもいいと思った。
 理想郷は村の役場も応援してくれて、裏にある山林の手入れも行うというものだったが、適当にやればよいらしい。
 すぐに近所のあいさつ回りに行く。一癖もふた癖もある人たちであったが人はいい人ばかりだった。村の人たちからの歓迎会も開かれた。
 ところが、熊が出たり猿が畑を荒らしたりと大変である。イノシシもでた。
 役場は有刺鉄線を張ってはどうかという。電流を流すのも計画にあがった。折の中で暮らすようでこれは取りやめた。
 3年たち生活に慣れたところでそろそろ克弘もそばの店を出そうと考える。
1364 特命
Date: 2009-5-14

おすすめ度 ★★★★

 麻生 幾 著  幻冬舎 発行:2008年6月

 洞爺湖サミットの開催4日前に、成田に入国しようとした男が射殺された。インドネシアの偽パスポートを持っていた。しかし変死したとされた。
 警察庁のキャリア伊賀剛は単独調査の特命を受けた。
 成田で死んだ男の資料を頼むとしつこく目的を聞かれた。
 国際テロリズム対策の任務は日本赤軍メンバーに絞られていた。
 伊賀は「ワカバ作戦」で4人の協力者を運営していた南武の存在を知る。南武は元国際テロリズム対策室の人間である。資料の中に「ナショナル・ポリス ナンブヘツタエロ ワカバヲサガセ」という暗号だった。
 南武はかつて大蔵省、外務省、厚生省を巻き込む大きな作戦を立てていた。ワカバを獲得しシリア軍総参謀部政治局と接触を行って幹部自身を獲得する。そしてベイルートにいる日本赤軍メンバーを一網打尽に確保することだった。
 数ヵ月後、レバノンに飛んだ南武は驚いた。探している男4人、女1人はシュレート・ジェネラル幹部は彼らを逮捕するでも国外に出すでもなくただ見ているだけだった。おまけに「今度はあなたの番だ」という。
 南武には倫子という娘がいた。妻は10年以上前に死んだ。倫子はほとんど家庭を顧みない父を憎んでいた。
 伊賀は成田で死んだ男は拷問の上殺されたことを知る。伊賀は無謀な行動を起こす決心をする。
 だが、星村から自爆犯がファーストレディの訪問先でくだらないコトを起こす計画だった。自爆犯は事前に射殺されたと知らされる。おまけに伊賀は深入りしたあまり、ジャハーの存在を口にした。それが国を裏切る行為に当たるという。伊賀は自分が利用されたことを知る。
1363 骨の記憶
Date: 2009-5-12

おすすめ度 ★★★★★

 楡 周平 著  文芸春秋  発行:2009年2月

 癌の夫曽我弘明を看病する清枝のもとに51年前に失踪した父杉下良治の遺骨が送られてきた。送り主は15歳でこの町を出て翌年東京で焼死した同級生の長沢一郎だった。遺骨とともに送られてきた手紙は当事者しか知らないもので、父の死が今余命3ヶ月と言われる夫弘明が関係したことが書かれていた。
 父の死後、12歳だった清枝親子を弘明が高校、大学と経済的な面倒を見てくれ嫁になった。そのことを感謝してずっと生きてきた。
 一方、弘明の中学時代の友人長沢一郎は中学を出て東京中野で中華屋の出前持ちで働き、訪ねてきた友人を泊めた翌日アパートが火事になった。死んだのは自分だと報道されたことを知って以来友人に成りすまし生きてきた。
 友人の荷物にあった遺族年金をもらう一方で運送会社で働き、金を貯め、友人の遺族が残した土地が飛行場になることから得た4400万円で運送業を立ち上げた。1日朝と夕に回収することから始めた事業があたり順調に拡大していった。
 金ができてからは面白いように金が手に入った。結婚もしたが、短い間にお産がもとで妻をなくした。いつも頭にあったのは中学のころの清枝の存在だった。
 自分の体が思うようでないと感じたとき、一郎は生まれ故郷の土地を訪ねる。墓に行くと自分の名が一番に書かれ、祖父母、父の名があった。母はまだ生きているが会えるはずもない。
 友人の曽我弘明と中学のころ穴を掘って遊んでいるところへ先生が来た。危ないから止めろといわれた直後に、先生の上に土砂が崩れた。
 弘明と一郎は先生をそのままにして穴を埋め戻してしまった。同じ罪を共有した。
 曽我弘明の家は村一番の金持ちだった。その曽我の山林は売りに出されていた。田畑も銀行の担保になっていると聞く。
 一郎は後妻に迎えた冬子が自分との子を3回も堕胎し、すでに夫婦仲も冷えていた。冬子に財産を残してやりたくない思いから、二束三文の曽我の山林を買ってやる。そして、骨を掘り出し丁寧に洗い清枝に送った。
1362 ブラックペアン1988
Date: 2009-5-10

おすすめ度 ★★★★

 海堂 尊 著  講談社  発行:2007年9月

 外科研修医の世良は、東城大学医学部付属病院に赴任した。
外科部は佐伯教授が主宰者だった。手術に立ち会った世良は佐伯の吻合の手早さに見入る。そして最後はブラックペアンと呼ばれる黒い糸であった。他の糸は銀色に輝いているというのに。
 世良は来て手間がないのだがカンファレンスでプレゼンを任せられる。
 高階講師は米国に2年留学していた。この旧態依然とした雰囲気を変えたいと思っていた。
佐伯教授のいう「私がルールだ」に反論した。一部の選ばれし者が執刀をしているようでは人材を育てるのは下手だ。すべての外科医が手術ができるように「スナイブ」を使えば10年かかる熟練が2年で達成できるという。
 渡海はその意見に自分の技術の高みを目指すのがすべてと反論する。
 腹痛を訴える患者が運ばれてきた。レントゲンで術後腹部にペアンの置忘れが見つかった。そのペアンを除去するのに腸管を押しのけ癒着のそこさえ知れない困難を極めた。そして除去するには故意に入れられたもののようだった。渡海が除去するが、しかし出血が始まる。なかなか止まらない。佐伯教授がペアンで止血をとめる。再び腹部にペアンが残った。これは最後の手段だった。
 その際に佐伯教授が渡海に言った父のこと。術後渡海は辞表を出す。
 佐伯教授は半身もがれたような気持ちだった。
1361 アンチエイジング
Date: 2009-5-5

おすすめ度 ★★★★

 新堂 冬樹 著  ポプラ社  発行:2009年2月

 朝海はテレビで報道されるエステに関心を持った。26歳で結婚した朝海は、小学校からずっと一緒だった小百合がIT企業の青年と結婚し、先日会うと37歳とは思えない若々しさだったことにショックを受ける。
 エステをしてきれいに成ろうと、実家に借金を申し込むが断られる。仕方なくサラ金に100万円を借りるが2軒目以降はどこも貸してくれない。そんなときに木下という男が金を貸してくれるという。条件として美容整形を受けてほしいという。10日ほど家を空け手術を受ける。
 一方、朝海の夫孝昭は妻が不在になってから自暴になり若い子に手を出す。若い子はさらにお金を貸してほしいと要求してくる。
 孝昭はサラ金から借金をして250万円を作るがさらに500万円が必要といわれる。16歳の女の子にはヤクザがバックにいたのだった。
 孝昭は途方にくれる。あと1週間の間に500万円作らなくてはいけない。
 朝海は美人になり木下から夫と離婚してほしいと言われる。が、恋人だった人の顔に自分が作り変えられていたことを知り夫の元にかえる。
 子どもは知らない人の顔に恐怖感をあらわにする。が、部屋に入った朝海に夫からの手紙があった。若いことの過ちと君のままの君が若いころの君より美しく魅力的だと書かれていた。
 そこへ夫が山手線に飛び込んだという警察からの電話が入る。
1360  死刑基準
Date: 2009-5-2

おすすめ度 ★★★★★

 加茂 隆康 著  幻冬舎  発行:2008年11月

 大伴の弁護する被告人が死刑にならなくて無期懲役になった。その被害者側の鯖江の目は憎しみに満ちていた。
 大伴が玄関を開けると身重の妻が全裸で腹を切られて死んでいた。妊娠中の胎児も絶命した。
不妊治療の末にやっと恵まれた子だった。やがて犯人として鯖江が捕まるが、鯖江は手を縛って逃げたという。殺してはいない。
 胎児のDNAが調べられた。大伴の子ではなかった。やがて子の父は代議士であることが分かる。大伴も癌に侵され余命2ヶ月、もって4ヶ月といわれる。それまでに殺した犯人を知りたい。
 水戸は犯人が代議士の妻であることをつかむ。直接殺したのは妻が差し向けた男である。夫と夫人の関係を知って復讐したのである。
 大伴は死刑廃止論者であったが、夫人の死後、死刑囚を家族に引渡し好きなように処刑する。絞首刑では生易しい。殺さず生かさず最後は串刺しにしてやりたいとか、尿道に釘を打ちペニスを切り取るというような残忍な刑を望むようになった。6年前に死刑廃止をウィーンで強く訴えていた大伴がである。死刑廃止は被告側に沿った刑で被害者側には決して許せない刑であった。
1359  悪いことはしていない
Date: 2009-4-30

おすすめ度 ★★★★★

 永井 するみ 著  文芸春秋  発行:2009年3月

 穂波にランチに行こうと誘いに来た亜衣。しかし穂波は仕事が立て込んでいて行かれないと断る。亜衣と穂波は同期の入社4年目。営業アシスタントとして働いていたが、穂波は同じ課の秘書が退職したため部長の秘書も兼ねて多忙である。
 山之辺部長に亜衣は穂波を心配するあまり食って掛かる。
 穂波はパンをかじりながらもプレゼンの資料を満足がいくように仕上げていた。出来は部長もほめてくれた。
 ある日、亜衣が無断欠勤した。心配した穂波は亜衣の部屋を訪ねるがいない。5日も休んでいる。ようやくひなびた温泉地を訪ねると穂波の名で泊まっている客がいることを突き止める。亜衣だった。亜衣はブログに部長にホテルに誘われたことを書いていた。
 部長は近々独立をする予定である。穂波を連れて行こうと思うと亜衣に話す。亜衣も一緒に行きたいと言うが断られる。それでブログの作話となった。
 部長は独立する。数人で事務所を立ち上げた。穂波も張り切る。そこへ、最近穂波を付けねらう青年の影が。穂波は亜衣ではないかと疑うが、捕まえると元の同僚だった。部長に引き抜かれなかったことをねたんでのことだった。
 亜衣は穂波に熊狩りのスプレーまで用意してくれていたのに疑ったことを申し訳なく思う。
1358  神の狩人
Date: 2009-4-27

おすすめ度 ★★★★

 柴田 よしき 著  文芸春秋  発行:2008年6月

 サラは風祭という男を訪ねた。風祭は20年前に片桐萌という女性を探していた。守秘義務の15年(民間探偵法)が過ぎたので公開を求めた。
 依頼人は妹という片桐睦月からだった。睦月は来月NASAが打ち上げるシャトルで宇宙基地に飛び立つ。その前に30年前に生き別れになっている姉に遺したいものがあった。
 姉の萌は、睦月より15歳以上上だった。萌は10歳のころから学校へ行っていなかった。不登校だった。萌の両親はヘリコプター事故で亡くなっている。睦月が成人した直後だった。
 萌は精神疾患をわずらっていた。その後カルト教団に入り自決した。
 調べるうちに遺族が知らなくてもいいことがあった。萌は15歳で出産した。その子は両親の子どもとして萌の妹として届けられた。
 萌は姉ではなく睦月の母親だった。そして直らない精神疾患を患い自決した。その事実は子に教えるのは両親が隠していた意味を失う。
 サラも報告書には萌が睦月の母親である事実は告げなかった。病死したことのみ報告した。
1357  ストロベリー・フィールズ
Date: 2009-4-25

おすすめ度 ★★★★

 小池 真理子 著  中央公論新社  発行:2009年3月

 夏子が智之と知り合ったのはりえが11歳のとき。智之の妻が他界したのはりえが13歳のときだった。それから3年して夏子と智之は結婚した。
 夏子はりえの新しい母親になることを覚悟で結婚した。その智之に最近、美人秘書の葉月と不倫をしていることを知る。
 りえが友達を呼んで食事をした際、りえの友人の兄という旬がいた。
 旬は後日、目がゴロゴロするとわざわざ東京から鎌倉の夏子のクリニックまで受診に来た。旬はロックバーでアルバイトをしているという。本来は公認会計士をめざしている。
 東京に出た折に旬のバーに行く。一緒にいるとほっとする。
 りえは大学院生。卒業したら結婚する相手もいたが、いつしか旬に惹かれてていく。
 旬は夏子の思いつめた悩みに、葉月に近づき裏切ることを実行する。夫は葉月が離れていったことを告白する。
 そして旬はりえと結婚して夏子のそばにいることを望んだ。夏子は複雑な思いだった。
 旬が腹を刺し自殺しようとした。夏子が助ける。
1356  不倫純愛
Date: 2009-4-20

おすすめ度 ★★★★

 新堂 冬樹 著  新潮社  発行:2009年2月

 真知子は結婚5年で40歳。夫京介と出会ってからは15年になる。
 出版社に勤める京介は担当の作家岡セイジの自宅に原稿をとりに行くがなかなか書いてもらえない。最近。岡のマンションに美人の秘書がいるようになった。秘書からのアイデアも聞いて週に3日マンションに通うようになった。
 ところが岡はたびたび外出しては一向に筆が進まない。そうこうしているうち、マンションに秘書と二人だけになりついに変な仲になってしまう。
 岡はその様子をとなりに借りたマンションの一室から隠しカメラで見ていた。
 突然、岡の訪問を受けた真知子は京介の浮気を聞かされる。そして岡に迫られる。こちらも不倫してしまう。
 妻から何日かしてこの事を聞かされ、離婚を迫られる。京介は妻と出版社の仕事を絶たれることを想像した。
 秘書は偶然見た岡のパソコンから、自分たちの情事を岡が知っていたことを知る。
1355  ユグドラジルの覇者
Date: 2009-4-13

おすすめ度 ★★★★

 桂木 希 著  角川書店  発行:2006年5月

 世界の資本がネットバンクに移行している。そのネットバンクにトラブルを起こさせ莫大なネット資金を一時凍結するという目論見を狙っているものがいる。
 米最大のIT企業ユグドラン・ユニバーサル社のブライアンもその一人である。
 株価がいきなり上昇した。そのほとんどが香港や台湾を拠点としている。華龍とよばれる闇の正体。
 趙文濤はシンガポールでそだった。Aレベルに合格しないと大学にいけれない。十分に学力は有していたが逸した。趙はアメリカにわたりハーバード大学でMBAを取得した。名前もジャック・ブレナムと変えた。
 シンガポールに戻ってもジャックの名で通した。その趙が相場の動きからこれは華龍ではなく日本人の存在を知る。
 矢野健介は大手電気メーカーの技術者、今は世界を漂流している。
 ハンナは娼婦の子として生まれ、孤児になり養護院にいたこともある。しかし、ストリートリル度レンに戻っていた12歳のとき欧州金融界の王、ガベンディシュに拾われる。ハンナの天才的な能力を見抜いていた。
 ハンナはハーバードに入り、欧州の経済支配者になるための帝王学を学んだ。
 ハンナも金融の動きを狙っていた。趙はハンナ一人に狙いを定め陥れる。
 そしてブライアンは矢野健介と対峙する。矢野が暗号破りの技術を持っている。
 ブライアンはネットバンクを手に入れる意味をなくしたと思う。
 矢野がいたから趙のアジアの支配権を奪うための格好の人材だったのだ。矢野と韓国の崔との計画だった。計画したのは矢野だった。
1354  廃墟建築士
Date: 2009-4-9

おすすめ度 ★★★

 三崎 亜記 著  集英社  発行:2009年1月

 「7階戦争」では、殺人事件、自殺、火災、孤独死と事件が続いた。いずれも7階で起こったことから市議会で7階を撤去することになった。7階の住民は協議会を作り抗戦する。が、市内から7階が無くなった。6階の次は8階でエレベータにも7の数字はなくなった。しかし、これは仕組まれたものだったら・・・。
「図書館」では、6時にいったん閉館された図書館が、夜中11時半に再び開館する夜間開館をするために派遣された日野原。
 夜間開館は思いのほか盛況だった。夜間開館は延長されることになった。しかし、閉架の本が暴れだし、本が鋭利な刃物のように飛行を始めた。日野原もびっくりする。その騒ぎを社長が救う。
 図書館は夜になっても野生を開放しない落ち着きを取り戻すのに1週間かかった。
 「廃墟建築士」は、廃墟が人の不完全さを容認し、欠落を満たしてくれる。「魂のやすらぎ」の空間だと関川は思っている。
 関川が廃墟に魅せられたのはライ麦畑の脇で延々と7キロ続く廃墟の二百年以上前の廃墟を見てからだった。
 廃墟はわが国では不法投棄や少年非行の温床として廃墟は立ち入りが禁じられていた。しかし、数十年後には空港周辺の高層ビルが廃墟になる。究極の癒しの空間になるだろう。廃墟三流国のわが国。廃墟は人々を癒すが、廃墟建築士は何によって癒されるのだろう。
1353  武士の尾
Date: 2009-4-7

おすすめ度 ★★★★

 森村 誠一 著  幻冬舎  発行:2008年11月

 郡兵衛は内蔵助から「3月を限りに討ち入りを決行する、ついては婿に行ってほしい」といわれる。
 郡兵衛は、堀部安兵衛と並んで槍の達人であった。内蔵助は、自分たちが一陣で討ち入った後、郡兵衛に失敗したときのための二陣の役を頼む。ついては、そのことは他言無用である女性と結婚をして義士とは縁を切ったように暮してほしいと頼まれる。
 生類憐みの令の将軍の折である。松の廊下事件が起こった。浅野家は断絶、吉良家はお咎めなしであった。
 赤穂浪士たちは仇討ちの忠誠を貫こうとするものがじっとそのときを待った。しかし、昼行灯と呼ばれる大石内蔵助の態度に脱藩するものが続出した。
 上杉家では色部又四郎は、右腕となる群兵衛が入婿したうわさを聞き彼の周囲を調査させる。
 吉良が来客のないのは節分と大晦日である。しかし、そのときは吉良家も警戒をしているはずである。
 郡兵衛は、刀を捨ててから嫁のてつと平和に暮していた。人並みの生活がこういうものかと堪能していたのであるが、自分を狙う者の存在も知っていた。
 12月14日、茶会が行われた吉良家では深夜にまさか浅野の家臣が来るとは思えず、上杉からの迎えかごも激怒して追い返してしまった。
 討ち入りは決行された。赤穂の死傷者はなく、吉良家の死体が惨状を伝えていた。
 てつは郡兵衛が夜中に出て行くのを心配したが、戻ってきたのに安堵した。
 しかし、郡兵衛は後日又四郎と対峙し命を落としてしまう。
1352  煙霞
Date: 2009-4-5

おすすめ度 ★★★★

 黒川 博行 著  文芸春秋  発行:2009年1月

 晴峰女子高校に勤務する常勤講師の熊谷は2年たったら正職員にするという約束が守られないまま3年が過ぎようとしている。4月からは別の講師が来るという。確実に自分はクビか転配属になるだろう。
 小山田は理事長のスキャンダルをネタに直接交渉をするつもりだ。それには愛人宅をでた理事長を押さえるのが一番だと他の講師たちにも協力を求める。
 理事長と愛人が飛行場に向かう途中に捕まえることが出来た。小山田はお金の要求をする。
 要求どおりの金ではないが3800万円近い金を出させることが出来た。それを金塊に替え車に積んで移動する。が、ひょんなところから愛人が金塊を積んだ車を運転して逃げる。
 小山田たちは車を追う。車を見つけたときはすでに金塊はなかった。
 音楽教師と美術教師の知らぬ間に引き入れられた形の理事長誘拐劇。
 金塊の行方が二転三転する。しかし、理事長の下にはやめる決心をした講師2人が金塊のあり場所を教え去っていく。
1351  反乱する管理職
Date: 2009-4-2

おすすめ度 ★★★★

 高杉 良 著  講談社  発行:2009年1月

企画部副参事の友部陽平は米国ハーバード大学でMBA(経営学修士)も取得していた。英語力は社内一で剣道は3段である。東邦生命で働いている。
 安東太郎会長から大日生命の鈴木社長への面会依頼を受ける。友部は東邦生命の破綻を予感していた。安東は鈴木にアルファベットの会社にのさばらせるより力を貸してほしいという。
 友部は東邦生命松江支社に転勤になる。転勤早々に青年がチンピラに金を巻き上げられるところに出くわした。友部は助ける。青年は名門旅館の息子だった。送りがてら旅館に出向き、お礼に生命保険の契約を取り付ける。ボランティアでこの青年の家庭教師を買って出る。
青年は高校生だった。友部のアドバイスで長髪を切り、成績も上がってきた。この変化に女将も学校も喜んだ。
 友部には大手出版社に勤務する明日香という恋人がいた。しばらく疎遠になっていたが、

 東邦生命は銀行から支援打ち切りが報道される。解約者が殺到する。友部は辞表を決意するが管財人室長を命じられる。
 友部は明日香との結婚を決める。負債総額が1兆円から六千億円に抑えられた。
友部は退職する。誘い口があったが断った。妻の明日香は出版社で部長クラスに昇格した。
1350  棟居刑事の使命の条件
Date: 2009-2-18

おすすめ度 ★★★★

 森村 誠一 著  双葉社  発行:2008年4月

 高坂は社長に勧められた女性亜矢子と結婚した。結婚のときにすでに亜矢子は妊娠していた。
高坂の社長の子であった。高坂は小さいころから中古の人生に慣れていた。
 高坂は結婚後は秘書室に抜擢された。妻の亜矢子も献身的に高坂に尽くしてくれた。子どもは高坂を実の親と思って育った。
 白石は大学で2年留年したのでこれが最後のチャンスと受けた会社で9人を相手に論破していたが突然ワイシャツについた発色剤が赤くしみを広げ動揺した末にしどろもどろになってしまった。
 しかし、高坂が白石を合格させるよう押してくれ白石はサービス業の大手ベガサスへ入社できた。
 結婚披露宴の最中にウエディングドレスに赤いしみが広がって人生の大事なときにけちがついた後町泉は、結局はその結婚が破談になってしまった。同じように発色スプレーの被害にあった三沢由香利と会い被害の同盟を広げていった。
 白石もそのグループに入った。18歳の少女はヒロインのオーディションの際に発色剤の被害に会い、30歳の行員はホテルでいざというときに発色剤が現れ萎縮してしまった。
 皆は発色剤の被害にあう前にわきがのような匂いのような甘酸っぱい匂いを嗅いだという。
 そして共通して被害者はPRCというカラオケ店や喫茶店を経営する会社の店に行っていた。PRCとは一誠会のドル箱新城組のフロント企業だった。
 高坂は最近、会社の中に不審な人物の訪問があることに危機感を持った。高坂は自分に縁談をすすめたかつての社長、現会長に相談する。会社の機密が外に漏れても困る。高坂はすぐに内定のため信頼できるものでチームを作った。不審者に瀬川常務と社長の恭一が加わっていることを突き止める。
 すぐさま、会長は恭一をアメリカの支店に飛ばし、瀬川も放逐された。
 会長は高坂に亜矢子の生んだ娘の琢子がやがて会社を継ぐまで高坂に社長になるよう言い渡す。
 白石と琢子は被害者の同盟で親しくなっていた。白石も優秀な社員になっていた。
1349  粗茶で一服を
Date: 2009-2-13

おすすめ度 ★★★★

 山本 一力 著  文芸春秋  発行:2008年10月

 7編の短編集
「粗茶で一服を」では、伊勢屋を悪く言ううわさが流れているが、噂の出所は井筒屋だろう。
 伊勢屋の四郎左兵衛門は、商家大店にあって番頭にかじ取りを任せていた。多くの当主は番頭任せにはしなかった。使い込みをされても当主が悪いとされ、当主の恥でもあったのだ。
ところが伊勢屋は働きが良ければ高い給金を払うが稼ぎが悪ければ暇を出す、飴とムチを巧みに使い分けていた。
 井筒屋の考えていることは伊勢屋に特別の耳があり聞こえていた。
 伊勢屋は井筒屋と大口屋と茶の湯の宗匠の3人を茶席に招く。そして高価な茶道具を使い、調理された懐石をふるまう。かますの煮物、おこしのお菓子である。この謎ときに3人は顔色を変える。
 伊勢屋は2人のたくらみをすべて知っていると伝える。おこしはゴロツキを表し、それを包んだ案は伊勢屋を表す。カマスは気性の荒い魚で鋭い歯で噛み砕く魚。つまり、どれほどのゴロツキをそろえたところで連中を包み込む力があることと、噛み潰す力が伊勢屋にあることを伝えたのだ。
1348  ほうき星 上・下
Date: 2009-2-10

おすすめ度 ★★★★

 山本 一力 著  角川書店  発行:2008年12月

 1835年70年に一度やってくるというほうき星を絵師吉田黄泉が書いた。
 黄泉の夜空の絵に感動したさくらの父が絵師と鰹節問屋の娘との婚姻を認めた。
 泉とさくらは仲のよい夫婦だった。夫婦に子どもが出来た。女の子でさちと名づけられた。
 やがてさちも絵を描くようになる。師匠の岡崎はさちの絵の血筋を認めていた。じっと紙面を見つめ見えてきたものを一気に書き上げる。
 さちは20歳になって幼馴染のうお金の幹太郎を思った。しかし、うお金と絵師ではやっていくのは難しい。悩んだ末にさちはあきらめる決心をする。幹太郎はそのさちの気持ちを察して、町であっても挨拶ぐらいはしようと別れる。
 月日がたってもさちは幹太郎を思う気持ちが募るばかりであった。
 さちは幹太郎を訪ねる。万一、結婚していたらあきらめようと。幹太郎はさちを待っていた。ふたりは一緒になる決心をする。
1347  告白
Date: 2009-2-5

おすすめ度 ★★★★★

 湊 かなえ 著  双葉社  発行:2008年8月

 担任の娘愛美がプールで死んだ。事故死とされたが、本当はこのクラスの生徒に殺されたのです。担任は聖職者になりたいとは思わないが、二人の中学生を警察に突き出さなかった。教師は子どもたちを守る義務があります。警察が事故と判断したならそれを蒸し返すつもりはない。が、二人は罪の重さを忘れずに生きてほしいと、両親を呼んで事故の顛末を話しました。
 化学好きなAがポシェットに仕掛けた電流を愛美は手に受け気絶する。それを見たBはとっさに事故死に見せようとプールに愛美を投げ込んだ。そして愛美は水死した。
 担任は教師を辞めました。
 ひきこもりになったBは、7月になって「僕は人殺しだ。警察にいこう!」と母親に訴えるのに「あれは事故だ!」という母親を殺してしまう。
 Aの両親はその後離婚した。父親は再婚し新しい子どもも出来た。Aは父親に引き取られた。
 Aは父親より母親を慕っていた。博士課程を修了した母親は父と結婚して研究をやめた。母から電気屋の片隅で研究のことをいろいろ教えられた。母は尊敬していたが父親はバカにしていた。しかし、母親はAに虐待をしていた。離婚が決まってからは手を上げなくなった。
 大学の教授がまた研究室に戻るように母親に説得に来た。
 Aは別れた母親に認められたくて「全国中高生科学工作展」に応募した。今日は演題で自分が入賞した研究を発表する。しかし、このボタンを押せば会場に集まった者たちとともに爆発する予定だ。再婚した母を憎んでもいた。 
1346  臨床真理
Date: 2009-2-1

おすすめ度 ★★★★★

 柚木 裕子 著  宝島社  発行:2009年1月

 美帆は何もしゃべらない青年を前に話しかけるが答えがない。医師免許を持たない臨床心理士では病名や投薬は出来ない。しかし、この青年の力になりたいと思った。
 突然、青年は「あか」という。失語症の彩が風呂場で血まみれでいたところを救急隊が運ぶ途中に死んだ。そばにいたのがこの藤木司である。
 面接を繰り返すうちに司は美帆に心を開くようになり、「しろ」といった日からぼつりぼつりと話した。自分には人の心が色で見えるという。赤はうそ、白は真実、橙色はエネルギッシュである。
 司は彩の死因は施設にあるという。施設を調べれくれというのだ。美帆は彩や司のいた障害者施設至誠学園を尋ねる。ここでは施設長の安藤が対応した。帰りに倉庫の中から彩の遺品を持ち帰る。その中にピルが入っていた。これは何を意味するものか。彩は16歳だった。
 施設の中でスカートをはいた女の子が頻繁に安藤に連れられて外出する。
 司をつれて外出も出来るようになった美帆は友達の警官に相談し至誠学園のことを調べてくれるように話す。
 安藤が施設の子を使って売春行為をしているのではないかと疑う。やがて、安藤は自殺する。
美帆にも魔の手が伸びる。連れ去られる。司と刑事が美帆の救出に向かう。
1345  草祭
Date: 2009-1-29

おすすめ度 ★★★★

 恒川 光太郎 著  新潮社  発行:2008年11月

5編の短編
「けものみち」では中学三年の夏同級生の父からでんわがあった。息子を探しているようだった。
雄也は椎野の行きそうな場所を思案した。小学校5年生のとき中学生と決闘してにげまわり入り込んだくぼ地に行ってみた。その場所はけものはらと呼ばれていた。
 椎野はそこにいた。そばに女性の死体があった。「あれはうちの母親」と椎野はいう。
 椎野が小学校へ上がる前に母親は家から出て行った。そして10年後ふらりと帰ってきた。
 母とこの場所に来た。5歳のとき、水筒に入ったものを飲み気を失った。翌日目を覚まして家に帰った。それから数日後に母がいなくなった。
 10年後再びこのけものはらに母と来た。オレンジの水筒はまだそこにあった。黙ってその中身を注ぎ母に突き出した。母は飲んだ。翌日になっても目を開けなかった。母を殺したのは自分だ。
警察に行こうという雄也のことばに椎野は動じない。
 夜、自転車を飛ばしてその場所に行ってみた。死体はあったが男の子はいなかった。
1344  素行調査官
Date: 2009-1-26

おすすめ度 ★★★★★

 笹本 稜平 著  光文社  発行:2008年10月

 探偵事務所が閉鎖されて無職になった本郷に同級生の入江から警視庁入りを勧められた。入江は警視庁の首席監察官だった。本郷は三十代半ばで警察官になった。着任時点で巡査部長だった。
配属は正式な官命ではないが素行調査官である。つまり警察官の素行を調査するというものである。
 品川で中国籍の女性が殺された。現場に駆けつけた小松警部補は落ちていた名詞から浦和の自宅を訪ねる。警視総監の椅子に最も近い警察庁警備局長本田警視監である。
 小松は本田から自分を落としいれようとするものの仕業であるといわれ、自分の手足となって働いてくれれば見返りにそれなりのポジションを与えると言われる。
 小松より遅れて殺害現場に到着した本郷であった。被害者の女性には会社を経営する姉がいて妹もそこで働いていたことを突き止める。姉のマンションの隣の部屋に本郷らは住むことになった。
 ところが、この姉に複数の警官が関わっていた。付き合っていたのは本田警視監、それに浅野警部補も。浅野をつける小松警部補。
 そこへ探偵時代の社長が帰ってこないと社長の娘の沙緒里からの連絡で本郷は社長を探す。
 社長は中国人のクライアントと練馬にいた。そのクライアントを小松が狙っていた。
 やがて、小松は本田から利用されていることに気付く。小松は本田の自宅で銃を口に含み自殺する。
 本郷たちは本田が中国の蛇頭とつながりがあり、長年にわたり利益供与があったことを突き止める。
1343  まず石を投げよ
Date: 2009-1-23

おすすめ度 ★★★★★

 久下部 羊 著  朝日新聞社  発行:2008年11月

 67歳の女性患者が手術中に亡くなった。医師は医療ミスを認め自ら医療ミスとして謝罪した上1400万円の賠償金を払った。このことが新聞にまれに見る誠意としてミスを犯した医師は脚光を浴びることになった。匿名の記事であったが、すぐさま医師は三木達志で荻窪の明楠記念病院であることを突き止めた。
 綾乃はこの医師に腑に落ちない点がいくつかあった。会って話を聞きたいと思ったがなかなかつかまらない。
 テレビではコメンテーターや弁護士が安易に美談にしていいか、正統に裁判をすれば5千万円ぐらいになるところを1400万で済ませてしまったのは必ずしも誠意があるとは限らないと話す。
 綾乃の下へ三木の元妻である珠美から手紙が届く。患者を医療ミスではなく手術の合併症や病気で死んだのではなく三木に殺されたのですと書かれていた。
 テレビ局では「医療界の隠ぺい体質を暴く」と称して医師による実験を行った。レントゲンフィルムから病名を見抜くものだった。10人の医師のうち7人がレントゲンの貸し出しを拒んだ。医師の怒号、言い逃れ、逆切れ、横柄な態度が見られた。うち一人の医師は自殺した。
 綾乃は、三木と会い話を聞くうちに誠意とは違うものを感じていた。三木の実験室に出入りしていた男の子が映像記憶能力を持っていて、一度見たら忘れないというものだった。その男の子慶は、三木の部屋でみた薬のことを話してくれた。
 あの薬、安楽死の薬だった。
1342  断絶
Date: 2009-1-21

おすすめ度 ★★★★★

 堂場 瞬一 著  中央公論新社  発行:2008年12月

 太平洋に面した汐灘の堤防の下で女性が猟銃で自殺していた。顔の半分、あごの辺りが粉砕して誰かわからないぐらいになっていた。警察は自殺と断定した。
 しかし、石神はこれは超一級の事件になると確信した。女性が猟銃では自殺は考えにくい。女性は妊娠していた。
 汐灘市では代議士といえば剱持と言われるほど、3代にわたって民自党の代議士になっていた。今回の一郎が一番苦戦した。
 上から猟銃自殺の事件はこれ以上調べないことを言い渡されるが、石神は「東京の神楽坂」と「女性の名は相澤沙希」という電話を受け、東京へ飛ぶ。
 一軒の飲み屋からボトルを入れた人が相澤沙希だとわかる。ボトルは石神が部下の辻に送った。
 ところが辻は自宅のアパートに隠していたがそれを盗まれる。
 相澤沙希は男性と時々飲みに来ていたという。そしてその相手は汐灘の関係者だった。
 石神は自分が養子であることを知っていた。子のない石神の両親が育ててくれた。父と剱持は旧知の仲であった。
 自分が相澤沙希を殺したという人物が現れる。しかし、石神はこれが犯人ではないと釈放する。その男は自宅で首吊り自殺する。
 捜査をしていくうちに石神は、自分の本当の父親が剱持であることを知るが、自分の父は石神だけだという。
 剱持の息子一郎が身辺をきれいにするために沙希を殺したと自首してくるが、舌を噛み自殺しようとする。幸い命は取り留めた。
 石神は剱持と対峙する。「家族を作るのは血ではなく環境だ」と石神は言う。70歳の剱持は自分が石神の父親だと名乗るが、石神は受け付けない。
 剱持の対抗馬が現れる。
 沙希の名前を教えた人物は剱持の秘書だった。一郎の失敗で剱持も失脚し、秘書の高畠にチャンスが回ってきた。
 同じ秘書でも命を代えて守ろうとする秘書と裏切りながら自らのチャンスが伺う者とがいることを知った。

1341  チーム
Date: 2009-1-19

おすすめ度 ★★★★

 堂場 瞬一 著  実業之日本社  発行:2008年10月

 箱根駅伝の予選が昭和記念公園で行われた。美浜大は11位、城南大は12位だった。上位10位までが出場できる。
 美浜大の監督吉池は浦大地に「俺と一緒に箱根に行こう」と言われる。
 学連選抜チームとして出場できる。寄せ集めのチームでも上位は狙える。
 監督は11位のチームの監督と決まっている。区間最高を出したものなども候補に登った。
 浦大地は10区を走ることになった。
 当日、学連選抜チームは、1区で4位、2区では7位に落ちる。3区ではなんと12位。5区で森脇が団子になった先頭を抜いて4位になった。そして9区ではトップに。しかし、トップを走っていた浦はあと百メートルのところで朦朧とする。赤旗を揚げれば・・と思うが、監督は「その赤旗を揚げると殺してやる」とすごむ。長い長い百メートルだった。なだれ込むようにゴールに入る。
 総合で往路は4位、復路は1位で、総合で2位だった。
1340  仮想儀礼 上・下
Date: 2009-1-16

おすすめ度 ★★★★★

 篠田 節子 著  新潮社  発行:2008年12月

 鈴木正彦は都庁に勤務する。ゲームソフトのファンタジーのベルが入賞し、次に5千枚のオリジナルのゲームのストリーを依頼された。5ヶ月で書くとなると1日40枚のノルマをつくり取り掛かったころ、総務局の課長試験に合格する。
 書くことに情熱を持った正彦は都庁を退職する。同時に失望した妻とも離婚する。ストーリーが完成するが依頼を受けた出版社にその担当者はいなかった。だまされた事に気がついた。
 残されたのは新宿に近いところにあるマンションだけだった。
 ところが、偶然だました矢口に中央公園で出会う。矢口も寝袋で戸外で寝る生活だった。
 二人はマンションの1階が売りに出されていることを知り、3階のマンションと交換で宗教教祖をはじめることを思いつく。それは正彦がノベライズしたゲームの世界でもあった。
 正彦は桐生慧海と名乗ることになった。会は聖泉真法会となづけた。「信仰は心の問題です。ここでは信仰を強要しない。自分自身との対話、仏は自分自身の中にいる。それに祈りをささげなさい」という手法を通した。
 ワインボトルを土台に起用に仏像を作った矢口はそれを祭壇に飾り宗教色の薄い、寄付や出家を強要しない宗教団体をめざした。
 近所に住む主婦山本広江がやってきては掃除や世話を焼いてくれた。山口県の大物代議士の娘雅子は、父からの性的虐待を話し父から逃れるために兄にすがるが、兄からも性的な虐待を受けたという。
 サヤカは男に捨てられワンピース一枚でやってきた。男からホテルの一室が与えられそこで暮らしていたが、もう与えられる金がないと手切れ金200万円を渡された。サヤカはそのお金を教団に寄付する。
 サヤカは山本広江のアパートに住むことになった。昼間は学校に行かなくなった少年や若い少女もやってきた。大きな宗教団体から集団で脱退人も。
 山本広江が連れてきたモリミツという総菜屋の社長森田は仕事がうまくいかなくて霊能者に占ってもらった。しかし、うまくいかないと話した。正彦は社長としての労をねぎらい世の中の役に立つ生き方をしなさいと諭す。
 それからモリミツはよい方向に向かい、商売敵の会社が食中毒を起こし倒産した。その際に工場長のせいとされた男を雇い入れた。
 モリミツは大きくなりインドネシアにも進出することになった。
 モリミツの戸田の敷地に祭壇を設け社員も礼拝するようになった。同じことがインドネシアでも行われていた。
 しかし、インドネシアはこのことが社員の不満となって放火される。やむなくインドネシア工場は閉鎖する。
 モリミツは娘婿が社長となり、社長は療養中になる。教団は一時的に膨れていったものの徐々に衰退に向かっていった。週刊誌に取り上げられるようになり、講演会の中止もでてきた。
 雅子の兄が連れ戻しに来た。殺すはずの妹とは裏腹に兄は死に教団の者たちは終わりを告げる。
 戸田ではモリミツの社長ら元信者が高齢者の給食サービスを始め教祖の出所を待っていた。
1339  金融腐食列島【完結編】消失 第4巻
Date: 2009-1-6

おすすめ度 ★★★★

 高杉 良 著  ダイヤモンド社  発行:2008年9月

 竹中は、鈴木最高顧問が資本増強を考えていることを知り、その役目を竹中にとの返事があった。竹中は最高顧問から直接セントラル自動車の創始者に依頼するほうが望ましいと言う。ところがアポをとろうとするとセントラルはその機会を作ろうとしない。
 竹中は直接北田会長に会うと「竹中なら会うが、今のセントラルでは鈴木最高顧問にも現頭取にも会おうとする人間は一人もいない」と言われた。増資の協力は得られなかった。
 それを聞いた山崎頭取は竹中に鈴木最高顧問に辞めてもらうよう伝えろという。竹中は、鈴木に伝える。74歳の鈴木最高顧問は、まだJFGに必要だと思いながら山崎の意向を伝える。山崎頭取も5月末で退任が予定されている。同時期に最高顧問にもどうかというが鈴木は顔色一つ変えなかった。
 そこへ古井常務のセクハラが発覚する。簡単に処理できると思った古井であったが週刊誌に出る前に退任になった。
 再び山崎が最後の議長を勤めた銀行の常務会で鈴木最高顧問の退任を求める話が出た。竹中がその報告を鈴木にしたところ、鈴木は激昂し竹中に「やくざでもおまえにはかなわないだろう」と言われる。
 結局5月末で鈴木最高顧問も退任した。小林新頭取になり、竹中は副頭取になった。
 しかし、金融庁からJFGは銀行法違反で刑事告訴を検討中のニュースが入る。
 刑事告発のカートを切らせないためにも竹中は杉本はいJFGホールディングスの社長であるが、自分がJFGのトップだと言い放つその杉本ともにJFGを退任を提言し退任した。
 そしてファイアンセの真紀の待つロンドンへ飛ぶ。
 10月金融庁はJFGを業務改善命令をだし、9ヶ月におよぶ検査の末告発することを決めた。
 竹中はいずれJFGが戻入益として帰ってくるはずだ。金融庁にしっかり恥をかいてもらう必要があるとにらむ。予測したとおり2006年には60パーセント以上が戻入益だった。
1338 みのたけの春
Date: 2009-1-2

おすすめ度 ★★★★

 志水 辰夫 著  集英社  発行:2008年11月

 民三郎21歳、清吉20歳、庄八が19歳で剣術の稽古で一緒だった。
 庄八が労咳という病気で精力をつけるものをと民三郎は自然薯を掘って清吉と庄八の家に向かう途中、代官所の役人格之進ら3人に出くわし、触れ付す清吉と民三郎に対し、わざと民三郎の持っていた自然薯を踏みつけて行った。
 民三郎は見舞いにはもういけぬと言いかえってしまう。
 ところが、民三郎はその後、再び役人の格之進と出会い、下郎呼ばわりを受けた民三郎は格之進を切り付けてしまった。成敗するつもりが大傷を負った格之進。
 民三郎は逃げた。清吉は民三郎を案ずる。民三郎のいない間に民三郎の祖母が死んだ。残された妹や弟たちが村人と葬式を済ませる。
 清吉は道場の橘川に相談した。民三郎を逃がしてやりたいと思った。橘川は代官所の手の届かない京都の寺を紹介した。民三郎にそこで世話になれと、幼い妹や弟は15歳まで誰かに見てもらったほうがいいという。
 清吉は民三郎をみつけそのことを告げる。
その後、京に渡った民三郎を清吉が訪ねるがやせて不精がわかる風体だった。清吉は心配した。
 次に民三郎に出会ったのは追ってにおわれ山の窟だった。清吉は民三郎を見て変わったと言った。民三郎は腐っている何もかも腐っているという。
 民三郎と清吉は向かい合う。清吉は冷たくなっていく民三郎を看取った。