過去ログ  (その2)188冊

平成13年3月25日〜平成13年12月28日
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掲載した日 著 者  書       名 おすすめ度
338 2001-12-28 黒川 博行 国境 ★★★★
337 2001-12-24 ビートたけし おまえの不幸には訳がある! ★★★
336 2001-12-22 村山 由佳 すべての雲は銀の・・・・ ★★★★★
335 2001-12-21 柴田 よしき 残響 ★★★★
334 2001-12-20 森村 誠一 死神の町 ★★★
333 2001-12-18 木谷 恭介 世界一周クルーズ殺人事件 ★★★★★
332 2001-12-17 堀 和久 アユタヤから来た姫 ★★★★
331 2001-12-16 五條 瑛 夢の中の魚 ★★★★
330 2001-12-14 太田 治子 青い絵葉書 ★★★
329 2001-12-12 童門 冬ニ 吉田松陰 上・下 ★★★
328 2001-12-10 綿矢 りさ インストール ★★★★
327 2001-12-09 辻 真先 殺人病棟は眠らない ★★★
326 2001-12-07 深谷 忠記 逆転! 1億円詐取 ★★★★
325 2001-12-06 高村 薫 李歐 ★★★
324 2001-12-03 戸梶 圭太 未確認家族 ★★★★★
323 2001-12-01 水森 鴻 孔雀狂想曲 ★★★★
322 2001-11-29 谷 恒生 新宿暴虐街 ★★
321 2001-11-27 佐藤 雅美 劇盗2代目日本左衛門 ★★★
320 2001-11-26 押川 國秋 勝山心中 ★★★★★
319 2001-11-23 山本 甲士 どろ ★★★★★
318 2001-11-21 高樹 のぶ子 満水子 上・下 ★★★★
317 2001-11-19 岳 真也 道ゆき獣みち ★★★
316 2001-11-15 安東 能明 漂流トラック ★★★★
315 2001-11-12 久世 光彦 家の匂い 町の音 ★★★
314 2001-11-08 響堂 新 ゴールド ★★★★
313 2001-11-06 久和 ひとみ 絶筆 ★★★
312 2001-11-03 朝日新聞社編 あのね 子どものつぶやき ★★★★★
311 2001-11-01 澤田 ふじ子 火宅の坂 ★★★
310 2001-10-30 瀬戸内 寂聴 場所 ★★★
309 2001-10-29 曽野 綾子 狂王ヘロデ ★★★
308 2001-10-27 群 ようこ 濃い人々 ★★★★
307 2001-10-26 さだ まさし 精霊流し ★★★
306 2001-10-24 東 美恵子 老いは笑いとばせ ★★★
305 2001-10-22 白川 進 天国への階段 上・下 ★★★★★
304 2001-10-19 平出 隆 猫の客 ★★★
303 2001-10-17 池井戸 潤 銀行狐 ★★★
302 2001-10-15 新野 剛志 クラムジー・カンパニー ★★★
301 2001-10-13 室井 滋 ふぐママ ★★
300 2001-10-11 諸田 玲子 笠雲 ★★★
299 2001-10-10 シドニィ・シェルダン 空が落ちる 上・下 ★★★
298 2001-10-07 佐藤 愛子 犬たちへの詫び状 ★★★
297 2001-10-05 松井 計 ホームレス作家 ★★★★
296 2001-10-04 マイケル・ドリス 森の少年 ★★★★★
295 2001-10-02 南原 幹雄 見廻組暗殺禄 ★★★★
294 2001-10-01 乙川 優三郎 かずら野 ★★★★
293 2001-09-28 桐生 典子 千のプライド ★★★★
292 2001-09-25 島田 荘司 ハリウッド・サーティフィケイト ★★★★
291 2001-09-22 梓澤 要 遊部 上・下 ★★★★★
290 2001-09-20 内館 牧子 女は愛で男は哀で ★★★★
289 2001-09-18 篠田 節子 インコは戻ってきたか ★★★★
288 2001-09-17 有栖川 有栖 暗い宿 ★★★★
287 2001-09-15 西木 正明 其の逝く処を知らず 阿片王 里見甫の生涯 ★★
286 2001-09-14 麻生 幾 ZERO 上・下 ★★★★
285 2001-09-12 童門 冬二 真説・赤穂事件 ★★★★
284 2001-09-10 佐々木 譲 屈折率 ★★★★
283 2001-09-09 豊原 ミツ子 わたしの別居人生 ★★
282 2001-09-07 ダニエル・スティール サウンドレス・ラブ ★★★★
281 2001-09-06 又吉 栄喜 陸蟹たちの行進 ★★★
280 2001-09-05 伊島 りすと ジュリエット ★★★★
279 2001-09-04 岩井 志麻子 邪悪な花鳥風月 ★★★
278 2001-09-03 浅田 次郎 王妃の館 上・下 ★★★
277 2001-09-01 夏樹 静子 量刑 ★★★★★
276 2001-08-31 樋口 京輔 緑雨の回廊 ★★★★★
275 2001-08-29 東野 圭吾 超・殺人事件 推理作家の苦悩 ★★★
274 2001-08-28 梓 林太郎 南紀潮の岬殺人事件 ★★★★
273 2001-08-27 下田 治美 愛を乞うひと ★★★★★
272 2001-08-25 阿川 佐和子 阿川佐和子のガハハハのハ ★★★
271 2001-08-24 童門 冬ニ 新水戸黄門異聞 ★★★
270 2001-08-22 高野 和明 13階段 じゅうさんかいだん ★★★★★
269 2001-08-21 森村 誠一 夢魔 ナイトメア ★★★★★
268 2001-08-20 北方 謙三 海嶺 ★★★★
267 2001-08-19 林 重信 風景写真を楽しもう ★★★★★
266 2001-08-18 林 真理子 ドラマティックなひと波乱 ★★
265 2001-08-17 二谷 友里恵 ★★
264 2001-08-16 童門 冬ニ 前田利家とまつの生涯 ★★★★
263 2001-08-14 筒井 康隆 天狗の落し文 ★★★★
262 2001-08-12 澤田 ふじ子 地獄の始末 真贋控帳 ★★★
261 2001-08-11 山田 詠美 姫君 ★★★
260 2001-08-09 本岡 類 「不要」の刻印 ★★★★
259 2001-08-07 北方 謙三 擬態 ★★★★★
258 2001-08-06 柳 美里 ルージュ ★★★★
257 2001-08-05 宮本 輝 森のなかの海 上・下 ★★★★
256 2001-08-03 村上 龍 THE MASK CLUB ★★★★★
255 2001-08-01 宮部 みゆき チチンプイプイ ★★★★
254 2001-07-30 ダニエル・スティール 最後の特派員 上・下 ★★★★★
253 2001-07-28 加治 将一 チャイナブルー ★★★
252 2001-07-25 阿久 悠 もどりの春 ★★★★
251 2001-07-23 森 博嗣 墜ちていく僕たち
250 2001-07-22 スペンサー・ジョンソン チーズはどこへ消えた? ★★★★
249 2001-07-21 北川 悦史子 Love story ★★★★
248 2001-07-20 真保 裕一 黄金の島 ★★★★★
247 2001-07-18 ベルンハルト・シュリング 朗読者 ★★★★★
246 2001-07-16 篠田 真由美 センティメンタルブルー ★★★
245 2001-07-15 宮部 みゆき 模倣犯 上・下 ★★★★★
244 2001-07-11 乃南 アサ ★★★★
243 2001-07-10 金 大中 和解と共存への道 ★★★★
242 2001-07-08 蘇部 健一 動かぬ証拠 ★★★★
241 2001-07-07 我孫子 武丸 三人のゴーストハンター ★★★
240 2001-07-06 藤田 宜永 ★★★★
239 2001-07-04 北野 大 いまだに、たけしの兄です ★★★★
238 2001-07-03 平岩 弓枝 伴侶の死 ★★★
237 2001-07-02 藤堂 志津子 アカシア香る ★★★
236 2001-07-01 大平 光代 あなたはひとりじゃない 悩める 母たちへ 子供たちへ ★★★★
235 2001-06-30 宮尾 登美子 ★★★★★
234 2001-06-29 生島 治郎 女首領 ★★★★
233 2001-06-27 新堂 冬樹 カリスマ 上・下 ★★★★★
232 2001-06-25 オグ・マンディーノ 十二番目の天使 ★★★★★
231 2001-06-24 垣根 涼介 午後三時のルースター ★★★★★
230 2001-06-23 小林 泰三 AΩ アルファオメガ ★★★★
229 2001-06-20 田口 ランディ モザイク ★★★★
228 2001-06-19 佐藤 洋二郎 猫の喪中 ★★★
227 2001-06-18 鬼島 紘一 告発 ★★★★★
226 2001-06-16 アジアプレス・インーナショナル編 メディアが変えるアジア ★★★
225 2001-06-15 近藤 雅樹 図説 大正昭和くらしの博物誌 ★★★★
224 2001-06-14 半村 良 すべて辛抱 上・下 ★★★★★
223 2001-06-12 江波戸 哲夫 会社葬送 山一證券 最後の株主総会 ★★★★
222 2001-06-11 ディーン・クーンツ 何ものも恐れるな 上・中・下 ★★★★
221 2001-06-09 阿川 佐和子
壇 ふみ
ああ言えばこう嫁行く ★★★★★
220 2001-06-07 なかにし 礼 赤い月 上・下 ★★★★★
219 2001-06-06 北村 薫 リセット ★★
218 2001-06-05 佐藤 正午 ジャンプ ★★★★
217 2001-06-04 渡辺 乾介 首相官邸 ★★★
216 2001-06-02 永井 するみ 天使などいない ★★★
215 2001-06-01 車谷 長吉 白痴群 ★★★
214 2001-05-31 内館 牧子 週末婚 ★★★★
213 2001-05-30 山田 邦子 マリッジ・ブルー ★★★★
212 2001-05-29 江波戸 哲夫 イントラネットクーデター 小説・退陣動議 ★★★★
211 2001-05-28 黒木 昭雄 栃木リンチ殺人事件 ★★★★★
210 2001-05-27 西村 京太郎 J R周遊殺人事件 ★★★★
209 2001-05-25 斎藤 栄 軽井沢―鎌倉殺人回路 ★★★
208 2001-05-24 清水 義範 世にも珍妙な物語集 ★★★★
207 2001-05-23 林 真理子 男と女とのことは、何があっても不思議はない ★★
206 2001-05-22 堀江 敏幸 熊の敷石 ★★★★
205 2001-05-21 沢村 鐵 雨の鎮魂歌 ★★★★
204 2001-05-20 篠原 一 アウト トゥ ランチ ★★★
203 2001-05-18 西村 京太郎 空白の時刻表 ★★★★★
202 2001-05-16 小林 久三 父と子の荒野 ★★★★★
201 2001-05-15 志水 辰夫 きのうの空 ★★★★
200 2001-05-14 宮尾 登美子 仁淀川 ★★★★
199 2001-05-13 鳩ヶ谷郷土史会 郷土はとがや・いま昔 創立20周年記念写真集 ★★★★★
198 2001-05-12 須藤 光男 わが子、正和よ ★★★★
197 2001-05-11 瀬戸内 寂聴
櫻井 よしこ
ニッポンが好きだから 女2人のうっぷん・はっぷん ★★★
196 2001-05-10 柳 美里 言葉は静かに踊る ★★★
195 2001-05-08 伊集院 静 ごろごろ ★★★★
194 2001-05-07 新野 剛志 八月のマルクス ★★★★
193 2001-05-06 浅田 次郎 歩兵の本領 ★★★★
192 2001-05-05 藤本 ひとみ 貴腐 ★★★★
191 2001-05-04 桐野 夏生 柔らかな頬 ★★★★★
190 2001-05-03 浅田 次郎 姫椿 ★★★★★
189 2001-05-02 帚木 蓬生 受精 ★★★★★
188 2001-05-01 吉村 昭 敵討 ★★★★
187 2001-04-30 車谷 長吉 赤目四十八瀧心中未遂 ★★★
186 2001-04-29 椎名 誠 春画 ★★★
185 2001-04-28 田中 光ニ 冷血 ★★★★★
184 2001-04-27 小池 真理子 天の刻 ★★★
183 2001-04-26 末弘 喜久 ★★★
182 2001-04-25 伊野上 裕伸 対決 バッタ屋啓輔 ★★★★★
181 2001-04-24 伴野 朗 ダヴィデの密使 ★★★★★
180 2001-04-23 江國 香織 ウエハースの椅子 ★★★★
179 2001-04-22 高杉 良 銀行大統合 ★★★★
178 2001-04-21 佐藤 雅美 老博奕打ち ★★★★
177 2001-04-20 恩田 陸 MAZE めいず ★★★★★
176 2001-04-19 日本経済研究センター どうなる日本のIT革命 ★★★
175 2001-04-18 梅宮 アンナ 「みにくいあひるの子」だった私 ★★★
174 2001-04-17 石崎 幸二 あなたがいない島 ★★★★
173 2001-04-16 澤田 ふじ子 大蛇の橋 ★★★★★
172 2001-04-15 小檜山 博 自分に出会う日 ★★★★
171 2001-04-14 吉川 隆三 あぁ、ター君は生きていた ★★★★
170 2001-04-13 重松 清 隣人 ★★★
169 2001-04-12 小檜山 博 風少年 ★★★★★
168 2001-04-11 町田 静夫 自分を消したいこの国の子どもたち ★★★★
167 2001-04-10 俵 万智 ある日、カルカッタ ★★★★
166 2001-04-09 筒井 康隆 恐怖 ★★★★★
165 2001-04-08 平岩 弓枝 はやぶさ新八御用旅 東海道五十三次 ★★★
164 2001-04-07 中坊 公平 中坊公平・私の事件簿 ★★★★
163 2001-04-06 小檜山 博 スコール ★★★★★
162 2001-04-05 高樹 のぶ子 燃える塔 ★★★★★
161 2001-04-04 そのまんま東 ゆっくり歩け、空を見ろ ★★★★
160 2001-04-03 大沢 在昌 灰夜 新宿鮫Z ★★★★★
159 2001-04-02 桐野 夏生 玉蘭 ★★★
158 2001-04-01 柳 美里 ★★★
157 2001-03-31 南原 幹男 長州を破った男 ★★★★
156 2001-03-30 丹後 達臣 危険な関係 ★★★★
155 2001-03-29 佐木 隆三 宮崎勤裁判 上・中・下 ★★★
154 2001-03-28 ダニエル・スティール アクシデント 上・下 ★★★★★
153 2001-03-27 久間 十義 ダブルフエイス ★★★★
152 2001-03-26 柳 美里 ★★★
151 2001-03-25 マリア・フォン・トラップ サウンド・オブ・ミュージック アメリカ編 ★★★★★




読んだ本の紹介です。紹介欄は感想や紹介したい部分を書いたものです。


[338] 国境
  Date: 2001-12-28(Fri)
おすすめ度 ★★★★

 黒川 博行 著  講談社  発行:2001年10月

 極道の桑原と柳井は高麗民航KOR65便で北朝鮮の平壌へ行く。
奈良県日朝友好議員連盟主催のチャーター機で、表向きは観光であるが、趙という男を探しにきた。
が、日本の感覚では街も歩けない。一人行動が許されない。
車の少ない道路、一人歩きをはじめると社会安全部と称する者から警察に引っ張られる。いつも監視がついている。
趙という男を見つけられないまま帰国する。が、北朝鮮から中古重機14台、1200万円分の発注を受け荷を新潟港から搬出した後、騙し取られたことに気がつく。
後に趙の影が・・・。再び北朝鮮に乗り込むべく、中国側から決死の潜入を果たす。
北朝鮮の飢餓事情や観光の様子などが「事実」と思わせるほど想像を画きたてる。小説の中の世界だと言うことを忘れさせる。

[337] おまえの不幸には訳がある!
  Date: 2001-12-24(Mon)
おすすめ度 ★★★

 ビートたけし 著  新潮社  発行:2001年9月

 自分が小学生の頃は、日本も北野家も貧しかったが、不幸だと感じたことはなかった。
上を見ればきりがないが、「まだ、貧しい奴がいる。自分の所はまだいいよ。」と過ごしたものだ。
経済がどんどんよくなって不幸な奴を増やしたと嘆く。
 戦後の日本には独自の外交と言うものがない。もっとほえろと田中真紀子外相を応援する。
 選挙でも満足する公約を掲げる議員がいないという不幸。
 814億円も懸けてサミットが開かれる不幸。基地があるから平和なのだと言われかねない。
 父親の復権も地に落ち、今や父親の居場所もない。
そして、少年の犯罪。子どもに個室があることの不幸がある。
バカな母親の子に生まれる不幸。幼児虐待、長時間駐車での放置死。などなど・・・

[336] すべての雲は銀の・・・
  Date: 2001-12-22(Sat)
おすすめ度 ★★★★★

 村山 由佳 著  講談社  発行:2001年11月

 2年間付き合った由美子と別れた祐介は、タカハシに誘われるまま信州・菅平高原の民宿の手伝いに上田に行く。
 待ち合せの店でいきなり「とーちゃん!」と3歳ぐらいの男の子健太に抱きつかれる。
実はこの子の死んだ父親は祐介に似ていた。そして、これからアルバイトをする園主の親戚の娘瞳子の子どもだった。
 民宿と無農薬農業の手伝いをはじめる。園主のこだわりの農業はうまい野菜を作ることだった。それも楽しんで・・・。
畑はまるで庭のように周りに花が植えられていた。
ナスを生でかじっても甘くて美味しい。
そんな折、兄が訪ねてくる。由美子は兄と結婚することになった。
祐介の事を気にしていると言う。「俺この子の父親になる」と「とーちゃん」となついてくる健太を抱きながら言う。
瞳子も「この人にとーちゃんになってもらおう」と初対面から口にしていた。
◆ほのぼのとした物語。田舎暮らしを憧れそうな描写があちこちに。主人公の祐介と瞳子のやりとりも面白い。

[335] 残響
  Date: 2001-12-21(Fri)
おすすめ度 ★★★★

 柴田 よしき 著  新潮社  発行:2001年11月

 クラブ歌手の杏子は不思議な声を聞くことが出きる。夫の暴力に耐えてひとりでいると人の会話が聞こえてくる。周りには誰もいないのに・・・ やがて、それは過去からの声とわかる。
 刑事がその声を捜査のために協力して欲しいと頼まれる。
5階で身ごもった女が殺された事件。女の腹には5ヶ月の退治がいた。15年前の殺人犯の指紋も検出された。あと3ヶ月で時効になることにあせる警察。
杏子は現場でその声の持ち主そっくりに再現する。犯人はつかまる。
 神戸の大震災で娘をなくした父親は、娘の首に傷があったことから誰かに殺されて地震が起き、殺人がうやむやにされたと思い込んでいた。杏子を拉致し、急ごしらえの娘の部屋につれ込む。
しかし、娘の最後の会話は友人との楽しい会話であった。
 風呂場で殺された女。会話から友人の女友達がかかわっていたことに。
次々に事件は一挙に解決する。

[334] 死神の町
  Date: 2001-12-20(Thu)
おすすめ度 ★★★

 森村 誠一 著  新潮社  発行:2001年10月

 深川越中島界隈で婦女子をからかい奇抜な格好で市民に絡み、因縁をつけては金を喝取している「触らぬ神」と恐れられている連中がいる。
 松葉刑部に「大家が金を出しても用心棒を雇いたい」という話が来る。
現場を見に行って驚く。今の暴走族のようなグループである。
2両では割に合わないが、あまりの無法地帯に70人のこの無法者の死神たちを一掃することに・・・
やがて、死神たちは一網打尽に両国橋にさらし者にされるが、リーダー格の死神の吉蔵がいない。裏に大きな企みをもつ影があった。
ほか6篇。

[333] 世界一周クルーズ殺人事件
  Date: 2001-12-18 (Tue)
おすすめ度 ★★★★★

 木谷 恭介 著  角川春樹事務所  発行:2001年10月

 阿弥陀如来像が盗まれた。燻蒸効果を高めるためにバラバラに解体されていた。完全な形でも50億はする文化財に匹敵する。
海外に流出すると睨んだ警視庁広域捜査室が乗り出す。
 仏像の売買を扱えるのは日本では美術商の三輪田しかいないと文化財保護部長の湖東が言う。
その三輪田は100日間の世界一周の豪華客船「やまと丸」に乗ると言う。この働き盛りに100日の休暇は不可解である。
 一方、文化財保護部長の湖東は次の参議院選に出馬の意向である。毎日、仏像盗難事件でテレビで顔を売っていた。
 捜査の為に乗り込んだ捜査員。三輪田から目が離せない。が三輪田は途中で殺される。
ゴージャスで騒がれた白鳥姉妹も乗り込んでいた。パトロンでも見つけるつもりなのだろうか。

[332] アユタヤから来た姫
  Date: 2001-12-17(Mon)
おすすめ度 ★★★★

 堀 和久 著  毎日新聞社  発行:2001年11月

 慶長15年(1610年)、鈴木八郎右衛門は妻サクラをアユタヤからウバと妹のウメと共に連れて3年ぶりに戻ってきた。
 片言の日本語が話せることから、長崎育ちということにして故郷の鹿野で暮らす。八郎右衛門は代々大名の名主であったが、山陰の青谷の港から朱印船で今はマカオ、ベトナムへ渡っていた。
戻ってきてからは、農業もはじめる。湖山池の沼地にベトナム米(シャム米)を蒔いて成功させる。
 ある日、京に出た八郎右衛門たち。ところが故郷に戻る際に、妹のウメが行方不明になる。いったん戻ってあらためて京に探しに行く。数年後、ウメの子と思われる赤ちゃんと偶然出くわす。

[331] 夢の中の魚
  Date: 2001-12-16 (Sun)
おすすめ度 ★★★★

 五條 瑛 著  集英社  発行:2000年12月

 在日韓国大使館と本国を繋ぐベテラン伝書鳩(クーリエ)の呉は、映画「GAILA -東京壊滅-」のある部分の映像を入手することを命ぜられる。
 夜、撮影所に忍び込んだところ先客がいた。後を追うと怪獣マニアの大学生だった。ほしい映像部分も持っていた。容易く手に入れられたある部分とは、日本防衛隊の作戦指揮所のシーンである。実際の自衛隊がその場所を提供していた。
映画は封切られた。作戦指揮所の部分はカットされていた。
 そのほか、韓国の目から見た日本の気がつかない部分が書かれている。戦後補償のこと、漂流物マニアのこと、骨髄移植のこと、日韓漁業協定のことなど。日本人の無関心さを指摘する。 

[330] 青い絵葉書
  Date: 2001-12-14(Fri)
おすすめ度 ★★★

 太田 治子 著  新潮社  発行:2001年11月

 夫と気まずい関係にあったかおりは、大学時代に憧れていた山川達夫がアムステルダムいて、彼女と別れたばかりだと聞かされた。
かおりは、15年間ずっと心の夫と思っていた達夫に会いに行く。
達夫と会ったかおり。達夫の口から「別れた彼女が妊娠していることがわかり、父親としてそばにいてやる。」ときく。
かおりはひとりで「あたらしく生きよう」と思う。
 部下の織部が妻のまゆみに気があると気づく。10年後、織部から鎌倉に紫陽花を見にこないかと誘いを受ける。
まゆみはいそいそと出かける。が、男の子を連れた織部は、妻も紹介される。
 短篇集である。

[329] 吉田松陰 上・下
  Date: 2001-12-12 (Wed)
おすすめ度 ★★★

 童門 冬二 著  学陽書房  発行:2001年10月

 世界を知り、日本を認識する。長州藩→松本村→松下村塾というように、つねにグローバルにものを考える人であった。
私よりも公を常とした。30年の彼の生涯の逸話である。
 幕末時代は、京都から江戸まで人間の足で半月かかる時代である。それを九州から東北まで歩き回っている。
25歳のとき、ペリーの船でアメリカへ行きたいとの強い願望が、災いして投獄される。
牢獄の中では、俳句会をつくったり、孟子の講義をしたりして囚人と共に学ぶ平等主義を貫いた。
釈放されてからは、松下村塾をつくり指導するが、それはわずか1年3ヶ月ほどであったが7、80人の門下生がいた。
再び江戸で国事犯として捕らえられわずか30歳で打ち首にされる。
◆30歳と言えばキムタクの若さ。それで生涯を終えてしまった。
 

[328] インストール
  Date: 2001-12-10(Mon)
おすすめ度 ★★★★

 綿矢 りさ 著  河出書房新社  発行:2001年11月

 「ハードスケジュールが自分の有能さの証だと満足していると疲れないが、その逆なら疲れてるんだから・・・」といわれて、予備校を掛け持ちして勉強をしていた私は、早速登校拒否児となった。
部屋のものをすべてマンションのゴミ捨てに捨てた。祖父が買ってくれたパソコンも。
そのパソコンをみた小学生の男の子が欲しがったので「壊れているけど・・」とあげる。
 ひょっとしたことから再会した男の子と私。
パソコンは直って小学生が押入れの中で使っていた。男の子からパソコンを教わり、昼間借りた合いかぎで忍び込み風俗チャットをする。これは、男の子が教えてくれたお金を稼ぐ方法である。
やがて、親に登校拒否がばれる。チャットも月30万円をもらったところでやめた。
◆この小説は現役の高校生17歳が書いた。第38回文芸賞受賞作

[327] 殺人病棟は眠らない
  Date: 2001-12-09 (Sun)
おすすめ度 ★★★

 辻 真先 著  実業之日本社  発行:2001年10月

 声優の真宮馨は足を骨折して入院した。暇つぶしに小説を書くことを思いつく。
ホームページに連載すると計画を立てるがなかなか書けない。
 女優のダリアが病室で自殺した。遺書も見つかった。が、いつしかダリアは殺されたとうわさが広まる。
 院長からダリアの死んだ特別室の病室にタダでいいから移らないかと持ちかけられる。
 特別室に移った真宮。その後、看護婦がゴミ焼却場の前で殺された。
つぎつぎに起こるこの鴨下病院の事件に真宮は・・・・

[326] 逆転! 1億円詐取
  Date: 2001-12-07(Fri)
おすすめ度 ★★★★

 深谷 忠記 著  徳間書店  発行:2001年6月

 佐山はパチンコで生計を立てていた。銀行を退職し小説家をめざし、懸賞小説に応募したりした。妻は4年前に息子を連れて出ていった。
 亜沙美は支店長からセクハラを受け、若くないことからそれとなく退職を迫られていた。銀行に仕返しの機会をねらっていた。
 ある日、友人の森から土地を売って1億円をもっているという大塚老人のことを聞く。森とその1億円の搾取を計画していたが、突然森が死亡したと電話がある。森の妹から森の部屋の後始末をたのまれた佐山は、江島と言う男が森から借金をしていることを知る。
 森の代わりに江島と佐山と亜沙美が1億円の搾取計画を練る。

[325] 李歐
  Date: 2001-12-06(Thu)
おすすめ度 ★★★

 高村 薫 著  講談社  発行:1999年2月

 大学4年の一彰は、アルバイト先の店で李歐に出会う。同じぐらいの年だった。
一彰の過去は小学入学前に母が出ていったきり帰らなかった。近くの守山工場で、工場主が警察が来る前に教会の側に隠した包みを持ち帰る。拳銃の部品だった。
李歐も中国から逃れてきた。二人は息投合する。銃100丁の密輸をたくらむ。約2億円の取引に手を染める。
15年ぶりに守山工場に行く。工場主の守山は一彰に工場を継いでくれという。そして守山は死ぬ。
一彰は工場を引き受ける。
◆「わが手に拳銃を」を下書きに書き下ろしてあった。が、最初に読んだ時のほうが面白かった。内容も少し違っている。
文庫本になって平積みしてあり新刊かと買ってしまったが古い。
 

[324] 未確認家族
  Date: 2001-12-03(Mon)
おすすめ度 ★★★★★

 戸梶 圭太 著  新潮社  発行:2001年10月

 高校3年の時、敦子と美穂は和也と直之が争っているのを見ていた。誤って直之が死にその処置に3人は死体を捨てることを思いつく。途中で事故に逢いあっけなく警察へ・・・。
敦子と美穂は保身のために偽証し和也一人に罪を着せる。
 和也は出所した後、美穂が幸せに暮らしているのが許せなかった。
 敦子はもう8日も旦那が出ていったきりである。泣き叫ぶ2人を子を置いて家を出ると昔チンピラだった男と偶然会う。
二人は再会を喜んで5日間泊まり歩く。アパートに戻ると長男は新幹線のおもちゃを握り締めたまま死んでいた。次男も高熱でぐったりしているが、敦子は無言で次男の首を足の裏で踏みつけ殺してしまう。そして、さっぱりとした気持ちでまた男に会いに行く。
 美穂は送られてきた写真にぎょっとする。子どもがおもちゃを持って死んでいる。もう一人の子も死んでいる。子どもは敦子に似ている。
 敦子は岸壁の上でタイタニックの格好で空を飛んでいる気分でいた。男が手を離し敦子は崖から落ちて死ぬ。
 美穂は恐怖におびえていた。

[323] 孔雀狂想曲
  Date: 2001-12-01(Sat)
おすすめ度 ★★★★

 水森 鴻 著   集英社  発行:2001年10月

 雅蘭堂という骨董屋の越名は、店に来た女学生がジッポーライターを祖父に贈りたいと言うが売らなかった。
後日、祖父がやってきて、ジッポーライターとベトナム戦争時のホーリー・グエン大佐との経緯を聞かせる。
そのライターは祖父のもので戦争時に自分が情報の仲介役として利用され、そのため大佐が行方不明になったと悩んでいた。
 もう一つは、古九谷焼を求めて金沢にやってきた越名は、通された家は由緒ある家のようだった。目を見張る蒔絵や船箪笥などである。が売り急ぐ相手に不信を感じトイレに行く。トイレットペーパーの紙も芯もなかった。家の裏に廻るとガス栓が閉じられたままだった。
この家は、もともと誰も住んでなくて舞台として使われていると察した。
出された古九谷焼の花瓶は水が張られていた。中をバイヤースコープでのぞくと、案の定付いてはならぬ指紋がついていた。贋作だった。ほか数篇。

[322] 新宿暴虐街
  Date: 2001-11-29(Thu)
おすすめ度 ★★

 谷 恒生 著   勁文社  発行:2001年2月

 歌舞伎町は外国人凶悪犯の温床である。台湾・香港・シンガポールなどの凶悪犯が偽造パスポートを使って入国してくる。
 この1週間で5、60人の美人風俗嬢が失踪した。いずれも看板娘である。風俗店はどんなに豪華に改造しても、売上は上がらない。いかにかわいい子を揃えるかが店の繁盛を左右する。
 歌舞伎町分室も捜査に乗り出す。
◆卑猥な性描写と簡単に人を殺してしまう悪人とドロドロした悪の世界。

[321] 劇盗二代目日本左衛門
  Date: 2001-11-27(Tue)
おすすめ度 ★★★

 佐藤 雅美 著  文芸春秋社  発行:2001年9月

 無宿者が悪事を働くとその護送費用を村方が負担していた。捕まえたら無条件に江戸送りとなる。次第に無宿者のやり放題になる。
八州廻りが摘発しても抜本的な改革をしなければ治安は乱れる。
二代目日本左衛門は手下を訓練し十人ほどが周囲を囲み、二十人ほどが忍び込み、家人や使用人を蔵に閉じ込め、有り金や金目のものをごっそりと盗んでは姿をくらましていた。
 対策を練るべく八州廻りの十兵衛らは対応策に追われる。

[320] 勝山心中
  Date: 2001-11-26(Mon)
おすすめ度 ★★★★★

 押川 國秋 著  講談社  発行:2001年10月

 八王子で育ったリンは、十歳まで自分は男だと思って野山を走りまわっていた。
とりわけ男が自分を見る視線の違いに、胸が出て女であることを知る。男のままでいたと乳房を切ろうとした後も残っていた。
14歳のとき、湯汝風呂「佐野泉屋」に売られる。リンの美貌に客がつくが寝ることを拒んで刃物沙汰になる。仕方なく風呂の番台に座らせる。リン見たさに風呂屋は繁盛する。
やがて、16になったとき酒席にでるようになり、同時に芸も磨こうと三味線や踊りも身につける。
そして勝山という名の花魁と呼ばれるようになる。が、決して男と肌を合わせることを避けていた。断りきれないときは棒のようになって過ごした。
水野十郎左衛門が花魁を気に入り度々通ってくる。が、勝山は吉原にやってきても肌も合わさず話を聞いてくれる幡髄院長兵衛に思いを寄せていた。
長兵衛には妻がいたが勝山に似て男勝りだった。年季が終わったら長兵衛のもとで暮らすという約束も出来ていた。
 水野十郎左衛門は長兵衛を目ざわりと見て切り殺す。そして、勝山は長兵衛の敵を討とうと・・・・

[319] どろ
  Date: 2001-11-23(Fri)
おすすめ度 ★★★★★

 山本 甲士 著  中央公論社  発行:2001年10月

 ささいな事から隣同士の戦争がはじまる。それも短期間につぎつぎと。
泉山市役所に勤める岩室は、隣のペット葬儀社に勤める手原の家の雑草が気になる。今朝も新聞がないのは手原が盗んだに違いないと腹を立てる。
一方、手原はペット葬儀社に勤めるようになってから、犬のくさりの音が気になる。夜中にちゃらちゃらとうるさい。
お互いが注意したことから戦争が勃発する。
岩室がやったことは、自転車のサドルにカッター傷をつけそこに赤インクを流し込んだこと。上寿司を7人前隣人の名で注文する。譲ってくださいコーナーに隣人の名で載せ、現金を振り込ませた。脱毛クリームを育毛クリームのサンプルに入れ隣人の郵便受けに入れた。
犬の糞を隣家へ投げ込んだ。そして金属バットでなぐった。
 一方、手原がしたことは、玄関にオイルをまいて隣人を転倒させた。花を除草剤で枯れさせた事。ファミリアの鍵穴に細工をして車が明けられなくしたこと。市役所に犬の死骸を送りつけたこと。岩室家に乗りこんでカーテンを燃やしたこと。
ふたりは、やがて留置されるが、弁護士が接見の際に隣人が手記を書くと告げるとこっちも負けられぬと双方が手記を出すことをほのめかす。
◆いやいや、笑ってしまった。すざましいけど、他人事だからおもしろい!

[318] 満水子 上・下
  Date: 2001-11-21(Wed)
おすすめ度 ★★★★

 高樹 のぶ子 著  講談社  発行:2001年10月

 満水子(まみこ)という画家を取材した竹内は、誘われるまま越後湯沢でその日のうちに関係を持ってしまう。
どこか得たいの知れないこの満水子に惹かれ、生立ちを調べ始める。
そして、満水子の姉が植物状態にあり、両親は15年ほど前に橋から落ちて死んでいた。義兄との関係も知る。
「時効」という言葉を発する満水子。両親の死は・・・
ダムの底に沈んだ満水子の故郷。
明かされる満水子の過去に深い真実が・・・
◆上巻は面白くない、途中でやめたくなるが下巻でいっきに面白くなる。飽きないで読んでみて!

[317] 道ゆき獣みち
  Date: 2001-11-19 (Mon)
おすすめ度 ★★★

 岳 真也 著   実業之日本社  発行:2001年10月

 あらららって感じのHな時代小説。短篇4篇。
辰之進は領内の村を巡回してまわる郡奉行の配下であった。
主である甲山の妻は20代で甲山の留守に辰之進と密通してしまう。二人は手を取って江戸へ逃げる。追っ手が迫っていた。
 炭焼きの松吉は3つ違いの妹みつと道ならぬ兄妹と睦みあう。母と3人で山の中で暮らしている。みつが妊娠している風でもあった。山中に薩摩兵が乗り込んで流れ弾に合ったみつは死ぬ。
松吉は罰が当たったと嘆く。火葬したみつの骨を口に入れてみた。
 道渓は医者である。奥御殿にも出入りを許され、側室のお鈴の方と密通してしまう。なかなか身ごもらなかったお鈴の方が男児を出産する。十月十日には日が足らず、頻繁に出入りしていた道渓は気が気ではない。やがて影におびえるように坊主になり僧侶の姿で江戸をでる。

[316] 漂流トラック
  Date: 2001-11-15(Thu)
おすすめ度 ★★★★

 安東 能明 著  新潮社  発行:2001年10月

 29歳で運送会社社長の千尋は、自らもトラックを運転する。
ここ何日か誤配やミスが目立つ。誰かが意図的にコンピュータを操作している。そんな折に運転手の照子が事故死する。積んだ荷は救急車やパトカーが到着する前に何物かが持ち去った。
日銀の地下金庫にある金塊5トンを指定したダンボールに積み指定した場所へ運ぶようメールが警視総監に届く。
要求を受け入れないときは交通網を妨げると・・・
犯人はほどなく現れるが、犯行の動機は何かをひきずって読んでしまう。なかなか面白い!

[315] 家の匂い 町の音
  Date: 2001-11-12(Mon)
おすすめ度 ★★★

 久世 光彦 著  主婦の友社  発行:2001年10月

 昭和10年生まれの筆者が子どもの頃、夕方になるとどの家からも夕食を作る音や匂いがあった。人々はちゃぶ台を囲む姿があった。
昭和18年まで住んだ杉並区阿佐ヶ谷の和洋折衷の借家は今も立っていた。田舎の高校を卒業した年10年ぶりに尋ねてみた。
以来50年間、時あるごとに訪れる。
とうとう1993年に取り壊された。周りが姿を変えても残っていたのは借家だったせいだろう。金木犀がただよってくるこの家が好きだったが晩年は幽霊みたいだった。

[314] ゴールド
  Date: 2001-11-08(Thu)
おすすめ度 ★★★★

 響堂 新 著  幻冬舎  発行:2001年7月

 バンコクで日本人ばかりたてつづけに3人が死亡した。
大使館医務官の安斉はその死因をつきとめようとバンコクポスト紙の女性記者ディキンソンと究明に乗り出す。
その後も4人目、5人目の死亡者が出る。どうやらイサーン農場でとれた米が原因である可能性が否定できない。
ディキンソンの姉は15年前、山岳地方で行方不明になっていた。
一緒に吉崎と弓長という日本人がいた。3人はブラックエンジェル(黒天使)という生物兵器を散布する任務を負っていた。
イサーン農場と大使館との関わりが・・・。前任者の・・・。

[313] 絶筆
  Date: 2001-11-06 (Tue)
おすすめ度 ★★★

 久和 ひとみ 著  小学館  発行:2001年10月

 3月1日午前 子宮体ガンの転移による急性肝不全で死去。
10月下旬に入院し摘出手術をする。一時帰宅が許された。肝臓にガンが転移し、脳以外の全身に。
日記をつけていたが、2月15日までである。その後は箸持つ力も尽きていた。痛みを訴えていた。
女性ニュースキャスターという報道の世界を華やかにかけ去った。
40歳だった。誰もが復帰を信じていたが・・・無念です。
[312] あのね 子どものつぶやき
  Date: 2001-11-03 (Sat)
おすすめ度 ★★★★★

 朝日新聞学芸部編  朝日新聞社  発行:2001年9月

 子供はうまいこと言いの天才である。
「なんで目は2つなのにひとつに見えるの?」
「人間はね、イライラするから長生きできないんだよ。だけどカメさんはゆっくりだから1万歳生きるんだよ」
 花粉症でマスクの父親に「パパ、きょうも給食当番?」
 足がしびれた「ママ、足が工事中や!」
 「また来ようね、東京ネズミーランド!」
 「ピーマンは好きなんだよ。ただ皮が食べられないんだよ」

[311] 火宅の坂
  Date: 2001-11-01(Thu)
おすすめ度 ★★★

 澤田 ふじ子 著  徳間書店  発行:2001年10月

 突如「永御暇」(ながのおいとま)を言い渡された江戸時代の男達。
リストラである。活路を得るための苦難を道を歩く。
「世の中を火にかかった家にたとえて火宅というが、誰もが火宅の坂を登ったり降りたりしている。
 それに備えて次の備え、それがダメなら次、というように3段階の備えぐらいの対応策が必要という。
 日本人は中流意識を持ったときから生きる力を失って危機に対する備えを忘れてしまっている。」というあとがきが印象に残った。

[310] 場所
  Date: 2001-10-30 (Tue)
おすすめ度 ★★★

 瀬戸内 寂聴 著  新潮社  発行:2001年5月

 昭和48年11月、平泉中尊寺で出家得家式をした。51歳のときである。今、79歳になっている。
3年前に父の故郷にはじめて行って見た。徳島である。これを皮切りに自分が住んだ土地を訪ねてみる。
 25歳のとき夫と娘がありながら凉太を思い、37歳から44歳まで再び関係を続けた。
小田仁二郎という作家とも同棲。塔ノ沢に行き男と死を覚悟することもあった。
三鷹、野方、本郷など50年前から出家する前の自分の居た場所で昔を懐古する。

[309] 狂王ヘロデ
  Date: 2001-10-29(Mon)
おすすめ度 ★★★

 曽野 綾子 著  集英社  発行:2001年9月

 紀元前のユダヤに君臨した王の生涯を穴という口の聞けない竪琴引きを通してみた物語。
 穴は両親と弟や妹が次々と死んでショックのあまり口が利けなくなった。叔父に引き取られたが、穴にいたことから穴と呼ばれる。
引き取られたあとも、ずっと羊の間で寝起きしていた。
15歳のとき王宮にいき、大王へロデの目にとまり、耳が聞こえるが口が利けないことが幸いして長く王の傍で竪琴弾きとして仕えることになった。
ヘロデ王は新しい町を次々と作り経済を発展させた。が、妹サロメの陰謀がもとで妻と3人の息子を謀殺する。そして一族の縁者も次々に自分の王位安泰の為に殺してしまう。
何度も遺言を書き換える。そしてついに病死する。

[308] 濃い人々
  Date: 2001-10-27(Sat)
おすすめ度 ★★★★

 群 ようこ 著  講談社  発行:2001年4月

 きりっとした男性がいなくなった。愛人を持つきりっとした男道。つまり、本妻を脅かさない、すっとした愛人道が昭和36年ぐらいからかわってきたという。
 昔は無学だが生活の中に教養ある人がいた。まっとうな人としての芯があった。現在は読み書きの出来ない人はいないが、教養のある人は少ない。
 きっちりした核がなく日本人の精神が際限なくどんどん柔らかく溶けている。
 人間は自分に正直で年を重ねるにつれ、本心をぶちまける友達が大切であると。

[307]■ 精霊流し
  Date: 2001-10-26(Fri)
おすすめ度 ★★★

 さだ まさし 著  幻冬舎  発行:2001年9月

 雅彦は昭和27年春に生まれた。生家は長崎の武家屋敷の町にあった。そのころ両親の羽振りもよく12も部屋のある家に住んでいた。小学3年生のとき、二軒長屋に引っ越す。
貧困が始まった。給食費を心配して学校やすんだことが母にばれ、泣かれる。東京に出た雅彦は市川市にある「のがわ」という居酒屋で食事つきのバイトをはじめる。とてもよくしてもらったが、よくない連中がのがわをくいものに・・・
そのころ雅彦は肺炎で長崎の実家にかえる。のがわから10万円の選別をもらって・・・  
タイムカプセルからでた20で死んだ友からの手紙・・・

[306] 老いは笑いとばせ
  Date: 2001-10-24(Wed)
おすすめ度 ★★★

 東 美恵子 著  大和書房  発行:2001年9月

 俳優の東美恵子さん、夫は心理学者の南博さん。
いつも色つきのめがねをかけた女優さんである。
山岡久乃さんのこと。91歳まで現役だった杉村春子さんのこと。
過ぎたことはクヨクヨしない。思ったことは口にする。いつも明るく好奇心を失わないで生きていく。
70代、人生これからという。佃島のマンション46階にすみ、ディズニーランドや富士山をみて暮らす。

[305] 天国への階段 上・下
  Date: 2001-10-22 (Mon)
おすすめ度 ★★★★★

 白川 進 著  幻冬舎  発行:2001年3月

 柏木圭一は会社を3つ持つ実業家になっていた。彼の運転手になりたいと25歳の一馬が必死に頼む様子に雇うことにした。
一馬の父は彼が幼い頃は服役をしていた。13年の刑を終え出所したが、何者かに殺される。父は養父だった。一馬の実父は柏木圭一だと遺書にあった。そして、実母は柏木の若い頃付き合っていた女性だったが、一馬の母に託して出産後死んでしまった。
柏木圭一は、一馬が自分の子だと知らずに雇う。
刑事の桑田は25年前の事件が気にかかった。一馬の父の犯した事件は共犯者がいる。しかも誰かをかばっていると・・・
社長の柏木は、北海道の小さな牧場の生まれだった。その牧場も19歳のときに隣の牧場主に半ばだまされるように取られた。父は自殺した。隣の娘の亜木子とも決別し東京に出た。
がむしゃらに働き「カシワギコーポレーション」の社長に。
そして、自分に息子と娘がいる事を知る。二人の女はひっそりと出産をしていた事実を知る。

[304] 猫の客
  Date: 2001-10-19(Fri)
おすすめ度 ★★★

 平出 隆 著  河出書房新社  発行:2001年9月

 子供とペットお断りの借家に入った夫婦。大家のうちの離れの窓の多い部屋である。小庭と板塀で仕切られて大家と顔を合わせることはめったにない。
「ぼくこの猫飼う」という5歳ぐらいの男の子の声。大家の老婆は押し切られた形であった。
以来猫がやってくるようになった。妻は病気がちで猫が来るのを楽しみにしていた。
突然来なくなって交通事故で死んだことを知る。
猫の埋められた大家の庭に花を手向けたいと申し出るが断られる。大家との関係がギクシャクして・・・

[303] 銀行狐
  Date: 2001-10-17(Wed)
おすすめ度 ★★★

 池井戸 潤 著  講談社  発行:2001年9月

短篇5篇。
「金庫室の死体」では、巨額損失が発覚して最近破綻した銀行の地下金庫室の中で老婆が死んでいた。1ヶ月以上たって悪臭を放っていた。この老婆は最近2億円の現金を引き出していた。
残務整理をしていた男から印鑑票の違いを知らされる。誰が現金を・・・ 
「現金その場かぎり」では、三百万円が足りないという。閉店後、行員のロッカーも私物も調べるが出てこなかった。1ヶ月前にも二百万円がなくなっていた。
ビデオテープを何度もみて、あることに気がついた。
少額の顧客にブックエンドの景品を渡す女子行員。受け取る男の姿。金は景品の袋に隠されて・・・
◆面白いところで終わってしまう。短篇のもどかしさである。

[302] クラムジー・カンパニー
  Date: 2001-10-15 (Mon)
おすすめ度 ★★★

 新野 剛志 著  講談社  発行:2001年9月

 短篇の5篇。
「オリジナル・ウエディング」では、探偵の佐々木は自分の結婚式の式場が見つからない。
相談してもあちこちで断られる。そんな折、婚約者の浮気調査を結婚間近な男から依頼される。
調べてみると彼女は3年前に交通事故で死んだ元彼の父親を見舞っていた。探偵の佐々木は結婚を申し込もうとした女性を交通事故で死なせた過去がある。依頼の状況と自分の過去がダブって・・・
男はちゃっかり、浮気調査を依頼する一方で会社の若いこと浮気をしていた。婚約を解消すると男はいう。その言葉に佐々木は依頼主を殴りつける。
オリジナルウエディングは佐々木が死なせた彼女との結婚式だった。出席者は1人かもしれない、10人かも・・・。
会場側はつぎつぎと断る。結婚式は未来に夢をもたせるものだからと。

301] ふぐママ
  Date: 2001-10-13 (Sat)
おすすめ度 ★★

 室井 滋 著  講談社  発行:2001年8月

 大学を7年で中退し、エキストラの毛が生えた程度の仕事をしていた。
12年前、親しくしていた監督の紹介でふくママのプロダクションに入る。
「ナンバーワンではなく、オンリーワンのムロイにしかこういう役は出来ないという女優になって」という。
ふぐママと行動を共にする。新幹線でドアノブを壊したり、ヘリコブターから落ちてパンツ丸見えになったりと。
クヨクヨ悩んだ後は能天気なO型のふたり。母のようなふぐママでもある。

[300] 笠雲
  Date: 2001-10-11(Thu)
おすすめ度 ★★★

 諸田 玲子 著  講談社  発行:2001年9月

 清水の次郎長の一家、大政こと山本政五郎のところへ富士の裾野の開墾の仕事が舞い込む。
山岡鉄太郎からの話である。壱日十銭の時代に、月に30円の補助金が出る。
清水の監獄の囚人を人足にまず20余人が富士山麓へ行く。
囚人には家族との面会も許し自由にさせる。地面に深く根ざした根ややぶ、岩石をどけながら雑草をとり土慣らしをする。
皆、汗水を流して働く。やがて、囚人が逃亡・・・女がらみのいざこざ・・・。

[299] 空が落ちる 上・下
  Date: 2001-10-10 (Wed)
おすすめ度 ★★★

 シドニィ・シェルダン 著 アカデミー出版 発行:2001年9月

 米国の名門ウインスロープ一家は夫婦は駐ロシア大使をしていた。自宅が火災に会い夫婦は死亡。息子は交通事故死。娘はスキー場で木に激突して即死。そしてたった一人残った40代の息子も強盗と争って殺される。
ニュースキャスターのダナは、この一家の偶然に疑問を持つ。ダナはサラエボから現地報道をするなど、危険をかえりみない報道振りを発揮した。帰国するときに片腕を失った少年を連れて来る。
養子として一緒に暮らす。
ロシアに手がかりを求めて情報を集めるが、一家には以外にも敵と思われる人物が3人居た。
そして、偶然ではない証人も現れた。ダナは狙われる。犯人は以外にも大物だった。

[298] 犬たちへの詫び状
  Date: 2001-10-7(Sun)
おすすめ度 ★★★

 佐藤 愛子 著  PHP研究所  発行:2001年4月

 どういうわけか我家の犬は1日中グウグウとイビキをかいて寝てばかりいる。犬というより猫のようだ。
そして我家に来るとみな犬が汚くなる。放し飼いにしているために庭の土を掘って穴を作ってしまうことが原因である。
自由放任、好き勝手をして無芸大食ときている。
ある日強盗に入られた。犬は犬小屋で隠れてのぞいていたらしい。ほえもせず・・・「もう少しましな犬をお飼いなさることですなぁ」と言われてしまう。
「汚い! こら! 寄るな!」といいながら接している。
「犬は飼い主の鏡ですよ」とのたまわる知人も・・・
◆犬と飼い主の様子がたのしい!

[297] ホームレス作家
  Date: 2001-10-05(Fri)
おすすめ度 ★★★★

 松井 計 著  冬幻舎  発行:2001年9月

 家賃滞納に伴い公団住宅の強制撤去される。2001年1月17日のことである。
妻は妊娠中である。1週間ほどは安ホテルに泊まるが、やがて金も尽き新宿区役所のお世話になる。
妻子は母子寮に入れられる。松井はひとり出版社から前借を頼りに訪ねるが出版中止を言い渡される。
作家という仕事柄、すぐにも立ち直れると考えたのがのちのちホームレスを余儀なくさせる。
50万円の前借も断られ、手持ちのパソコンもなくなり、100円ショップで原稿用紙を買って遺書のつもりで自分のことを書く。
冬幻舎に企画を持ちこみ励まされ書き上げたのが本書である。
なりたくてなったホームレスではない。
路上に寝ないように図書館や漫画喫茶で仮眠を取る生活。

[296] 森の少年
  Date: 2001-10-04 (Thu)
おすすめ度 ★★★★★

 マイケル・ドリス 著 / 灰谷 健次郎 訳  発行:1996年4月

 古老につぎつぎと手渡される貝殻玉の紐が切れた。おじいさんに元にもどすように約束するが「これからはお前の話をつくるように」と言われる。父もおじいちゃんも怒らなかった。
貝殻玉は、意味のある組み方をして語り伝えもので、部族のこれまでのたどった事を組み込んであった。
収穫祭があるというのに、少年は森の中へいく。トラブルという女の子も途中で一緒だったが、森の奥へどんどん入って迷ってしまう。一人になってしまった。
家のまわりしか経験のない少年は家に帰るということが分かるような気がした。心配しているかもしれないと考えた。一人でいろいろ考えた。
やがて少年は家にもどる。
お母さんは何事もなかったように、ごちそうを作っていた。

[295] 見廻組暗殺禄
  Date: 2001-10-02(Tue)
おすすめ度 ★★★★

 南原 幹雄 著  徳間書店  発行:1995年7月

 旗本御使番の父が京都の巡察中に3人組みの男達に殺された。
事件の真相を求めて息子の千之助は見廻組隊士になった。やがて、父が切られるところを見たという人が見つかる。
男の一人は大柄で「おんしゃあ」といいながら切ったという。土佐弁のこの男はまもなく見つかるが、なんと土佐藩の坂本竜馬と一緒にいる。
千之助は、好きになった芸奴を土方もねらっていたことで気をもむ。芸奴の協力で父の敵と思われる男は、父の形見の鉄扇を持っていたことから確証を得ることが出来た。
やがて芸奴は千之助の子を宿す。

[294] かずら野
  Date: 2001-10-01 (Mon)
おすすめ度 ★★★★

 乙川 優三郎 著  幻冬舎  発行:2001年8月

 菊子は「山科屋に奉公にあがれ、一生の奉公だから」という父の言葉で14歳の時、糸師の家に預けられる。行った先は奉公人が何人もいて繭から製糸にする商いをしていた。
離れ家を与えられ、他の奉公人とは違う優遇に訝りながら、ある晩旦那様からわけのわからぬまま犯された。
 その時、富治がいきなり入ってきて寝入りばなの旦那様を棒で殴り殺す。「この男は、俺の嫁にも手を出し、奉公人にも・・・」と。二人はとにかく逃げる。
そして、17年夫婦として連れそう。が、生来贅沢に生まれた富治は金のことばかり口にする。一発あてようとするが失敗ばかり繰り返す。そんな折、銚子の海で鰯漁の漁夫になり舟が転覆し・・・

[293] 千のプライド
  Date: 2001-09-28(Fri)
おすすめ度 ★★★★

 桐生 典子 著  集英社  発行:2001年8月

 「父の遺産の一部を父を一番愛してくれた女性に贈りたい」という依頼を受けた。弁護士の卵の女性が依頼人の父榎本修吾の過去の女性について調査に当たる。
31年前に10ヶ月だけ暮らしたという看護士の孝江は、以来ずっと独身を通していた。13歳も年上だったことから結婚を断ったことから別離した。
次に最初の妻照美に会う。照美は夫に塔子とい娘がいることを知り4年で離婚する。榎本は結婚した1年後あたりに佐保響子という女性と知り合い、子供をもうけた。榎本との結婚は望まず43歳でなくなっていた。
3年付きあったという季実子は照美と離婚した後知り合った女性である。
死んだという榎本が生きている?・・・・

[292] ハリウッド・サーティフィケイト
  Date: 2001-09-25(Tue)
おすすめ度 ★★★★

 島田 荘司 著  角川書店  発行:2001年8月

 ハリウッドの有名女優パトリシア・クローガーが自宅で何者かに惨殺された。しかも殺された後、子宮と背骨の一部がノコギリで切り取られた後があった。そして、殺される前に懇願するパトリシアの様子がビデオに残っていた。
 レオナの家でガーデンパーティが開かれた。ジョアンナはプールサイドでサンドラにキスされ、拒否するとプールに落され全裸にされる。みながあっけにとられる一幕があった。
レオナと一緒にすんでいるジョアンナは、レオナが性的異常者だということを知っていた。殺人淫楽症でもある。
レオナが入院したことにより、自宅の捜査が行なわれる。証拠の品が・・・
◆分厚くてなかなか読み進めない。ゆとりのある時におすすめです。

[291] 遊部 上・下
  Date: 2001-09-22(Sat)
おすすめ度 ★★★★★

 梓澤 要 著  講談社  発行:2000年2月

 東大寺の鬼門に位置する北東の谷あいの山里、三方を山に囲まれ人を寄せつけない集落がある。
代々正倉院の護衛を司る遊部(アソベ)という一族である。忍者のような素早い動き、一族に代々伝わる踊りなどを身につけ、京や奈良へ出ては「正倉院を冒すと仏罰があたる」と吹聴しては民衆の心を畏怖に落し、正倉院の宝物を略奪や盗難から守った。
東大寺が炎上した信長の時代、スガル、アマイヌ、トウメ、オカツギをはじめとする遊部の一族は、盗まれたお宝があろうかと思われる豪商の家に住み込み取り戻しの機会を伺う。
◆物語は東大寺が炎上するところから、産み捨てられた子が遊部として、信長のご機嫌をとる商人の館に住み、宝の取戻しを謀る。信長が死ぬまでの物語。

[290] 女は愛で男は哀で
  Date: 2001-09-20(Thu)
おすすめ度 ★★★★

 内館 牧子 著  小学館  発行:2001年5月

 「私の青空」がスタートすると「金髪に染めた男はゆるせん!」と投書が来た。「金髪」は「金パ」という若者たち。お蔭様で「私の青空」は金パ世代には支持されたが、金歯世代には怒られた。
 厚底靴は危険である。それを履いてわかったことは、日本の道路がいかに身体の不自由な人に不親切であるということだ。
 「真鶴さんでいらっしゃいますか?」「いいえ 網代です」「真鶴と網代、干物関係でごっちゃになったんですね」相手は悶絶するほど笑っていた。
◆久しぶりに笑えるおかしい本である。随筆集。

[289] インコは戻ってきたか
  Date: 2001-09-18 (Tue)
おすすめ度 ★★★★

 篠田 節子 著  集英社  発行:2001年6月

 響子はユネスコの世界遺産にも登録された教会があるというキプロスへ取材旅行に出かけた。女性誌の旅行特集の取材で、響子とカメラマンの檜山と二人である。
キプロスはギリシャ系住民とトルコ系住民が民族・宗教などの紛争が続いていた。
トルコ側に入って殺された少年もマシンガンの武装をしていた。武器を持つ資金は資産家達が援助しているものと思われた。
撮影が終盤になった頃、この内紛に興味を示す檜山の取材に引きづられるように観光地ではないところに入り込んで・・・危険が待っていた。
◆1週間前の11日 世界貿易センタービルの破壊のあった。きょうあたり、オサマ・ビン・ラディン氏の名を耳にするが、この小説にも資産家として名が出てくる。

[288] 暗い宿
  Date: 2001-09-17(Mon)
おすすめ度 ★★★★

 有栖川 有栖 著  角川書店  発行:2001年7月

 奈良県大塔村の以呂波旅館で床下から白骨死体がでたという記事を読んで、有栖は現地へ飛ぶ。1週間前にそこへ泊まったからだった。旅館は明日にも処分するという日に最後の客として無理に泊めてもらった。
夜中に穴を掘る音を聞いた。そして野球帽の男の後姿も・・・
死体は数年前に死んだ姉の夫と思われた。16年も音信不通であった。
妹の夫もここ数年、姿が見えなくなっていた。
「この下にも死体が・・・」と畳をあげると難なく板もとりはずせて・・・

[287] 其の逝く処を知らず 阿片王 里見甫の生涯
  Date: 2001-09-15(Sat)
おすすめ度 ★★

 里見が上海から戻ったとき、日本は焼け野が原になっていた。その影響を受けなかった京都で静養をする。
東京に戻ると「麻薬の大量販売は罪もない一般市民に対する虐待」として巣鴨プリズンに拘置される。
里見は北京、上海、満州で知らない人がいないほど阿片で巨万の富を築いていた。それはちょっとした国の国家予算に匹敵するほどであった。
釈放されてからは静かな余生を送る。昭和41年に70歳でなくなった。

[286] ZERO 上・下
  Date: 2001-09-14(Fri)
おすすめ度 ★★★★

 麻生 幾 著  幻冬舎  発行:2001年8月

 峰岸は警視庁公安部外事第二アジア第一担当部門ニ係の警部補である。
「サクラ」「チヨダ」と変遷し今、「ZERO」という。がその組織は肥大化し敵は共産主義者というものの、内部監視、すざましい階級社会で共産主義そのものであった。
峰岸の息子は助骨を折り、脳内出血をおこし、まさに生死の境にあった。
そんな折に国家命令により中国へ行く。北京の一般人の近づけない場所に入り込んで、中国の捜査員に追われる。
常に任務を遂行しようとするが、裏切りを感じ始める。身の危険が迫っていた。一方、東京では彼を救おうとする力と見捨てようとする力も動いて・・

[285] 真説・赤穂事件
  Date: 2001-09-12 (Wed)
おすすめ度 ★★★★

 童門 冬ニ 著  NHK出版  発行:1998年11月

 赤穂城の引渡しの際、見事に清掃され在庫一覧表と照合しても一つの狂いもなかったことは収城目付け役をうならせた。
このとき、大石は目付け役に「お家再興のために切腹して主人に殉ずる」と告げるところを「お家の再興が実現した暁には家臣一同が腹を切る」と切り替え嘆願した。
 大石の山科へ移ってからの豪遊は仇討費用の一部だった。身を寄せた先が特に金持ちでもなかった。
 そして世間の仇討コール。討入の夜、辻番所などは当夜に限って無警戒状態だった。吉良邸の北隣の土屋主税は提灯を掲げ、赤穂側が戦いやすいように援護した。
そしてのちのちのこの行為をたたえる為に綱吉が全員の切腹を命じた。
なるべくしてなった事件であるが儒教によって生まれた武士道である。

[284] 屈折率
  Date: 2001-09-10(Mon)
おすすめ度 ★★★★

 佐々木 譲 著  講談社  発行:1999年12月

 小さいな貿易会社を負債が大きくならないうちに解散した啓二郎の所へ叔父がやってきた。
 兄がやっていた安積ガラスの社長を引きうけてくれないかという。このままでは経営が悪化する。建て直しが必要だ。啓二郎は引きうける。
 有能な経理社員のデータをもとに、親族会社独特の公私混同した部分をカットしていく。
 ガラス工芸家という野見山透子が夜、工場の設備の一部を借りて作品を作っていた。やがて、透子と啓二郎は付き合うようになる。
 製造工業が生き残るには「市場の国際化、部門の特化、業態のハイテク化が必要」と積極的に取り組む。

[283] わたしの別居人生
  Date: 2001-09-09(Sun)
おすすめ度 ★★

 豊原 ミツ子 著  海竜社  発行:1993年9月

 54歳の誕生日の朝、トレーニングウエアにスニーカーで走りに出る。
45歳で脱サラした夫は、ロサンゼルスに住み、阿木慎太郎のペンネームで小説を書いている。そのために別居生活となった。
1年のうちにアメリカと日本を行ったり来たりの生活になった。
私はテレビの仕事をしてはや36年にもなっていた。
東京の羽根木公園でラジオ体操に行ったり、早起きの朝を迎えている。

[282] サウンドレス・ラブ
  Date: 2001-09-07 (Fri)
おすすめ度 ★★★★

 ダニエル・スティール著  サンリオ  発行:1990年5月

 ナンシーとマイケルは砂浜の岩の下に青いビーズのネックレスを埋める。この岩の下に埋めたものが何であるか決して忘れないことを約束する。
二人で結婚式をすることを思い立ち、マイケルの運転する車で教会に向かう途中で交通事故にあう。ナンシーは顔を無くし、マイケルも大怪我をするが一命を取りとめる。
マイケルの母親がナンシーの莫大な治療代の援助と引き換えにマイケルと今後会わないことを約束させられる。マイケルはナンシーが死んだと伝えられる。
ナンシーは傷が回復し、写真家となった。2年後マイケルの会社の仕事の依頼を受ける。だが顔の変わったナンシーにマイケルは気がつかない。がナンシーが気になる存在に・・・
やがて、約束の岩の下で・・・
◆「二つの約束」で1996年アカデミー出版からも出版された。
原書名は「THE PROMISE」 わくわく感はアカデミー出版の方である。

[281] 陸蟹たちの行進
  Date: 2001-09-06 (Thu)
おすすめ度 ★★★

 又吉 栄喜 著  新潮社  発行:2000年6月

 正隆は30歳で自治会の会長である。主に冠婚葬祭を取り仕切る。学習塾の教師をしていたが、今は自治会長に専念している。
祖父は2千人足らずのこの村の村長を2期8年勤めたことがあったが今はボケている。父は51歳で妻が崖から転落死してからは、本業の漁に出たり出なかったりの日々である。
その父が、いま村に起こっている海を埋め立てて火葬場や老人ホームをつくる計画の裏に、米軍基地を作ろうというもくろみが感じられるという。
村は埋め立ての賛成派、反対派でもめている。村の発展のためには埋め立ても止む無しという感情と父からの米軍基地と言う意見で、態度を保留していた。
 昔は大きな魚がとれたという海。埋め立ててしまったら元に戻せない。
住民投票で埋め立ての結論が出る前に自治会長を辞職しようと決心する。

[280] ジュリエット
  Date: 2001-09-05(Wed)
おすすめ度 ★★★★

 伊島 りすと 著  角川書店  発行:2001年7月

 バブル期に建てられた島の真中の広大なゴルフ場は、使用されないまま新築同然で廃墟となっていた。ゴルフ場の周りはジャングルのようで島の人も寄りつかない。
その管理人として健次はまだ幼い洋一とルカを連れてやってきた。
3年間で13人が辞めてしまったという仕事である。芝生の管理やクラブハウスの管理である。
住み始めていろんな気味の悪いことが起こる。死んだものが現れる現象が・・・。亡くなった妻の美佐子、首を切られて死んだ犬のコロ。もう一人の管理人の窪木の息子など。
娘のルカは、その息子と友達になったようだ。
ふさぎこんでいたルカは徐々に明るくなっていく。「この島に住んでもいいよ」と。

[279] 邪悪な花鳥風月
  Date: 2001-09-04 (Tue)
おすすめ度 ★★★

 岩井 志麻子 著  集英社  発行:2001年8月

 小説を書こうと家族と離れて一人でウィークリーマンションにこもった。夫も義父母も理解してくれた。三浦君という若い子がときどき小説の進捗状況をチェックに来る。
窓の下に上下6部屋のぼろアパートがある。そこには人間の生活臭があった。
自分を美人の作家と称する私は、そのアパートの住人を小説の主人公にして4篇の小説を書く。
その1つは、1階に住む若い女性が転がり込んできた男を刺し、隣の独身OLに相談すると山林に捨てることになり、二人で捨てる。
その山は不法投棄でマスコミが取り上げ、間もまく男の死体も見つかる。
独身OLは若い女性に洋服を無心したあと、絞め殺す。鳥のような鳴き声が耳について・・・
花鳥風月を取りいれた4篇。しかし、作家の私は最後に・・・・

[278] 王妃の館 上・下
  Date: 2001-09-03(Mon)
おすすめ度 ★★★

 浅田 次郎 著  集英社  発行:2001年7月

 シャート・ドゥ・ラ・レーヌ(王妃の館)に泊まる10日間の旅を計画した倒産寸前の旅行会社のツアーに8人ずつ2グループが集まった。
同じところに泊まるが一方はスイートルームに泊まる1人200万円、夫婦で300万円のツアー。これには作家、その助手、38歳のOL、会社が破綻寸前の経営者夫婦は心中目的で豪華組みで参加。
20万円足らずで参加した元警察官、ゲイバーのホステス、出版社社員、学習塾の教師などは地下のワインセラーで寝る。スイートルームは豪華組みの留守の午後1時からディナーショーの終わる9時までなら自由に使える。
最初からこういう計画を立てたことを、激安組には伝え、非をわびるコンダクター。なぜか皆そのいきさつに同情し許す。
豪華組には最後の方まで明かさないが、うすうす気がついてしまう。
とうとう2グループは鉢合わせてしまうが・・・・
作家はこの旅で小説をかきあげることができた。
ツアーの様子と作家の小説内容が入り混じった おかしな物語である。

[277] 量刑
  Date: 2001-09-01(Sat)
おすすめ度 ★★★★★

 夏樹 静子 著  光文社  発行:2001年6月

 花を配達途中に5歳くらいの女のことその母親をはねてしまう。動揺した上村岬は品物で車内がいっぱいだったので、トランクへ母親を入れ病院へ運ぼうとする。トランクに入れたところで気がつき、騒がれたため思わず口をふさいでしまう。
娘が一瞬自分を睨んでいるように感じた。寝たふりをしていると思い怖くなって思わず扼殺してしまった。
男友達と青梅の山中に放置する。
夫は当日妻子がいないことから警察に届け出る。ハイキングにきた女性が腐乱した死体を見つける。
弁護士に言われ自首の決意をしたところへ、警察が逮捕に来る。
この場合は死刑が相当であるが、最近の裁判の様子から無期が妥当と思えた。
被害者の苦悩とは反対に加害者が若いことから改心の余地あり刑期は・・・
量刑にあたり、加害者の親族が裁判の軽量を狙って・・・

[276] 緑雨の回廊
  Date: 2001-08-31 (Fri)
おすすめ度 ★★★★★

 樋口 京輔 著  中央公論社  発行:2000年4月

 富山県のダム湖で死体が浮かぶ。一緒に行ったと思われる夫が行方不明であると聞かされた千賀子は立山へ行く。
夫は「富士山に行く」と言って出た。立山曼荼羅と日記が送られてきていた。
立山で志鷹夫婦が曼荼羅を持ってきた夫を覚えていた。しかし、もうひとり同じような曼荼羅を持った男が来たと言う。
立山曼荼羅は戦国武将佐々成政の埋蔵金の隠し場所が秘められていた。
夫の稔は暗闇で目覚めた。誰かに殴られ気を失っていた。発電所の側で殴った犯人から逃れようと暗闇の中を模索していた。

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[275] 超・殺人事件  推理作家の苦悩
  Date: 2001-08-29(Wed)
おすすめ度 ★★★

 東野 圭吾 著  新潮社  発行:2001年6月

 殺人事件ばかりの短篇8篇。
「超税金対策殺人事件」では、作家が友人の会計事務所に確定申告をお願いしたところ、多額の税金を払わなくてはならない。
すでに収入は税金を払う余裕もない。会計士と相談し経費で落すべく知恵を絞る。たとえば、ハワイ旅行は取材旅行で小説の舞台とする。風呂場の改築と自動車の購入は小説を書く上で破壊実験が必要だったとする。こうして、還付金がでるほど、つぎつぎにこじ付けて経費としての申告書を作成した
しかし、申告の大半は認められず莫大な税金を請求される。
 「超犯人当て小説殺人事件」では、出版社の4人が同じ会社ではないのに、揃って作家のところに来るようにファックスが届く。
行ってみると犯人を当てたところに原稿を渡すと言う。抜け駆けをしようとするものを仲間で制しながら、夢中で4人は読む。
しかし、小説は亡夫人が書いたもので、犯人は未決のまま遺稿となっていた。その次ぎをどうしょうかと4人を呼んだらしいことがわかる。
作家の横柄な態度にそのうちの1人がネクタイをはずし作家の背後から・・・

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[274] 南紀潮の岬殺人事件
  Date: 2001-08-28(Tue)
おすすめ度 ★★★★

 梓 林太郎 著  祥伝社  発行:2001年6月

 ホームレスが売っていた女の人の肖像画を買う。肖像画の女は父のアルバムにあった写真と同じだった。父とこの女性とはどういう関係だったのだろうか。
父は68歳で3年前に亡くなっていた。女性は30代のようである。肖像画に書かれた画家の名前から探し始める。
やがて、肖像画の背景から串本とわかり、女性は潮の岬で6年前に殺されていた。犯人はまだ見つかっていない。女性の妹や勤務先をあたる。
◆物語より、ホームレスの人が他人の写真を持ち、「これが自分の家族だ」と自分に言い聞かせたり、人に自慢する道具にする。絵葉書はかって旅行したことがある。カメラのレンズは、かって高級カメラをもつ趣味があった。ボールペンのキャップは、字を書くことがあるという見栄。精一杯の見栄も生きがいへの張りなんだろうなあ。たいへんだ。

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[273] 愛を乞うひと
  Date: 2001-08-27(Mon)
おすすめ度 ★★★★★

 下田 治美 著  情報センター出版局  発行:1992年9月

 40歳になる私は22年前、高校生だった頃に住んだ所の区役所にいた。
小学生のころ、父が死んだ土地である。父の遺骨を探そうと戸籍を調べに来た。出生届から父の本籍が台湾だとわかる。父は病院で肺病で亡くなった。
母は「おまえは犯されて産まれた子だ」と髪の毛をひっぱり胴体をところかまわず蹴りつけ、往復びんたの嵐で「早く殺して!」と願うほどのいじめようだった。風呂も行かず弟と汚れきっていたが、母だけは着飾って夜出かけていき、昼間は寝ている。家事は父がやっていた。鬼のような母だった。
父が病気になって母は父を捨てた。別の男を父と呼ばされ、学校で「名前が変わります」と担任が伝えると級友の失笑を買った。
 夫の死後、思い立って娘とやさしかった父の遺骨を探そうと・・・
やがて、父の遺骨は無縁仏となってお寺に置かれていた。
娘にはおばあちゃんはいないといって育てたが、鬼のような母にも会いに行く。家から出てくる険しい顔の人をみて、ひと目で母と分かるが、声もかけずみているだけの私と娘だった。

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[272] 阿川佐和子のガハハのハ
  Date: 2001-08-25(Sat)
おすすめ度 ★★★

 阿川 佐和子 著   文芸春秋  発行:2001年4月

 最初は久保純子アナ。紅白歌合戦の司会を3回。3回目は一番緊張した。この紅白に寝ずに係わる三千人のスタッフの苦労を知ると、何も知らない前回までよりプレシャーがあるという。結婚して肩の力が抜けた。人生を楽しめるようになった。
 三谷幸喜の愛妻は小林聡美。番組が終了するとき電話番号を交換したが、4年間も音沙汰無し。再び番組で再会し結婚。古畑任三郎は期待は裏切らず予想を裏切るのだと。
 中村玉緒はうれしいことがあると、最近はさんまさんに携帯で電話すると言う。コマーシャルや舞台が決まったときなど。
他に20人と阿川との対談集。 

[271] 新・水戸黄門異聞
  Date: 2001-08-24(Fri)
おすすめ度 ★★★

 童門 冬ニ 著  講談社  発行:1995年7月

 江戸で振袖火事があった1657年に、光圀は「日本にも中国の歴史書「史記」のような歴史書が必要」と考えた。
小石川の後楽園を庭とする場所で「史局」を設け、佐々介三郎と安積覚をはじめとする学者をあつめ「大日本史」編修に着手する。
介三郎の提案で皇室が南朝を軸としているとして、南北朝の時代の史実をあらゆる角度から検証することからはじめる。
これには、松尾芭蕉を東北に出向かせるも、歴史書に関する報告はなかった。
薩摩藩は憶測を元に調査を拒否し、国入りを認めない。毛利も同じ。
光圀は1700年73歳で隠居した西山荘で亡くなるが、「大日本史」は明治39年に一応完成する。
 この大日本史の編纂が莫大な経費がかかり、多くの反対や中傷があったこと、編纂に学識超邁(ちょうまい)な朱瞬水など30人から100人が携わったと言う。

[270] 13階段 じゅうさんかいだん
  Date: 2001-08-22 (Wed)
おすすめ度 ★★★★★

 高野 和明 著  講談社  発行:2001年8月

 第47回江戸川乱歩賞受賞作
 三上純一は出所した翌日、自分がいたところの刑務官の南郷が尋ねてきた。
死刑囚の冤罪をはらすための仕事が法律事務所を通じてある。ついては一緒に手伝ってくれないかという。
成功報酬は千万円。期限は3ヶ月。二年前に傷害致死で被害者の賠償金七千万円に工場を売り借金をしてくれた両親。家を出て純一には顔をみせようとしない弟。世間の目。純一はその仕事を手伝う。
死刑囚は保護司の夫婦を殺し金銭を奪い逃走の途中バイク事故で血だらけになっているところを被害者の家族にみつけられ、救急車で運ばれる。以後記憶喪失になるが、所持品から夫婦のキャシュカードが見つかり、非行歴もあることから犯人とされ裁判により死刑が確定していた。
10年後、「階段を昇る姿を思い出し・・・」 
◆真犯人を見つけるまでを意外な展開が・・・面白い!

[269] 夢魔 ナイトメア
  Date: 2001-08-21 (Tue)
おすすめ度 ★★★★★

 森村 誠一 著  祥伝社  発行:2000年7月

 女子大生の3人が秩父の山奥に老婆を訪ねる。翌朝、老婆は死んでおり、枕元に代金の入ったカバンが・・・1億円以上ある。
3人は分配し「この家には訪ねなかったことにしよう」と。家を後にするとき猫に3人とも引っかかれる。
その3日前に2億円を奪われる強盗殺人事件があった。
1年後3人はそれぞれ、結婚したり、ホステスになったり、予備校の教師になったりしていた。が、傷は1年たってもじくじくとしていた。目も光り、猫くさいと言われて猫のたたりにおびえていた。
自分の夫や予備校の生徒や店の客が、何か関連する気配をみせる。
その内の一人のところに刑事がやってきて・・・
◆ひさしぶりに面白いと思った。犯人はわかっているから、結末までにどう展開するかわくわくする。

[268] 海嶺
  Date: 2001-08-20(Mon)
おすすめ度 ★★★★

 北方 謙三 著  集英社  発行:2001年7月

 八木法律事務所の調査員の神尾は恋人の恵子と暮らすマリオという10歳の男の子を我が子のように感じていた。
マリオは日本に来て7ヶ月になる。最近、マリオを強引にイタリアのクレメンティの一族が強引に連れ戻そうと手を伸ばしていた。
神尾とマリオはイタリアに渡り、クレメンティの長に会いに行く。一族はマリオを日本へ養子に出すことは認められないという。
メッシーナーまで行けば一族を捨てられる。神尾とマリオは数々の追跡を逃れ必死でメッシーナーに向かう。

[267] 風景写真を楽しもう
  Date: 2001-08-19(Sun)
おすすめ度 ★★★★★

 林 重信 著・写真  大泉書店  発行:2001年8月

 鳥居の中からみえる日の出(滋賀県白髭神社) 大阪府の長谷の棚田、上高地の5月、岡山落合の醍醐桜、滋賀県旭町のレンゲ畑、金剛輪寺の池に落ちたもみじ、大阪城と桜などの写真。
 巻末にカメラの選び方、レンズの選び方、構図の作り方、光の種類のほか、素人にわかりやすく説明文あり。
撮影のこぼれ話など。映像の美しさと巻末の説明が勉強になる。

[266] ドラマティックなひと波乱
  Date: 2001-08-18(Sat)
おすすめ度 ★★

 林 真理子 著  文芸春秋  発行:2001年3月

 週刊文春に1999年10月から2000年11月まで掲載された随筆。
「本当にパソコンを使わなきゃ いけないものなのか」というと雑誌社の人に「そういうバクテリア人は、前世紀の遺物になる」と言わパソコンを買う。
ファンの人がマイホームページを作ってくれた。最新情報や本のリストやフォト日記を載せてあるそうな。
エステのこと、キモノのこと、ガングロのこと、料理学校のことなど。
読み終えても心に残ったのはインターネットの上記のことだけだった。

[265]
  Date: 2001-08-17(Fri)
おすすめ度 ★★

 二谷 友里恵 著  文芸春秋  発行:2001年5月

 「ママ一番嫌な事は、ママがここまでウソばっかり書かれても黙っていることなんだよ」の娘のことばで執筆をした書である。
郷ひろみとの離婚までの冷めた夫婦関係。マスコミの前で繕う姿。
「子供たちに再婚のことを直接言えなかったことが心残り」「娘達に5ヶ月も会っていない」・・・云々。
 実は突然娘達の学校へ訪問し授業中に面会していたり、30分時間が空いたと言っては突然訪問して来たり・・・と。
再婚話を延々聞かされる娘達の姿を想像して断ったいきさつ。
友里恵の現夫の実名報道。・・・と言いながらこの書の最後に文中に実名が出る不思議。 過ぎ去ったことを誤解されても、どうでもいいことは人々は忘れ去る。書かなきゃいいのに・・と言うのが私の感想。

[264] 前田利家とまつの生涯
  Date: 2001-08-16(Thu)
おすすめ度 ★★★★

 童門 冬ニ 著  三笠書房  発行:2001年7月

 織田信長に仕えた木下藤吉郎と前田利家。その利家の妻まつの物語であるが、大半は信長を中心にした3人の男の物語。
まつは夫の危機に心中を察し冷静に助言や配慮をしている。史実にあたらない俗説も含まれているが危機管理が今の世にも参考になる。
 まつは4歳の頃から利家の側で兄妹のように育っている。利家がねねを嫁にしたかったが藤吉郎が「ねねと俺はできている」の言葉に「俺もまつと・・」で嫁にした。が、まつは利家の危機に「この女は俺の心中を正確に悟っている」と感じたときから助言者となった。
 利家が召し放しを受けたとき、福井の地への左遷の人事と感じたとき、屈することなく将来の展望を見極めていたまつである。

[263] 天狗の落し文
  Date: 2001-08-14 (Tue)
おすすめ度 ★★★★

 筒井 康隆 著  新潮社  発行:2001年7月

 短篇集360篇余集。随筆集と思われるぐらい1篇が短い。
・門の前で毎夜小便をして帰る酔っ払いがいる。ある夜待ちが構えて首を締めあげたら大便をした。
・ステージの片隅の誰もいない所でタバコを吸っていたら、突然主演女優がやってきた。何をするのかとこっそり見ていたら、いきなり腰を低くして「バリッ、ビリッ、バリベリボリバリ」
・あるアメリカ人が俺に聞いた。「いまそこで娘さんが電柱に留まっている雀を見ながら「He Who mi」と言っているがなぜかね?」
◆笑えるんだけど、「いやだぁー」と言ってしまいそうな中味もある。一気に読み進めると中だるみする。別のものと平行して読むと良いかも。

[262] 地獄の始末 真贋控帳
  Date: 2001-08-12(Sun)
おすすめ度 ★★★

 澤田 ふじ子 著  徳間書店  発行:2001年7月

 島原の遊女屋を営んでいた椿屋が廃業をするという。ついては二部屋分もある書画骨董の類の目利きをしてもらいたい。
椿屋には遊女遊びをする金の代わりに家からこっそりもってきたと思われる品が溜まっていった。
遊女のひとりが胸を患い生家に帰す際、5両の金を持たせた。やがて薬石効なく娘は死ぬが母親がお礼に来た。顔を見て驚く。母親のおいねは椿屋の主人大左衛門と若い頃に恋仲であった人である。
兄が亡くなり急に島原に帰って家業の遊女屋を継いだ。落ち着いた頃、おいねを探したがすでに嫁していた。もしかしたら自分の娘になるかもしれないおいねの子は死んでしまった。
そして、遊女屋の廃業を決意する。
骨董品は遊女達が稼いだものであるとして店を売り渡したお金の半分は遊女達に持たされた。すでにやめていった遊女達にも年期に応じて、また亡くなったものには墓代に使われた。
同じ頃、五稜郭という遊郭も大火に見舞われていた。

[261] 姫君
  Date: 2001-08-11(Sat)
おすすめ度 ★★★

 山田 詠美 著  文芸春秋  発行:2001年6月

 私は姫子と言う源氏名である。風俗で荒稼ぎしたり水商売をしたこともない。が、男を相手にしていた。
 一昨日から何も食べていない。定食屋のポリバケツに手をかけたとき「それ、腐っていますよ」「すごく腹へってるんですか?」と言った男は、自分のアパートに連れていってくれた。
 男は山本摩周というミュージシャンで定食屋でバイトしている。
その日から姫子は摩周と一緒に暮らし始める。摩周は夢のようだと喜んでくれた。が、摩周がライブで客の前で歌う姿に、あまりの下手糞に客が不満を言うが、客席で姫子は逆に客に罵声をあびせる。
姫子はまた黙ってアパートを去る。
見知らぬ金持ちの男と一緒に暮らし始めるが摩周を忘れられない。
摩周のところに戻ろうと駅のホームへいくが・・・

[260] 「不要」の刻印
  Date: 2001-08-9(Thu)
おすすめ度 ★★★★

 本岡 類 著  光文社  発行:2001年1月

 マウンテンバイクで代々木の競技場近くにさしかかった時、いきなりバックが降ってきた。とまって中味を確認すると札束がどっさりあった。
いきなり男達に取り囲まれた。刑事たちだった。
誘拐犯と間違えられた水無瀬翔27歳はプロの棋士だった。
知り合いに警察関係者がいたことから開放されるが、ホームセンターの社長の息子6歳が誘拐されたらしい。
やがて犯人からも「子供の遺体は静かな場所に埋めた」という。
社長は稲本と言う探偵も雇って、息子の遺体探しをはじめる。
翔も頼まれて捜査の協力を約束した。そんな折、稲本探偵が南房総の保養所近くで殺される。
 社長はときどき、児童養護施設を訪れていた。子供の改名も行なわれていた。社長の弟がギャンブル好きと言うが白だった。
 結末は意外な展開に・・・

[259] 擬態
  Date: 2001-08-07 (Tue)
おすすめ度 ★★★★★

 北方 謙三 著  文芸春秋  発行:2001年4月

 病院の内部設備の後期が2ヶ月と言う時に突然解雇にも似た通告を受けた立原は、フロッピー2枚に引継ぎの資料を入れ、残りは須藤の目の前でシュレッダーにかけて処分した。「出きるだけ早く辞表を書け」という。
 立原はダイエットと称して40歳であるがボクシングジムに通っていた。その日ロードワークに出た。前を須藤が家路につくところだった。須藤の後ろ頭をなぐり意識を亡くしたところで、胸のポケットから昼間のフロッピーを抜き取り、駅のホームに捨てた。
翌日、蒼白な須藤とともに会社はパニックになった。一転、立原は専務から会社に残るよう言い渡される。須藤と立原の立場は逆転した。
病院の工期も予定通り終わらせることができた。次ぎは4階までのビルを地上22階のビルにするために入居者立ち退きに係わった。ヤクザの嫌がらせにも屈せず立原が解決する。危険な匂いのする男であった。
やがて、専務とオーナーとの狭間で・・・
◆強い男の胸のスカッとするハードボイルド長編。面白い!

[258] ルージュ
  Date: 2001-08-06 (Mon)
おすすめ度 ★★★★

 柳 美里 著  角川書店  発行:2001年3月

 新製品のリップスティックのイメージキャラクターに選ばれたいたタレントが突然キャンセルした。
新入社員の谷川里彩はその撮影場所に居合わせたことから、スタッフの目にとまり急きょ代役にモデルをさせられる。
カメラの向こうの里彩はなぜか惹きつけるものを持っていた。化粧をすれば一変した。
会社側は社員として売り出すか、モデルとして売り出すか思案していた。
本人はモデルとしてより社員を望んでいた。
やがて、恋人もでき・・・
里彩はタレントとしての道を歩む。連ドラの主役にも抜擢された。
◆自伝でない、ひさしぶりの小説である。

[257] 森のなかの海 上・下
  Date: 2001-08-05(Sun)
おすすめ度 ★★★★

 宮本 輝 著   光文社 発行:2001年6月

 阪神淡路大震災の渦中にあって、さらにこの地震がきっかけで愛人の存在を知り希美子は離婚する。
希美子は大学生の頃、奥飛騨の毛利カナ江の山荘に訪れて以来、年ごとに栗や菓子の贈り物が届いた。その山荘でカナ江は86歳になっていた。娘とは絶縁状態で自分の遺産を希美子に貰ってほしいと言う。カナ江には生後まもなく死んだ男児があった。
葬式にも娘は来なかった。希美子は遺産を貰うことにし、山荘で暮らすことにする。被災地の隣に住んでいた両親を亡くした娘を3人引き取る。
さらに、その3姉妹を頼ってきた友人達7人も一緒に。
近くの温泉地で蕎麦屋の跡をたきこみごはんの店として開店させる。
死んだと思われたカナ江の子は・・・

[256] THE MASK CLUB
  Date: 2001-08-03 (Fri)
おすすめ度 ★★★★★

 村上 龍 著  メディアファクトリー 発行:2001年7月

 私はどうやらアイスピックで背中を刺されて殺されたらしい。ミクロの虫になって殺されたマンションの天井と壁の間にいる。
クローゼットの中に先住者のテツオという男がやはりミクロの虫になっていた。二人は会話をしながらマンションの中の様子を見ていた。
 私は元書店員。テツオは62歳の心理テスト官。テツオはサラと言う女を、私はミキという女を知っていた。このマンションには7人の女がいてSMクラブをやっていた。
この7人は仲間をMASK CLUB と呼んでいた。宅建主任や旅行会社に勤めていた女性たちだ。幼児期に父親にもてあそばれた子。人前で平気でオナニーを繰り返す子。SMが講じて数人の男達が殺された。死体は解体されて捨てられたりパック詰して冷蔵庫に入っている。
 ミクロの虫になった男達は女性たちの記憶の中にも入れた。彼女たちがどう育ったかを知らされる。

[255] チチンプイプイ
  Date: 2001-08-01(Wed)
おすすめ度 ★★★★

 宮部 みゆき / 室井 滋 著  文芸春秋  発行:2000年4月

 高校卒業後、速記や電話交換手の資格を取得した宮部。早稲田大学在学中に女優を目指した室井。このふたりの対談集。
 室井は猿岩石を探してヨーロッパ・中東を行く。トルコでソープランド嬢をやって日銭を稼いでの旅生活。トルコは日本人にやさしいお国柄だったとか。
雷波少年では赤木麗子の名で歌のテープを売っての旅。こちらはアジアを数カ所回るがおもしろかった。どこも無茶苦茶親切で人に対する好奇心が強い人達だった。言葉が通じないとわかっていても一生懸命話しかけてくれる。そうするとだいたいわかってくる。日本人はもっと外国人に話すべきだと。
 一方、宮部は高校のころから物書きになればと先生に言われる。
作家にはジャーナリスト型と妄想型がある。最近は妄想型の作家が少なくなった。宮部は妄想型であるらしい。作家は元手がかからなくてよいと言う。

[254] 最後の特派員 上・下
  Date: 2001-07-30 (Mon)
おすすめ度 ★★★★

 ダニエル・スティール著 天馬 龍行訳 アカデミー出版 2001年6月

 パクストン・アンドリュースは母の忠告に耳を貸さずカルフォルニア大学のバークレー校へ進学する。
やがて、ピーターという青年と恋をする。ピーターは兵役でベトナムへ徴兵される。が、仲間の誤射で命を落とす。
パクストンは真実が知りたいと大学を辞め、ピーターの父親の経営する新聞社「モーニング・サン」に雇ってもらいサイゴンへ飛ぶ。
特派員報告は好評だった。ビル・クエイン中尉に惹かれる。やがてビルも戦死する。女が一人で戦地に乗り込む事への周囲の驚きがあった。

[253] チャイナブルー
  Date: 2001-07-28(Sat)
おすすめ度 ★★★

 加治 将一 著  光文社 発行:2000年10月

 ダニー弁護士は顧客から30億の穴埋めの話しをヤクザの石崎にする。
オーナーが作った10年間の不明金30億は、年商700億の利益がある会社である。今回帳簿を白日にさらすことになった。会社が上場することになった。大蔵省の査定の前に何とかしたい。
 石崎に持ちかけられた話は「何でもいいから会社を相手取って訴訟を起こす。その和解金として30億を払う」という案。
しかし、税務署の名目がたたず不可能と分かる。そこで、考えたのが四元銀行から120億の物件を買い90億だけを支払うという。
 ダニー弁護士は送金完了と言うが入金がない。どこで行方不明になったか。
以外にもその人物は・・・

[252] もどりの春
  Date: 2001-07-25(Wed)
おすすめ度 ★★★★

 阿久 悠 著  中央公論社  発行:2001年6月

 三好環は高校の副校長を定年で退職した。「自由への旅立ちを見送る会」で一柳隆弘院長にプロポーズされた。15年前にもプロポーズされたが、その時は妻を亡くしたばかりの一柳の家庭に踏み込めないものがあり、丁重に断った。しかし、一柳の気持ちは15年前と変わらないという。
 クリスマスまでの4日間をホテルのスィートで待つという誘いがあった。
その間に母の急死があり、九州へ飛ぶ環。葬儀を終えほっとした時、残された人生を・・・と思いなおし急きょ約束のホテルへ急ぐ。

[251] 墜ちていく僕たち
  Date: 2001-07-23(Mon)
おすすめ度 ★

 森 博嗣 著  集英社  発行:2001年6月

 他人の顔って恋人でもない限りじっくり見たりしない。僕は化粧とかして、どんどんエスカレートしていった。
落下した僕は鏡の中で笑っている。
小林先輩が女に妊娠させオロオロ。結局、先輩に付き合って待合室で子供の堕胎に思いをめぐらす。
◆ぐたぐたした日常を書きたくないと文中にあるが、終始ぐたぐたした文章で読み終えたときになにも心に残らない。

[250] チーズはどこへ消えた?
  Date: 2001-07-22 (Sun)
おすすめ度 ★★★★

 スペンサー・ジョンソン 著 岡田 美鈴 訳 扶桑社 発行:2000年11月

 遠い国に二匹のネズミと二人の小人が住んでいた。
ネズミと小人は特別のチーズを見つけようと迷路の中を探していた。
やがてネズミはよく利く鼻で道に迷いながらも、そのうち道を見つけ進んで行った。
小人は過去の経験から得た教訓と思考による方法でチーズ・ステーションCを発見した。
それから毎朝、ネズミも小人もチーズ・ステーションCに向かった。
ネズミは何か前日と変わったことがないか調べてからチーズをかじった。
 ある日、チーズ・ステーションCに行った小人は「チーズがない!」「チーズはどこへ消えた?」と。二人は繰り返し事態を分析したり、不安と失望の中でくよくよと考えていた。
 ネズミはいずれチーズがなくなることは分かっていた。やがて、あたらしいチーズ・ステーションNを見つけていた。
しかし、二人は毎日同じことを考えつづけていた。よくやく一人が「遅れを取っても何もしないよりはいい」と再びチーズを探しに出かけた。
「従来通りの考え方をしていては新しいチーズは見つからない」「早い時期に変化に気づけばやがて訪れる大きな変化に対応できる」過去を捨て去り、現実に適応していった。
そして、チーズ・ステーションNを見つける。最大の障害は自分自身にあった。自分が変わらなければ好転しないことを悟った。

[249] Love story
  Date: 2001-07-21(Sat)
おすすめ度 ★★★★

 北川 悦史子 著  角川書店  発行:2001年6月

 永瀬康は気難しい作家で、今はスランプで書けないでいる。
美咲は池谷の後の担当になった。
ヨシの孫とお見合いをする。美咲は振袖を着てでかけるが、その孫は永瀬だった。その後、急接近もなく担当と作家との関係から抜け出ない。
池谷と美咲はデートをする仲になるがやがて振られる。
美咲が母と田舎へ帰るというので空港へいそぐ。永瀬はいきなり母に「美咲さんをいただけないでしょうか」という。美咲は「合格発表を人に見に行ってもらったような気分。自分の目で見たかった」と怒る。

[248] 黄金の島
  Date: 2001-07-20(Fri)
おすすめ度 ★★★★★

 真保 裕一 著  講談社  発行:2001年5月

 修司は逃れるようにバンコクへ行く。半身はだかとサラリーマン風の男がすれ違っても違和感のない街である。
裕福な外国人から金を掠め取って何が悪いという風潮が渦巻いていた。
その中にチャウという17歳の男の子がいた。「日本で働きたい。冷蔵庫やビデオのある暮らしができる。懸命に働いて故郷に金を持って帰りたい」という彼らにとって日本は黄金の島だ。
海底に沈んだ船を引き上げそれで海を渡ると言う彼らを、修司は日本への密航を手助けする。
1年後チャウは日本にいた。自分達をただ同然にこき使っていたヤクザの事務所に押し入る。取り上げられた自分や仲間のパスポートを盗み出し、これからが自分達の生活が始まると喜ぶ。

[247] 朗読者
  Date: 2001-07-18 (Wed)
おすすめ度 ★★★★★

 ベルンハルト・シュリング 著 松永 美穂 訳 新潮社  発行:2000年4月

 17歳の僕は36歳のハンナと会っていた。しかも学校をはや引きしたり遅刻したりしながら時間を作って関係を続けていた。
ハンナは本を朗読してくれることを要求した。「戦争と平和」「のらくら者日記」など読んでやった。しばらくしてハンナはこの町を出ていった。
再会したのは7年後43歳になっていたハンナが、法廷で無期懲役を言い渡された裁判である。ハンナはアウシュビッツに送られた。
ハンナは文盲であったため、これを隠し積極的に罪を認めていた。それに気づいた僕はふたたびハンナに朗読のテープを郵送し始める。
やがて、ハンナからたった3行であるがお礼の手紙が届く。字が書けるようになっていた。
18年後恩赦で出獄できるというのにハンナは自殺してしまう。

[246] センティメンタルブルー
  Date: 2001-07-16(Mon)
おすすめ度 ★★★

 篠田 真由美 著  講談社  発行:2001年6月

 古風な洋館は今は荒れていた。僕は11歳のとき、当時67歳だった奈々江さんと知り合った。
対人恐怖症だった僕は奈々江さんとは自然と話せた。犬のブルーとも仲良しになった。奈々江さんには秘密があった。
それは、21年前銃の暴発でご主人を亡くされていた。当時5歳だった坊やはお手伝いさんが連れてこの家を出たことだった。
21年後、坊やだった人は継母が2年前に死に毎年送金してくれた奈々江さんに会いにきた。
銃の暴発は奈々江さんが夫を殺そうとして起こったものなのか?事故なのか?
しかし、真実はまったく違っていた。

[245] 模倣犯 上・下
  Date: 2001-07-15 (Sun)
おすすめ度 ★★★★★

 宮部 みゆき 著  小学館  発行:2001年4月

 大川公園で人間の手が発見される。続いて行方不明の女性のヴィトンのバッグがみつかる。手もバッグも持ち主は別々だった。
テレビや新聞でセンセーショナリーに書きたてる。連日ワイドショウが取り上げる。その番組に犯人がボイスチェンジャーを使って電話が入る。あざ笑うかのようだ。途中で怒って中断したものの再び電話があり、声紋から犯人は2人とされる。
このあたりから犯人が登場してくる。そして、同級生の蕎麦屋の和明を犯人にするために呼び出す。が犯人の1人と和明は交通事故で死亡する。
トランクに死体があったことからこの2人が犯人と断定される。
もう一人の主犯は「もうひとつの殺人」という本を出し、和明の犯人説を否定する。

[244]
  Date: 2001-07-11 (Wed)
おすすめ度 ★★★★

 乃南 アサ 著  幻冬舎  発行:2000年12月

 結婚まじかに男が失踪した。東京オリンピックの開会式のころの話。
陶子は刑事の勝と結婚予定でウエディングドレスが縫いあがった次の日、「もう会えない」という電話を最後に勝が消える。
勝の上司の韮山の娘のぶ子が殺された。そばに勝の定期券が落ちていた。
勝は韮山に「娘を嫁に・・」と言われた事があったが、家でも職場でも韮山と顔を付き合わせるのは・・と陶子との結婚を決めていた。
勝を信じる陶子は熱海へ、田川へ、焼津へと探しに出かける。韮山も刑事を辞め、犯人探しをする。娘が勝の婚約に涙したことを知る。宮古島で・・・

[243] 和解と共存への道
  Date: 2001-07-10 (Tue)
おすすめ度 ★★★★

 金 大中 著  岩波書店  発行:2001年5月

 ノーベル平和賞受賞スピーチや日本の国会における演説、ドイツ統一の問題などを収録した薄い本。岩波ブックレットである。
1998年大統領に就任して以来、南北との平和関係を太陽政策の一貫として主張しつづけてきた。これが平和賞につながった。
あと2年で任期を終える。
25年前に東京で拉致され1980年には死刑判決を受けた。牢獄での6年と自宅での10年以上にわたる軟禁状態。
◆もっと読みたいという気持ちにさせる1冊である。

[242] 動かぬ証拠
  Date: 2001-07-08 (Sun)
おすすめ度 ★★★★

 蘇部 健一 著  集英社  発行:2001年5月

 やくざらしき男が若者をパイプで殴っていた。物陰でみていた小森は助けられずにいた。男が去り、若者もよろよろと立ち去った後、パイプを拾う。
妻からホストクラブで知り合ったホストとの浮気を告白された。このホストを殺し、このパイプを利用しようと。
10日後、ホストを殺す。用意したパイプもその場において逃げる。
しかし、刑事は小森を犯人と断定した物の言い方で質問してくる。
やくざものは3日前に指を1本無くしていた。

[241] 三人のゴーストハンター
  Date: 2001-07-07(Sat)
おすすめ度 ★★★

 我孫子 武丸 著ほか  新潮社  発行:2001年5月

 夜間警備員が巡回していると舌を切られた社員の死体を見つける。企業が秘密を要することから表面化せず処理された。
10日後、再び社員が死んだ。股間に鮮血を大量に流し、陰茎を切断されていた。これも秘密裏に処理された。
国技特殊警備員が配属された。犯人は、社内にいる。殺された社員達は家族の元へも帰れず仕事の秘密保持に努めていた。
そして、犯人は人形のエマ。エマは軍需用につくられたダッチワイフで人間にそっくりの精密さだった。  

[240]
  Date: 2001-07-06 (Fri)
おすすめ度 ★★★★

 藤田 宜永 著  新潮社  発行:2000年4月

 銀行の支店長だった逸平は、先物取引に手を出し8千万円の負債を抱えていた。顧客の預金を不正に引き出したり、金融会社からの借金があった。
不正が発覚したのは2月だった。以来逃亡中である。
お盆の前に別荘に人が集まらないうちに行こうと葉山にやってきたが、人が住んでいた。妻だった。近所の目もあるからと、押入れの中で日中を過ごす妙な生活が始まった。
妻には結婚をほのめかす男がいた。ときどき尋ねてきていた。妻が子供たちへ英語を教えることで生計を立てていた。義父の書斎がそれに当てられていた。
妻からは離婚を要求されていたが、なんとかかくまってくれてもいた。

[239] いまだに、たけしの兄です
  Date: 2001-07-04 (Wed)
おすすめ度 ★★★★

 北野 大 著  主婦と生活社  発行:2000年10月

 母さきの葬式は、菩提寺の葛飾区小菅の蓮昌寺で行なった。長兄の喪主名に大の住所という形で・・・。
最後は軽井沢の病院で姉が介護をしたが、平成になってからは大の一家と足立区の島根町で暮らす。母の部屋には近所の人が気軽に来ていた。
母の葬式の時、故小渕首相から弔電とお花がとどき、後日 大の一家は官邸に招かれる。
 テレビに出るようになったのもたけしのおかげ。たけしは「世界が広がるよ」とテレビ出演を応援してくれた。
大学教授も、今の満足した生活もすべてたけしのおかげだという。
貧乏だったが母思いの兄弟のことなど。

[238] 伴侶の死
  Date: 2001-07-03(Tue)
おすすめ度 ★★★

 平岩 弓枝 著  文芸春秋  発行:2001年2月

 「お父さん・・・再婚していいよ」と死んでいった妻。「幽霊でもいいから帰って来い」という夫。多くの一般の人からの手記のうちの40編を紹介した本。
「死者老いず、生者老いゆく恨みかな」―菊池 寛―
妻の死後、茶のみ友達を作っていい加減にくらす夫。北海道旅行をするためにへそくりを残したまま死んだ夫。
新婚時代「僕らは永遠に一緒だ。僕が死んだら君もすぐ死んでくれ、僕も君が死んだらすぐ死ぬからね」と誓ったが、54歳で死んだ夫。でも私は死ねない!とんでもない!とがむしゃらに生きて今は90歳の妻。
伴侶にはいろんな形がある。

[237] アカシア香る
  Date: 2001-07-02 (Mon)
おすすめ度 ★★★

 藤堂 志津子 著  新潮社  発行:2001年5月

 母の看病をするために北海道の実家に戻った美波は3年後、母を見送ったあと、母校の同窓会館の管理人をしていた。45歳になっていた。
 同窓会が開かれ級友たちと会う。社長になっていた音村。リストラされた男。ホステスのような亜也。亜也から七千万円を借りて返さない辻など。
 20年以上東京に住んでいてここで一生をおくるとあきらめていたが、音村の「昔好きだった」という言葉で交際が始まる。
 4年後の同窓会で音村と美波は・・・

[236] あなたはひとりじゃない 悩める 母たちへ 子供たちへ
  Date: 2001-07-01 (Sun)
おすすめ度  ★★★★

 大平 光代 著  光文社  発行:2001年5月

 週刊誌「女性自身」に「だからあなたの声を聞かせて」を連載した。それに多くの手紙が寄せられた。連載できなかったものの中から相談と解決に向けた回答集。
 お母さんから寄せられる相談には、我が子にいい子を求めない。世間体でなくその子の目線になって、話を聞いてやること。同じことのオウム返しでも言い。子供のこころに寄り添って、あせらずゆっくり時間をかけて。原因にまで立ち返って考えてみるようにと。
 子供たちへ、自分自身が立ち直れる力がある。別の場所で前向きに取り組める目標と出会えるようにと。
 そして、同じように弁護士をめざしたい人達には、繰り返しテープをきいたり、独学でなく情報を得るためには弁護士の予備校へも通ってみるなど。
寝るとき意外はテープを離さなかったなど。
◆家族の何気ない会話が解決の糸口。一方的に諭すのではなく、「そうか辛かったんか」「泣いたらええよ」「くやしかったねえ」でいいのです。「そのことが恥ずかしい」と言っては絶対ダメなのだ。世間体は捨てるべし。 

[235]
  Date: 2001-06-30(Sat)
おすすめ度 ★★★★★

 宮尾 登美子 著  新潮社  発行:1996年11月

 15歳の喜和は夏祭りで岩伍をみて、この人と夫婦になると決めてしまっていた。
母と兄は反対したが10歳年上の岩伍と結婚する。翌年龍太郎、翌々年健太郎が産まれる。
岩伍は芸娘娼妓を遊郭に世話をする紹介業「富田屋」をしていた。喜和はその仕事が好きではなかった。やがて、龍太郎は病死し、岩伍は女を作っていた。
女に子が生まれると産後から喜和が育てる。女学校へあがるとき、継母だけの家庭では合格しないと言われ、岩伍のもとへ返す。

[234] 女首領
  Date: 2001-06-29(Fri)
おすすめ度 ★★★★

 生島 治郎 著  実業之日本社  発行:1998年3月

 会社が倒産した。編集長だった上司から、中国人の老婆が優秀な男を探しているからと紹介される。
新宿で金貸しをやっている謝金令に会う。これが経営者の老婆である。孫がいるが手を出すなといわれ、月給60万円で雇われる。
ホステスを追い出して1千万円を要求してきた芦田。経営者の謝は要求を突っぱね、帰国間近いの中国人を300万円で雇い芦田の一味を殺してしまう。
老婆は中国マフィアより凄腕だった。
銀行の不正融資を公表されたとき、悪事を自分一人のものとして服役した男が出所後、謝に1千万円借金に来る。出所後罪をすべてかぶった変わりの代償は「状況がかわった」ということで支払われなかった。事情を聞いた謝は、その上司から金をむしりとる。

[233] カリスマ 上・下
  Date: 2001-06-27(Wed)
おすすめ度 ★★★★★

 新堂 冬樹 著  徳間書店  発行:2001年3月

 小学生だった平八郎は、クリスマスの日、狂った母が父を刺し殺し内臓をとりだし悪魔をさがす姿を目にする。そして、自分の間違いに気がついた母は自らを刺し自殺する。
 やがて成人した平八郎は周りからメシアと慕われるカルト教団の教祖になっていた。強硬な修行を繰り返し、団員を洗脳していった。崇高な教祖を装いながら囲われた奥まった部屋で卑猥なこともやっていた。
 以前、彼は浄水器を売っていた後、債権者に追われる貧困に陥ったが、自分は人を引きつけることが得意であった。でたらめを並べて人から金を借りワンルームマンションで占いやカルト教団、宗教、経典を読みあさり勉強の後、奇跡の館を興す。各地の癌センターの近くでビラを撒き相談者を集めた。行列ができるほどであった。
 世田谷に一軒家を借り、今度は受験生をもつ親を対象に相談者を集めた。
その中に城山麗子がいた。麗子に惹かれた教祖は今度は妻にしようと企む。
しかし、テレビのワイドショーで自分が教団幹部にした者が自分を非難することが連日続いて会員が激減する。
麗子のカルマを取り除こうと夫は奔走する。
◆浅原のオウム教団の教祖とその部下の行動にそっくりの物語。マインドコントロールから覚醒させるようすなど。
まだ記憶に新しいだけに読みながらオウム教団と錯覚しそうになる。

[232] 十二番目の天使
  Date: 2001-06-25 (Mon)
おすすめ度 ★★★★★

オグ・マンディーノ著 坂本 貢一 訳 求龍堂  発行:2001年4月

 妻と息子を交通事故で亡くしてしまった男は、自殺しようと拳銃をこめかみに当てまさに自殺を図らんとする時、友人が尋ねてきた。
リトルリーグの監督を引きうけてくれと頼みにきた。気が進まぬまま選手に会う。選抜テストの時、息子にそっくりの小さいティモシーを選手に指名する。
十二番目の選手である。彼は決して野球はうまくなかった。が、あきらめない熱意があった。ティモシーはボロボロのグローブで、機械小屋のようなところで母と暮らしていた。明るかった。
選手は徐々に成長していくがティモシーはまだヒットが1本も打てなかった。
母が仕事を休んで試合を見に来てくれた日、彼は初ヒットを打つ。そして優勝する。
しかし、ティモシーは病魔が・・・
彼の決してあきらめない前向きな精神、精一杯生きるということに私は助けられたと監督は言う。

[231] 午後三時のルースター
  Date: 2001-06-24 (Sun)
おすすめ度 ★★★★★

 垣根 涼介 著  文芸春秋  発行:2000年4月

 孫がベトナムへ行きたいと言う、現地でつきっきりで同行してもらいたい。と社長に言われ長瀬は15歳の高校生の孫とベトナムへ行く。
孫は慎一郎といい、1年前のベトナムを特集したテレビで父親の姿を見たという。彼の父親は4年前に失踪して行方不明だった。
 ベトナムでは日本人と知るとなぜか危険が付きまとった。慎一郎は父親が大好きだった。最近母親に再婚話が持ちあがり、今しかチャンスがないと父親探しを決心した。
やがて、父は生きていたが・・・
◆ただの父親探しではない。彼が成長するためのよい機会だったのではと思う。離れていても父は父。 

[230] AΩ  アルファ オメガ
  Date: 2001-06-23(Sat)
おすすめ度 ★★★★

 小林 泰三 著  角川書店  発行:2001年5月

 高度一万メートル上空から飛行機が墜落した。1024便の乗客は肉片となって飛び散った。焼け焦げたり萎縮した肉体。
身元確認で夫だと確認した妻は棺を開けて「これが夫だ」という。係員が驚く中、遺体と思われた身体がむっくりと起き上がり白い吐捨物を出した。生きていた!
 闇の中を「ガ」が影を追っていた。ガはバラバラになった人間の肉片、内臓をあつめ完全体を作り上げた。急いでエネルギーを注入し、妻の前で奴は生き返った。
 ロックバンドの「A・Ω」というグループが、彼の生還を復活だと大勢の聴衆に呼びかけていた。彼の顔面にも「ガ」が・・・・
◆ホラーのハードボイルドというべきか、宇宙からの得体の知れない怪物がうごめいて・・・

[229] モザイク
  Date: 2001-06-20 (Wed)
おすすめ度 ★★★★

 田口 ランディ 著  幻冬舎  発行:2001年4月

 「まもなく渋谷の底が抜ける」という正也を、渋谷で見失ってしまう。佐藤ミミは移送ビジネスをしていた。移送とはクライアントを依頼人の希望するところへ移送することだった。その多くは精神病院だ。
おかしいと言われる人間でも、佐藤が話すと話が通じる。佐藤は小さい頃、母から育児放棄され、小さい頃から祖父母に育てられた。
自衛隊へはいり、数年で看護婦になり、精神医療センターで働くようになる。そして、移送ビジネス会社から引きぬかれる。
「渋谷は電子レンジ化している」という正也。14歳の少年である。
渋谷の地下で見つける。
◆携帯を使うと害があるような、記述やホームページの救世委員会なるものが登場し面白くしている。不思議な小説である。

[228] 猫の喪中
  Date: 2001-06-19(Tue)
おすすめ度 ★★★

 佐藤 洋二郎 著  集英社 発行:2000年8月

 「猫の喪中」では15年間飼っていた猫が死んだ。3万円の個別火葬をし、1メートル四方の小さいな墓地を買った。何よりも気が抜けたようにさびしい。今年は年賀状を出すのをやめようと・・
「DOG」では坊主頭にした僕は、テレクラで知り合った彼女は、同僚の男の彼女と知ったがだんだん深い関係になる。次第に友人の絶望的な顔を想像しその顔を見たいと思うようになる。
「秋陽」では、少年時代に育った田舎へいってみる。住んでいたあたりは畑になっていた。村人が変人扱いした老女に会う。「寄って行け」という言葉に誘われてお茶を御馳走になる。昔話を聞きながら、老女の弟と父とが一番の仲良しだったことを知る。みやげに金縁のコーヒーカップを持たせられる。
田舎は変わらないおだやかな風景が広がっている。

[227] 告発
  Date: 2001-06-18 (Mon)
おすすめ度 ★★★★★

 鬼島 紘一 著  徳間書店  発行:2000年6月

 難波組へ出向を言い渡された健三は複雑な思いで引きうけた。
難波組は関西で名門のゼネコンであったが、東京駅周辺の汐留や品川の国鉄所有地を落札していた。
それには、公社との不正があった。予定価格を聞き、それをもとに入札価格を決めていた。
健三は父が事故死ではなく、難波組に殺されたことを知る。そして、難波組の不正を毎朝新聞に告発する。父の死から30年経っていた。

[226] メディアが変えるアジア
  Date: 2001-06-16 (Sat)
おすすめ度 ★★★

 アジアプレス・インターナショナル編 岩波書店 発行:20001年4月

 韓国では2000年12月に発表された統計によると、人口4600万人のうち2200万人がインターネット利用者であると言う。これは世界に類を見ない増加率である。
一方、フィリピンではまだ1割にも満たない利用である。しかし、「I LOVE YOU」のウイルスの創設者はフィリピンの24歳の青年だった。150億アメリカドルの損失を出した。が、彼は1週間ほどで釈放される。彼を罰する法律がその国なかった。
 エストラーダ大統領の辞任を求める署名もインターネットを通じて11万人も集まった。メディアが平和的に大統領の辞任に追い込んだという。
 台湾は、地震の後ニュースはもっぱらケーブルテレビに取って代わられた。定時のニュースが24時間放送するケーブルテレビに抜かれた。最新のニュースが届くことや日本のNHKやキムタクのテレビドラマを見ることを楽しんでいる。

[225] 図説 大正昭和くらしの博物誌
  Date: 2001-06-15 (Fri)
おすすめ度 ★★★★

 近藤 雅樹 編  河出書房新社  発行:2001年3月

 ―民俗学の父渋沢敬三とアチック・ミューゼアム―
 祖父に渋沢栄一をもつ孫の敬三は、小さい頃から玩具を集めるのが好きだった。自宅の屋根裏にコレクションを置き陳列しては友達に見せていた。
やがて、深谷から東京に出てきても大学で「アチック・ミューゼアム・ソサエティ」という学術同好会をつくり、10人の仲間とコレクションを収集した。
民具、郷土玩具など鹿児島や北海道のアイヌまで。
◆なかでも、桶沓(楕円の風呂桶のようなもので棒が一本ついている。ゴム長靴にとってかわられる。)わら製手袋(親指だけが独立して、ななめの市松網)など。始めて目にするものであった。
写真が多数で、郷土資料館よりも種類が豊富にじっくり見られる。本でみる博物館である。

[224] すべて辛抱 上・下
  Date: 2001-06-14 (Thu)
おすすめ度 ★★★★★

 半村 良 著  毎日新聞社  発行:2001年4月

 亥吉と千造は村のはずれの荒れ寺に、ふらっとやってきた妙粋という和尚から読み書きを教わる。これは亥吉の母が江戸へでて身が立つようにと和尚に頼んだことだった。
毎日日が暮れると仕事を終えて寺にやってきて学んでいった。
やがて、11歳になったばかりの2人は、村人の助けを借りて江戸へ旅立つ。
亥吉は日本橋の薬種問屋へ、千造は別の奉公先へいく。
亥吉は徐々に信用を得て店を任せられるようになる。何年か立ち、2人が再会する。それを機に千造は悪いことから足を洗い亥吉と助け合っていく。
2人の頭にあることは荒れ寺での妙粋の教えだった。世の中のしくみ。先を見る目。2人で始めた時代屋という店も繁盛する。

[223] 会社葬送 山一證券 最後の株主総会
  Date: 2001-06-12 (Tue)
おすすめ度 ★★★★

 江波戸 哲夫 著  新潮社  発行:2001年5月

 97年10月、永井は総務部長になった。そしてまもなく11月25日山一の自主廃業のニュースが新聞紙面を飾る。
会社は自主廃業に向けて営業休止の後、清算業務に追われる。一方で再就職先を見つけて去っていく社員達。
それでも、6月26日「第58回定期株主総会」が開かれる。
役員の資産差し押さえは? 廃業後の責任は? 無配? すべての質問に肉声で答える野澤社長。いつもより4時間オーバーし、5時間近くたって怒号の渦の中終了する。
◆実名でかかれた山一證券の自主廃業の顛末。きのうの友は今日の敵という態度を見せる銀行。倒産や廃業後も整理業務が満載していた。

[222] 何ものも恐れるな 上・中・下
  Date: 2001-06-11 (Mon)
おすすめ度 ★★★★

 ディーン・クーンツ 著 アカデミー出版  発行:1999年12月

 「何ものも恐れるな」は死に際におやじが残した言葉だった。56歳だった。母は2年前に亡くなっていた。文学部の教授の父と理学部の教授の母だった。28歳の俺は大切に育てられた。
霊安室に運ばれた父の遺体は、ちょっと離れた隙にふたりの男がおやじの遺体を運び出し、変わりに殺されたヒッチハイカーとすりかえられたようだ。
二人の話を聞いたことで恐怖が襲ってきた。暗闇の中を逃げた。途中、地下水路の中に人間の頭蓋骨を見つける。
なぜ、連中はおやじの遺体を必要としているのか。
病院のアンジェラが「サルでないサルをみた」と話してくれるが、惨殺されてしまう。このことと関係あるのか?
得たいの知れない恐怖となぜ?という疑問が読み急がせる。最初の方が面白い。

[221] ああ言えばこう嫁行く
  Date: 2001-06-09 (Sat)
おすすめ度 ★★★★★

 阿川 佐和子・壇 ふみ 著  集英社 発行:2000年9月

 「ああ言えばこう食う」の続編。
相手の書いた文に「アンタね!」と言い返しているような文章が面白い。
舌好調で女同士の悪口ではないと壇ふみはいうが・・・
笑いが止まらない辛らつなやりとり。おすすめの本です。
 よく食うダンフミ。50回もお見合いしたサワコ。バックに顔を突っ込んでガサゴソするダンフミ。「もっと私のこと悪く書いてくれないと・・・」というサワコ。悪口は書いているつもりはないのに・・・とダンフミ。

220] 赤い月 上・下
  Date: 2001-06-07 (Thu)
おすすめ度 ★★★★★

 なかにし 礼 著  新潮社  発行:2001年5月

 昭和20年8月9日。満州の新京で森田酒造を営む森田波子の家で、ロシア人家庭教師エレナがスパイとの容疑で処刑される。
処刑執行は、恋人だった氷室がエレナの首をはねる。後日、エレナが妊娠していたことを知る。氷室もまたスパイであったが森田親子を助けていく。
その日を境に森田酒造は翌日から財産を投げ出し避難列車に乗る。空腹を抱え日本人が皆、ハルビンをめざした。途中ソ連軍に襲撃される。ひまわり畑で難を逃れた親子。社長だった夫とも再会する。がすぐ夫は連行される。
一家心中をしたアパートの一室をかりて親子は落ち着く。3ヶ月後、夫は氷室の助けで戻ってくるが病死する。そして、一家は日本へ・・・
◆終戦間近の満州の様子。やっとの思いで日本に戻る。次々に降りかかる難題に次ぎはどうなる?と読み急がせるものがある。リアルに戦争の様子がかかれている。おすすめの本です。

[219] リセット
  Date: 2001-06-06 (Wed)
おすすめ度 ★★

 北村 薫 著  新潮社  発行:2001年1月

 父に抱かれて空に引かれるながれ星を見た。3つか4つの頃。
30年に1度と言う獅子座流星群が書かれた本を借りた。小学生には難しいと思われたが友達のお兄さんが貸してくれた。
オリンピックを見ないまま芦屋に引っ越した。宝塚のちかくである。
戦中から戦後、そして東京オリンピックの前までのあの時代。
流星はきっかり33年ごとに現れるわけではなかった。

[218] ジャンプ
  Date: 2001-06-05 (Tue)
おすすめ度 ★★★★

 佐藤 正午 著  光文社  発行:2000年9月

 朝一番のサッポロ行きのJALに乗るために、羽田近くに住む南雲みはるのマンションに泊めてもらうことになった。
その晩酔っ払ってしまった僕は、彼女が近くのコンビニにりんごを買いに行くと出かけたところで寝てしまった。
翌朝、彼女が戻った気配はなかったが仕事で出かける。無事に一番機に乗ることができた。
4日後戻ってみるとみはるは行方不明のまま。みはるの姉と警察へ届ける。
りんごを買った後、そのコンビニで急病人が出て、どうやらその急病人に付き添っていったことが分かった。しかしその後は・・・
5年後、偶然彼女と再会するが・・・

[217] 首相官邸
  Date: 2001-06-04 (Mon)
おすすめ度 ★★★

 渡辺 乾介 著  小学館  発行:1999年5月

 官房長官岳裕三は官邸改造計画を実行しようとする。秘書と称する女性と不倫をするための個室をつくる。
以前にも女性と関係を持ち心中に見せかけて死なせたこともある。
これに不信を抱いた田舎の男が夫人の秘書となり入り込む。田舎のダム建設の反対もあった。
裏で糸をひく夫人にあやつられた長官は周りの人脈を失っていく。
◆もっと政治的な関わりがあると思いきや少しやわらかすぎて失望。こんな低俗な政治家はまずいまい。

[216] 天使などいない
  Date: 2001-06-02 (Sat)
おすすめ度 ★★★

 永井 するみ 著  光文社  発行:2001年4月

 「別れてほしい」ほか8篇の短篇集。
「別れてほしい」では、沙貴は私が付き合った男性を片っ端から横取りをする。Y講師、ラクビー部の男、そして直哉。
その彼女が殺された。原因は「別れてほしい」と彼女が直哉にいったところ口論になり逆上した直哉が彼女の首に手を・・・
きっと彼女のことだから、辛らつな言葉を投げかけたに違いない。「あなたの全部が退屈」とか、いやそれ以上の言葉も・・
 私は拓と外国で結婚式をあげることになっていた。きっと彼女はその拓が日本に帰ってくると思い、直哉と別れようとしたにちがいない。

[215] 白痴群
  Date: 2001-06-01(Fri)
おすすめ度 ★★★

 車谷 長吉 著  新潮社  発行:2000年11月

 ある日、皿田へ30すぎの女の人がやってきた。父の姉で佐伯の伯母と言う人だ。
僕はその伯母に連れられて伯母の家で暮らすことになった。久見子という僕より少し上の子との暮らしが始まった。
「田舎の子」「口が汚い」「がさつ」と言われながらも生活に馴染んでいった。
夏休みには皿田へ帰った。伯母の生活のいいところを伝えるたびに自分がとうにもならないところへ落ち込んでいくようだった。けっして楽しい生活ではなかったのに、「何でもかんでもおばちゃんちやったら・・といいなはんなっ」と母に叱られる。
「田舎の子」でも「町の子」でもない自分がいた。
十月に作文が文集に載った。伯母にそのことで怒られた。作文は上手だったのに内容が伯母とおふろに入ったことだった。「外を歩けない!」と。

[214] 週末婚
  Date: 2001-05-31 (Thu)
おすすめ度 ★★★★

 内館 牧子 著  幻冬舎  発行:1999年2月

 豹と月子が結婚の約束をしていたが、姉の陽子が豹の兄純と計画妊娠したことで結局、兄弟が姉妹と結婚するということに男の親が難色を示し姉の結婚を優先させる。妹は別れる。豹は別の女性と結婚する。
月子は5年後航一と同棲生活をしていた。仕事をしていることから週末婚を提案し実行するが1年後結局別れてしまう。

[213] マリッジ・ブルー
  Date: 2001-05-30(Wed)
おすすめ度 ★★★★

 山田 邦子 著  大田出版  発行:2000年7月

 湯川博士(ひろしという)患者が光の歯医者に治療にやってきた。40半ばになっても痛さにおびえていた。
週1回の割で会ううちに親しくなり、2人でギニアに旅行することに。言葉のわからない国でジェスチャーでなんとか楽しんでくる。
帰国後、同棲を始める。彼には別れた妻に慰謝料を送っていた。このことが光の母がびっくりするが、両家の会食などで結婚にこぎつける。
100名を呼んでのアカプリでの結婚式。マリッジ・ブルーというより幸せな感じで雑務や気遣いをやり過ごしていく。
楽しい小説である。37歳の女性と45歳の男性の結婚物語である。

[212] イントラネットクーデター 小説・退陣動議
  Date: 2001-05-29 (Tue)
おすすめ度 ★★★★

 江波戸 哲夫 著  祥伝社  発行:1997年12月

 レインボー食品はレトルト食品や缶コーヒーで業績をあげていた。最先端のコンピュータを導入し「電脳会議」なるものを取りいれていた。
レインボーネットを開設し社内イントラネットをはじめる。会社の思惑とは違って電子掲示板に会社の批判や電子メール怪文書が出まわる。
週刊東京が報道したことから、会社の不祥事も報道される。電子掲示板は閉鎖され、社員の不満や仕事への弊害が出始める。
役員会で社長は会長の解任を提案、逆に社長は幹部から解任を要求されついに2人共解任される。

[211] 栃木リンチ殺人事件
  Date: 2001-05-28 (Mon)
おすすめ度 ★★★★★

 黒木 昭雄 著  草思社  発行:2001年4月

 「生きたまま埋めるのか、残酷だな」彼がつぶやいた。2ヶ月間熱湯をかけられたり殴られたり金を巻き上げるための人質にされ、知人、友人、親からも借金を強要してまでもむしりとりながら監禁を続けた。そしてネクタイで絞め殺してしまう。コンクリート共に穴に埋められた19歳の正和。
両親は警察に保護願いを出したが、事件として扱ってもらえなかった。1999年12月に殺害された。
 解決に向かった発端は16歳の途中から加わった栃木圏外の少年の自首からだった。
「なぜ、警察は動かなかったのか」という疑問に著者は、被害者も加害者も日産の社員だったこと。日産には天下った警官いたこと。警察沙汰にして社名を汚さないよう圧力があったと思われること。加害者の少年のうちに父親が栃木県警の現職警官がいたこと。などから「動かなかった」のではなく「動けなかった」こと。
著者はいまだに亡くなった正和君が「諭旨退職処分」になっていることを本人の名誉のためにも撤回することを希望していた。
◆オウムの事件も全容を解明されるときに戦慄を覚えたが、このリンチ殺人はそれを上回る地獄のようなリンチだった。「目には目を・・・」の刑罰をこの犯人達に負わせてやりたいものだと思った。でも、だれがそれを執行するか、それをやらせる執行官には誰も任命できないむごさがある。

[210] JR周遊殺人事件
  Date: 2001-05-27 (Sun)
おすすめ度 ★★★★

 西村 京太郎 著  向陽舎  発行:1998年11月

 釧路行「ノサップ」が21時すぎ、釧路の手前で強烈な光線をあびて目がくらんだ運転手が急ブレーキをかけるが列車は横転する。負傷者は重軽傷者はいるものの死者はなかった。
そして1ヶ月足らずでふたたび同じ場所で列車が横転する。1人の死者が出る。犯人からの声明文もでた。が、十津川はこの声明文に疑問を抱く。
5年前に根室であった取込詐欺で15、6億の金が動いた事件があった。これと何か関係があるのではないか・・・

[209] 軽井沢―鎌倉殺人回路
  Date: 2001-05-25 (Fri)
おすすめ度 ★★★

 斎藤 栄 著   徳間書店  発行:2001年4月

 軽井沢の南地区、武田信玄のかくし湯初夜温泉の老舗旅館でストーカーに狙われていると言った女が殺される。密室殺人だった。
こころ探偵事務所の瓜生美也子が調査に行く。縛られ誘拐されたところを探偵長の江戸川に助けられる。自殺とされたが・・・
 北鎌倉の愛蓮寺という尼寺で午前1時か2時ごろ、奥の院で女のすすり泣く声がするという。探偵の明美が張り込む。
余命いくばくもない尼がいた。夜中に確かに男2人がしのびこむのを目撃する。犯人は・・・・

[208] 世にも珍妙な物語集
  Date: 2001-05-24 (Thu)
おすすめ度 ★★★★

 清水 義範 著  講談社  発行:2001年4月

 「CM歳時記」ではワープロは季節の商品だと言う。年賀状を書く頃が一番売れるらしい。シクラメンは12月が季語でなく4月で春が季語だそうです。
「マツノギョウレツケムシ」では200メートルほど並んでいる行列の先頭が何を求めるものか分からないで並んでいる。3時間ほどでやっと先頭になるが「整理券」なるものをもらい、さらに50メートルほど離れた場所から行列の後に並んだという話。
全13篇。1つ1つがなんか本当に奇妙でおかしいです。

[207] 男と女とのことは、何があっても不思議はない
  Date: 2001-05-23 (Wed)
おすすめ度 ★★

 林 真理子 著  PHP研究所  発行:2001年2月

 これまでに出版された著書の表題に関するものを収録した短文集。
 シンデレラ願望なんて女はまずいない。女の幸せなんて男次第って真実を大抵の女のこは自分の母親を通して知っていく。
 奥さんを捨てて他の女性と結ばれた男は必ず同じことをする。など・・・

[206] 熊の敷石
  Date: 2001-05-22 (Tue)
おすすめ度 ★★★★

 堀江 敏幸 著  講談社  発行:2001年2月

 数年振りに会った旧友ヤン。ヤンはあちこちで写真を撮っていた。パリにいると思ったが意外にも今はノルマンディーにいる。
ヤンと自分との2年間のブランクを埋める為の語らい。
なかでも、引用された寓話が面白い。
「一匹の熊と一人の老人はお互いに話し相手のない生活が疎ましくなっていた。そこでばったり会った2人は一緒に暮らし始める。熊は狩を、老人は庭仕事に精を出した。熊の大切な仕事は老人の昼寝の時の蝿を追う事。熊は蝿を追う仕事に忠実なばかりに蝿をめがけて敷石を思いきり投げつける。蝿も老人も殺してしまう。無知な友人ほど危険なものはない。賢い敵のほうがずっとましである。」と言う例え。自分とヤンとの関係も・・・と考える。

[205] 雨の鎮魂歌
  Date: 2001-05-21 (Mon)
おすすめ度 ★★★★

 沢村 鐵 著  幻冬舎  発行:2000年10月

 生徒会長をしていた一村和人が殺された。使わなくなった旧校舎で胸と腹を刺されていた。死亡推定時刻はゆうべの真夜中。
旧校舎は不良の溜まり場で筋金入りの悪たちが9人ほどの溜まり場になっていた。しかし、犯人はこの生徒たちではない。
雑木林に立つ男を見て友人の古館が追った。それを俺も追ったが足を取られ林の中で倒れた。その先に泥まみれの理科教師清水がもがいていた。
やがて清水も死ぬ。前代未聞の事件に地元も生徒も震撼した。犯人は誰なのか・・・なぜ一村は殺されたのか? 男子中学生を主人公に物語が展開する。

[204] アウト トゥ ランチ
  Date: 2001-05-20 (Sun)
おすすめ度 ★★★

 篠原 一 著  集英社  発行:2001年4月

 母親を花瓶で殴って撲殺する。死体は風呂で大量の水で洗浄しビニール袋に詰めさらにトランクに入れて運ぶ。
偶然見つけた空き室の中へ入り込む。寝こんでしまうと見知らぬ女の子が死体を一緒に見せてほしいという。
どういうわけか冷蔵庫がありその中に死体を入れる。
何日かすると腐敗臭がして・・・
窓をめがけて死体を投げ捨てる。外は車道・・・
母は自分が受験に失敗したときからため息をつく。嫌だった。殺してやりたかった。

[203] 空白の時刻表
  Date: 2001-05-18 (Fri)
おすすめ度 ★★★★★

 西村 京太郎 著  徳間書店  発行:2001年4月

 亀井刑事の姪の典子が大学4年で北海道へ彼と行くという。彼は通産省事務官である。
上野からゆうづる3号に乗り青函連絡線で石勝線をゆくあおぞら3号になる。
朝目がさめると「目やにがついている」と言われ洗面所へ駆け込むが不審に思う。目やには出ない体質である。
千歳空港近くのモーテルで女性が殺される。この女性は典子の彼とつながりがある。亀井刑事は彼が犯人だと・・・。一緒の列車に乗りそんなはずが・・・
他に列車小説5篇。いずれも亀井刑事達が早いうちに犯人を見つける。

[202] 父と子の荒野
  Date: 2001-05-16 (Wed)
おすすめ度 ★★★★★

 小林 久三 著  集英社  発行:1995年2月

 父親が30歳くらいの女性と腕を組んで歩く姿を渋谷で見た息子の明は動揺した。父は28年勤めた会社を最近辞めた。金を使い込んだことによるとされていた。
父の元上司が殺される。その上司と父とが電話で言い争うのを以前に聞いたことがある。「絶対に殺していない」という父。そして逮捕される。
母は「あの人は殺していない」という。
関係のあった女性も殺される。明は友人の真弓と話すが、真弓もなぜか家出する。犯人は以外にも・・・

[201] きのうの空
  Date: 2001-05-15 (Tue)
おすすめ度 ★★★★

 志水 辰夫 著  新潮社  発行:2001年4月

 「旅立ち」は黒潮に乗ったらアメリカへも簡単に行けると中学生の茂が友人の清司に話す。
廃船を見つけ手直しをして茂は「3ヶ月立ったら英雄になってみせる」と月の夜茂1人が船出する。見送りは清司1人だけだった。
 「息子」は突然会社に尋ねてきた伯母が翌日になって亡くなったと言う。たいした用もなかったことから尋ねてきたことを家のものには話さないでいた。
寝ていてそのまま天国に行ったようだった。昨日会った時はピンピンしていたのに・・・
短編10篇。のんびりとした田園のひろがる地方の日常を描いた物語。

[200] 仁淀川
  Date: 2001-05-14 (Mon)
おすすめ度 ★★★★

 宮尾 登美子 著  新潮社  発行:2000年12月

 「汚い、乞食が来た」と満州から引き上げた親子に浴びせられた言葉。綾子、要、娘の3人はやっとの思いで四国の仁淀川の要の実家に帰ってきた。
満州では1年間風呂に入ることもなかった。わずかばかりの赤茶けた水を大勢で分け合って生活していた。着物も洗濯もできなかった。
しっかり者の姑と農家の嫁としての生活が始まる。姑との確執、結核との戦い、両親の死など苦労の戦後の物語である。

[199] 郷土はとがや・いま昔  創立20周年記念写真集
  Date: 2001-05-13 (Sun)
おすすめ度 ★★★★★

 鳩ヶ谷郷土史会 編集・発行  発行:1996年11月

 おすすめできるのは、鳩ヶ谷市の皆さんですが、時代の流れを見るには他の方にも参考になるだろう。
創立とは市制のこと。昭和25年からは鳩ヶ谷町だった。そして、昭和42年鳩ヶ谷市になった。
じゃり道に雑木林の広がる写真は昭和41年、鳩ヶ谷小学校と中学校の通学路を作るために山林を開削しているところ。
今の半分もない天神橋、以前は土手のない小さい川だった芝川。
川口市と分離独立を求める、のぼり旗をもつ人々の写真は昭和25年のもの。
NHKの用地だった県立鳩ヶ谷高校の建築中の写真は昭和62年。
雑木林と白線のない道が在る三ツ和交差点あたり、昭和40年ごろ。
歴史書と違いひと目で違いが分かるのは楽しい。

[198] わが子、正和よ
  Date: 2001-05-12 (Sat)
おすすめ度 ★★★★

 須藤 光男 洋子 著  草思社  発行:2001年4月

 「警察は事件にならないと動かないんだよ」と正式な手続きを経て助けを求めたのに生命と財産を失うことになった。
平成11年12月5日東京の三田署から息子の死を知らせる電話がある。
10月6日丸坊主に眉毛を剃った姿で勤務先の日産自動車の夜勤を勤めたあと行方不明になる。その後、つぎつぎに知人や同僚から借金をして総額700万円。真面目な息子に異変が起きたことを察知した両親は地元の警察署に助けを求めるが当初の言葉で対応されない。
日産の上司と出向いても同じだった。そしてときどき20万、30万とお金の無心をする電話があるのみ。
犯人の1人16歳の少年の自首により、他の19歳の3人の仲間も逮捕となった。逮捕者のうち警察官の父を持つ少年も。
日産の同僚だったものが嘘の証言で犯行の発端になった。彼らは遊ぶ金欲しさにリンチを行い正和から金を巻き上げ、サラ金からも脅して借りさせていた。
「暴走続の仲間のリンチ殺人」と報道されるが、正和は暴走族ではないと懸命に訴える。
裁判は1年3ヶ月後結審。いまだに犯人からもその親からも「申し訳ない」という言葉が聞かれない。

[197] ニッポンが好きだから  女2人のうっぷん・はっぷん
  Date: 2001-05-11 (Fri)
おすすめ度 ★★★

 瀬戸内 寂聴 / 櫻井 よしこ 著 大和書房 発行:2000年12月

 30代でオーストラリア人と結婚、そして離婚し50歳でニュースキャスターを辞めた。16年間ニュース番組を担当した櫻井。
51歳で出家。その時は石油ショックで週刊朝日の表紙がトイレットペーパーの漫画だったのに、急きょ瀬戸内の出家の写真に変わったこと。
日本はあれ以来すざましく変わった。日本人は国や社会もバラバラな状態にいる。
中国の李鵬首相が「あの国は30年後には滅びる」というぐらい誰も国家というものを考えていないと指摘する。
女2人が世相、社会、教育に関して語る1冊。

[196] 言葉は静かに踊る
  Date: 2001-05-10 (Thu)
おすすめ度 ★★★

 柳 美里 著  新潮社  発行:2001年3月

 週刊文春に1994年秋から1996年まで連載されたものと読書日記の各新聞や雑誌に掲載されたものをまとめたもの。
 韓国からテレビ局が出演の依頼に来た。突然10日間の密着と以前やった自殺未遂の傷跡をみせてほしいなどと一方的にすすめるので出演を断って席を立ったこと。
妹が7万円もする洋服を買ってきて家族から似合わないというと返品に行くが、「返品は受けない」の店員に腹を立て店で騒いだこと。
韓国籍ということで不動産やから入居を断られたので、今度見つけたときは最初から友人の名前で契約をしたが、いつのまにか自分の本名を書いていた話。それでも新築マンションを貸してもらえた。など。

[195] ごろごろ
 Date  2001-05-08 (Tue)
おすすめ度  ★★★★

 伊集院 静 著  講談社  発行:2001年3月

 斡旋屋という仕事をしている私のところへ「佐久間が金融業者からかなりの謝金をして失踪した」と、東という男が5年ぶりに尋ねてきた。
昔、佐久間と富永と私と3人マージャンをしたり、花見をして騒いだことがあった。
富永は小田原の段段畑に頭を突っ込んでひどくやせて死んだ。生家の在った地元は更地になって親戚もお骨の引取りを拒否した。
やむなくお墓の在る津和野へ佐久間といった。昔つかえたと言う老人が引き取ってくれた。その時の佐久間は富永にお金を貸したと老人から金を引き出させていた。その佐久間がいなくなった。

[194] 八月のマルクス
 Date  2001-05-07 (Mon)
おすすめ度 ★★★★

 新野 剛志 著  講談社 発行:1999年9月

 雄二はお笑いのスターであったが、女子高校生レイプ事件をでっち上げられ、仕事のキャンセルがつづき芸能界から消えていた。後日これは彼女の狂言であることがわかるが、雄二の母は週刊ラストに記事が出たことで自殺した。
相方だった立川と5年ぶりに会った。立川は自分は癌だと言い、しきりに謝るしぐさを繰り返していた。
週刊ラストの記者が殺された。刑事が雄二を尋ねてくるが立川が泊まっていった翌日のことだった。その日を境に立川も行方不明になる。
5年前、まだ活躍していた頃、罰ゲームで後輩が海中で死んだことがあった。
立川の郵便受けからその後輩の父親からの手紙を見つける。

[193] 歩兵の本領
Date  2001-05-06 (Sun)
おすすめ度 ★★★★

 浅田 次郎 著  講談社  発行:2001年4月

 1970年代の自衛隊は給料が法外に安く、劣悪な環境にあった。体罰や制裁は禁止されていたが、それは表向きで陰では陰湿な慣習が残っていた。
川原准尉が着任してきた。自衛隊は軍隊とは違う、軍隊の真似をしてはいけないと諭す。
真夜中の見まわりで昔死体置き場であった部屋から声が聞かれる。腰を抜かしながら「異常なし」と翌日報告する。
何日かして真夜中に川原准尉がまぶたを押さえながら若鷲の歌を歌っていた。彼は予科連の出身だった。彼はずっと仲間の死を引きずっていた。
月日がたち定年を迎えた自分は一曹が止めるのも振り切って満期除隊する。

[192] 貴腐
Date  2001-05-05 (Sat)
おすすめ度 ★★★★

 藤本 ひとみ 著  文芸春秋  発行:2000年11月

 オデットは29歳。この世に退屈をして快楽を求め官能に酔う日々を送っていた。14歳のとき、42歳の夫と結婚したがいく日も過ぎないうちに寝室を別にした。そして、オデットは夫の伯父と恋をする。さらに30歳の伊達男と浮気をする。社交界で得た話題に興味を持つ。
貴族は結婚は家を存続させるためのもの。互いの愛はなかった。
オデットはジュリアンの恋人ジュリエットを横取りしようとたくらむ。しかし、オデットは自ら仕掛けた罠が、結局は彼らの幸せの餌食にされていた。

[191] 柔らかな頬
Date  2001-05-04 (Fri)
おすすめ度 ★★★★★

 桐野 夏生 著  講談社  発行:1999年4月

 1994年8月支笏湖町の別荘地で有香5歳が行方不明になった。有香の母カスミと石山はお互いに妻や夫がある身であったが、密会していた。別荘もそのために石山が購入した。
2家族がそろって別荘に来た。カスミが寝た日の朝、有香がいなくなった。
しばらく北海道にとどまって必死に探す。帰京しても毎年12日に北海道に問い合わせるが手がかりはない。石山とも以来逢わなくなった。
20年前にカスミは実家をでたまま帰っていなかった実家で母に会う。そして、有香を探すのをやめると決心する。
◆結局、犯人が誰かわからない物語で話題になった本である。

[190] 椿姫
 Date  2001-05-03 (Thu)
おすすめ度  ★★★★★

 浅田 次郎 著  文芸春秋  発行:2001年1月

 「体を犠牲にして家族の将来を安泰にするなどと考えないでください」と銀行員に言われる。融資係からも見放された不動産会社社長は3社2億9千万円もの保険に入っていた。
シテイホテルで死のうかとタクシーに乗ったが気分が悪く降りたところが、20年前に暮らした表参道の古アパートの近く。
アパートはマンションに建てかえられいたが、よく行った銭湯「椿湯」はあった。11時をすぎていたが入ると、番台の老人は「あんたは前に来たことがあるね。フーちゃんときていた」と妻の名も覚えてくれていた。
窓の外は山茶花が咲いていた。老人は「あれは姫椿だ」という。自分の家にあるのと同じだが山茶花である。「姫湯だから姫椿だ」と信じている。
貧しかった時代のことはすっかり忘れていた。  ほかに数編あり。
◆なにげない行動にはっと自分をみつめる機会をもって、新しい行き方を見つける。いいはなし。短編である。


[189] 受精
 Date  2001-05-02 (Wed)
おすすめ度  ★★★★★

 帚木 蓬生 著  角川書店  発行:1998年6月

 不慮の事故で恋人を失った舞子は、寛順から旅費も滞在費も出してくれるというブラジルへの受胎旅行をすすめられた。
層山寺の僧はヴェルナー神父。僧と神父はナチスヒトラーの冷凍精子であったが、愛する人の精子だと偽り人工授精をする。
ブラジルでは病院で知り合った妊婦が殺される。妊娠が確認されたとき、医師は事実を告げる。
◆恋人の精子だとおもっていたが、ヒトラーの精子だった。果たして産む決心をするだろうか?

[188] 敵討
 Date  2001-05-01 (Tue)
おすすめ度  ★★★★

 吉村 昭 著  新潮社  発行:2001年2月

 1838年(天保9年)、兄の伝兵衛が何者かに殺される。弟の伝之丞はその殺され方をみて敵討を決意する。藩に「永之御暇」をもらい旅に出る。
続いて倅の伝十郎も・・・。1ヶ月ほど前に尋ねてきた茂平次という男が来たときに兄の怒声が聞かれた。茂平次を良くいう者はいなかった。やがて、父の消息も途絶え、叔父と父をやったのは茂平次と確信する。
6年後、茂平次が牢屋敷にとらわれていることを知る。これでは敵討ちができない。放心したような日がつづくが、牢が火災に見舞われ解放しになる。
そこをねらって念願のあだ討ちを・・・


[187] 赤目四十八瀧心中未遂
  Date: 2001-04-30 (Mon)
おすすめ度  ★★★

 車谷 長吉 著  文芸春秋  発行:1998年1月

 12年前阪神電車の出屋敷駅の近くで焼き鳥屋の使うもつや鶏肉を串に指して汚いアパートに住んでいた。
無一文の生活のまわりには、得体の知れない人々が朽ち果てる一歩手前の生活だった。
アヤちゃんという女に会う。自分は1000万円で売られたと言う。博多に行かないと兄も殺されるというので、赤目四十八瀧で心中しようと・・・
アヤちゃんが思いとどまり、博多へ戻る。自分はぶらぶらして4、5年後再びサラリーマンに戻った。
◆併し(しかしと読む)がやたらに多用してあってちょっと読みずらい。

[186] 春画
  Date: 2001-04-29 (Sun)
おすすめ度  ★★★
 
 椎名 誠 著   集英社  発行:2001年2月

 3月の初めYS11型機で島へ行く。友人に連絡しないで5日間の滞在予定である。年に1度の割でくるこの島は海側につきでた露天温泉が素晴らしいところである。
姉が渡した母の形見をあけてみると、ぼろぼろの和紙に包まれた春画だった。50枚はある。母はなぜ持っていたのだろう。父が持っていたものを母が大切にしていたのではないだろうか。
母が亡くなった今、そのまま持ちつづけようと思う。
他に短編が6篇。

[185] 冷血
  Date: 2001-04-28 (Sat)
おすすめ度  ★★★★★

 田中 光二 著  勁文社  発行:1998年5月

 ダニー・タケイという男が18人を殺して収監されていた。FBIは彼の精液を欲しがっていた。Yが1個多いXY型保有者犯罪者説があり、犯罪科学研究所が欲しがっていたのである。
 美津子とポールは孤児院でナオミを養女にもらう。7歳のとき犬が殺される。続いて公園で乳母車に乗った子が池で死ぬ。
12歳のとき、ボーイフレンドが事故死。ラブホテルで男2人を殺す。
そして、浮気をしている父を母の前で銃殺する。
ナオミには双生児の兄がいた。
◆次々に人が死んでいくが、淡々と殺していく様は異様である。要必見!

[184] 天の刻
  Date: 2001-04-27 (Fri)
おすすめ度  ★★★

 小池 真理子 著  文芸春秋  発行:2001年1月

 「月を見に行く」では病院で知り合った男女が月を見に山道を車で分け入り、その途中で男が交通事故で彼女を死なせたことを話す。追突される直前にほおばったいなり寿司が窒息死の原因になった。
「蝋燭亭」では巣鴨の飲み屋に男が来る。頭の弱い女の子を連れている。恩人の子だという。田舎で誰の子が分からない子を宿し、堕胎にきた。それから何日かして男とその子が山で首吊り自殺をする。
◆6篇の短編、どれにも「死」とセックス描写がある。怠惰的な主人公が主である。

[183]
  Date: 2001-04-26 (Thu)
おすすめ度  ★★★

 末弘 喜久 著  集英社  発行:2001年1月

 岡田と美夏湖は同じ日に休暇を取ったり片時も離れずに会社の中で振舞っているといううわさを夫の木村は耳にする。
木村もまた、浄土というΩ共和国からきた女と関係していた。浄土の国では9歳になると結婚させられ12歳で女の子を産む。そしてその子が9歳になると妻にされ、12歳で子を産む・・・とかれこれ5回も養父はそれを繰り返していた。12歳年上の母がいて、24歳年上の祖母がいる。36歳年上の曽祖母がいる。養父は70歳で健在だった。
木村も10歳に満たない男の子を嫁にもらいたいと・・・
◆空想なのか、妄想なのかわからない。姦淫な小説である。

[182] 対決  バッタ屋啓輔
  Date: 2001-04-25 (Wed)
おすすめ度  ★★★★★

 伊野上 裕伸 著  中央公論新社  発行:2001年1月

 今回は鯨の話。幸田と啓輔は2億円の現金を持って那智勝浦町へ行く。マグロを一船買いしょうとしていた。が、行く先に家電の安売り王の安西がいた。
いったんはマグロを手にしたように見えた幸田だが、丘から安西の携帯電話で船主は寝返ってしまった。
船には鯨が積んであった。禁制品である。台湾から運んできたと言った。

[181] ダヴィデの密使
  Date: 2001-04-24 (Tue)
おすすめ度  ★★★★★

 伴野 朗 著  毎日新聞社  発行:2001年3月

 クリスマスイブの日「モサド」副長官がロンドンで射殺された。サンタクロースの姿をした2人組みだった。
助かった夫人と娘の証言から、左小指のない男とチベット地方の子守唄の口笛が聞こえたという。
1月2日、犯人の1人「アル」は自宅にいるところを「モサド」側に捕らえられる。
もう一人の犯人は「ハジ」だった。「ハジ」はパレスチナ超過激派「ハマス」のテロリストだった。

[180] ウエハースの椅子
  Date: 2001-04-23 (Mon)
おすすめ度  ★★★★
 
 江國 香織 著  角川春樹事務所  発行:2001年2月

 「ちびちゃん」と呼ばれた私は父と母は妹が産まれる前から妹を「ちびちびちゃん」と呼んでいた。すでに両親とも他界し中年になった私は、恋人はいるが結婚はしていない。
妹も大学院生と交際していた。私は恋人と会いながらも死について考えていた。「別れたい」といったがなぜか恋人はそばにいた。
真剣に死について思った。空腹感はなくハーブティだけを飲んでいた5日目。
気がついたら病院にいた。


[179] 銀行大統合
  Date: 2001-04-22 (Sun)
おすすめ度  ★★★

 高杉 良 著  講談社  発行:2001年2月

 富士・一勧・興銀の三行の横断的ビジネスユニット運営方式が6月16日、「椿山荘」の「錦水」で三副頭取の三人委員会で合意が得られた。
発表順序を一勧・富士・興銀の順に決め、会合を重ねていった。
8月19日午後2時42分、NHKニュースで「興銀・富士・一勧」の経営統合が報じられた。金融債・預金合計95兆円の世界最大規模である。
共同持ち株会社設立をふくむ提携を正式発表する。

[178] 老博奕打ち
  Date: 2001-04-21 (Sat)
おすすめ度  ★★★★

 佐藤 雅美 著  講談社  発行:2001年3月

 紋蔵のところへ「奈良屋の出格子を引っ込めろ」と田所弥三郎に言われたが、金をかけて作ったので御目こぼしをとやってきた。出向いてみると一寸ばかりか三寸はでている。これでは相談に乗れぬと断る。が、出向いたときに「塩でも撒いておきなさい」という声と共に男が飛び出した。その男が後日殺される。
襟元に諏訪町茂平なるものが太郎吉と言う者に15両貸していた借用証文が見つかる。浅草と小石川の諏訪町を調べるがいない。紋蔵は長崎や甲州にもあることを知っていた。
長崎の諏訪町の太郎吉が死んだ男の名であった。
出格子で奈良屋を脅していたと言うが、誰の目にも出っ張りは分かる。
奈良屋は薬問屋であった。長崎の人間が関わるとなれば・・・・
いつもねむったような男が、勘を働かせて次々に難問を解決していく。

[177] MAZE めいず
  Date: 2001-04-20 (Fri)
おすすめ度  ★★★★★

 恩田 陸 著  双葉社  発行:2001年2月

 アジアの西の果てに灰色の小高い丘がある。その丘の上に豆腐のような長方形の奇妙な建物がある。四方を白い塀で壁で囲ったようなもの。それは人工的なものか自然の造形なのか。
そして、その中に入ったもののほとんどは戻ってこなかった。突然消えてしまった。かろうじて戻った人がいた。
日本人の二人の男性が調査にやってくる。足場を組んで本格的に・・・
人が誰かいるようでもある。人を飲み込んでそれを栄養源に巨大化しているようでもある。白い壁は人間の骨なのか・・・
◆いやいや、久しぶりに面白い本であった。なんだろうという気持ちが先へさきへと読み急がせる。夢ではないだろうな、興ざめの結末はいやだよっ・・・と思いながら。期待はもてる。おもしろいからお薦めです!

[176] どうなる日本のIT革命
  Date: 2001-04-19 (Thu)
おすすめ度  ★★★

 日本経済研究センター編  日本経済新聞社  発行:2000年11月

 ITの最前線ではネットを利用して映像によって患者の病状を伝え遠隔地から診断、指示などの医療行為を行う遠隔医療の実用化を香川医科大学、広尾病院ですでに実施されている。
道路交通システムでは到着までの時間の有料道路の自動料金収受システム、カーナビなどサービスの開始。
金融では「あおぞら銀行」「イーバンク」などネットを使った銀行のビジネスの基盤を固めようとしている。
世界的に日本のIT化度ランキングは14位。1位はアメリカ、2位ノルウエー、3位アイスランドとなっている。

[175] 「にみくいあひるの子」だった私
  Date: 2001-04-18 (Wed)
おすすめ度  ★★★

 梅宮 アンナ 著  講談社  発行:2001年3月

 アメリカ人の母と俳優梅宮辰夫の間に生まれ、小さい頃から人とは違う顔つきが嫌だった。
川村小学、中学校を経て東横学園へ。小学生では高学年のとき担任の先生から執拗に注意され、保健室や早退を繰り返していた。父もよく学校へ呼ばれていた。
やがて、ヤンママに憧れていた時期があった。が「JJ」という雑誌のモデルになる。自分なりのポーズやアクセサリーなどの工夫をした。
 噂の彼とは5年間の同棲のすえ、借金を借金で返済する彼に見切りをつけた。21歳から26歳までの間のことだった。このことがあって、自分は人々の記憶に残るようになったと思う。

[174] あなたがいない島
  Date: 2001-04-17 (Tue)
おすすめ度  ★★★★

 石崎 幸二 著  講談社  発行:2001年3月

 「無人島へ1つだけ物を持っていっていいとしたら、何を持っていきますか?」という誘いのメールに乗せられ周囲3キロの島へ大学生と高校生のグループ15人が参加する。
ポータブルCDプレーヤー、携帯電話、携帯ゲーム機、本、パソコン、トランプ、マージャン牌などを持って・・・
ところが、その持ち物が次々に紛失する。
無人島といっても、昔保養所か研究所のあったところで冷蔵庫も飲み物もある。そして殺人事件も・・・

[173] 大蛇の橋
  Date: 2001-04-16 (Mon)
おすすめ度  ★★★★★

 澤田 ふじ子 著  幻冬舎  発行:2001年4月

 市郎助は22歳、八重は18歳。三軒へだって長屋に住んでいた。いつしか相愛の仲になっていた。
源蔵が八重を見初めめとりたいと言うが・・・ そんな折、市郎助は道成寺のシテ(大役)を演じることになった。が、本番中に般若の面がない。大事な舞台である。自分の左手人差し指を噛み切り鮮血を顔面に塗り、自らが鬼面になって演じきる。
源蔵は八重が自分の申し出を聞かぬことに腹を立て、自らと駕籠かきや手下と共に八重を数日間蹂躙したうえ殺害する。
それを知った市郎助は、手下の一人を竹やぶに縛り付け2日わたり蚊にたからせる。それは黒い塊として異様な仕打ちだった。
◆あとがきから  「強いものに寄りそうな、弱いものをいじめるな。強いものの責務は弱いものを守ることにある」・・・江戸の治安は公徳心に富んでいた。

[172] 自分に出会う日
  Date: 2001-04-15 (Sun)
おすすめ度  ★★★★

 小檜山 博 著  廣済堂出版  発行:1997年6月

 大地康雄さんから自筆の手紙が届く。自分のために映画の脚本を書いて欲しいというもの。一度断るが、直接本人が会いに北海道にきた。3日間ずっと行動を共にして結局引き受けたこと。「スコール」という映画の脚本を1997年に書いた。
「雪虫」を書いたとき、河野多恵子さんから電話があった縁で、河野さん宅へ訪問した。「あなたの小説にはよくビイルがでるのね」って言われサッポロビイルをご馳走になったこと。
「出刃」が加賀乙彦さんにほめられたこと。「光る女」のロケが自分のうまれた故郷の滝上ではじまったこと。などエッセイ集。

[171] あぁ、ター君は生きていた
  Date: 2001-04-14 (Sat)
おすすめ度  ★★★★

 吉川 隆三 著  河出書房新社  発行:2001年3月

 脳死状態で臓器提供をしたことがあることでテレビ出演のあと「さっきテレビを見ていた方から、吉川さんから臓器提供を受けた人が 元気でいるって伝えて下さいって言っていました」という電話に「ター君は生きていた!」と一家は喜ぶ。
5歳の長男が脳死状態になり、両親はなんとしても生かしたいと言う願いから、臓器提供をする。他人の命より息子がどんな形でもいいから生かしてやりたいという願いを込めて・・・
ところが、提供後「提供は無償の愛にも等しい」と美化するもの「親が勝手に子供の臓器をあげてもよいものか」という心無いものなどの中傷を受ける。
「ドナー家族の会」をつくる。昨今の脳死判定での提供が取りだたされ、15年前の提供者としてコメントが求められる。テレビにも出た。提供した側は報道されるがもらった側は保護される。
しかし、どんな形でもいいから安否が待たれた。そして15年ぶりの朗報であった。

[170] 隣人
  Date: 2001-04-13 (Fri)
おすすめ度  ★★★
 
 重松 清 著   講談社  発行:2001年2月

 「蛇足」にこだわって書かれた。事件や状況に遅れ馳せながら蛇足をつけてみたかった。
池袋の繁華街で起きた1999年9月8日の通行人10人殺傷事件。うち2人の女性が亡くなった。「19歳の地図」を中上健次著に重ね合わせてみた。「社会に見とめられないので人を殺そうと思った」という動機。
「音羽の春奈ちゃん殺害事件」の護国寺は綱吉の母桂昌院の願いで1681年に建てられた。昔は岡場所といわれたところ。今は有名学校が徒歩圏にあり、御受験がささやかれるようになった。
このほか、「てくのはのる」「新潟女子監禁事件」「毒カレー事件」も・・

[169] 風少年
  Date: 2001-04-12 (Thu)
おすすめ度  ★★★★★

 小檜山 博 著  講談社  発行:2000年9月

 あと半年で中学生になるぼくは大急ぎで外へ出た。朝日が山頂までもう30センチも昇っていた。
豚の世話をし、馬を原っぱへ連れて行き早くご飯を食べて5キロの山道を約1時間近くかけて学校へ通う。
「麦刈りするから学校休め」と母が言う。ぼくは学校を休んで手伝った。
お年玉は百円。両親のケンカに震え、「ぼくはグローブもスキーもいらない。父と母が仲がよければぼくは幸せです」「貧乏で修学旅行の積立金も払えない。高校へも行けない。でも食べ物をつくる仕事も大切だから一生懸命勉強する」と作文に書いた。担任の先生に「ありがとう!良い作文だった」とほめられる。
◆ひとむかし前の日本の親子関係は、この本からも今とはちがう、しっかりとしたものを感じる。子供の頃から責任感を培い、自分の足元を見つめている。
夫婦げんかをしながらも一緒に泣き笑う家庭があった。金満が日本の子供をひ弱くしたのか???  原点に戻れる物語である。
[168] 自分を消したいこの国の子どもたち
  Date: 2001-04-11(Wed)
おすすめ度  ★★★★

 町田 静夫 著   PHP研究所  2001年3月

 今の青少年は自尊心が強く些細な事に傷つきやすい。簡単に自分を消したがる。いじめられてひきこもったり、犯罪に走ってしまう。
今の20歳は成人というよりも13歳ぐらいの精神年齢と考えて良い。青年は退行し子どものようになっている。
親もまた、未熟になり、父親は自信を失い母親は子の奴隷になっている。
1980年代にしつけは崩壊している。
彼らを救うにはしつけの段階から自ら考えて自分で責任を持って独立心を発揮させること。人の心を慮る能力を身につけることだ

[167] ある日、カルカッタ
  Date: 2001-04-10(Tue)
おすすめ度  ★★★★

 俵 万智 著  新潮社  発行:2001年2月

 カルカッタを舞台にドキュメンタリー映画を作るためにインドへ行く。
金持ちロイさんの家では84歳になるが子どもはいない。マザーテレサにかなりの寄付をする。今この人の欲しいのは金では買えないもの「名誉・名声」と他人は陰口をたたく。
カルカッタの子供は教育に飢えている。子供の数が多いため遅い回と早い回の二部制で学校が開かれる。みんな夢中である。
ガンジス川、子供の死体が浮かんでいるが、人々は食器を洗い、洗濯をし、身体を洗う。聖なる川、母なる川はひどく汚れている。が、人々は気にしない。
スモーキーマウンテンの子供たちはきれい好き。日に3度も身体を洗う。
「ゴミを拾い家計を助ける子供らのなんなんだろうこの明るさ」
◆実際に見たインドの姿が伝わってくる。マスコミでインプットされたイメージをふっとばすことも・・・

[166] 恐怖
  Date: 2001-04-09(Mon)
おすすめ度  ★★★★★

 筒井 康隆著  文芸春秋  発行:2001年1月

 村田勘市は作家である。近所の画家の町田美都がループタイの紐で殺されているのを見つけた第1発見者である。
ループタイは南條郁雄のものだった。しかし、南條も女のスカーフで絞殺される。姥坂市の文化人14人が古くなった文化財の保護を訴え税務署の保存運動をしていた。が、地震で税務署は崩落し37人の死者を出した。死者より建物が崩落した事を惜しむ文化人もいた。
やがて、文化人の一人が自殺した。村田も自分が何者かに狙われている恐怖と自分が自殺するのではないかという恐怖で頭がおかしくなる。
彼の元には離婚した元妻もやってきていた。
犯人は以外にも・・・・

[165] はやぶさ新八御用旅
  Date: 2001-04-08(Sun)
おすすめ度  ★★★

 平岩 弓枝 著  講談社  発行:2001年3月

 新八郎は京への使いを命ぜられる。お姫様と共に女2人男2人の護衛をするために。どうやら、この道連れは何者かに狙われているらしい。
 箱根越えをしているとき、関所を出た上長坂で斬り合いがあり、乳母と女主人は逃げ、2人はつかまる。追っての3人も馬に跳ね飛ばされる。他の1人は崖から落ち、生死がわからない。1人は死体となっていた。
 小田原宿で姫様一行と一緒になる。姫と男1人女1人であった。
この姫は何者であろうか。京までの道を急ぐ。

[164] 中坊公平・私の事件簿
  Date: 2001-04-07(Sat)
おすすめ度  ★★★★

 中坊 公平 著  集英社   発行:2000年11月

 住専の債権管理機構で回収に辣腕をふるった話は有名である。70歳までの間に500件の事件や裁判を担当する中から、14件を掲載している。
なかでも、若かりし頃の後味の悪い事件としてドライアイスをつんだタクシーが冷房と密封の状態の中で運転手が中毒死した事件。
 裁判の途中で運転手の妻は再婚する。母親が裁判に積極的であったが、判決後支払われた慰謝料は全額妻に。裁判のことばかり頭にあって、その後のことは考えが及ばなかった。はじめから法的には奥さんに全額支払われるが一生懸命にされているお母さんと分けるようにと言えば良かったと悔やむ。
 豊田商事事件ではターゲットに毎日親切にされたら、この営業マンに何かお返しをしなければと預金するつもりで金を出している。親切も営業マンの手口だと気づかいで・・・。税務署に豊田商事の社員が払った源泉徴収分を被害者に返すよう国と掛け合い、被害金の返済に返還金が使われた。 

[163]スコール
  Date: 2001-04-06(Fri)
おすすめ度  ★★★★★

 小檜山 博 著  集栄社  発行:1999年3月

 正男はフィリピンに嫁を探しに行く。デパートや食堂でやたら声をかけては「僕と結婚して日本で一緒に農業をやりませんか」と。カラオケという看板の店で知り合った女が両親に会わせるといい、2日後150万円を渡したが、騙された事に気づく。
クリスティナという女を偶然助ける。父親が病気と知り、入院費も工面してやる。
しかし、正男は異国でやくざの片棒となり、日本へ行く女を斡旋する仕事を手伝っていた後、帰ろうとした空港で麻薬所持で収監される。懲役60年だという。
 正男は40を超えており、これまでひたすら嫁を求めていた。以前に結婚式当日に逃げられたり、集団見合いで知り合った女に400万円を騙し取られたりしていた。刑務所で服役中に、以前に助けた事のあるクリスティナが面会にくる。クリスティナは医者からプロポーズされていた。
◆どじな男の人の良いばかりが取り柄の騙されやすい男。この男の不幸がなぜか笑える。最後はホロリとさせられる。とってもよい!断然お薦めです。

[162] 燃える塔
  Date: 2001-04-05(Thu)
おすすめ度  ★★★

 高樹 のぶ子 著   新潮社  発行:2001年2月

 1メートル20センチのツインタワーが海岸の砂浜に建てられた。真っ白い砂ででききらきら光っていた。
それを見た女の子は母親に教えるが、満潮ですっかり溶けていた。
何日かして再び、それが建っていた。女の子は母親に見せる。急いで家に帰りカメラを持ってきて写真に撮る。その塔は昔、二人が住んでいた町に建てられていてよく眺めた塔そっくりであった。16世紀の白亜の聖堂で町のシンボルだった。
誰がこの塔を建てたのか? やがて、Tさんが建てた事がわかる。

[161] ゆっくり歩け、空を見ろ
  Date: 2001-04-04(Wed)
おすすめ度  ★★★★

 そのまんま 東 著  新潮社  発行:2001年2月

 1998年10月31日、僕の名前がテレビや新聞をにぎわした。児童福祉法違反、16歳の少女の性的類似行為で証人として協力したはずが、大騒ぎになった。家にも帰れず、ホテルを転々とする。
 そのとき、父を思った。33年前に生き別れになった「北村英次」を。そして、父捜しのため九州へ行く。
 僕の母は北村の妾で、僕と姉をもうけた。当時は裕福な暮らしをしていた。やがて、母は父と別れ、東国原(ひがしこくばる)氏と再婚する。僕が9歳の時である。
北村の父は宮崎の三崎町で財を成した人だったが・・・
◆報道からは謹慎生活をしているのかと思ったが、父親を捜していた。東は現在、早稲田大学第二文学部へ在学中である。専修大学を卒業後、ビートたけしの弟子入りする。何か先を急がせる物語である。なかなか面白かった。特に、小学生の頃が多く書かれており、父から受けた愛情を感じさせる。「ゆっくり歩け、空を見ろ」は東氏の母の口癖だった。

[160] 灰夜 新宿鮫Z
  Date: 2001-04-03(Tue)
おすすめ度  ★★★★★

大沢 在昌 著  光文社  発行:2001年2月

 同僚の7回忌で九州に飛ぶ鮫島。結婚半年で自殺した元同僚の宮本の法要の招待が届いた。宮本は死ぬ前に鮫島に手紙をよこした。
宮本の同級生だった男のすすめでホテルに行くが、鮫島は何者かに連れ去られ檻の中に監禁される。
12時間後開放されるが、麻薬の取締官の寺澤が殺されているのを見る。寺澤は覚せい剤と十知会を追っていた。
やがて、南斗精器という精密機器メーカーの武器、ミサイル部品の製造をかぎつける。北朝鮮の影が・・・そして、県警の部長の汚職も。
◆九州にも新宿鮫がとどろいていた。最後に協力した刑事に敬服される鮫島。いつもより少しどきどき感は薄いが面白かった。 

[159] 玉蘭
  Date: 2001-04-02(Mon)
おすすめ度  ★★★

 桐野 夏生 著  朝日新聞社  発行:2001年3月

 有子は上海からH大学に留学した。留学生楼で質という男に会う。祖父の兄である。目の前の男は若い27歳だった。幽霊か????
質は昭和29年に上海に帰ると家を出たまま2度と帰らなかった人だ。生きていたなら97歳である。
でも、有子を知っていると言う。
有子は27歳の時、松村という34歳の内科の専門医と付き合う。
一方、質は浪子と言う女に付きまとわれ質の下宿に「結婚をする」と転がり込んでくる。有子は再び質に会う。
◆交互に有子と質の物語が出てくる。質は97歳である。今は別の女と暮らしている。不思議な物語である。なんだろうと思いながら読み進めるが・・・

[158]
  Date: 2001-04-01(Sun)
おすすめ度  ★★★

 柳 美里 著  小学館  発行:2001年2月

 東由多加氏が亡くなるまでの闘病記。そこに育児が加わって。
末期癌の東氏のもとへ処置のできない妊婦が同居し、看病と出産と育児が始まる。
東氏とは柳が16歳から10年間を共に暮らした人である。末期癌と聞いて放っておけなかった。
出産後、東氏はそれでも19回も息子丈陽を風呂に入れてくれた。
柳は韓国語を話せない。日本で生まれ日本で育った。息子のお宮参りに日本の和服を着て写真を撮る。そのとき、韓国生まれの母も日本の着物である和服を着て孫を抱く。家紋は「親子亀」の紋に決める。
東氏は国立癌センターでの治療のはて亡くなる。東氏の霊がまだここにいたがっていると言われ、引っ越さないで3人が暮らした家にいる。
韓国籍の柳。息子は日本国籍。これからもこの親子の物語がつづくのだろう。

[157] 長州を破った男
  Date: 2001-03-31(Sat)
おすすめ度  ★★★★

 南原 幹男 著  新人物往来社  発行:1999年10月

 長州藩の大坂蔵屋敷頭人の市兵衛は、おのれの要求だけを押しつける大名に腹を立てていた。
 京に長州藩の藩士が資金繰りに困り、あふれているにもかかわらず要求は受け入れなかった。そのうち、預かり手形、為替手形で大名貸しを考え出した。
2万両、さらに2万両と貸していたが、踏み倒しをもくろんでいる大名。そうはさせじと今年の新米を売り渡し、あの手この手で巨額の大名貸しを取り返してしまう。

[156] 危険な関係
  Date: 2001-03-30(Fri)
おすすめ度  ★★★★

 丹後 達臣 著/井上 由美子 脚本  扶桑社  1999年12月

 19年ぶりに日本に戻りタクシーに乗った都築雄一郎は、運転手の魚住新児とは同級生だった。
ホテルまで送ると都築は「貼ってあるラベルが立派なら中身は安物でもそれなりに見える」と外見で人間を判断する事を強調した。
 その夜、魚住は都築をタクシーでひき殺し、全裸にして海に捨てた。
都築は父の急死により都屋スーパーの社長になるために帰国した。魚住は都築の予約したホテルにいたとき、秘書が社長の都築と間違えていることを利用し、社長に成りすます。
 義母は別人である事を知りながら魚住を利用しようとたくらんでいた。
逆セクハラで評判になった女刑事が汚名挽回を狙って経理部長の死と都屋スーパーを調べ始めた。スーパーは偽のワインで巨額の富を得ていた。8月に経理部長が自殺した。
魚住は重役たちの意表をついて次々に新案を打ち出す。秘書も心を引かれていく。しかし都築は死んでいなかった。そして・・・

[155] 宮崎勤裁判 上・中・下
  Date: 2001-03-29(Thu)
おすすめ度  ★★★

 佐木 隆三 著  朝日新聞社  発行:1997年10月

 1988年夏、4人の幼女を殺害。多数のビデオの中に幼児の全裸の写真。わいせつ行為などが写っていた。
日産ラングレーに乗って犯行を繰り返す。遺骨入りのダンボールを届けたり、のこぎりで切断したり、両手は自分で食べたといったり、世の中を仰天させた事件である。
事件後父親は多摩川に飛び降り自殺。姉の結婚は破談になり宮崎自身は多重人格と騒がれた。
ネズミ人間に襲われると供述したり・・・1997年4月14日東京地裁は死刑の判決。しかし、弁護人が控訴手続きをとった。
◆彼の精神的な背景は何か。どのような心理が働いたのか、この事件の時に受けた心理学の授業に教育学者たちは熱弁を振るった。多重人格が今ほど叫ばれない時代に裁判の今後が注目される。刑罰ではなく、本当の宮崎の心理が。

[154] アクシデント 上・下
  Date: 2001-03-28(Wed)
おすすめ度  ★★★★★

 ダニエル・スティール 著   アカデミー出版  発行:1996年4月

 サンフランシスコに住むペイジは、高ニの娘アリソンと息子アンディと夫フラットと幸せな生活をしていた。
娘アンディが友達と4人でドライブに行き事故を起こす。1人死に娘は昏睡状態になる。その間、親友のクロエの父親が励ましてくれる。
夫フラットは愛人を作り家を出る。ペイジはクロエの父とドライブをし、新しい人生を歩もうと決心する。
娘はやがて・・・
◆幸せな家庭が壊れていく様子、どん底の心境のときに心配してくれる他人。困った時に差し伸べる心遣いが二人を・・・ お決まりのハッピーエンドである。

[153] ダブルフェイス
  Date: 2001-03-27(Tue)
おすすめ度  ★★★★

 久間 十義 著  幻冬舎  発行:2000年5月

 神泉駅のちかく喜楽荘アパートで元中央電力会社のOLの扼殺死体遺棄事件が発生した。
島本晃子38歳。MBAを取得し、スミス&チャイルドカンパニーに転職していた。
円山町に現れるのは外資系に転じてからのこの2年前からだった。
ネパール料理店サマディのオーナーでヨーガの先生の田代富彦がヨーガの弟子の晃子殺しに関与しているらしい。田代には国会議員との癒着が・・・・
◆東京電力OL殺人事件の小説版。どきどき感はいまひとつであるが、政治家との癒着などお決まりの悪がはびこる。「東電OL殺人事件」佐野真一著のルポとは別の感覚で読める。

[152]
  Date: 2001-03-26(Mon)
おすすめ度  ★★★

 柳 美里 著  メディアファクトリー  発行:2000年2月

 文芸誌の副編集長からポルノ小説を書いてみないかと言われて書いた本。
18の章からなり、自分と関わった男たちとの出会い、別れなど。空想なのか現実なのかわからないが、性描写もある。
常に自分の気持ちのままに書かれている。東京電力OL殺人事件に関して、自分も本気でホテトル嬢になろうと真剣に考えた時期があるという。
連続した関係を拒絶して1回限りの肉体関係を持ったほうがいいと。

[151] サウンド・オブ・ミュージック アメリカ編
  Date: 2001-03-25(Sun)
おすすめ度  ★★★★★

 マリア・フォン・トラップ 著  文渓堂  発行:1998年12月

 オーストリアからドイツ軍から逃れるために、渡米したトラップ一家のアメリカでの物語。
 ワーグナー氏のコンサート40の契約をして18をこなしたところで妊娠。いったん中止し、産後再び、コンサートをするが45分と長い曲と化粧気のない姿にアメリカ人は心を開かない。
一次オーストリアに戻るが再び渡米。農場を買ってコンサートを続ける。1947年オーストリアの大飢饉になり救援隊をつくりコンサートで呼びかける。
アメリカへ渡米した時33歳だった妻マリアも1987年82歳で逝く。
◆家庭教師として入った女性が、子供たちの心をひきつけ音楽家一家になる。
映画で有名な一家はアメリカで苦労しながら、コンサート活動をつづける。あの物語に続きがあったのだ。徐々にアメリカ社会に溶け込んでいくが苦労の連続であった。