おすすめ度 ★★
赤川 次郎 著 文芸春秋 発行:2002年10月
刑事課の者たちで温泉に行く。途中列車を乗り過ごしてしまった。無人の駅に降りどたばたの末、予約した旅館の人に迎えに来てもらった。
旅館で旧友峰岸にあった宇野。峰岸は妻の不倫をつきとめにきたという。
ロビーにうつろな顔をした女性が・・・。やがて「お母さん」と近寄る娘。宿泊客であろう。
その夜、家族風呂に男の死体が・・・!
殴った拍子に頭を打ってのびてしまったようだ。
妻の不倫相手と心配した原因は携帯電話である。メールが来ていた。銀行員である。
しかし、そのメールは娘が銀行員を名乗って母親を勇気付けるものだったのだ。
他4篇。
おすすめ度 ★★★★★
阿川 佐和子 著 小学館文庫 発行:2002年4月
転校してきたウメ子は、私(ミヨちゃん)とすぐ友達になった。
ウメ子は母と2人暮らしであった。私は兄から紙芝居のおじさんを教えられた。
おじさんはウメ子のお父さんのことをよく知っていた。
ウメ子と私はウメ子のお父さんに会いに行く。サーカスで働いていた。
やがて、ウメ子もサーカスをやるようになる。私が訪ねたときにウメ子は高いところから落下する。防護ネットはなかった。
救急車で運ばれる。私は見舞いに行った。
ウメ子の脇でウメ子のお父さんがお母さんとの離婚のことを話していた。お母さんのことがとっても好きだった。美人のお母さんに嫌われまいとしたことが逆に嫌われてしまったことを。
その話し声にウメ子が気がつく。
元気になったウメ子は再び両親とサーカスで暮らし始める。
◆実話ではなく創作だという。二人がかわいい。楽しい話しである。
おすすめ度 ★★
安斉 育郎 著 講談社 発行:2002年9月
にわか霊能者に水子の霊や先祖の除霊をするための高額な供養料をだましとる霊感商法や、霊視商法が事件となった。
霊に振りまわされる人が多い。
仏教各宗派にアンケート調査した結果、霊は実体を持った存在としたもの9.5%、人々の観念として存在と考えるもの80.4%、霊は存在しない10.1%であった。
霊のたたりはあろうはずがない。被害者意識が生み出す妄念妄想である83.5%、たたりは存在する16.5%であった。
霊感商法の被害をなくすには、霊能番組の放映を自粛させる38.6%、教育でも霊について取り上げる36.1%、霊感商法110番活動の活性化をはかる38.0%であった。
人の体内は18%が炭素原子で、65%が酸素、10%が水素、窒素・カルシウムが1.5%、リン1%であった。
おすすめ度 ★★★
志村 けん 著 マガジンハウス 発行:2002年3月
志村けんは3人いる。1950年生まれの志村康徳。ドリフターズの付き人として働き始めた芸人の志村。そして、バカ殿様、変なおじさん、ひとみばあさんのキャラクターとしての志村。
芸人志村はストレスでいっぱいである。素の志村はおもしろくない。キャクターの志村は衣装をつければそれになりきれる。
三鷹に住まいを持つ。3割ぐらいの満足度であるが、なんでも3割ぐらいで十分だという。野球だって3割やれば大した物。
仕事は8割がた準備だという。用意周到でアドリブなんてやらない。アドリブのように仕組んで、実は用意していたりする。
3年以上女の人とは同棲しない。以前に同棲した女性から500万円ぐらいで別れられるかとおもったが、財産の半分は持っていかれた。以来、3年以上住まないことにした。
おすすめ度 ★★
泡坂 妻夫 著 徳間書店 発行:2002年10月
美津は赤虫が来る日は機嫌が悪い。赤虫とは陰陽道の一派で占いをする白髪のおばあさんである。
1年前、店の前に立ち凶事の徴がでているという。そして大坂屋の身内の死を伝える。
翌日、飛脚が来て、親父の兄が卒中で死んだという。
以来、主に気に入られた赤虫は時々店にやってくる。
家にいて本ばかり読んでいる美津が、たまたま両国で刃物を持った男を捕まえた。手元にあった小桶を男に投げつけたのだ。男は転倒し御用となった。
物干しに落ちて動けなくなっている鳩をおわかが連れて来る。足に紙が結ばれ数字がびっしり書き込まれている。
堂鳩は遠くへ連れていっても必ず育ったところへ戻ることから、大坂の米の相場を江戸へいち早く知らせていた。
やがて赤虫の予言は鳩から得たものと考えられた。相場は不埒なこと。夢裡庵が動く。
おすすめ度 ★★★
重松 清 著 毎日新聞社 発行:2002年10月
2人の孫のうち下の孫ばかりかわいがる義母に、妻は不満を訴える。長男が置き忘れたというジョウロでけつまづいた怒る義母。
車の中でひざの痛さにひざを叩いていたがる義母に、長男が叩くひざを抱え小さい手でなでている。
義母も涙の残る目で鼻の頭を赤くしていた。嫌われていたと思われていた長男は義母の痛いという膝をなでていた。
両親が離婚し、母と暮らす圭祐は父と母に運動会に来てくれるように頼む。
もう一度3人で暮らしたいと思い、泣きながら訴える芝居をすることにした。
しかし、応援にやってきた父は、来月別の女の人と結婚するという。
ビートルズの「リボルバー」を買うために2500円が必要だった。やっと2000円になった。でも、あす、友達はリボルバーを買うという。ビートルズの曲を1つも持たないことから仲間はずれにされていた。今買えばまだ間に合う。僕もレコードの貸し借りの輪に入れる。500円を盗む。父に見つかる。しかし、父は何も言わなかった。以前、父が買ってくれたレコード「赤と青」は僕の欲しい物ではなかったのだ。そんな子供の頃の話しを今、自分の子供に手紙で話しかける。自分の部屋から出てこない子供に向かって・・・。
高校を辞めたいという娘。 父は美容師になりたいという娘の退学を認める。
おすすめ度 ★★★
有馬 秀子 著 ソニー・マガジンズ 発行:2002年10月
百歳で今なお銀座でバー「ギルビーA」のオーナーとして働く著者。百歳の記念に出版された本である。
45歳の時(1948年)戦後まもない頃、五反田駅のまん前にまだ建築中の物件をみてその建物を借りてお店をはじめた。
「ギルビー」と言う名前の喫茶店でした。
戦後は、普通の家庭の人がクッキーを売ったり、小さい子供服をつくったりと女性の進出が目覚めたときである。
秀子も自宅にお手伝いさんもいてご主人もいる不自由のない生活をしていた。
店を出すにあたって、テーブルやコーヒー茶碗を自宅から持ち込んで素人が気ままにはじめた店であった。
そのうち店でビールも出し始める。区画整理の為に3年で移転を余儀なくされ、銀座にお店を移した。
銀座七丁目で「ギルビーA」と言う名でバーを開店させた。
百歳で銀座のバーのマダムということでずいぶんテレビで報道された。
毎日、牛乳2合、ウルメイワシ10匹、緑茶は欠かせないといいます。
河野一郎、遠藤周作、小川宏、松倉悦郎、堤清二など著名な人もお店をひいきにしていたという。
今は一人暮らし、毎日深夜まで働き、一人で頑張っている。
おすすめ度 ★★★★★
ダニエル スティール 著 アカデミー出版 発行:2002年6月
ガブリエラに対する母親からの虐待は度を越していた。
皿を割った、靴下を汚した、ひざをすりむいた、ドレスを汚した等、何かの過ちを見つけてはビンタやげんこつが飛んできた。食事を抜かれ、自分の部屋に監禁された。
父はそんな場面を見ても、自分が娘をかばったことで、もっと娘がいじめられてはかわいそうと口出しはしなかった。
母親に制裁を受けていることは誰にも言えなかった。これだけは秘密にしておかなければならないと信じていた。
やがて両親は離婚し、ガブリエラは修道院に預けられる。
修道院の告白室の向こうの神父にはじめて、自分の生立ちを打ち明けた。やがて、神父との恋が芽生える。しかし、彼はガブリエラが妊娠したことによって、自分の過ちに負けてしまい自殺してしまう。ガブリエラは流産してしまう。
ガブリエラは、シスターの計らいで修道院を出て一人で暮らすことになった。
ガブリエラは22歳になっていた。13年間の修道院であった。一度も両親から手紙も面会もなかった。
やがて屋根裏の小さい部屋を借りて、レストランで働くようになる。アパートの住民との交流も深まり新しい恋人も出来た。
同じアパートのトーマス教授から小説を書くようすすめられ、本も出す。
やがて、仕事も書店に変える。恋人のスティーブはもう何ヶ月も働かずガブリエラの収入で暮らしていた。
教授はスティーブの身元を調査しあまりの非行ぶりに激怒する。
それが原因で帰らぬ人になる。遺言によって遺産の60万ドルをガブリエラが相続する。それをスティーブが狙って・・・!
彼女に幸せが来るのだろうか。
おすすめ度 ★★★★★
黒田 研二 著 原書房 発行:2002年1月
「警察へ行くよ」と外に出た。視界の悪い雨の夜、猛スピードで走ってきた車があった。次の瞬間、僕の前から世界が消滅した。
目をさますと妻の奈々美が食事を作っていた。
蝉が鳴いていた。テレビのニュースが「各地とも真夏日になるでしょう」という。新聞に目をやると8月20日である。
昨日は3月31日のはずだった。半年近くも時が流れている。
「勇作さんは事故に遭ったんですよ。そのショックで事故直前の記憶とこの半年の記憶を忘れている。3月31日以降の記憶の蓄積ができない。その日のことはいったん寝てしまうとリセットされてしまう。」と妻から教えられた。
以来毎日、その日のことをメモにして日記をつけていた。8月ごろからはなぜかワープロで打たれている。
友人の尚人は行方不明になっていた。3ヶ月も前である。同じ頃女子高校生聡美が自殺していた。
田村由嘉里という出版社の女性が原稿の日記を見せて欲しいという。もう3ヶ月も僕のそばで取材をしている。
ある日、尚人がビニールシートにくるまれた死体となって高原の林道のそばの竹やぶで見つかる。
3月31日の事故の前を由嘉里から聞かされる。次第に思い出す。あの日、妻の奈々美は登山仲間の望月亮平と僕を殺す電話をしていた。アリバイの証明をたのんでいた。それを僕は聞いてしまった。物音に気がついて妻が追ってきた。僕はホテルへ逃げた。
ホテルで由嘉里の妹の聡美に会った。警察に行こうと外に出たところを奈々美の運転する車が僕をはねたのだ。
しかし、明日になればまたこの記憶はリセットされる。
おすすめ度 ★★★★★
島田 荘司 著 文芸春秋 発行:2002年8月
王立精神病院の精神障害更正施設にいたロドニーはこれまで絵を書いた経験もないのに、突然48歳のとき描きたいと言う欲望に駆られて描き始めた。
廃城、飛行場、ネス湖、森、丘、小学校など村の風景は現実を精巧に描いていた。それはカメラで写し取った以上に正確であった。
ロドニーは画家として食べて行けるほどになった。
描かれた村が実在すると分かって、ロドニーの事を調べる。
廃城のそばの小さい家に住んでいた。村にはカトリック教会しかなく、ユダヤ教を信仰している親子は村で孤立していた。生きていくために母は村の男達を相手に飲み屋をはじめ、そしてついには娼婦となってしまった。母が男と過ごす間、ロドニーは地下室で時を過ごした。
このことは、村の女性たちと更に溝を深くしてしまった。そして、ついに母は地下室で首をつって自殺したことになってしまった。
しかし、母は地下室はロドニーの聖域であり、立ち入らなかったし自殺などするはずがなかった。
それ以後33年間、ロドニーは精神更正施設の中から出たことはなかった。
ロドニーの住んでいた村で、次々と60代の女性が惨殺される。消防自動車の上に死体を置かれたり、手足がばらばらになって精肉工場でみつかったり、時計台の中で死んでいたりした。
不思議な力で人間の身体が引き千切られていた。摩神の力が動いたのか?
謎を解くかぎはロドニーが過ごした地下室にあった。
殺された女性たちは、ロドニー親子に辛くあたったり、あざ笑ったりしたものたちだった。
しかし、ロドニーは女性たちを殺してはいない!本当の犯人は・・・!
おすすめ度 ★★★★
西村 京太郎 著 講談社 発行:2002年10月
骨董品鑑定のテレビに美人の女性が千姫の打掛を持って出演した。身震いするほどの美人であった。
自分は千姫の末裔だといい、打ち掛けも千万円を提示したが、鑑定者たちは50万円であった。
テレビを見たのちに、3人の男女が殺された。一人はベンツの中で車ごと丸焼けになって死んだ。一人は鋭利な刃物でのどを切られていた。もう一人の女性もやはり鋭利な刃物でホテルで殺された。
いずれも、テレビで見た打ち掛けを買いたいといっていた者達である。
十津川警部は千姫の末裔と称する女性あかりの身辺を調査する。
あかりの父親は福島の貧しい農家の出で、資産家の未亡人と結婚したことから事業を起こし成功していた。千姫の末裔とは言いがたい身の上であった。
父親が65歳のとき、豪邸とともに父も兄も焼死した。警察は酔って寝ているうちに、ふとした事からストーブを倒した事故として片付けた。このときあかりは家にいなかった。
2度目のテレビ出演の際は、千姫の懐剣を鑑定に出す。あかりが出演すると視聴率も上がった。
あかりと鑑定人の対談の録画のときに、あかりは一方的に父と兄の死亡した火災は、事故ではなく殺人だと言いきる。
あかりと千姫にまつわるお宝と殺人事件。十津川が動き出す。
おすすめ度 ★★★
平谷 美樹 著 光文社 発行:2002年9月
岩手県の南部にある聖天神社は百年に一度の大祭が盂蘭盆にある。
人形供養で観光客も集まる神社である。形代とよばれる人の形をした紙に自分と家族の名を書いてお祓いを川に流す大祓いの儀式を行なう。
新人漫画家の苑は薫子と名づけた市松人形を持っていた。
デビューした直後に妊娠し男から堕胎を迫られ泣く泣くおろした子の替わりに大切にしていた。
それを、今の恋人尚人からも「気味が悪いから捨てろ」と言われた。アシスタントの頼子にたのんで人形神社に持っていこうとする。
その時から異変が起こる。無数の人形が群れ、闇の中に光る眼。生きているものに近い生気を放っている。
亡者達が人骨の中に吸い込まれていく。怪奇なことが次々と起こる。薫子はなかなか捨てられない。
おすすめ度 ★★★★
平岩 弓枝 著 新潮社 発行:2002年3月
湯島天神の裏は、龍介やお北、もう一人の龍助やお志尾の遊び場だった。
田沼の龍助はお北が好きであった。龍助は家督を相続し意次と名乗った。
龍介は坂倉屋に養子に行った。お北は廻船問屋の湊屋に嫁いだ。
お志尾は嫁してすぐ離縁された。すでに子ができていたと言う理由である。お志尾の相手はお北の弟の兵太郎であった。
兵太郎は金を作ろうと辻斬りを繰り返していたが、逃れぬと自害した。両親も兵太郎を追うように死んだ。
意次は将軍に信頼され、奥方をもらったばかりだった。が、お北と密かに会っていた。
お北は妊娠する。子が生まれるまで誰にも口外しなかった。夫の幸二郎が倒れ半身不随になる。
お北の子が12歳になり、魚屋十兵衛の船に乗ることになり、意次と対面する。小さい頃の自分によく似ていた。
意次が44歳のとき、お北に屋敷に来るように話す。
ほどなく夫幸二郎が長患いのすえ死んだ。
お北は意次の側室になる。
おすすめ度 ★★★★
ジョン・グリシャム 著 天馬 龍行 訳 アカデミー出版 発行:2002年9月
大学教授のレイのところへ父親から手紙がくる。相続のことで相談したいという。
父親は母の死後、ひとりで暮らしていた。
家に着くと父はソファの上でうたた寝をしているような格好で死んでいた。脇の棚の奥に300万ドル(日本円で三億円)の現金があった。
父は判事を32年間やっていたが、その総額を上回る額であった。
父の脇にはモルヒネが転がっていた。父は痛み止めにモルヒネを打っていた。
弟のフォレストが来る前に現金は物置に隠した。弟は薬物中毒者で定職も持たず、妻の家庭が裕福なのをいいことにぶらぶらしていた。
葬儀は裁判所の1階で盛大に行なわれた。
レイは、父の残した現金がどこから出たものなのか調べ始めた。
近くにカジノもあったが、カジノで儲けるほどの賭けはしていなかった。
細心の注意を払ってお金を車にのせ、貸し金庫を借りてそこに移した。
しかし、誰も知らないはずなのに、貸し金庫の写真が送られてくる。アパートも誰かが押し入り何かを探したような気配がある。
レイは怯えた。弟は自らすすんで更正施設に入った。
父への疑惑、弟への秘密、誰かわからないものからの圧力と、心が休まらない。
弁護士が資産の目録を正確に調査にきた。現金のことは口に出せなかった。
しかし、最後にお金とともに・・・・!!!
おすすめ度 ★★★★★
真保 裕一 著 集英社 発行:2002年11月
1歳5ヶ月の巧が何者かに連れ去られた。1時間後、近くの公園で発見される。戸籍上、巧は非嫡出子で認知されていなかった。
連れ去ったものが何者かわからないまま、母子は逃げるようにその場から引っ越してしまう。
19年後、17歳の恵美が誘拐される。犯人からの要求は恵美の父親の病院に入院中の永渕の命を絶つことだった。永渕は大企業バッカスの会長であった。
犯人の要求通り人質の救出の為に永渕を死んだと思わせる方法を考えついた警察。様態が悪化したとし、集中治療室に入れ面会謝絶にする。その後死因に疑問があると警察病院に収容すると言うものだった。恵美は開放される。
19歳の大学生巧が誘拐される。身代金代わりに株券を七千万円分用意することだった。それもバッカスの株という指定だった。
バッカスの会長永渕が死亡していなかったことが報道される。
バッカス株は値上がりし、7千万円分で2千6百万円分の利益が出ていた。
巧は県道で倒れているところを通りがかった付近の人に発見される。
株券は引き取り指定場所のゴミ箱の中から手付かずで見つかる。
自分の父親が誰なのか知りたかった青年が相続権を放棄し、服役後アメリカに飛ぶ。
◆事件の最中より、事後の成り行きの方が考えさせられる。最後まで目が離せない。おもしろい!
おすすめ度 ★★★
瀬名 秀明 著 文芸春秋 発行:2002年10月
イヌ型のロボットの名はハル。ハルは体長50センチ。AIBOと同じ小犬の姿をしている。
内臓されている認識プログラムで飼い主を見分けることができる。
町のパソコンショップで購入できた。40万円で、35万体も売り出されていた。ハルは災害救助犬としての特性も持っていた。
そして、ついに2足歩行のロボットが出来た。特殊樹脂を使って、人間の女性の曲線を再現した。
今日子はロボットのアダリーに自分が最初に演技をしてそのデータを取り込ませた。舞台にロボットが立つ。
将来はロボットが俳優に取ってかわることができるのか。
おすすめ度 ★★★
高村 薫 著 文芸春秋 発行:2000年1月
新聞に連載された随筆集である。
その中から「介護のこと」についてかいてあった。
著者が20前後のとき、弟が脳腫瘍で入院中であった。同時に自宅で祖母が寝たきりであった。
弟の着替えを母がやっていた。弟の身体を右に傾け、左に傾けして器用に着替えさせる。これはひとつの技術なんだと著者は感心してみていた。
自宅でねている祖母のおむつを著者が取り替えていた。
著者が今度は36歳になった時、父上が胃癌の手術をした。母と交代で付き添いをやった。
肉親の介護は天使の仕事ではなかった。最後は病人が悪鬼に見えてきた。そんな自分に憎悪したという。
むすびに、「高度な在宅介護のシステムの整備が是非とも必要だ」と書かれてあった。1998年8月10日の日本経済新聞の著者の寄稿である。
この時はまだ介護保険が始まっていなかった。
おすすめ度 ★★★★
吉村 達也 著 光文社 発行:2001年10月
柿の木が写った写真に子供の手や髪をおかっぱにした女の子が見えると言う妻。
夫は視覚トリックで心霊写真ではないという。それよりおかしなことを言う妻の行動を非難した。
夫婦には子供はなかった。
しかし、妻は43歳ではじめて妊娠した。夫が長期海外出張中の時、高校時代の親友の夫との一夜の過ちであった。
妊娠を知り、離婚を覚悟で子供を産もうと決心したが、夫の帰国前に流産してしまう。
やむなく誰にも言えず自宅の柿の木の下に葬った。
妻は6枚の写真のうち2枚が心霊写真だという。事実を夫は知らない。
はさみに左利き用と右利き用があることを知った男が、左利きの女に罪を押し付けようと企てた話。
壊し屋マキちゃんと呼ばれる女と別れるつもりだった男。
外国で殺してしまおうと誘い出す。今ごろは海の底にいるはずである。
しかし、女の復讐は死んだ後も女に出した年賀状があて先不明で戻ったことから家庭崩壊の危機に。
おすすめ度 ★★★★
藤田 宜永 著 講談社 発行:2002年3月
地図の等高線や記号から山や谷、町を描く虜になった男は、3年前に一人で訪れたことがある能登に行った。
実際に描いた風景を活写しているかどうか確かめる旅である。
宿の女将志津子は自分を覚えていてくれた。
大手の新聞社の地方部の部長であったが、二年前に心筋梗塞で倒れ今は休職中であった。
ほとんど客のいない宿にしばらく滞在した。女将志津子と関係を持つようになり、村人の噂に上るようになった。
男には妻がいた。女将志津子にも、すでに離婚をしていたが刑務所で服役中の夫がいた。
村人の一人が女将志津子に好意を寄せていた。
おすすめ度 ★★★
群 ようこ 著 世界文化社 発行:2002年10月
はじめて着物を買ったのは高校生のとき、店員サンにさんざん地味だと言われながら、「十日町紬」の濃紺の地にブルーの濃淡の花柄の着物だった。ところが洋服が流行ってタンスの中に入ったままだった。
その後は23か4の時、黄八丈を買った。どてらみたいだといわれて母が着るはめに。
三十代の頃は黒留袖を買った。総刺繍で500万円の着物であった。
伊勢丹で着物を買うようにもなった。二年ぐらいでやめた。
やがてインターネットで買えることがわかった。
洗える着物や古着の着物にも人気があることがわかった。
年配のおばさまには年下が値の張るものを着ていると嫉妬交じりの目で見られるので「母のを借りてきたんですよ」ということに・・・。
◆著者のカラー写真が数枚挿入されている。いずれも着物姿。50代前の小柄な女性である。
おすすめ度 ★★★
小林 信彦 著 文芸春秋 発行:2002年10月
昭和35年日本テレビで「光子の部屋」が日本で最初のバラエティ番組であった。27歳の僕は、草笛光子が出現するとカラーの美しさに驚いた。
この頃はカラーテレビが1台42万円した。公務員の初任給が1万八百円の時代である。
レコード大賞に「黒い花びら」が選ばれ、「シャボン玉ホリデー」が始まる。
前田武彦と青島幸男はライバル同士だった。「青島だあー」で有名になった。
青島は巨泉のことを「あいつはなんで威張っているんだ」と驚き、
やがて、植木等やクレイジーキャッツの時代に。
「夢であいましょう」では坂本九が。
そして、ドリフターズの時代に。更にコント55号が有名になった。近年では俺たちひょうきん族などがあった。
テレビの回顧録というか、なつかしい番組がいろいろ出てくる。
バラエティ中心。巻末にテレビドラマの年譜もあり。
おすすめ度 ★★★★
濱岡 稔 著 文芸社 発行:2002年8月
大学4年の6月、知り合って間もない目羅と僕は、急に思い立って能登半島に旅をした。
土砂崩れの為に無人の駅で途中下車する。誰もいないと思っていた時、飛び出してきたフリーライターの下條がついてきた。
暗闇の街を海の方へ下っていくと、若い男女に出会う。乃木と八神だった。
5人は漆黒の帳の中にみえた洋館で泊めてもらう。
「わだつみのいろこの宮」の絵が飾ってあった。洋館には三十代の女性が夫の死後この家を守っていた。
他に叔母とお手伝いのあやめさんと3人で暮らしていた。
翌朝、最初に下條が殺されていた。それから、乃木も八神も死んだ。この家はおかしい!この家は狂っている。呪縛にさいなまれている。
地下にこの家の主だとおもわれる伊作氏の遺体があった。二年前に死んだとされているが、それよりずっと古い遺体であった。
事実か夢か・・・!!! 家は炎の中に・・・!
おすすめ度 ★★★★
村松 友視 著 河出書房新社 発行:2002年9月
まだ私が2歳の頃、父が腸チフスで27歳で死に、母はまだ20歳であった。母の将来を思い、祖父母がわたしを引き取ることで母を他家へ嫁がせようし、母は去っていった。
中学2年生のとき、母が生きていてすでに知っていたおばちゃんがそうだと知った。
だが、私は祖母と千駄ヶ谷から疎開先の清水で暮らしていた。
祖父は名の知れた文士だったが、他に女性を作り鎌倉で暮らした。
大学生になって上京した。
祖父が亡くなった。祖母は京都の叔父や東京の叔父に引き取られて肩身の狭い暮らしをしていた。
祖母をひきとって私と暮らそうと決心した翌日、祖母は亡くなった。
作家の自伝と思われる小説である。祖母は夫に女を作られ、その上夫の母の看病と孫の面倒を見させられた。気丈な人であった。
おすすめ度 ★★★★★
安東 能明 著 幻冬舎 発行:2002年8月
大船発5時丁度の新宿ライナーが15秒遅れて出発した。運転手は運転からはずされ、やがて自殺する。
機械に挟まれて男が死んだ。時間を制御しているロボットが暴走したのだろうか。
ケーブルテレビでも15秒の遅れがあった。
いずれも同じ時刻に15秒が遅れた。いったい何があったのか。
運転手の梶川は自宅の地下室のノートパソコンに固執していた。パソコンはめまぐるしく動いてコンマ15桁の時刻を表示させつづけた。
梶川を訪ねた美沙子はこの地下室で絶対時計(この世で一つしかない時計。自分の意のままに動かせる時間)があることに気がつく。
美沙子は梶川が事件にかかわっているのではと思う。
平成9年あずさ15号が甲府駅構内で事故、7名死亡、65名が負傷した事件があった。
犯人は意外なところにいた。
読んだ本の紹介です。紹介欄は読んだ後の感じたままの感想や
紹介したい部分を書いたものです。
おすすめ度 ★★★★
藤木 美奈子 著 講談社 発行:2002年9月
再婚同士が結婚して、マイホームを求める。男は前妻との関係が続いている様子。妻はコピーライターとして子育てをしながら頑張っている。
築25年、70坪の農家の平屋を手始めに、2年半すんで、海の見える12階建ての最上階のマンションへ。そして、市内のワンルームに平日は親子3人でくらし、週末はマンションに帰ることを3年続ける。
そして、第2子が生まれるために大型主要駅の徒歩圏に買う。以前は6000万円もしたマンションが売り急ぐために2800万円で購入できた。保育園も小学校も徒歩2分。2階であるのも便利だった。壁も取り払い床もヒノキの無垢材を敷き詰めた明るい部屋に変身した。
夫も前妻と吹っ切れ積極的に仕事に精を出す。
◆徐々に買いかえる様子がおもしろい。
おすすめ度 ★★★★★
高杉 良 著 新潮社 発行:2002年6月
会計事務所をしていた飯塚の元に国税局から査察が入った。顧客が次々と解約を申し出てきた。
「別段賞与」の名の元に脱税をしていた、脱税を指導していたと言う容疑であった。
しかし、飯塚は法律を熟知し、それが違法ではな意と言うことを知っていた。
飯塚の社員が4人検挙され、違法にも50日間拘束された。何かあるだろうと必死に違法を見つけようとするが、見つけられなかった。国会でも審議された。
長引く調査に延べ二千人にもおよぶ調査員が携わった。
昭和39年から七年間に及ぶ別段賞与に関する飯塚事件は、昭和45年11月、飯塚の無罪で幕を閉じる。
そこには橋本代議士、渡辺代議士などが事件の解決に向けて事実を明るみにしていく姿があった。
おすすめ度 ★★★★
山本 一力 著 詳伝社 発行:2002年9月
深川の駕籠かき新太郎と尚平は、鬼子母神と告げた行き先が入谷ではなくて雑司が谷だったことに気がつき、人との待ち合せに間に合わぬという客を雑司が谷まで届ける。
途中で護国寺のあたりで農家の納屋が燃えており、火消しを手伝った為にほんのちょっと遅れて雑司が谷についた。
待ち人はまだ来ていなかった。
藩主の母堂の命日にマツタケを供えるために、筑波山でとったマツタケを取りに行ってまた江戸に届けて欲しいと頼まれる。
2日しか猶予がないが二人は、途中利根川の船が出ないと言う難題に合うが、以前に助けたことのあるものから小船を借りて無事に期限までに届ける。
正月前に富くじのようなものを売り、4人の男が競い合うという勝負を1枚二十文で多くの人が買えるようにした。
千住の寅、深川の勘助、深川の新太郎、入谷の源次の4人が走ったり泳いだりしてゴールを目指す。
町は沸き立った。が、役人が違法と取り締まりにかかる。
おすすめ度 ★★★
東 理夫 著 集英社 発行:2002年8月
父と母はすでに他界していた。両親がすんでいたマンションに入ると満州から引き揚げた時のリュックや僕が小さい頃の洋服が出てきた。
物を捨てられない母は大事にしまっていたのだった。
仕事に失敗して無職の自分は、ふと母が30年前に一人で1年間アメリカへ行ったことを思い出した。
父との確執が原因だろうと思っていたが、あれ以来、母は変わった。母の旅の理由を知らなければ、両親の残した古いものは捨てられない気分になった。今がその理由を確かめるときだと決心して渡米する。
自分たちはカナダで小さい頃暮らしたことがあった。
アルバカーキにすむ母の知人から尋ねることにした。知人から、またその知人と多くの人に会った。
日系人だった両親はカナダでカナダ人からだけでなく、裕福な地域で育ったことで日系人からも差別を受けていた。
両親はその後、満州にわたり日本に戻ってきた。
カナダで生まれた母は、日本で生き続ける決心をした旅だったのであろう。
おすすめ度 ★★★
柳 美里 著 小学館 発行:2001年9月
生後2ヶ月の息子を知人に預け、ガンの末期で病魔と戦う東氏の付き添う。
余命5年といわれた命、今は痛みと苦しみと幻覚を取り除くことができればという思いであった。
ヤクルトが製造した抗癌剤イリノテカンを使って治療をしたいと、これまでの国立がんセンター中央病院から昭和大学豊洲病院に強引に転院する。 3月27日のことである。
本人は排便できないことに神経質になっていてトイレや浣腸を繰り返した。
調子のいいときに息子に合わそうと、病院に連れてくるが目を覚ます気配はなく連れて帰る。
そのうち絵本を残しておきたいと東氏がいう。「月へ望んだケンタロウ君」というものであったが、それもはたせぬまま4月20日死亡する。
夜、昼問わず看護に当たった闘病記である。
おすすめ度 ★★★★★
山崎 洋子 著 毎日新聞社 発行:2002年8月
1940年代の上海。季乃のは8歳の時、日本人に売られた。
母は野鶏(イエチー)と呼ぶ街娼であった。性病がもとで生死の際であった。
さらに松美屋という女郎屋に売られた季乃。客とりは無理で雑用をさせられる。が、夜中にその家の主人が季乃の蒲団に入り込んできて女房に見つかり素裸のまま寒風の中でけり続けられる。
大勢の見物人の中に「やめて!助けて!」という女の子の声で、伽伽羅亭の娘光田葉月に助けられる。
伽羅亭に引き取られ、葉月と季乃は姉妹のように暮らす。学校へも行かせてもらえた。
大人になって、伽羅亭は落ちぶれ葉月は恋に落ちた男の後を追う。
姉妹と仲のよかった男の子が、妻子と共に日本から再び上海に移り、葉月を訪ねる。
葉月と名乗る女は実は季乃であった。伽羅亭の恩を返そうと苦労を重ねていた。
おすすめ度 ★★★
倉本 四郎 著 講談社 発行:2002年9月
父の手が冷たくなって死んだと思った息子は号泣した。ところが、父は声を発して話しかける。「ひき返してきた」と安堵する。
姉が3人、妹が1人、長男でもないのに片腕が麻痺した父を引き取り暮らす。
姉達は「あなたは特別の子だから」という。特別にかわいがられたという意味である。
嫁いでも2番目の姉は高飛車で、いまでも家のことを仕切る。
その父も寝たきりになり、足で「ハヤク、イカセテ、モウ イイノダ」と知らせてくる。
麻痺した手をかばって左手一本で千手観音や馬頭観音を彫った父であった。
父が死を迎えるまでの兄弟のごちゃごちゃや、すでになくなった母の葬式の様子をまじえて、あからさまに書かれている。
おすすめ度 ★★
城山 三郎 著 講談社 発行:2002年9月
ようやく糖尿、肝臓という病気を克服したと喜んでいたが、重い腎臓病に侵されていた。薬の副作用であった。これに対し主治医は一言「見解の相違ですな!」であったという遠藤周作氏のこと。
戦争中にもんぺ姿にならないと注意を受けた淡谷のり子は「女の服装にとやかく言うより戦争に勝ってください」と切り直したという。
テレビは、それは毎日が忘年会の世界。「広く浅く」「相手が怒ったときはひたすら謝る」
アナウンサーが人によって舞い上がってタレント気取りになると人間が薄っぺらになる」など。
週刊誌に1日七枚の短篇を、3年間続けた分をまとめたもの。
おすすめ度 ★★★★★
半村 良 著 光文社 発行:2002年9月
余助の両親は道中師で盗賊であった。ある日、余助の目の前で盗賊同士の争いから、両親を一度殺された。
光明院の小僧正念と改名し寺に引き取られた。利発な子で和尚からも「人の上に立つ素質がある」とかわいがられた。
12歳のとき和尚の死をきっかけに寺を出る。大野木道場で剣を学びたいと名を利八とあらためて入門する。
そこで、ご息女に取り入って婿養子になろうとする男がいた。男は道場を我が物にしようともくろんでいた。利八が簡単に男を倒してしまう。
17歳では名も巳之助とあらため、脇甚の女将の守護人となる。
女将は28歳。お佐登といい、脇甚に泊まる殿様方の相手をする高級娼婦であった。
女を知らぬ巳之助は寝床に連れ込まれはじめて女を知る。このことでまたも脇甚を去る。
江戸に出たとき、今度は徳次郎と名乗る。金細工師として腕を上げる。
ふとした事から、舛屋の隠居が回春を望んでいることから、徳次郎はお佐登と隠居の前で睦み会うが、隠居はいきなり回春し喜ぶ。
隠居所の地下に千両箱で720箱が隠されていることを知る。
鎧通し一味に情報を流し隠居を殺し、どれだけあるか知っているのは巳之助だけをいいことに、千両箱のうちの10箱だけを持ち出させる。
残りの710箱は糞尿を積んだ汚穢船に沈められのんびりと川を下っていった。
おすすめ度 ★★★
なかにし 礼 著 新潮社 発行:2002年7月
岩田照子には4人の女の子がいた。長女はフィギアスケートで日本代表となり、次女は「ブルーライトヨコハマ」で歌手になり、現在では女優いしだあゆみである。
三女もスケートで国体まで行ったが、どちらかというと平凡に暮らしている。四女は歌手になったが1年ぐらいで有名作詞家のお嫁さんになった。
長女のスケートとの競争、次女の歌手になるまでの様子などが面白く書かれている。
現在も7人の孫に囲まれて大阪で暮らしている照子さんである。
四女は著者のお嫁さんである。著者は照子さんの影響を受けて姉妹のこれまでがあると感嘆する。
おすすめ度 ★★★★★
真保 裕一 著 講談社 発行:2002年7月
杉本は12歳のとき、昔の知り合いに刺されたことが原因で父をなくしていた。
知り合いは、なぜか海岸で倒れていたところを中学生の杉本と友人が見つけ病院に収容された。
退院してもまだ本調子ではなく、身よりもないことから杉本の母の好意で家にやってくる。
親子3人と同居人という生活が始まる。父と母はとうに会話が少なく、他人が入ることで一時期家族の団欒があった。杉本も沼田を慕った。
しかし、父の帰りが遅くなる日が続き、もみ合ったはずみに沼田が父を刺していた。
以来、杉本は犯罪被害者の家族ということで特別な目で見られた。
高校を卒業しても仕事は長続きしない。片意地を張った生活をしていた。同じ匂いを持つ靖代と同棲する。
そんなおり、靖代の紹介で再び勤め始めた職場で、皆が自分の過去を知っていることに腹を立て、靖代と別れてしまう。
被害者の取材をしている記者から、靖代が妊娠していること、沼田が出所することを聞く。
沼田がなぜ父を刺したのか、責めるつもりはないが、真実を知りたいと思うようになる。
事件に向き合うことで心が開け、靖代に結婚を申し込む手紙を書く。
おすすめ度 ★★★★
坂東 眞砂子 著 新潮社 発行:2002年3月
山脈のひだの間にできた平坦な地に合掌づくりの大きな家があった。母のちぬとまだ子供の永吉が住んでいた。
たまに道に迷った旅人が泊まって行く。
この家も昔は家族で3、40人が暮らしていた。養蚕の人手をまかなう為でもあった。
しかし、次々と村から出ていった。母のちぬも若い頃、兄とこの村を出ていこうとした。
兄はそのまま出ていったが、ちぬは母や祖母の顔を思い出しあきらめて戻ってきた。
そして永吉を産んだ。村の男といっても3里も離れたところにいる。永吉は兄とのあいだにできた子であった。
深い霧を抜けなければ来れないこの村は、独特の世界ができ下界との接触を拒んでいた。今は村には永吉と母だけであった。
いろり端で旅人が話す話しに母が永吉を村から出そうと思わせる。
おすすめ度 ★★★★★
建倉 圭介 著 角川書店 発行:1997年8月
あと1ヶ月で定年を迎える冴えない男が、コンピュータを利用した犯罪「クラッカー」となって会社への復讐を図る物語。
田所は定年をあと1ヶ月に控えて、亜細亜証券のシステムを破壊してSIS総研の1億五千万円を田所の作った架空口座へ振り込むという計画であった。
以前に社員であった下村という男の名前で合計25枚の銀行口座を作った。
そして、定年1週間前に休暇に入り3月24日の金曜日、早速ATM機から現金の引出しをはじめた。この日、亜細亜証券のホストコンピュータにトラブルが起こるように仕組んでいた。
1日200万円という支払い限度があるため、銀行を廻りながら降ろしつづけた。
3月27日月曜日、事件は発覚した。口座名の下村のところに警察の手が伸びる。
下村は資金繰りに困る零細企業であった。自分ではないと立証する前の3月31日下村は自殺する。
しかし、この下村の死は、以前飯田という部下の死に似ていた。自殺をするはずがないのである。
田所の最後の職場で事務員の実香が、引越や食事にいろいろ世話を焼いてくれた。
田所は搾取した金に手をつけるでもなく、下村の死と飯田の死に元の上司の奥沢の不正をあばこうと決する。
おすすめ度 ★★★★★
今野 敏 著 文芸春秋 発行:2001年11月
ヴィクトルはロシアで元KGBをしていたが、今は無職で明日の食費にも事欠く貧困の生活をしていた。
そこへ、元同僚のオリエンコがやってきた。10年ぶりの再会だった。オリエンコは日本のヤクザに持ち逃げされたことの恨みでそいつを殺して欲しいと依頼する。高額の報酬である。
人生が終わったような生活をしていたヴィクトルは引き受ける。
在日ソ連大使館に赴任したときに名乗った山田勝を名乗る。
ヴィクトルの父は日本人だったことから日本人として振舞えた。
標的は津久茂だった。ロシア女のエレーナに入れ込んでいると言う。
しかし、すぐ日本の警察にロシアからの殺し屋が来日したと情報が入る。オリエンコと滝課長がつながっていた。
エレーナは滝課長の隠し子であった。オリエンコが引き取り自分の娼婦としていた。ヤクザに盗られたものはエレーナであった。
エレーナを連れてヴィクトルは新潟からロシアに戻る。
おすすめ度 ★★★
北上 秋彦 著 講談社 発行:2001年2月
明治時代に八甲田で、猛吹雪の中199名の死者を出した死の行軍があった。1902年1月23日のことである。
31日になって大隊長の濱口が昏睡状態のところを発見されたが、翌々日死亡した。
2年後、津上は、八甲田雪中行軍の調査を命じられた。
その前に弟の墓参りに出向く。そこで、同じ第五連隊で無事に発見された倉木大尉に会う。
濱口の死に倉木大尉が関わっていると疑問を持つ。濱口暗殺説もささやかれる。
しかし、戦場で闘いながらのこの八甲田雪中行軍の調査を快く思わないものが多くいた。
日本軍はこの事件を契機に日本を護る軍から、軍を護る軍に変わっていった。
そんな折、倉木も新たに設けた隊を率いながら戦死してしまう。
真相はわからないが、津上は「世の中知らないままでいたほうがいいこともある」と思うようになる。
おすすめ度 ★★★
宮部 みゆき 著 徳間書店 発行:2001年12月
翌日もまた翌日も、同じ夢を見ていた道子。燃え上がる家の中で黒い人影がぴょんぴょんと跳ね回るように踊っている。
この夢を娘の真由も見たという。火事は近所で12年前に実際にあったことだった。
12年前の同じ頃、人間の肉体から意識を切り離して自由に移動させる「プロジェクト・ナイトメア」という実験が行なわれていた。実験装置が暴走事故を起こした。
その時、「抜け穴」ができ、50人が現実世界に脱走した。12年間でその半数しか収容されなかった。
脱走した者は、肉体を乗っ取りやすい病人や老人、子供を探して乗り移っていた。乗り移られたものは、急に人が変わったように狂暴になった。
道子は夢の中であちらの世界の少年とコンタクトを取ることができた。
おすすめ度 ★★★★★
真保 裕一 著 毎日新聞社 発行:2002年1月
会社を辞めた健一郎の所へ郷里の静岡県秋浦市で高校の同級だった達彦が訪ねてくる。
達彦は無所属で次の衆議院選にでるという。手伝ってくれないかと。
考えた末、健一郎はめったにないチャンスとこれまでの新聞記者の才能を活かし、1年の約束で第一秘書となって手伝うことになった。
手作りの選挙である。ホームページはマキが担当する。1円たりともごまかさず国民に知らせると言う意図であった。
達彦の祖父は昭和18年に静岡県知事をしていた。結局地元事業者との癒着が問題となり、知事を辞職した。
しかし、祖父の気性から世間で言われる癒着は疑問であった。真実を知りたいとホームページにも呼びかける。
政局は急に首相が倒れ、4ヶ月も早く選挙となった。
一方、健一郎は自分が辞職の原因になった老人ホーム計画白紙問題と土地を売った人物の疑惑を深める。
選挙妨害、無言電話、事務所の立ち退きと戦いながら手作りの選挙は進められていく。
「政治が悪い、それを監視しないマスコミが悪い、それでも選挙に行かない国民がもっと悪いというなすり合いを続けていてもしょうがない」と立ち上がった達彦。
おすすめ度 ★★★★★
高杉 良 著 光文社 発行:2002年3月
西田は銀行の調査時代のたった1度の女関係で妻が激怒し離婚した。今はDBという投資銀行に勤める。
セントラルパークで白人の大男に体当たりされる。男はヴィクトリアエコノミックスのオーナーマイケル・A・パターソンであった。
自宅に招かれて親しくなる。
やがて上司が自分の計画をひそかに他の者に流すという不条理に嫌気が差し退職をする。
そして新しいグレース証券会社へ・・・ヴィクトリア債のことでミスターパターソンと意見が対立し辞職を決意する。
私的なことでは秘書の綾子と結婚に向かって進んでいく。
おすすめ度 ★★★★★
高野 和明 著 講談社 発行:2002年7月
骨髄ドナーとなって近日中に提供予定の八神である。自分名義で借りた赤羽のコーポで知人が殺されていた。煮えたぎる風呂の中で縛られた格好で赤い液の中に漬かっていた。水を抜くと身体に十文字の大きな傷があった。その場を離れようとすると見知らぬ男達が追ってきた。殺した人間を間違えたことに気がついたのであろうか。
逃げる前に知人のパソコンを持ち出す。そこにはドナー提供者のリストがあった。
練馬でも女性が十文字の傷をつけられて殺された。文京区でも・・。いずれの者もドナー提供者リストに載っていた。
警察は八神を重要参考人で指名手配する。
八神は必死の思いで逃げる。警察と見知らぬ男達に追われる。
やがて、パソコンの暗号からグレイヴディッカーの大量殺戮とカルト教団の存在を知る。その中に刑事の名も・・・
おすすめ度 ★★★★★
海月 ルイ 著 文芸春秋 発行:2002年5月
美津子は嫁に来て13年。30歳半ばになっても妊娠しなかった。10年前から不妊治療もしていた。
思い余った末に以前に治療に行った事のある病院の新生児室から、赤ちゃんを連れ出す。
看護婦の辻村潤子はすぐ気がつき後を追う。
潤子は離婚し我が子を手放して一人暮しをしていた。自室で過去に1回だけ中絶手術をしたことがあった。
そこへデブ専門のパブで働くひとみが中絶をして欲しいとやってくる。もう堕せない時期になっていた。
やがて、ひとみが出産した子は美津子夫婦の手に渡る。が、それをひとみが知り、多額のお金を美津子夫婦に要求する。
姑の思わぬ行動で美津子夫婦は・・・・
◆結局、病院からは連れ出されたわけではなかった。潤子とひとみと美津子の心情がそれぞれに同情でき、面白い。
おすすめ度 ★★★★★
幸田 真音 著 角川書店 発行:2002年7月
財前有利子はふたば証券で、三条老人から手持ちの2500万円を1週間で5000万円にして欲しいと頼まれる。
ドレーダーの坂上一樹や長田健太の情報のおかげで無事に預かり金を2倍にすることができた。
三条老人は、その金を飲み屋で知り合った女性に送金したいという。有利子はその女性に会う。インターネットを駆使して花屋を営む女性であった。固持する女性に有利子は「もらうのではなく投資してもらうことにし、経営者として株主に還元すればよい」と話す。業績は上がっているのに、資金繰りに窮していた女性はその話をのむ。
有利子に外資系の会社にヘッドハンテングの話が持ち上がる。
面接に出向くと、売ること、儲けることに意欲を燃やす外資系の女性に、自分の抱く信念との違いを見て、そんな会社では働きたくないと思う。
やがて、坂上との結婚話が持ちあがる。
◆女性が生き生きと仕事をする格好よさがある。
おすすめ度 ★★
高村 薫 著 新潮社 発行:2002年5月
インド洋上にいる息子の彰之にあて、母の晴子が百通もの手紙を送る。長い長い手紙である。
手紙は大正生まれの母が旧仮名使いで書かれ、自分の半生や社会のこと戦争のことなどロッキードの児玉のことで終わっている。
息子は遠洋漁業にでながらも、編物をすると言う子でもあった。
杉田初江という女が乳飲み子を抱えわざわざ八戸まで尋ねていき、以来この女に母が月々1万円づつ送金をしていたという事を知る。
姉の美奈子が立腹して子との件をきちんとするまで帰ってくるなと手紙をよこす。
彰之は自分は不始末をした覚えが無いことから腹立たしく思う。
◆久しぶりの高村薫であったが、残念ながら私の好みの小説ではありませんでした。でも頑張って最後まで読みました。
何回も予約をされた本であるのに新しかったのが納得できました。
おすすめ度 ★★★★
宮本 輝 著 新潮社 発行:2002年6月
大阪から富山に移った熊吾の一家であったが、熊吾だけは、中古車事業の発足のために一人大阪で働く。
水商売をしていた自分の娘ぐらいの博美と親しくなる。
キューピー人形を持ちながらローソクの火が引火して瞬く間にやけた人形。博美の顔にセルロイドの一部がはりついて、もえかすの一部は顔の肉にめり込んでいた。
富山では妻の喘息がひどくなっていた。そんな矢先に信用していた久保が新しい事業のために預かった金を全額持って逃げてしまう。
金がないとこれまでの中古自動車の事業が立ち上げられない。
やけどは自分の働いた金で直すと博美は多額の金を熊吾に返す。
一家はふたたび、大阪に向かうことになった。
おすすめ度 ★★★★★
小池 真理子 著 角川書店 発行:2002年6月
陣内青爾は、すでに夫のいる杳子に恋をした。杳子の妹の美夜との婚約が整った。
陣内邸は国分寺の広大な敷地にあった。西洋の王朝洋式の広い庭園を造った。青爾は人を寄せつけない雰囲気を持ちうつ病気質であった。が、杳子にだけは積極的に電話や手紙を送る。
やがて、二人はお互いに愛し合うようになる。もっぱら陣内邸のお手伝いさんの名前で連絡が取られた。
美夜との結婚後も寝室をともにせずひたすら、杳子を求めていた。
やがて、杳子は妊娠する。「おなかの子は青爾の子だ」といえば別の世界が始まったかもしれないが、あえて杳子は、「おなかの子は主人との間に出来た子」と言いきる。
失意に落ちた青爾は自殺してしまう。
おすすめ度 ★★★★★
日明 恩 (たちもり めぐみ)著 講談社 発行:2002年6月
南池袋公園で騒ぎをおこしている数人の若者の一人が銃を持っていた。池袋警察の宮本は、さっそく銃を売っているという東長崎の横川模型店にいく。が、模型店は火事になっていた。
炎の中を倒れた男を運び出すと、男は麻薬取締官の宮田だった。
宮田は敬愛病院に入院する。命に別状は無かった。
一方、星和フーズの林は横川模型店の横川を始末した。林は出きるだけ警察に気づかれないように銃を普通の人に蔓延させることを任務としていた。林は中国人だった。
警察の手が星和フーズにも伸びていく。
◆椎名町に20年ぐらい住んでいたので、自宅近くの敬愛病院の名が出てきてなつかしくなった。横川模型店は架空としても、池袋警察や東長崎駅はあるので、ドキュメントのような気持ちで読めた。
おすすめ度 ★★★★
海老沢 泰久 著 文芸春秋 発行:1998年9月
瑞穂銀行の元行員だった今中徹が殺された。瑞穂銀行伊豆高原荘の宿泊客は13人だった。ゴルフをするためにやってきていた。
13人は金融会社社員、雑貨輸入業社長、不動産社長、証券会社員、ファーストフード経理部長、クラブホステスや愛人といわれる女性などであった。
バブル期に狂乱した裏事情を暴露しながら誰が、何のために今中を殺したか捜査がすすんでいく。
つなぎ融資という仕組み、絵画を買うという裏事情、不正融資などの仕組みが捜査上にわかってくる。
最後に12億円もの割引債の束がでてくる。
「一万円しか持っていないのに誰もが百万円の買い物をしようと思っていた」というセリフが妙に頭に残った。
おすすめ度 ★★★
大石 英司 著 中央公論社 発行:2002年5月
アメリカの田舎で得体の知れない病原菌で人々が死んだ。第二の感染も出始めた。犯人はアメリカ一国だけがつぶれることを望んでまかれたものだった。
病原菌は致死率は90パーセント。人類の破滅を考えると今、アメリカを封鎖し、旅客機の撃墜も止む終えない。
菌は空気感染する。国民には真実を受け入れる覚悟ができるまでは真相は公表はひかえられた。
日本、中国、韓国へ向かう旅客機は撃墜されることになった。
そのうちの1機が択捉島に胴体着陸する。永久凍土ののこるロシアの地に。
乗客は生き延びることが出きるのか? 菌の害は?
おすすめ度 ★★★★
谷 恒生 著 勁文社 発行:2002年4月
梶應毅は28歳になる。17歳のときに父と母と2人の妹が惨殺された。毅は高校の合宿で難を逃れた。
まもなく犯人は自殺し事件は解決に見えた。
毅の父は大手ゼネコンの社長であった。代議士の小野田幹事長代理と癒着していた。5億円の贈賄の容疑が代議士にかけられていた。
地検の手が伸びていた。関東鳴尾会の会長を使って父を始末させた事を知る。
毅は高校を卒業すると自衛隊に入り、23歳でパリに行く。傭兵となってアフリカの紛争地域で実戦経験を積む。
日本に帰っても迷彩服を着用していた。
中央信用金庫に勤める斎藤涼子がマンションの自室で殺された。
涼子は毅の幼馴染であった。
毅の復習が始まった。強靭な体力と武装への抵抗もなく敵に挑んでいく。
おすすめ度 ★★★
森 博嗣 著 講談社 発行:2002年5月
N大キャンパスの一番奥に土井超音波研究所がある。研究所の排水溝へ降りていくハッチのようなハンドルをまわすと下に降りることが出来た。4メートル四方の部屋の一方に穴があいていた。
その穴を20メートルほど進むと、こわれた人形のように人間の死体があった。何年も前のものである。
周防教授が「以前に人工衛星に乗り込んだ宇宙飛行士4人が地球周回軌道上で殺害されたが、世間には知らされていない」と話す。
瀬在丸紅子は、この死体と宇宙飛行士との関係を調べる。
密室のようなところで殺されたのか、事故死なのか。この死体は誰なのか?死体は土井博士なのか?
おすすめ度 ★★★
今野 敏 著 角川春樹事務所 発行:2002年6月
安積警部補は東京湾臨海署に勤務する。妻とは離婚したが、娘とは時々食事をする。
海上保安庁から12人の中国系の密航者を検挙したと聞く。一人は海に飛び込んで行方不明であった。後日 暁埠頭公園でウエットスーツが見つかる。なぜ、置き捨てられたか?
持っていては厄介なことに遭遇したか?タクシーに乗った可能性を推理し、まもなく密航者を捕まる。
金融業者がドザエモンになって有明埠頭で発見される。・・・このように忙しくしているが、娘との約束の時間が迫ってきた。
同僚にせかされるように娘の元へいく。
「子育ての苦労を全部母さんに任せてしまった」という父に、娘は「お父さんは一番大切な生き様をみせてくれている」と言われる胸を詰まらせる。
◆物語はちょうどいいところで終わってしまう短篇の寄せ集めである。主人公は同じであるが・・・
おすすめ度 ★★★★
山本 一力 著 文芸春秋 発行:2002年4月
深川で大工をしている弥太郎は、何気なく見た張り紙で「茶碗・湯飲みの新柄求む」に興味をもち早速描いてみることにした。
白い陶器を買ってきて大工の墨で絵を描く。絵はガキの頃から得意だった。くちばしを赤くしよう思うが赤色を買う金が無い。仕方なく赤い布を貼って仕上げる。それがかわいらしく出来、見事に賞金5両をいとめる。
次回も挑戦するが、今度はだめであった。
3度目の挑戦で龍を描くことにする。出来上がったのをみた女房のおしのは「凄すぎてそんな茶碗はもちたくない」と言われる。
大工の弥助は腕の良い職人であったが、おごったところがなく穏やかな口ぶりであった。毎日の仕事でカンナくずひとつ残さない。
その弥助を畑違いの呉服商の近江屋が気に入り、断りきれず奉公に行く。
三十三軒堂と同じぐらいの大きな呉服屋であった。店の番頭や組頭は反対するが弥助を店に出す。
小僧も女中も誰一人口をきこうとしてくれなかった。「あせらず自分のやれるところからやればいい」という主人の言葉に懸命に覚える。
やがて昔なじみの木場で名高い銘木商の杢柾様が230両の買い物をしてくれる。見立ても弥助を指名してくれた。
しかし、銘木商の杢柾様には事業失敗の噂が・・・
◆弥助はいじめられるが、近江屋の主人と銘木商の杢柾様との関係に感謝する。やっていけそうな気配がするまでが書かれている。皆まで書けないが、よかった。
おすすめ度 ★★★★
赤川 次郎 著 講談社 発行;2001年12月
母の兄にあたる伯父夫婦に引き取られた17歳のがりがりの香子。伯父夫婦には娘の奈々江がいて、香子に何かとやさしくしてくれた。
香子は両親を一度に亡くし、1年間精神の病院に入院していた。
「幽霊を見たとか、そんな話をしないように」と伯母の栄江に言われる。
香子は、危険を事前に察知する能力を身につけていた。また、もうこの世にはいない男の子と友達でもあった。
やがて、香子は伯父の会社で何人かいる秘書の一人として働き出す。
伯母の乗っていた車が事故を起こす。家が家事になる。そんな夢を見た香子だった。実際に・・・
おすすめ度 ★★★
宮尾 登美子 著 講談社 発行;2002年5月
昭和21年、満州から引き揚げた登美子は、夫の実家の高知県に身を寄せる。
高知では3世代同居の農家であった。17歳の登美子に祖父80歳と姑が村のいろいろなきまりを教えてもらいながら「都会からきたお嫁さん」で過ごす。
村には「ゆい」という関係で、田植え時にお互いが雇われ力を貸しあっていた。
また葬式では香典料は「一円頂いたところは一円返す」という習慣があった。
物売りのねえさんがやってきてはお昼を食べていく。
お嫁さんが休めるのは実家のお祭りのとき。野良着から着替えておしゃれして実家に戻る。
昔を振り返る随筆集。離婚する昭和34年までの高知の様子や東京に戻ってからの若いころのことが書いてある。
なつかしい昔の日本がしのばれる。
おすすめ度 ★★★★★
霧舎 巧 著 原書房 発行:2002年2月
日光の奥で犯罪学者の木岬研吾は、義弟の小学校4年の敬二と車で地図にない道を走っていた。
途中でペンションに泊まる事になった。
ペンションには先客がいて満員であったが、別棟の山荘に泊めてもらう。
宿泊客のほとんどは中年の女、琴沢里子の関係者であった。里子は人の秘密をかぎつけては、それをネタに金をせびっていた。
ペンションはオーナーのさゆみと福永という男と支配人の3人で切り盛りしていた。
そこへリチャードという外国人も泊まりに来た。
やがて、泊り客らは道が寸断され孤立したことを知る。
そんな折に、里子が何者かに殺される。そして次に・・・も死ぬ。
誰が、何のために・・・
数年前にこの近くで手抜き工事が原因で交通事故が発生していた。
さゆみはその事故で両親をなくしていた。その事件とのつながりが・・・
◆途中までは犯罪学者が犯罪を分析している。その次はどうなったという気持ちでどんどん読める。
おすすめ度 ★★★★
東野 圭吾 著 実業之日本社 発行:2002年3月
私立中学の受験を控える子供を持つ家族が、合宿と称して別荘地に集まる。4家族である。
ちょっと遅れて別荘についた俊介は、会社からの忘れ物を届けに来たと言う英理子の出現に驚く。
すぐ帰ったように見えたが、夕食時に別の家族が英理子を連れてやってくる。皆の想像通り俊介と英理子は愛人関係であった。
その英理子がベットの上で死んでいた。何かに頭を殴られたようである。
警察に届けようと言う俊介に、他の家族は英理子の死体を湖に沈めるという。妻が殴り殺したということばに俊介も死体遺棄を手伝う。
何かが狂っている。本当に妻が殺したのだろうか・・・
おすすめ度 ★★★★
ロバート・ジェームズ・ウォーラー 著 村松 潔 訳
ソニーマガジン社 発行:2002年5月
68歳になったロバート・キンケイドはアイオワ州のマディソン郡のローズマン・ブリッジとフランチェスカ・ジョンソンを思い出していた。
16年前に家族のもとにとどまった彼女。ピンクのドレスに白いサンダルをはいていた。あの4日間は忘れられない。
一方、フランチェスカも60歳になり、すでに夫リチャードもこの世を去り、子供たちも巣立っていった。
ときどき、もう一度ロバートが戻ってくるかもしれないという思いが、昔の彼女をそのままに保つ努力をさせていた。
1981年11月、ロバートはマディソン郡の橋をめざして旅をはじめた。
◆彼は彼女に再び会えるのだろうかという期待が一気に読み進ませる。
おすすめ度 ★★★★★
中嶋 博行 著 講談社 発行:1999年7月
「不法滞在」では逮捕された中国人学芳明が裁判所の敷地内で銃殺された。中国密入国者のスネークヘッドと学との関係はクリアランス船(第三国を利用して相手国へ向かう船)を利用した可能性がある。台湾からの船が日本に寄港し中国へ向かう。帰りに中国人密航者を乗せて・・・
「措置入院」では、いきなりゴミの清掃車の清掃員が男に襲われ死亡する。精神病院の前だった。最先端と称して患者への虐待が行なわれていた。病院職員は清掃員と同じ服装だった。
「鑑定証拠」はDNA鑑定が必ずしもパーフェクトな鑑識方法ではないことを立証する。
「民事暴力」は銀行の融資と不良債権。あくどい金貸しとの関係は想像を絶する。銀行から3000万を融資を受ける。するとそこへ仲介した金融業者が600万の手数料をとる。残った2400万では当然足りないので倒産する。融資後回収不能がつぎつぎと・・・
◆短篇ではあるが、どの篇も読み応えがある。おもしろい!
おすすめ度 ★★★★
北川 歩実 著 徳間書店 発行:2002年2月
「愛を運ぶオウム」というシナリオを応募した。受賞は出来なかったが今人気の若手俳優の榊修輔をヒロインにドラマ化したいという。
倉橋と良美が共同で書いたシナリオだった。
オウムのパルは人の言葉を理解してしゃべる特殊なオウムであった。「ただいま」といえば「おかえり」と返って来る。「オレンジジュース好き」と言葉は豊富にでてくる。
オウムも一緒に出演するということに、オウムの持ち主の研究所は反対であった。世間に大騒ぎされることをいやがった。
ところが、研究所の乙矢歌奈枝が殺される。
オウムのパルも誰かに連れ去られる。
俳優の榊修輔はオウムに興味を示していた。果たしてドラマ化が実現するのか。
事件は意外な結末になる。
おすすめ度 ★★★★
三宅 彰 著 文芸春秋 発行:1997年4月
佐竹の娘は口数の少ない子だった。ことばの教室へ通っている。
授業参観の最中にも携帯のベルが鳴る。
この12年刑事なって色んな死を見てきたが、今回は縄文時代の遺跡のあった場所から白骨死体が見つかる。
鑑定の結果、昭和60年ごろと推察された。
その頃、強盗殺人、殺人未遂で逃走中に少女を誘拐した砂川義雄が立てこもった山中でもある。
砂川は無一文で逃走のはずが捕まったときに財布に13万円あった。人骨はだれなのか? 13万円はどこから?
佐竹刑事の娘の成長と家族にすまないと思いながらも仕事を優先する姿が描かれている。
おすすめ度 ★★★★
柴田 よしき 著 角川書店 発行:2002年3月
鴨川の河原で茉莉緒の何気ない独り言にのってきた雨森海という背の高い男。モデル出身の若手俳優だった。
失業中の茉莉緒は偶然見たエキストラ募集に応募する。大勢の死人の役でアルバイトをする。が、雨森海の出演する作品だった。
撮影中にエキストラの若者が死ぬ。毒をなめたのか?
海の希望で茉莉緒は芸能プロダクションの社員で海のマネジャーになる。
海の所属するプロダクションは最近若い子が自殺し、その賠償で火の車だった。
車の排気筒をぼろ布でふさがれ、車に乗っていた茉莉緒は意識を失う。次々と起こる妙な事件。
誰が何のために・・・ 犯人は・・・
茉莉緒は芸能マネジャーとして生きていこうと決心する。