読んだ本の紹介です。紹介欄は読んだ後の感想や紹介したい部分を書いたものです。
過去ログ (その4)176冊
平成15年1月〜平成15年12月まで
No | 読んだ日 | 書 名 | 著 者 | おすすめ度 |
575 | 2003-12-25 | 中央構造帯 | 内田 康夫 | ★★★★★ |
574 | 2003-12-24 | 萩・西長門殺人事件 | 木谷 恭介 | ★★★★ |
573 | 2003-12-22 | 家なんか建てなきゃよかった | 見延 典子 | ★★★★★ |
572 | 2003-12-18 | 薄暗い花園 | 岩井 志麻子 | ★★ |
571 | 2003-12-14 | 光ってみえるもの、あれは | 川上 弘美 | ★★★★ |
570 | 2003-12-12 | 痴呆病棟 | 江川 晴 | ★★★★★ |
569 | 2003-12-09 | 杖下に死す | 北方 謙三 | ★★★★★ |
568 | 2003-12-05 | 撓田村事件 | 小川 勝己 | ★★★★ |
567 | 2003-12-03 | 殺意の陥穽 | 深谷 忠記 | ★★★★ |
566 | 2003-12-02 | くろふね | 佐々木 譲 | ★★★ |
565 | 2003-11-30 | 父からの手紙 | 小杉 健治 | ★★★★★ |
564 | 2003-11-28 | 痴情小説 | 岩井 志麻子 | ★★★ |
563 | 2003-11-27 | ぼくが愛したサイコ | 吉村 達也 | ★★★★★ |
562 | 2003-11-24 | 疾走 | 重松 清 | ★★★★★ |
561 | 2003-11-21 | イコン | 今野 敏 | ★★★★ |
560 | 2003-11-19 | ヒミコの夏 | 鯨 統一郎 | ★★★★★ |
559 | 2003-11-16 | 老人のための残酷童話 | 倉橋 由美子 | ★★★ |
558 | 2003-11-14 | 逃げる男 | シドニィ シェルダン | ★★★★★ |
557 | 2003-11-12 | 小説 ザ・ゼネコン | 高杉 良 | ★★★★★ |
556 | 2003-11-10 | 猪苗代マジック | 二階堂 黎人 | ★★★★ |
555 | 2003-11-05 | 盗作 | 伊藤 たかみ | ★★★ |
554 | 2003-11-03 | 炎の条件 | 森村 誠一 | ★★★★ |
553 | 2003-11-01 | エ・アロール | 渡辺 淳一 | ★★★ |
552 | 2003-10-31 | 天使の爪 上・下 | 大沢 在昌 | ★★★★★ |
551 | 2003-10-26 | 検死官逆転 | 山崎 光夫 | ★★★★ |
550 | 2003-10-23 | 煤煙 | 北方 謙三 | ★★★★★ |
549 | 2003-10-21 | 見知らぬ妻へ | 浅田 次郎 | ★★★ |
548 | 2003-10-19 | 吾、器にすぎたるか | 佐藤 雅美 | ★★★★ |
547 | 2003-10-17 | 熱海湯河原殺人事件 | 西村 京太郎 | ★★★★ |
546 | 2003-10-12 | 棟据刑事の東京夜会 | 森村 誠一 | ★★★★ |
545 | 2003-10-08 | 貸しはがし資金回収 | 杉田 望 | ★★★★ |
544 | 2003-10-06 | 4TEEN フォーティーン | 石田 衣良 | ★★★★ |
543 | 2003-10-04 | チェッカーズ | 高杢 禎彦 | ★★★ |
542 | 2003-10-02 | 奪還 引き裂かれた二十四年 | 蓮池 透 | ★★★ |
541 | 2003-10-01 | くらのかみ | 小野 不由美 | ★★★★ |
540 | 2003-09-30 | いっぽん桜 | 山本 一力 | ★★★★ |
539 | 2003-09-26 | 神の島 | 米山 公啓 | ★★★★★ |
538 | 2003-09-23 | 緩やかな反転 | 新津 きよみ | ★★★★★ |
537 | 2003-09-21 | 博士の愛した数式 | 小川 洋子 | ★★★★★ |
536 | 2003-09-19 | 無間地獄 | 新堂 冬樹 | ★★★★★ |
535 | 2003-09-15 | 僕のできそこない市議会物語 | 北行 哲史 | ★★★ |
534 | 2003-09-11 | マリコの食卓 | 林 真理子 | ★★★ |
533 | 2003-09-09 | 忘れ雪 | 新堂 冬樹 | ★★★★★ |
532 | 2003-09-05 | 迷宮百年の睡魔 | 森 博嗣 | ★★★ |
531 | 2003-09-01 | 1985年の奇跡 | 五十嵐 貴久 | ★★★★ |
530 | 2003-08-31 | GMO 上・下 | 服部 真澄 | ★★★★ |
529 | 2003-08-24 | 滅びのモノクローム | 三浦 明博 | ★★★★★ |
528 | 2003-08-19 | 逃亡作法 | 東山 彰良 | ★★★ |
527 | 2003-08-06 | ドスコイ警備保障 | 室積 光 | ★★★ |
526 | 2003-08-01 | 人間の条件 上・下 | 森村 誠一 | ★★★★ |
525 | 2003-07-30 | 贄門島 上・下 | 内田 康夫 | ★★★★ |
524 | 2003-07-27 | あなた | 乃南 アサ | ★★★★ |
523 | 2003-07-22 | 繋がれた明日 | 真保 裕一 | ★★★★★ |
522 | 2003-07-18 | 国銅 上・下 | 帚木 蓬生 | ★★★★★ |
521 | 2003-07-13 | 家族のいくさ | 清水 一行 | ★★★ |
520 | 2003-07-10 | 輝ける日々 | ダニエル・スティール | ★★★ |
519 | 2003-07-05 | 燃える水 | 高任 和夫 | ★★★★ |
518 | 2003-07-02 | ブレイブ・ストーリー 上・下 | 宮部 みゆき | ★★★★ |
517 | 2003-06-27 | コンタクト・ゾーン | 篠田 節子 | ★★★★★ |
516 | 2003-06-23 | 観覧車 | 柴田 よしき | ★★★★★ |
515 | 2003-06-20 | ももこのおもしろ宝石箱 | さくら ももこ | ★★★ |
514 | 2003-06-16 | 検察審査会の午後 | 佐野 洋 | ★★★★★ |
513 | 2003-06-13 | みんな閉じている | 小川 勝己 | ★★★ |
512 | 2003-06-10 | ドク | 岡田 惠和 | ★★★★ |
511 | 2003-06-07 | 沈船検死 | 曽野 綾子 | ★★★★ |
510 | 2003-06-01 | オキーフの恋人 オズワルドの追憶 上・下 | 辻 仁成 | ★★★★ |
509 | 2003-05-27 | キング | 堂場 舜一 | ★★★★ |
508 | 2003-05-25 | 噂 | 荻原 浩 | ★★★★★ |
507 | 2003-05-20 | 愛の領分 | 藤田 宜永 | ★★★★ |
506 | 2003-05-18 | 桜宵 | 北森 鴻 | ★★★★ |
505 | 2003-05-14 | 七人の岡っ引き | 小杉 健治 | ★★★★ |
504 | 2003-05-11 | 骨董市で家を買う | 服部 真澄 | ★★★★ |
503 | 2003-05-08 | 神田堀八つ下がり | 宇江佐 真理 | ★★★ |
502 | 2003-05-06 | リアルワールド | 桐野 夏生 | ★★★★★ |
501 | 2003-04-23 | 武蔵と小次郎 | 津本 陽 | ★★★ |
500 | 2003-04-22 | 悪の華 | 新堂 冬樹 | ★★★★★ |
499 | 2003-04-15 | 天涯の船 上・下 | 玉岡 かおる | ★★★★ |
498 | 2003-04-04 | 交渉人 | 五十嵐 貴久 | ★★★★★ |
497 | 2003-04-01 | 殺人ライセンス | 今野 敏 | ★★★★ |
496 | 2003-03-25 | タクシー | 森村 誠一 | ★★★★★ |
495 | 2003-03-19 | 人形 ギニョル | 佐藤 ラギ | ★★★★★ |
494 | 2003-03-18 | エンブリオ | 帚木 蓬生 | ★★★★★ |
493 | 2003-03-16 | 銀行総務特命 | 池井戸 潤 | ★★★★ |
492 | 2003-03-14 | こころの羅針盤 | 五木 寛之 | ★★ |
491 | 2003-03-12 | 虚無のオペラ | 小池 真理子 | ★★★ |
490 | 2003-03-10 | BODY&MONEY | 鎌田 敏夫 | ★★★★ |
489 | 2003-03-08 | 秋の猫 | 藤堂 志津子 | ★★★★ |
488 | 2003-03-06 | 路上ども | 松野 大介 | ★★★ |
487 | 2003-03-04 | 邪恋 | 藤田 宜永 | ★★★★ |
486 | 2003-03-03 | 帝都<切り裂きジャック>の殺人 | 楠木 誠一郎 | ★★★★ |
485 | 2003-03-01 | 汚名 | 多島 斗志之 | ★★★ |
484 | 2003-02-27 | 天国の罠 | 堂場 瞬一 | ★★★★ |
483 | 2003-02-26 | 仇敵 | 池井戸 潤 | ★★★★★ |
482 | 2003-02-25 | よく見る夢 上・下 | シドニィ・シェルダン | ★★★ |
481 | 2003-02-23 | 海猫 | 谷村 志穂 | ★★★★★ |
480 | 2003-02-21 | ハゴロモ | よしもと ばなな | ★★★★ |
479 | 2003-02-20 | 妻の大往生 | 永 六輔 | ★★★ |
478 | 2003-02-18 | 屋上のあるアパート | 阿川 佐和子 | ★★★★ |
477 | 2003-02-17 | 砂の狩人 上・下 | 大沢 在昌 | ★★★★★ |
476 | 2003-02-15 | 巡査 埼玉県警黒瀬南署の夏 | 岩城 捷介 | ★★★★ |
475 | 2003-02-14 | ゲームの名は誘拐 | 東野 圭吾 | ★★★★★ |
474 | 2003-02-13 | さむらい | 鳥羽 亮 | ★★★★★ |
473 | 2003-02-11 | 悪口の技術 | ビートたけし | ★★★ |
472 | 2003-02-10 | 標的走路 | 大沢 在昌 | ★★★★ |
471 | 2003-02-08 | 倒錯のオブジェ 天井男の奇想 | 折原 一 | ★★★★★ |
470 | 2003-02-05 | 星宿海への道 | 宮本 輝 | ★★★ |
469 | 2003-02-02 | 黒焦げ美人 | 岩井 志麻子 | ★★★★ |
468 | 2003-01-30 | ホームレス失格 | 松井 計 | ★★★ |
467 | 2003-01-28 | 椿姫―ニンフォマニア | 和田 はつ子 | ★★★★★ |
466 | 2003-01-25 | 網にかかった悪夢 | 愛川 晶 | ★★★ |
465 | 2003-01-23 | 沈黙者 | 折原 一 | ★★★★★ |
464 | 2003-01-21 | 変態 | 藤本 ひとみ | ★★★ |
463 | 2003-01-19 | 髭麻呂 | 諸田 玲子 | ★★★ |
462 | 2003-01-16 | 疾駆する夢 | 佐々木 譲 | ★★★★★ |
461 | 2003-01-13 | ダーク | 桐野 夏生 | ★★★★★ |
460 | 2003-01-06 | スキッピング クリスマス | ジョン・グリシャム | ★★★★ |
575■ 中央構造帯 |
Date: 2003-12-25 (Thu) |
おすすめ度 ★★★★★
内田 康夫 著 講談社 発行:2002年10月
平将門の塚のある場所に日本長期産業銀行があった。銀行には将門の椅子と呼ばれる次長の椅子があった。その椅子に座ったものが次々に不思議な死を遂げていた。
奈緒美は新しい田中次長と食事をした。将門の話しをした翌日、千葉県の市川市八幡不知藪と言う場所で次長は殺された。
千葉県の柏市と松戸でも以前、長産銀行の人間が死んだ。秩父市でも五十嵐係長が殺された。
中央構造線が北茨城を東端として松戸・柏・をとおり、秩父にも達していた。将門の時代にこの構造線上で乱が起こっていた。
浅見は何気ない新聞記事からこの事件に興味を持った。同窓だった奈緒美との協力で事件を解決していく。
長産銀行は不良債権は増える一方で、その融資には議員の力が働いていた。
将門のたたりに見せかけて殺すという得体の知れない力を感じていた。
574■ 萩・西長門殺人事件 |
Date: 2003-12-24 (Wed) |
おすすめ度 ★★★★
木谷 恭介 著 ワンツーマガジン社 発行:2003年11月
椎名紗智は萩から下関の中間にある西長門海岸の日本海景勝地へ向かった。途中で真珠色のワンピースを着た女性と出会う。足の長い男性と一緒だった。
二人の話しから「ユーキードー」と言う言葉が耳に残った。
その女性がその夜のニュースで萩市の越ヶ浜海岸で殺されたという。すぐにでも警察に情報を提供しようとする紗智に連れの末森は、関わり合いになりたくないから警察にいくのを止める。
東京に戻ってから警察庁の宮之原が尋ねてくる。紗智は宮之原にはすべてを話す。3日ほど捜査に協力する為に再び山陰に向かう。
山陰ではこの景勝地をリゾート開発しようとする工藤興産がいた。ハマチの養殖をしていた三谷は15万匹のハマチを何者かによる毒殺で死滅する被害を受けた。それを苦に自殺した。開発業者は亀井という男からは1町5万もしない土地を500万、計5億円で買い取っていた。
有機銅という農薬があることを知った。また亀井を追っていると結城洞というクラブのある事もわかる。
殺された女性は、ハマチで被害を受けた男の妹であった。
573■ 家なんか建てなきゃよかった |
Date: 2003-12-22 (Mon) |
おすすめ度 ★★★★★
見延 典子 著 講談社 発行:2003年10月
窓 窓が1つだけ低くなっている。気になって仕方ない。思い余って設計事務所に相談すると「今の段階で文句を言われたら現場の雰囲気を悪くする。大工だってケチをつけられたと思う。」といわれた。施主の洋子は設計士のプライドで家を建てられてはたまらないと憤慨する。
3週間ほどして現場にいる大工は「施主様のご希望通りにできるに限る。暮らしてみて喜んでもらえるのが一番うれしい」という。
窓は思い通りに取り付けられた。いろいろあったが家は無事にたった。しかし、友達に教えるはずだった教室は生徒不足で集まりそうにない。
子供部屋 子供も受験期になるので子供部屋が欲しいと売りだし物件を見に行った。4LDKの一戸建てが22倍の競争率であったが、辞退者が出て買える事になった。40坪の土地に32坪の家が月々12万の支払いで35年のローンである。
そして1年。突然に起こった地震で家が傾いた。解体か大規模修理しかない。これ以上余裕がなかった。しかし、身を寄せていた学校の教室で受験勉強をする息子の姿に頑張ろうと思う。
畳 和室のない新居の購入を姑が大反対である。実際に暮らすのは自分たちで姑には大きな家がある。ローンを払うのも自分たちなのに、いつまでもぐずぐずと文句をいう。突然に父がなくなった。入院した時に、父は畳の上で死にたいと言ったという。姑はまだ嫌味を言っていた。
境界線 駐車場だった場所に家を建てることになった。裏の家から「ここは何もたたないといわれて買った」と言われた。そんなことは知らない。家を建てるために買ったのだから。
境界を越えてはみ出した木を断りもなく切ったと言われた。業者に聞くと断ってきったという。そして、「秋になれば葉が落ちる。他人の家の落ち葉を毎日履くことができますか。最初に境界線のことははっきりさせておくことだ」と言われた。
それでも気を使ったつもりだったが、あっけなく裏の人は越してしまった。変わりに挨拶もしない人が越して来た。険悪なムードである。
リフォーム リフォームをしたがシックハウス病にかかってしまったという話など。
572■ 薄暗い花園 |
Date: 2003-12-18(Thu) |
おすすめ度 ★★
岩井 志麻子 著 双葉社 発行:2003年9月
2階建てのアパートに住んでいた。取り柄は日当たりだけだった。でも夫は女ができて出ていった。
そして、今5階のマンションに住んでいる。そこには女が一人で住むには水商売をせざるを得なかった。誰にも話せないでいたが、このマンションのエレベータは死臭がしていた。ときどき腐った臭いの女が15階にいく。
店よく来る男がマンションにきた。「獣の臭いがする」といった。
拘置所の話で女はきれいに見えるが、口臭、腋臭がものすごかった。それに足も臭かった。相当男遍歴があったらしいが、何も言わなかった。その女が隣りで寝る。寝るたびに腐っていく臭いがする。
◆暗い!とても暗く、先を読む気がしなくなる本である。
571■ 光ってみえるもの、あれは |
Date: 2003-12-14 (Sun) |
おすすめ度 ★★★★
川上 弘美 著 中央公論社 発行:2003年8月
江戸翠はフリーライターの母と祖母の3人で暮らしていた。翠は小さい頃から「お母さん」と呼んでいたのは祖母であった。小学校へ入るとき祖母から「あたしのことを匡子(まさこ)さんと呼びなさい。愛子さんがあなたの母親です」といわれた。僕には父親がいなかった。
大島さんが母と同じ年であった。戸籍を同じにした事が無かったが、遺伝子上の父親であった。しばしば僕の住むボロ家にきた。
祖母は大島さんを「要領よし」という。母には編集者の恋人がいた。
高校の学校へ大島さんが訪ねてきた。「お金を借りて島へ行く」というが、大島さんは誰からも借りられなかった。
僕と大島さんは島の廃家を借りて2人で暮らし始めた。大島さんはスーパーでアルバイトをはじめた。
570■ 痴呆病棟 |
Date: 2003-12-12(Fri) |
おすすめ度 ★★★★★
江川 晴 著 小学館 発行:2003年11月
湯浅マキは76歳。内科医の息子とその嫁と暮らしていた。最近、財布がないめがねがないということが続いた。それにネズミがいたのを隠していたが「ネズミが出た!」と騒いだ為、幻視幻聴が現れたと思われてしまう。
突然、ドライブに行こうと息子の誘われ、一家で芦ノ湖あたりへ行く。ホテルで食事のはずが、行った先はユートピアというところであった。
「人間ドックに入ったつもりで全身をチェックしましょう」という嫁のタカ子。そしてこのユートピアに入所することになった。
建物の中は2棟からなっており、8階の多目的ホールは銀座のレストランのようであった。マキの入る部屋は531号室。ベッドとテレビと応接セットがあった。洗面所とトイレ、お風呂もあった。
6階には大きな温泉のお風呂もあった。週2回入浴するという。
翌日、タクシーでかえって息子夫婦を驚かしてやろうと思っていると看護部長に呼びとめられる。部長の部屋で話をするうちに気が変わったのか、院長との面談の際には「最近、3分後には忘れてしまう。忘れまいと不安で仕方ない。」と話す。
院長や部長の暖かい接し方で、打ち解けていく。
ホームの中で75歳と80歳の入所者同士の結婚式があった。恋によって痴呆を克服したふたりだった。
痴呆には薬などない。周囲の暖かい理解と愛情が特効薬だという。
9ヶ月後、マキを迎えに来たタカ子に、戻らないと言ってしまう。
569■ 杖下に死す |
Date: 2003-12-09(Tue) |
おすすめ度 ★★★★★
北方 謙三 著 文芸春秋 発行:2003年10月
利之は江戸から中山道を通って京に入ったが、どこも飢饉で大変であった。
米の収穫は日本全部が悪いのではなくよいところのものが悪いところにまわらないからであった。大坂へ米が集まっているのに、どこへ消えていくのだろう。米商人が買い占めている。そして売り惜しみしている。
それをつきとめようと、利之は米屋が並ぶ界隈にやってきた。そこで、大塩格之助と出会う。利之は格之助の考えに感心する。格之助は与力を勤める傍ら、夜は蔵で火薬で大砲を造っていた。大塩平八郎の理想とすることを自らも理想としていた。
「上が改まらなければ下も変わらない。上とはご政道全般である。つまり幕府である」
大砲120発と不正の温床である回船問屋の蔵の中を調べようとしていた。利之が蔵の1つを明けてみると蔵には俵が満杯であった。
闘うのはこの国そのものだ。幕府が変わらなければこの国は変わらない。
大塩平八郎親子は、大砲を放つ。天満の方からかなり広い範囲が燃えた。北船場の半分も、三井・鴻池も焼けた。
利之は格之助の身を案じた。そこへ書状が届いた「杖下に死すともやり遂げたい」と書かれていた。
利之のもとに大塩親子の自害の報が届いた。
568■ 撓田村事件 |
Date: 2003-12-05(Fri) |
おすすめ度 ★★★★
小川 勝己 著 小学館 発行:2002年10月
上半身裸の死体が枝分かれした部分に乗っていた。足はなく座っているようだった。死体は桑島佳史14歳で朝霧家の遠縁であたる子であった。
朝霧八千代も1ヶ月前から行方不明である。朝霧家は妊娠したら早いうちに女中を連れて伊豆の別荘に静養に行き、100日目のお参りに戻ってくるというしきたりであった。しかし、嫁の亮子は近くの産院で出産していた。
桑島の事件が発覚してからほどなく、八千代も発見される。犬塚というところで下半身がない腐乱死体であった。
朝霧家には昔、子供を連れた静という女性が女中をしていた。静の子は真由美といった。真由美は成長し、二十歳の頃、朝霧一馬と恋人になった。朝霧家も静もその結婚に反対をした。そんな折、真由美は何者かに殺された。一馬は亮子と結婚をした。
朝霧八千代は子供のできない身体であった。一馬は女中静との間に生まれた子だった。真由美とは異父兄妹であった。
中学校の教師山田は、母から「お前のお父さんは朝霧一馬だ」と聞かされる。
朝霧家には深い謎があるように思われた。犯人は一体誰なのだろう。桑島と八千代を殺した犯人は同一人物なのだろうか。
567■ 殺意の陥穽 |
Date: 2003-12-03(Wed) |
おすすめ度 ★★★★
深谷 忠記 著 徳間書店 発行:2003年6月
妻を殺して保険金を受け取ろうとした男は、逆に妻に指示された夫の愛人によって焼死させられてしまう話。
上司との不倫をしていた女がクビになり、くびにしたと思われた上司に復習をするが、実は自分と不倫をしていた男の裏切りと知る。婿養子だったその男に、自分との密会場所に妻を訪ねさせる。
愛人が田舎へ戻ったことから、愛人が飼っていた犬の面倒を妻に見せていた男。犬がいなくなって必死で探す妻。犬は東京に戻ってきた元の主が連れ去ったと知った妻の復讐がはじまる。
夫婦間暴力を考える会に逃げ込んだ女が、翌日夫の元に戻るという。そして、夫が車に引かれて死んだとき「命だけは助けて」と泣き崩れた。妻は自分が暴力を受けながら、いつかこうして夫にも復習することを生きがいに堪えてきたのだ。自分の髪をつかんで引き倒せば、わたしも杖をついている夫を乱暴に突き倒してやろうと。夫が老いたらこれまで受けた苦痛と屈辱をそっくり返してやるんだという事がいつしか生き甲斐になっていた。
566■ くろふね |
Date: 2003-12-02(Tue) |
おすすめ度 ★★★
佐々木 譲 著 角川書店 発行:2003年9月
1853年、浦賀沖に4艘の黒船が現れた。三之助は「速やかに退去すべし」を伝える為に、黒船に近づく。オランダ語の話せる者を連れていくと「日本政府はアメリカ大統領からの国書を受け取ること」の要求だった。
1837年にも城ヶ島沖を黒船が通った。その時は三之助は16歳だった。江戸湾に入れまいと砲撃した玉が当たって追い払うことができた。三之助は手柄のように褒められた。しかし、アメリカでは「7人の漂流民を降ろすためだったが、日本は武装せぬモリスン号など商船にも攻撃する」と報ぜられた。
日本の無学を恥じて江川英竜らは測量術、西洋史学、らん学などを教えあっていた。三之助も誘われた。
明治2年、ぺリーの来航から16年。三之助は最後のサムライとして49歳で逝った。日本の近代はこの男から始まった。
565■ 父からの手紙 |
Date: 2003-11-30(Sun) |
おすすめ度 ★★★★★
小杉 健治 著 日本放送出版協会 発行:2003年7月
麻美子は高樹と結婚の約束をした。高樹には複数の女性の影があったが、父のように慕う山部のおじさんの会社を救ってくれるという。父が家を出てもう10年になる。仲のよい両親が突然、終止符を打つように行方不明になった。
以来、麻美子は男に対して、結婚に対して覚めた見方をするようになった。弟の伸吾は姉の結婚に反対していた。
その高樹の部屋から女性の絞殺したいが出た。つづいて高樹の死体も見つかる。
警察は弟の伸吾を拘留し、調べ始める。しかし、弟はやっていないという。
一方、10年前にしつこくつきまわる刑事を刺殺し、10年の刑を終えて出所した圭一は、事件の前に姉の家が焼け兄が焼死したことを思い出す。なぜ、兄は家中の鍵をかけ灯油をかぶって死ななければならなかったのか。確かに不況で借金もかさんでいた。
圭一は兄嫁を訪ねる。
兄の自殺を探す弟の圭一と、婚約者の事件というより弟の無実を晴らすために調べる麻美子が偶然、一緒に捜査をする。
以外にも父から毎年来る手紙。毎月の仕送り。富山県に行ってみる。
父はすでに死んでいた。父から毎年来る手紙は、父が生前書き溜めておいたものだ。それは父が80歳になる分まで続いていた。
高樹を殺した犯人も、兄嫁も見つかる。
564■ 痴情小説 |
Date: 2003-11-28(Fri) |
おすすめ度 ★★★
岩井 志麻子 著 新潮社 発行:2003年10月
13篇の短篇
「翠の月」では、美樹は80年代のはじめアイドル歌手だった。歌は下手だった。現在は黒岩の世話になっている。
黒岩は従業員を抱える社長である。美樹の熱心なオタクであった。
なんでも知りたがり、美樹の周辺の聞き込みをさせた。
美樹の収入源はこの黒岩と寝ることだった。
美樹は黒岩に「一番ほしいものは、パパの首だ」といった。そして、誰にも話さなかった父親のことを話す。
父親は夏のある日、木に縄をかけ首を吊って死んだ。遺体が腐り首のない遺体となって木の下に落ちていた。首はどこにもなかった。
野犬でも咥えていったのだろう。その首がほしいといった。
その他、東南アジアで身を滅ぼす日本女性の話など。
563■ ぼくが愛したサイコ |
Date: 2003-11-27 (Thu) |
おすすめ度 ★★★★★
吉村 達也 著 実業之日本社 発行:2003年9月
結婚を2ヶ月後に控えた27歳のサラリーマンの誠は、花火大会で見知らぬ女からうなじにキスをされる。隣りにいた婚約者の真希子に気づかれないか心配した。女は「彩子」と名乗り、「私とベットで遊んでくれませんか?」という。そして携帯電話の番号をメモした紙を渡して姿を消す。
真希子の底抜けに明るいところが重荷になっていた。本当に結婚してやっていけるか不安でもあった。
誠は彩子に電話した。ホテルで会った。彩子は婚姻届を見せた。それには夫の欄に誠。妻の欄は彩子になっていた。すでに届も出されていた。1週間前に出会ったばかりで自分のことは分からないはずであると誠は信じられなかった。
大変なことになった。すでに真希子との結婚の案内を出している。住むべき家も用意されている。誘われるままに一晩を彩子と過ごしてしまった。騙されているなどどう立証できるであろうか。真希子にどう話せばよいのか。
誠は兄に助けを求めた。話しているうちに誠は彩子との婚姻関係を続けると決心した。裁判にはしないと。
真希子に告げると激しく怒った。真希子の叔母という人に会った。真希子は喜怒哀楽を表す神経を病んでいたが、あまりの怒りに神経が正常になったと伝えた。そして、この彩子と真希子は知りあいだったことも。誠は彩子との生活を望んだ。しかし・・・!
562■ 疾走 |
Date: 2003-11-24(Mon) |
おすすめ度 ★★★★★
重松 清 著 角川書店 発行:2003年8月
瀬戸内の町で沖と呼ばれる地域と浜と呼ばれる地域があった。浜のものは沖を差別していた。沖には普通の家のような協会があった。
シュウジは沖の教会によく通った。住民となってまだ新しい神父さんの話を聞くことが好きだった。そしてエリという同級生の女の子も。エリは両親がなく伯父さん夫婦に育てられていた。
シュウジが中学生になると、沖にリゾート開発の名のもとに水田が壊され、テーマパークが開発されつつあった。沖の住民は家を追われ越していった。エリも東京へ行った。
その頃、兄のシュウイチが放火をした。放火は赤犬といわれ一生、地域の人から孤立して生きなければならなかった。
弟のシュウジもいじめられ誰からも口を利いてもらえなかった。神父とその町に住むアカネだけが親切にしてくれた。
父は大工の仕事もなくなり、一人で出ていった。母とシュウジを捨てた。母はたまたま手を出した賭け事があたり、一時期羽振りがよかったが、借金を繰り返し家に戻ってこなくなった。シュウジは学校も休み勝ちになり、自暴的に大阪へ行く。アカネと大阪で会うが、アカネと一緒に住んでいた男を殺し、東京へ逃げる。
東京では新聞配達の仕事につくが、1ヶ月の給与の手取りは3万円だった。そのお金も翌日には誰かに盗まれていた。
エリにあう。エリは伯父さんにまだ中学生だと言うのに性的暴力を受けていた。エリと密会している伯父さんを刺し、再び瀬戸内に戻る。
家には誰もいなかった。家に火を放ち逃げる。パトカーと消防車がかけつけ、シュウジは・・・。
◆中学生のわずか3年ぐらいの間に、シュウジを襲う出来事に地獄を見る。不幸が重なり、とても暗い気持になるが考えさせられることが多い小説であった。
561■ イコン |
Date: 2003-11-21 (Fri) |
おすすめ度 ★★★★
今野 敏 著 講談社 発行:1995年10月
有森恵美のライブで前座の3人の少女が3曲を歌い終わった時、騒ぎが起こった。お目当ての有森恵美がステージに現れない。生活安全課少年課の宇津木警部補と保科巡査も入場していた。客席からトイレットペーパーが投げ込まれたのをきっかけに清涼飲料水がばらまかれたり、さまざまなものが投げ込まれた。騒ぎは一気にエスカレートした。不良グループたちや有森の親衛隊でけんかをはじめた。そして、少年がナイフで刺されていた。病院に運ばれてまもなく息を引き取った。17歳の古橋という高校生だった。
ライブハウスは200人の若者でひしめき合っていた。犯人は特定できなかった。目撃者もいなかった。
古橋の通夜にきていた葉山由里子は、同級生だという。アイドルの有森恵美はパソコン通信で本人自身の書き込みもあった。ネット仲間ではアイドル的存在であった。
調べるうちに有森恵美は葉山由里子と同一人物と判明する。ネットでは本名でなくても影の存在が一人歩きする。
560■ ヒミコの夏 |
Date: 2003-11-19(Wed) |
おすすめ度 ★★★★★
鯨 統一郎 著 PHP 発行:2003年8月
千葉県柏市で女の子が田んぼの中でたち尽くしていた。合鴨の泳ぐ水田を取材にきた「週刊ワード」の永田祐介は、この子を知り合いの農家へ連れて行く。しかし、この辺の子ではないという。
仕方なく交番へ行こうとすると「交番が怖い」という。名前も思い出せない。
祐介は仕方なく自分のアパートに連れて行く。そして、少女はおまわりさんにお父さんもお母さんも殺されたことを話す。ハンカチに書かれたネームから「えとうほなみ」とわかる。祐介はパソコンで検索し、やっとホワイトコスモ食品の江藤邦夫の娘であることを社内報から見つける。家に電話するが留守電になっていた。
会社に問い合わせると江藤氏は1年の休暇中だという。少女は不思議な力を持っていた。花と話せるのである。そして「イネが怖い」と言っていると話す。
祐介は植物を研究している星城大学の植物研究所を訪ねる。高樹みどりに穂波の能力を確かめてもらう。同じような研究をしていたみどりは穂波の能力を理解してくれた。仲良しになる。
そのころ、農家の米が1位がコシヒカリ2位がひとめぼれであったが、ヒミコが驚異的な人気を博していた。ヒミコを開発したのは穂波の父江藤邦夫だった。穂波は「日本がヒミコに滅ぼされる」と父が言っていたのを思い出す。祐介は穂波の両親は会社に殺されたと確信する。
559■ 老人のための残酷童話 |
Date: 2003-11-16(Sun) |
おすすめ度 ★★★
倉橋 由美子 著 講談社 発行:2003年9月
長い廊下が蛇のようにとぐろを巻いているように、中心部に向かって下がっていく図書館。廊下の幅は4メートルもありません。総延長は何キロになるか。
そんな図書館に開館時にやってきて、閉館までいる老人がいました。老人は男か女かわかりませんでした。
「最終的にはすべての分野の本を読むことです」と答える。1日2.3冊。1年で1000冊。30年で3万冊です。
そのうちに図書館は24時間開館になり、老人は、いつ来館していつ戻ったかわからなくなりました。
ある日、臨時休館日に老人の存在を確かめようと職員が廊下の中央部に向かって降りていった。
もう1日分ぐらい歩いたかと思うほど歩いてやっと中央部にたどり着いた。そこには、人の死臭がたちこめていました。そして床の表面に薄い紙で覆われた文字がびっしりのものを見つけました。
老人が読んで気に入った文章は頭に残し、気に入らないと排泄すると言った事を思い出す。これは老人の死体であった。
天窓を空けると風が吹き込んで紙はこなごなになって舞い上がった。図書館員たちはまた階段をへとへとになりながら昇っていった。本を手にしてみると、ほとんどの本のページは真っ白な白紙のページになっていました。 他9篇
558■ 逃げる男 |
Date: 2003-11-14 (Fri) |
おすすめ度 ★★★★★
シドニィ・シェルダン 著 アカデミー出版 発行:2003年11月
男の身体にセメントを塗り、固まったところで海岸まで運んだ3人の男達。その男達に「ヘーイ! そこで何しているんですか?」と声をかけたことから、殺し屋のギャングにねらわれる羽目になる。一度は犯人達もつかまり裁判になったが、陪審員達が次々と不審な死を遂げる。怖くなった陪審員たちがこの男達を無罪にしたことから声をかけたジョン・タイラーはギャングのトニー・ラべッロから余計なことを喋らないようにねらわれる。「やつを殺せ!」と部下たちに命令する。ジョンの顔写真入のビラをあちこちに配った。
ジョンはFBIのサム・パークによってニューヨークからハリウッドの自動車販売会社に勤務するよう指示される。身の安全のために転居と新しいネームが必要だった。ジョンはジョン・ジョーンズと名乗って働き始める。
しかし、レンタカーを借りたことから店員に気づかれ、やむなくレンタカーを放りだし、ヒッチハイクで知り合った日本人女性のユカの世話になる。次第に結婚まで考えるが、またもや追っ手に気づかれ、イリノイ州のパラダイスへ行く。ケビン少年のいる宝石店にはたらき、次はペットショップでヘビの世話をし、次は精肉店と転々と職を変え、追っ手から逃れる。
一方、いつも取り逃がしてばかりいるラべッロは、ギャング達の笑い者になっていた。もう1つの勢力を誇るルイジによってとうとう銃殺されてしまう。やっとジョンは自由の身になる。
557■ 小説 ザ・ゼネコン |
Date: 2003-11-12 (Wed) |
おすすめ度 ★★★★★
高杉 良 著 ダイヤモンド社 発行:2003年9月
大洋銀行の企画調査役の山本は38歳。入行15年目である。昭和62年の頃の話である。
東和建設のメーンバンクだった大洋銀行。その東和建設に出向するよう命ぜられる。新井専務と一緒であった。新井が連れて出たという形になった。新井は副社長で迎えられた。
山本も副社長のそばで働いた。前任の和田副社長が急死した。家族が逗子で本葬を望んだが、山本の涙ながらの訴えに副社長の母が折れた。東京の青山斎場で社葬となった。
葬式には曾根田首相や大物代議士をはじめ3000人以上が参列した告別式であった。
東和の筆頭格は首相の座をねらう竹山正登だった。ロッキード事件で有罪となった中田栄角のあとを乗っ取ることだった。
新都庁舎は建築家の丹野健二と鈴木俊二都知事との癒着の産物と言われ、談合のもとに丹野のやりたい放題で建築された。
新宿の建設予定地は四年間で四倍の値段に跳ね上がった。
山本は、会長の甥の入社希望をすすめた事で逆鱗に触れ、解雇の形でまた大洋銀行へ戻ることが出来た。
556■ 猪苗代マジック |
Date: 2003-11-10(Sun) |
おすすめ度 ★★★★
二階堂 黎人 著 文芸春秋 発行:2003年7月
「こいつは豚だ。社会の害虫だ。世の中の害虫だ。○○に死を与える。俺は許さない。この豚目め! 処刑してやる」と書かれた声明文とともに死体が転がっていた。
左右の目はえぐられ、耳や鼻は殺ぎ落とされ、口は耳まで切り裂かれていた。顔には猿轡がしてあり、足もぐるぐるに巻かれていた。手は後ろ手に縛られていた。芋虫のように転がっていた。胸には登山ナイフが心臓に突き刺さっていた。死体は県議会議員の佐野であった。森の中に捨てられていた。
ふたたび事件があった。廃ビルの地下室で血まみれになって死んでいた。同じ声明文と同じように口が裂かれ、耳や鼻が殺ぎ落とされていた。手足はいすに縛られていた。県議会議員の斎藤だった。
そして、第3の事件も起こった。市議会議員の徳山だった。同じような状態であった。
さらに4件目もあった。今度は猪苗代湖畔の林の中で鈴木巡査だった。胸に登山ナイフが突き刺さり、声明文もあった。
半年後、心身症で神経科に通っていた男が逮捕された。3つの事件の自白はとれたが、巡査は殺していないという。
しかし、刑が執行され絞首刑になった。
もう皆が忘れたころ、猪苗代湖の別荘で大蔵事務次官だった男が別荘の浴槽で血にまみれて風呂に浮かんで死んでいた。またもや声明文が。
サトルと由加里は、偶然居合わせた事件を追って猪苗代に来ていた。そして、この事件を解決するために捜査の協力をする。
10年前に犯人はすでにこの世から消えているはずである。しかし犯人は以外にも女性であった。
555■ 盗作 |
Date: 2003-11-05(Wed) |
おすすめ度 ★★★
伊藤 たかみ 著 河出書房新社 発行:2003年6月
高校の時、僕と洋子と辻克巳は3人でよくバイクに3人乗りして遊んでいた。洋子を真中にして3人が一台のバイクに乗っていた。
10年前、辻克巳はビルの屋上から飛び降りて死んだ。だが、彼はビルとビルの隙間に落ちたために何年も見つからずに、ばらばらの骨になって見つかった。反対側は人通りの多いとおりだった。
僕は辻克巳という親友の名前を使って小説を書いていた。何年ぶりかで洋子に会った。手伝ってほしいという。洋子の部屋は切られたソファの中身が見えたり、羽毛がまっている足の踏み場もない部屋だった。「小さいのは片付けられるけど、タンスを起こしてくれる人は頼む人がいない」ということだった。茶箪笥やタンスを起こした。すべては洋子の主人がやったことだった。
洋子が目にしたご主人の秘密の写真を見たことに腹を立て暴れて出ていった。洋子はおびえていた。食欲も無く夜も眠れないようだった。しばらく付き添っていたが病院に入院させた。
僕は辻と洋子がもっと親しかったことから、辻の自殺したというビルに行った。そこには洋子も来ていた。暗闇の中で、僕は不思議に克巳と洋子のことを話していた。もうこの世にいない克巳と。
554■ 炎の条件 |
Date: 2003-11-03 (Mon) |
おすすめ度 ★★★★
森村 誠一 著 小学館 発行:2003年11月
銀座のクラブで働く真由美は、お告げの天使の教主様という法泉に見初められて指名を受けるようになった。が、真由美は法泉がそばにいると嫌悪感を覚えた。
そこで、失恋を気に自殺しようと昇った雪渓で、足を捻挫して助けてくれた男朝倉に会う。名前も継げずに去った朝倉を探していた。教主の法泉は来週も来るというので真由美は店を辞めて姿を隠す。朝倉が自宅を提供してくれた。
朝倉の部屋で真由美は、朝倉の妻や子が交通事故で死んだことを知る。その影にお告げの天使の関係者が運転していたことも。
朝倉は法泉に復習をするために近づいていた。
真由美を捨てた隆一は逆玉の輿にのったものの、妻は使用人以下に夫をあしらい、寝室も別だった。その妻が最近お告げの天使に入信しているという。妻は教主のお手つきになりかなりの地位に在った。
我妻は念願の一軒家をかったものの、妻がフィットネスクラブに通うようになり、朝帰りもするようになった。ところが、歌舞伎町のラブホテルの火災で妻は焼死する。誰が相手だったのか探すうちにお告げの天使の存在を知る。
隆一は義父に報告した後、是が非でも子供を作れと命じられる。一変して隆一は妻の寝室のドアを蹴破り、強引に関係を持つ。教主に会ってはならぬと毎夜寝室を共にする。
やがて、お告げの天使の教主が狙撃される事件が起きる。幸い命に別状がなかったが、これを機会に暴力団関係の男が用心棒で入信する。お告げの会は内乱を起こす気配も見えた。
ようやく警察がお告げの会の捜査に踏み出した。
553■ エ・アロール それがどうしたの |
Date: 2003-11-01(Sat) |
おすすめ ★★★
渡辺 淳一 著 角川書店 発行:2003年6月
夜十時過ぎ「堀内さんが倒れて・・」という介護主任の電話ですぐ施設に向かった。来栖は高齢者施設を経営している。
隅田川沿いのその施設に着くと、20歳を過ぎたばかりの少女がいた。堀内は出張ヘルスを頼んでいて体調を悪くしたらしい。心臓発作であった。来栖は少女に堀内の代わりに支払いを済ませる。
来栖の施設は、入居者は自由に出入りできる。マンション風の建物の3階から8階が高齢者施設だった。
「立木さんの部屋から江波さんが出てきた」と相談員がいう。75歳の男性の部屋から73歳の女性が出て来たと言うのである。そして75歳の男性にはもう一人恋人がいるという。71歳の女性だという。そして、来栖は立木からパイアグラをわけて欲しいと頼まれる。老年の性がアメリカでは開放的であることを考えるとむしろ望み通りにしてやりたいとパイアグラを処方してやる。
来栖自身も71歳の杏子から「死ぬまでに一度あなたに抱かれたい」と言われる。
71歳の男性が25歳の女性との間に子ができた。できたと言っても妊娠したと言うことらしい。来栖は相談に乗る。
クリスマスの日、付き合っていた麻子から「結婚する」と告げられる。来栖は54歳。32歳の麻子が若い男と結婚するのは覚悟はしていたが、涙があふれた。
552■ 天使の爪 上・下 |
Date: 2003-10-31 (Fri) |
おすすめ度 ★★★★★
大沢 在昌 著 小学館 発行:2003年8月
脳死した神崎はつみの肉体に河野明日香の脳を移植した。はつみも明日香も身内がいなかった。
河野明日香は女性刑事で、神崎はつみの護衛をしていた。はつみは16歳のときから君国の愛人となっていた。はつみも君国も射殺された。その際に明日香も死の縁にあった。
コワルスキー博士によって、脳移植された。明日香は刑事を辞め、1年渡米し帰国後は麻薬取締官となった。名前も神崎アスカと改名した。
婚約者だった古芳刑事とふたたびコンビを組んで捜査にあたる。
麻薬取締部の建物に全裸の外国人女性が銃を持ってやってきた。要求は中国人の林の釈放だった。林はチェチェン人から10万ドルを持ち逃げしていた。アスカがこの事件の解決にあたる。
コワルスキー博士は、セルゲイというロシア人の男の脳をハンと言う朝鮮系ロシア人の男に移植した。セルゲイは殺し屋である。ハンとなったセルゲイは、自分と同じように脳移植をしたアスカの存在を知る。幼い頃、森で行方不明になったワーニャという妹をアスカに重ねていた。ハンはアスカをロシアに連れ出す為に東京にやってくる。
元の河野明日香は少林寺の特訓を受け、大柄の男勝りで敏捷で強い女であった。今の自分はきゃしゃな美貌を持った小柄な女性であった。美しさは男達の目を集めた。
かっての婚約者古芳との仲はふたたび深まっていった。
551■ 検死官逆転 |
Date: 2003-10-26 (Sun) |
おすすめ度 ★★★★
山崎 光夫 著 新潮社 発行:2003年2月
芹沢は死体いじりの職人であった。変死の検死官である。300体は破られない数であった。80代半ばの彼のことばから事件の詳細が語られた。
19歳の娘が父親に頼まれて殺したという。しかし自殺は多数のためらい傷が残っているが、きれいに死んでいる。部屋を入念に調べ、防御創があることやボタンがとれていることに争って長女が指した犯行であったと見ぬく。
ドアに鍵がかかっていて、仕方無しに庭から座敷にあがった夫は、妻が後ろ手に縛られ頭を浴槽に沈めて死んでいた。
8の字にされた縄の中に手を入れていた。
生存中に溺れた場合、カニの出す泡に似た泡沫が鼻や口から押し出される。泡沫には粘りがあって水には流れない。芹沢は胸を押さえると鼻孔から細かい泡沫が漏れ出していた。自殺であった。
550■ 煤煙 |
Date: 2003-10-23(Thu) |
おすすめ度 ★★★★★
北方 謙三 著 講談社 発行:2003年8月
東京湾のマリーナを根城にするかわった弁護士青井は、借金に追われている田所という男の弁護で銀行並の利息にとかけあって、すごむ金融業者に反対に「廃業」を要求してくる。
3つの病院をたらい回しにされ、さいごの3つ目で心臓停止になり、電気ショックで回復した患者は肺が破裂していた。今もICUにいる。前の二つの病院から診断書を取ると骨折の診断であった。
青井はその病院に乗り込み証拠保全を行い、患者のカルテや資料やレントゲン写真を押さえる。 病院には医師免除剥奪と患者への慰謝料を要求した。結局、二つの病院から七千万円を取った。
後日、青井はバイクの男からねらわれる。ナイフをよけて叩きのめすと、病院の医師の弟であった。
婦人警官が青井の車を駐車違反と言い、免許証の提示を要求した。十分見せないうちに引っ込めると公務執行妨害とわめいた。
青井は手帳を提示し、「提示したが、取上げようとしたので心理的圧迫をかけた」として、婦人警官とのやり取りを取ったテープを見せ、写真を撮った。そのやり取りを見た警官の上司が中に入り、結局、何事も言われず放免になった。
それを見ていた金持ちの老婆が青井に仕事を頼む。ビルの立ち退きをさせるものである。ビルには青井の元妻のクッキングスクールが入っていた。青井はそれでも引きうけ、皆を立ち退かせる。
ふたたび借金をした田所は青井を訪ねる。青井は老婆のかわいがっていた猫を盗んでくるように言う。案の定、老婆から猫を探す依頼が入る。しかし、青井をねらう男がクルーザーに乗り込み、船の上で格闘が始まる。
549■ 見知らぬ妻へ |
Date: 2003-10-21(Tue) |
おすすめ度 ★★★
浅田 次郎 著 光文社 発行:1998年6月
「高雄」の台湾人ママから花田に嫁をもらって欲しいという。茨城の方でピザの切れた子たちが、客引きをして売上をしているが困っている。50万で形だけの嫁にして欲しいという。
偽装はいやだというと「一緒に住んだらいい」というので、李玲明という女と暮らし始める。
花田は46歳だった。玲明は27歳で中国に子供も1人いるという。花田は指輪を買ってやる。婚約のつもりだった。
花田は月10万円を元の妻に送っていた。楽な暮らしではなかった。ほどなく、「高雄」のママがつかまった。アパートに戻った花田が見たものは玲明が書き残した置手紙だった。
警察が花田を戸籍を貸した容疑で聞きに来ていた。
548■ 吾、器にすぎたるか |
Date: 2003-10-19 (Sun) |
おすすめ度 ★★★★
佐藤 雅美 著 講談社 発行:2003年5月
下総香取郡長部村に大原幽学という浪人が長居をしていると八州周りが目をつけた。 「幽学は石垣を築いたり、長い石段を使ったりと村に城をつくるがごとく無知の百姓を騙している」探ってきて欲しいと5人の男達が村にやってきた。
5人は勝手に家に押し入り、酒や食べ物を要求し無礼な振る舞いをした挙げ句、25両を要求した。幽学は門人から10両を借り引き取ってもらった。
しかし、10両は後日戻されたが、八州周りの強い疑念から江戸で5年4ヶ月も取り調べられる。
放免になったときには還暦も過ぎていた。幽学は18歳で漂泊の身となり、28歳まで武士の子としての誇りを持ち、読めもとらず、あちこちを転々として孝道を元にして、親や先祖に恥をかかせまいとする心がけを解いていた。村人の多くが幽学を従い門生も増えていった。
人が入りきらなくなったので村人が率先して廃屋から材木をとり幽学の家を大きくしていった。みなが協働で行うということを実践していた。
幽学は村に戻されてからはほどなく割腹自殺してしまう。
547■ 熱海湯河原殺人事件 |
Date: 2003-10-17(Fri) |
おすすめ度 ★★★★
西村 京太郎 著 中央公論社 発行:2003年6月
6年前、クラブ「あい」のママを殺したとして6年の刑を終えて出所した小早川は、再び足を運んだ。
小早川に不利な証言をしたホテルのオーナーや不動産屋、会計事務所の者、会社社長は気が気ではない。
案の定、小早川は贔屓にしていた芸者の死を知ると300万円の宴会を開こうと計画する。出席者は自分をいれて3人だけだった。招待客は30人はくる予定であった。そして、あの事件の発端となった50億のホテル建設計画があり、それに群がっていた者達が次々に死んでいく。
小早川もあの事件の真犯人を探す。50億の計画は殺人事件が起きるとイメージダウンになると計画は中止された。
小早川に唯一不利な証言をしなかった金次。政治家に頼まれ、50億の投資を行なう予定だった男である。
50億の投資を行なうには余裕のないことを会計士が知っていた。しかし会計士はすでに殺されていた。
546■ 棟据刑事の東京夜会 |
Date: 2003-10-12(Sun) |
おすすめ度 ★★★★
森村 誠一 著 双葉社 発行:2003年6月
英会話学校の中年男3人は、今の生活に飽きていた。小さな町工場の経営者畔倉、サラリーマンの和村、葉室である。そこへ折橋くにこが加わった。
総会屋の吉岡と言う男が殺された。その夫人と付き合いのあった和村は、以前にパーティで吉岡に寄り添うように折橋くにこを見た。吉岡とくにこはどう言う関係なのだろうか。
吉岡はつねに5000万円のお金を持ち歩いていたが、死体のそばからはその金が消えていた。
折橋くにこの入っているアパートに泥棒が入った。周りは被害届を出すが、くにこは逃げるように引っ越してしまった。
男達は3、4日行方不明になりたいと香港旅行を企画するが、それぞれが行かれぬ理由が出来断念する。そして、週末だけホームレスを体験する。
14年前に新宿でホームレス襲撃事件があった。犯人は高校生でつかまらないままであった。
吉岡とくにこは高校の同級生だと言うことをつきとめる。折橋くにこは本名を鶴間今日子と知ったが、殺されてしまう。
3人の男達はくにこを殺した犯人を見つけようとする。
日本のビル王の孫娘と結婚する川本という男は、同窓会の写真にあった男である。
川本と孫娘の結婚式に、14年前のホームレスを襲撃するビデオが流される。吉岡の手元にあったビデオである。
545■ 貸しはがし資金回収 |
Date: 2003-10-08 (Wed) |
おすすめ度 ★★★★
杉田 望 著 講談社 発行:2003年8月
文京区の団子坂を下る途中にしゃれた割烹がある。大工の棟梁、電気屋の主人、材木屋、それに僕が常連である。
この店では僕はインテリで通っていた。材木屋のヨシさんが見えなかった。「今夜はどうしたかな?」と心配しているところへ「ヨシさんが死んだ」という。バブルの時期に12階建てのマンションを建てたのが仇となり、毎月の返済が六百万円だという。銀行へ不良債権回収機構へまわされるところだった。
不良債権を早く回収しろと小泉首相は銀行の尻を叩く。みのり銀行に勤める僕も、資金回収のきびしいノルマが課せられた。
金融担当大臣も強硬発言で資金回収に拍車がかかった。問題企業のリストアップもはじまった。そして、みのり銀行は公的資金の注入は避けることが出来なくなった。
544■ 4TEEN フォーティーン |
Date: 2003-10-06(Mon) |
おすすめ度 ★★★★
石田 衣良 著 新潮社 発行:2003年5月
14歳の4人組みが、日常の生活の中で出会ったことを8つのストーリーにしたもの。
月島中学のナオトとジュンとダイとテツローの四人は仲良しだった。
ナオトが早老症、ウエルナー症候群で入院した。ジュンとダイと僕(テツロー)はもうすぐ誕生日だと言うナオトのために「モノよりヒトがいい」とわざわざ渋谷まで出かけて、援助交際をしてくれそうな女の子を見つけてくる。病室の様子を盗聴しての様子からは、童貞は護られたようであった。
クラスで3人目の不登校がでた。リバーサイドの高層マンションにすむルミナだった。僕が訪ねていっても携帯で指示はするものの顔を見せなかった。やがて、顔を見せるようになったルミナはとてもやせていた。学校へ行くようになってからは、太っていた。授業中に菓子をむさぼるように食べて級友の前で吐いた。
クラス中の視線から僕はルミナをかばった。ルミナは休まないで出てくるようになった。41プラスマイナス16キロのルミナに好意を持った。
ユズルが超能力があるという。空だって飛べるというと皆がはやし立て、ユズルは4階の窓から飛び降りた。幸い緑の植え込みに落ち大怪我ですんだ。いじめに近い状態にあったか、たっぷり絞られた。あっという間の出来事だった。飛び降りたユズルは「飛べても飛べなくてもどうでもいい。まあ死ぬことはないだろう」と飛んだ。ユズルが幼稚園の頃父親は飛び降り自殺をしていた。
543■ チェッカーズ |
Date: 2003-10-04(Sat) |
おすすめ度 ★★★
高杢 禎彦 著 新潮社 発行:2003年6月
2002年10月、埼玉県立がんセンターで、食道癌の宣告を受ける。ただちに手術の為のスケジュール調整に入った。
ドラマをやっていたが、自分の出るところだけを先取りしてクランクUPした。そして、11月19日に入院する。
妻とは交換日記をはじめた。死を覚悟した。胃を全摘出、食道を半分切除、脾臓、たんのうを全摘出という手術だった。
フミヤと尚之と俺は九州の東久留米で同じ保育園に通っていた。俺はジャイアンのような存在であった。チェッカーズを結成した時、「ギザギザハートの子守唄」「涙のリクエスト」「ジュリアに傷心」をヒットさせた。しかし、11年前の1992年の紅白を最後に解散した。
手術後、命の大切さを思い知らされたと同時に、死を乗り越えるということはこれ以上ないぐらいの度胸がついた。
皆に言いたい。「一度きりの人生、悩むことは短い方がいい。物事は単純によいほうに考えましょう。死ぬときは死ぬ。あせってもどうにもならない。人生楽しみましょうよ」と。
542■ 奪還 引き裂かれた二十四年 |
Date: 2003-10-02(Thu) |
おすすめ度 ★★★
蓮池 透 著 新潮社 発行:2003年4月
北朝鮮に拉致された日本人が戻ってきた。2002年10月15日羽田に出迎えに行った。
弟の薫も妻の祐木子さんと一緒だった。当初、彼らは短期間でまた北朝鮮に戻るつもりでいた。北朝鮮の特使という立場で一時帰国したと本人達も口にしていた。
弟の気持ちを見守りながら、洗脳されていないか不安であった。
自分の口からではなく、弟自身の口から日本にとどまると言うことばを公言させたかった。帰国後10日たって、やっと弟は日本に残って子供たちの帰国を待つといった。
北朝鮮のバッチも外した。
弟は高校3年生の時、祐木子さんとデートをするために河原に行ったところを袋詰されて拉致された。船に乗せられ北朝鮮に連れてこられた。
弟が居なくなって、懸命に探しまわった。かっての工作員が北朝鮮で薫を見たということから、拉致されたと確信した。
その後、国会や市議会に出向き、拉致家族の早期救出を求める意見書を国に提出して欲しいと頼むが受け入れられなかった。それどころか、そんな決議をしたらまた、来日朝鮮人がいじめられるとまで言われた。国会に行けば選挙の為に「頑張る」「頑張って」の声は聞かれるものの、実際に行動を起こしてくれる人はいなかった。
金賢姫の事件が起こった際に、日本人の教育係が居たという。平成9年、日本政府は拉致家族は7件10人と発表する。
「好きな女性に本心を打ち明けられず、回りくどく、うだつのあがらない男に似ていて哀れみさえ感じる」というのが報道に関する朝日新聞へ表現。
541■ くらのかみ |
Date: 2003-10-01(Wed) |
おすすめ度 ★★★★
小野 不由美 著 講談社 発行:2003年7月
4人ゲームというのがある。山小屋に泊まった男女が眠ってしまうと死んでしまう。部屋の四隅で隣りの人に肩を叩かれると、次の人の方をたたきに行く。そうして1番中眠らないで夜を明かした。しかし、4人では途中で途切れて当たり前だったのだ。でも、みなが途切れることもなく継続できた。不思議なことがあった。
本家の家は、暗くて大きい。夏休みに耕介、真由、音弥、禅、梨花とこの大きな家に集まった。それぞれの両親と共に。
本家は子供の居るものが継ぐ事になっていた。が、おじさんには子供が居なかった。そのことで大人達が集まった。
新幹線で行っても山奥の方まで5時間もかかるところだった。
家は広くて、掃除をするだけでも大変だった。屋敷のそばに沼があった。行者沼と言った。むかし、行者が泊めてほしい頼んだ時、行者にドクゼリを食べさせて殺し、死体を沼に沈めたという。
以来、沼には行者のたたりがあり、人が誘い込まれるという。沼に行ってはいけなかった。食事にそのドクゼリが入っていた。おじが体調を崩してしまったが、命に別状はなかった。
ある時、お母さんが井戸に落ちるしかけがしてあるのを子供たちが見つけた。
子供たちだけで、ドクゼリや井戸の仕掛けをした犯人を調べ始める。
540■ いっぽん桜 |
Date: 2003-09-30(Tue) |
おすすめ度 ★★★★
山本 一力 著 新潮社 発行:2003年6月
今年54歳の長兵衛は井筒屋という奉公人の斡旋業をしていた店の番頭をしていた。これまでに2千人の奉公人を扱った。
その長兵衛に主の重右衛門から「これからは若いものに任せたい。私と一緒にお前も身を引いてくれ」と言われる。井筒屋をこれまでに大きくしたのは自分だという自負があった長兵衛は驚くが、主の意向通り隠居する。
42年間の働きであった。百両の金をもらっての隠居である。
やめてからの千束屋から料亭の接待を受けるが、仕事の話ではなく井筒屋の様子を知りたかっただけだった。いそいそと出かけていったはずだったが・・・。
魚を扱う木村屋に頼まれて帳場を預かることになった。しかし、何日かすると木村屋の店のものから、「長兵衛のうちが、うちが、というが、うちとは木村屋のことではなく井筒屋のことだ。いつまで暇を出された先を、うちと呼んでいる。やりにくい」と苦情が出始めた。
雨が続き、長兵衛の家に水が流れ込んだ。二階に物を上げたが、もう流されても仕方がないと腹をくくった時に、小船に乗って7人の木村屋の連中が駆けつけてくれた。床下にあった流れ込んだ丸太を取り除いてくれた。それを機に長兵衛は変わった。
うちの若い衆が助けてくれた。
539■ 神の島 |
Date: 2003-09-26 (Fri) |
おすすめ度 ★★★★★
米山 公啓 著 実業之日本社 発行:2003年7月
医療査察官ドクター貴崎は、沖縄から数十キロ離れた岩身島の小湊病院に新任の医師としてやってきた。有料老人ホームと病院が併設された病院であった。
貴崎は一時アメリカで外科医として働いていた。日本政府が医療査察組織を作り、その一員として赴任した。
この病院の患者はあまりに陽気であった。多くの病院を見てきたが、この小湊病院の明るさは異様に写る。おまけに病院の至る所に監視カメラがあった。
一人の老人が貴崎に接してきた。老人は「この病院は天国でもあり、地獄でもある」という。 そして、翌日容態が急変して死亡した。
次に接触した患者牛山も貴崎が行ったガンの摘出手術後、深夜になくなった。主治医としての自分に何の連絡もなかった。
ある時、戦艦大和の2倍近くある外国客船の中で腎臓の移植手術をした。患者は中国人だった。病院での手術が行えない特殊な例だという。
そして、小湊病院の院長の裏仕事として摘出臓器の売買を知る。
ホテルのような建物。人間が満足した時に細胞活性物質が大量に分泌される。一種のたんぱく質である。これを死人からとり、人に注入すると寿命は延びるという。
台湾の領域に有る神の島でホテル並の病院らしき建物。小湊病院院長のもうひとつの建物であった。
538■ 緩やかな反転 |
Date: 2003-09-23(Tue) |
おすすめ度 ★★★★★
新津 きよみ 著 角川書店 発行:2003年5月
下に越した来たものだということばにドアを明けた。いきなりバットで殴られた。気がつくと私は、倒れた自分高木亜紀子を見つめていた。
鏡をみた! 私は私を殴った下に越して来たと言う女になっていた。その女のバックを見た。野田光代43歳。自分より10歳も上である。自分が自分でなくなっている。魂が入れ替わっている。
そして私は警察に「マンションに女の人が倒れている」と通報しする。いき場を失った私はとりあえず野田光代の電話番号に連絡する。子供の声がした。「パンを買って来て」という。とりあえず免許証の住所に行ってみた。
子供たちは「お腹空いた」と待ち構えていた。落ちつくとやがて「お母さん、変だよ」という。私は「お母さんなんかじゃない、私は私」と宣言する。それにこれまでのお母さんは左利きだったようだ。「お母さん、右手で食べている」と驚く。
PTAの活動も夫の赴任先の福島まで行った。面識がないのに夫のほうが見つけて一緒に食事や美術館に行く。夫はちょっとかわったという子供たちの報告を受け、やはりどことなくちがう妻に喜んでいた。
夫の実家の信州にも出向いた。やがて、そのうちに入って欲しいとの話しが出ていた。
私は中野の病院に入院していた。
数日後、子供たちやこの家の預貯金を持ち出し離れようとする。駅の構内で気を失う。
気がついた私は、親友の和恵にふしぎな出来事を話す。私はどうやら別れた元も亭主に病院に運ばれたようだ。バットで殴られたわけでもないらしい。頭を打ったのは事実らしい。
どうして野田光代が訪ねてきたのか。亜紀子は野田光代と自分の接点を探す。
亜紀子の家が造り酒屋だったこと。小さい頃川に溺れて助けてくれたのが吉田という女性。吉田は野田光代の旧姓。
野田光代は意識がまだ戻らない。
537■ 博士の愛した数式 |
Date: 2003-09-21 (Sun) |
おすすめ度 ★★★★★
小川 洋子 著 新潮社 発行:2003年8月
こんな感動的な話しがあるのだろうか。読み終えた後、胸が一杯になった。
初老の老人宅に家政婦として派遣された私は、義理の姉と言う老女から「11時に来て午後7時まで離れの義弟の世話をして欲しい。」と依頼される。私は家政婦になって10年のキャリアがあった。この依頼者にはこれまでに9つものトラブルを示す★印が付いていた。
義弟は47歳の時の交通事故により30年前の記憶は覚えていても、80分前のことは忘れてしまう。記憶は80分しかない。
離れに行くと数学教授だったと言う義弟は「靴のサイズは」「電話番号は?」と聞き、すぐさま「素晴らしい数字だ。素数が個数に等しい」と感心する。が、80分立つとまた「靴のサイズは?」に戻る。
私は、何度尋ねられてもはじめて質問されたように答えた。「さっき言いました」が通じないのが分かっていた。
ある時、十歳の子供がいることを話すと「いかん、子供を一人にしては危険だ!」というので急きょ、学校の帰りには博士(義弟のことをそうよんだ)の家に寄り、3人で夕食をして帰ることになった。
博士は子供の頭を押さえ「君はルートだよ」とあだ名をつけた。
ルートが寄るようになってから、博士は会話が増えた。背広の袖に「新しい家政婦さん その息子10歳。√」とメモをピンで留めてあった。博士はルートが帰ってくると両手を広げて喜んだ。ルートも博士と一緒に算数の宿題をした。そして、息子がタイガースのフアンだと話すと博士は江夏が好きだといった。
古い空き缶から野球カードを見つけた。ルートにも見せた。目を輝かせて、博士の秘密をのぞいたような気分だった。
母子は博士を誘って野球観戦に行く。外にあまり出たがらない博士はその日は多いに楽しんだようであるが、夜熱を出した。
放っておけなくて、その日は泊まって看病した。このことがクレームになり一時は派遣をやめさせられた。
しかし、ルートは博士と友達になっており、時折尋ねていた。
再び博士のうちに行くよう許可された。
やがて、博士の記憶はだんだん続かなくなってきた。施設に入るようになった。それでも、ルートと私はときどき施設の博士を訪ねた。
ルートは中学の数学教師の試験に合格した。博士は喜んでくれた。
私は、いまもずっと家政婦を続けていた。
536■ 無間地獄 |
Date: 2003-09-19(Fri) |
おすすめ度 ★★★★★
新堂 冬樹 著 幻冬舎 発行:2000年5月
これほどまでにむごいことがあっていいのかと思うような物語です。
桐生保は十歳の時、父から性的暴行を受けた。それは祖母が死ぬまで1年間続いた。父親が時折持ってくる鰯と保の給食にでるおかずを弁当箱に入れて持ちかえり、祖母と二人で食べていた。
父との関係をうちあけたあと、祖母から母は父の性癖が我慢ならず刺青のある男と駆け落ちしたと聞かされた。父は男との性交を母の横でやったのである。祖母はオムツをのど詰め窒息死した。
中学2年生の終わり頃、新聞配達から戻った保は、父が見知らぬ男との性交中であった。保は出刃包丁で父のわき腹を渾身の力をこめて刺した。そしてペニスを切り取った。父は死んだ。
医療少年院を退院した保は、富樫という金貸しに引き取られた。
18歳の保と8歳の益男と継母の4人で暮らした。家族らしい生活が続いた。
富樫の金貸業の配下には49人の街金融がいた。どれも法外な利息を取り、あらっぽい取立てであった。
その桐生興産に玉城という男が金を踏み倒して逃げている。玉城は自分の美貌を武器にインチキ化粧品を売ることを商売にして月に二百万円を稼ぐトップセールスマンであった。
何者かが玉城を連れだし、本人了解なしに醜男に整形する。麻酔からさめた玉城は別の名前を名乗るように言われる。
金を取り返すために保は、玉城を追い詰める。
535■ 僕のできそこない市議会物語 |
Date: 2003-09-15(Mon) |
おすすめ度 ★★★
北行 哲史 著 島影社 発行:1999年8月
1987年4月、ヤマネコ市で定員20人のところ28人が立候補した。7番目に1612票を獲得して当選した。25歳のオカノ議員の誕生であった。
全国最年少ともてはやされた。無所属であったため、他の無所属議員2人と共に行動した。
市役所前に300人が終結し、2時間後の正午には野次馬を含め2000人にも達していた。市議会の公平化を訴えた。
市長は3期11年目になっていた。最古参のホンジョウ議員とふたりしてヤマネコ市は牛耳られている。
市にできるリサイクルセンターはホンジョウ議員のもとは持ち物であった。それを請け負う建設会社もホンジョウ議員の姉妹会社である。市のほぼ半数以上がホンジョウ議員がらみの請負である。
事業は公に公平にしたいと立ちあがる。
オカノ議員の一年間の市議会議員の物語である。
534■ マリコの食卓 |
Date: 2003-09-11(Thu) |
おすすめ度 ★★★
林 真理子 著 ぺんぎん書房 発行:2003年7月
焼肉を前にすると人格が変わると言う。適当に相槌を打ち、次々と肉を口に入れる。
別の日には、焼肉3人前と丼一杯のごはんとビビンバを平らげた。
最近は、誰も寿司屋に誘ってくれない。編集者のA子を誘って寿司屋に行った。自分よりもはるかに早く量を食べる人が隣りにいると、こちらのペースが狂ってくると言うことをはじめて知った。
焼き立てのあつあつタルトケーキにバニラアイスクリームがのっている。そのおいしいこと死んでもいいと思うぐらいだ。
山本益博さんプロデュースのディナーは一人八万円。それを食することになった。伊勢エビ、スモークサーモン、キャビア、まつたけ、フォアグラ、クリ、ショコラのパイ、エスプレッソなどであった。残さず優雅に食べた。
533■ 忘れ雪 |
Date: 2003-09-09(Tue) |
おすすめ度 ★★★★★
新堂 冬樹 著 角川書店 2003年1月
少女は両親が亡くなったために伯父夫婦引き取られた。さびしさを紛らわす為に明るく振る舞っていた。
怪我をした犬をマリア公園で見つける。高校生の男の子が自分の父親のやっている動物病院に連れて行き見てくれた。
小犬はクロスと名付けかわいがった。京都に行くことになった少女は男の子に7年後にこの公園で会おうねと約束をする。
少年は獣医になり、父の跡を継いで動物たちを診ていた。
ある日、桜木のところへラブラドールが走り寄ってきた。足をガラス片で怪我をしていた。飼い主の女性を見て心がときめく。
女性はあの時の少女深雪だった。が、桜木はそのことを忘れていた。
深雪は唐突に「結婚しよう」という。が、ディズニーランドで過ごす。帰りに自宅に招かれるが、桜木は思い出せなかった。
深雪はパリへ行く。婚約者と養父が血眼になって探す。
桜木は病院の看護師静香にも好意を寄せられていたが、深雪に傾く自分の心に再び、深雪の部屋を訪れ、あの時の少女だと思い出す。
約束の7年後にマリア公園で会おうねという約束を破ったことも知る。
そして、桜木と深雪の将来は・・・!
2人は結婚できるのであろうか。
思わぬ結末に・・・。
532■ 迷宮百年の睡魔 |
Date: 2003-09-05(Fri) |
おすすめ度 ★★★
森 博嗣 著 新潮社 発行:2003年6月
不思議な物語である。夢の中の物語のようでもある。
ミチルとロイディは伝説の街イル・サン・ジャクにいる。一夜にして海に囲まれたという伝説がある。周囲2キロの島である。
巨大な建物自体が島のようになっている。右も左も砂浜である。
宿屋に案内される。最初に来た人は必ず迷うという回廊の中にある。しかし、通されたところは素晴らしかったが、500年ほど前に建てられたものである。
この島には500人ほどが暮らしているようだ。
宮殿モン・ロゼを訪ねて女王に会う。女王から僕(ミチル)の婚約者だったクジ・アキラが死んだことを知らされる。そして、めったに殺人事件のないこの島で僧侶のクラウド・ライツが首を切られて死んでいた。ライツは僧侶長だった。7人の僧侶がいる。誰がライツを殺したのか。
やがて、人間が人間でないような・・・! この島で人間を人工的に誕生させていた。クロンである。ミチルもこのことで、銃を向けられる。
建物は宮殿にも城にも教会にもみえる。ミチルの悪夢のような体験がはじまる。
531■ 1985年の奇跡 |
Date: 2003-09-01(Mon) |
おすすめ度 ★★★★
五十嵐 貴久 著 双葉社 発行:2003年7月
小金井公園高校の野球部は勝った事がない。そこへ私立の海南高校でエースだった沢渡が転校してきた。
キャップテンの岡村とは中学の時の同級生だった。
沢渡は野球部に入ってくれた。マネージャーとして、西園寺女子高校の真実が入ってくれた。他校のマネージャーであるが、女子高校が許可してくれた。
おかげで沢渡が投げると小金井公園高校はどんどん勝ち進んでいった。あと少しというところで心無い応援で挫折して投げなれなくなり、あっけなく負けた。
野球部は休部になった。しかし、西園寺女子高校のソフトボール部の計らいでまた西園寺女子高校で野球ができることになった。
しかし、1年間の活動停止処分を受けてその後の予選には出られなかった。真実と岡村は少しの間付き合っていたが、その後は証券会社には行ったという。沢渡は大学へ進み何をしているか分からない。僕、岡村は小さい会社の中間管理職である。
勝てなかった高校が1985年勝つことの出きた瞬間であった。
530■ GMO 上・下 |
Date: 2003-08-31 (Sun) |
おすすめ度 ★★★★
服部 真澄 著 新潮社 発行:2003年7月
コカ茶畑に新害虫を蔓延させ、コカの木を枯らし、代替の農作物に切りかえる。そこでもまた、種からは生育するが、種が取れないように遺伝子組換えをする。こうして大きく巨大になった企業の「ジュネアグリ」を暴露をするルポルタージュを日本とアメリカで同時に出版する契約権を蓮尾は獲得する。
「見えない禍」を著作したレックスから、「略奪の咎」の日本語出版権を得て、翻訳するうちに「ジュネアグリ」という企業の悪らつぶりに憤りを感じる蓮尾。
しかし、最終稿にかかる時レックスは・・・・。レックスの部屋から新害虫が見つかる。
529■ 滅びのモノクローム |
Date: 2003-08-24 (Sun) |
おすすめ度 ★★★★★
三浦 明博 著 講談社 発行:2002年8月
仙台東照宮の境内でフライフィッシングの英国製ハーディのオールドリールを1万円で買った。これは本来なら数十万はするものである。
ついでに行李にあったアルミ缶もセットでもらった。
日下は広告の仕事をしていた。缶の中は古いフィルムだった。釣りをしている画像があった。これを今度のCMに使おうと思った。
フィルムははがすと切れいてしまう。大西と岩淵が協力して画像をパソコンに取り込んでいった。
釣られた魚から中禅寺湖のブルックトラウトだった。場所も菖蒲が浜であった。
大西の事務所があらされ、何者かにフィルムを持ち去られた。日下はリールの中から別のフィルムを見つける。そこには裸の男の子が走っている様子と閃光がして男の子が倒れる姿。スコップで埋められる姿が写っていた。そばにいた男は若き日の衆議院議員伊波謙一郎だった。
日下もねらわれる。
528■ 逃亡作法 |
Date: 2003-08-19(Tue) |
おすすめ度 ★★★
東山 彰良 著 宝島社 発行:2003年4月
川原昇、三行譲、李燕、百崎健の4人は福岡でストリート・ギャングのメンバーで悪ばかりしていた。
収監された刑務所から脱獄する。暴力シーンもすざましい。
彼らの怒りの吐き出し方とその根源がどこにあるのか、暴力のやり方にもストーリー展開にもなかなかついて行けない。
527■ ドスコイ警備保障 |
Date: 2003-08-06(Wed) |
おすすめ度 ★★★
室積 光 著 アーティストハウス 発行:2003年7月
相撲を引退したりもう相撲を取らなくなった力士をあつめて、警備会社を設立した。
近所の藤井興産の独身寮が空いていたことから、事務所兼独身寮として30部屋のをもつこの寮を借りることになった。
社員は15人からスタートした。元力士がぞろぞろと揃った。
「ドスコイ警備保障株式会社」のスタートであった。ナス紺の制服も出来あがった。
最初は「藤井興産」のビルの警備の仕事が舞い込む。ビルに賊が入った。捕まえてみれば連続拳銃強盗犯だった。そのことが報道されると仕事は順調に舞い込んできた。
ボクシングヘビー級世界タイトルマッチの選手のガード中、記者たちの前で大東山はチャンピオンを倒してしまう。
それがきっかけで、大東山のテレビ出演が引っ張りだこになる。
526■ 人間の条件 上・下 |
Date: 2003-08-01(Fri) |
おすすめ度 ★★★★
森村 誠一 著 幻冬舎 発行:2003年6月
渋谷と世田谷の境界近くにマンションが建った。窓の少ない奇妙なマンションであった。22戸40人が越して来た。入所者に共通の臭いがある。
ボツリヌス菌がマンション近くの水路から発見される。魚が浮きおかしいと感じた大手化学会社の公害防止主任の片倉は水質検査をしてそれをつきとめた。
人間の家というある宗教団体が那須地方に本部を置いて不穏な動きを見せていた。それとあの奇妙なマンションが関わりのあることがわかる。
片倉はその人間の家に入り込む。また集団結婚をするというままもどらない娘を探していたある父親も教団に近づく。
教祖は信者の多くの女性に教祖の子孫を増やす行為を選ばれたものの特権のように行なっていた。
やがて、数千人の捜査員によって教団幹部は逮捕される。
525■ 贄門島 上・下 |
Date: 2003-07-30(Wed) |
おすすめ度 ★★★★
内田 康夫 著 文芸春秋 発行:2003年3月
千葉の和倉の沖に美瀬島という島がある。観光客をほとんど寄せつけない。自然が破壊されることを嫌っているのか。
浅見光彦は21年前に父がこの島を訪れ、遭難しかけた時に海中から助けられたことがあった。1年後に父は亡くなったが、ふとそのお礼をしたいとやってきた。
一緒に同行した平子という男が戻る時間になってもやってこなかった。後ろ髪をひかれる思いで島を離れると、平子は後日水死体で発見される。島にいた日、夜釣りをしている男が消えた。またしても死体があがる。
また、小学校の石橋先生も突然消える。
この島になにがあるのか。光彦は島に渡り、島の隠された秘密をつきとめようとする。それは、北朝鮮と親交にあった。
夜中に不審船が近づき、大量の貝類を海に巻いているようである。
そんな折、代議士の広瀬がやってくる。島の観光開発に着手しようとしていた。が、事件は意外な方向へ。
524■ あなた |
Date: 2003-07-27 (Sun) |
おすすめ度 ★★★★
乃南 アサ 著 新潮社 発行:2003年2月
「大学生になったら皆に紹介して本当の恋人になろうね」といわれながら一つ下の美大の美奈子に励まされていた秀明。何がなんでもと頑張って早稲田に合格した。
秀明は最近、白いふくろうが出てくる夢を見る。時々意識がなくなって道路でも倒れることがあった。
教習所で知り合ったカンナと付き合い始めた秀明。そして、同期の美作という予備校からおなじ大学に入った娘とも付き合い始める。おまけに自分の男友達樋口に美作を紹介し付き合いを進める。
胃をわしづかみされたような痛みに襲われた。苦しむ秀明。一方、美作も付き合い始めた樋口には手も触れさせない。それどころか、何かに取りつかれているようだという。
美作は霊媒師に見てもらうと鋭いことばで罵声する美作。霊媒師はなおも除霊を続け鷲のような目をしたキツネをおびき出してしまう。しかし、まだすっきりしない美作には生霊が宿っていると言う。美作の口から「許さない!どうして私ではダメなのか」と秀明に詰め寄る。
◆最後まで読まないと・・最後に物語がどんでん返しになる。ホラー小説である。
523■ 繋がれた明日 |
Date: 2003-07-22(Tue) |
おすすめ度 ★★★★★
真保 裕一 著 朝日新聞社 発行:2003年5月
「彼女が嫌がっているからやめてくれ!」といったのに、逆上してぶつかってきた三上が隆太を突き飛ばした。おまけに顔面につばを吐きかけて捨て台詞を残して去ろうとした。堪え切れなくなった隆太はとっさにポケットのナイフで相手を刺した。三上は死んだ。
隆太は6年1ヶ月で仮釈放になった。保護司の紹介で解体屋の仕事につく。雇い主は隆太のことも承知で受け入れてくれた。
しかし、世間はそう甘くなかった。自宅のアパートに顔写真入のビラがまかれた。事件を報じた新聞の切抜きだった。隆太が人を殺したことがわかるものだった。おまけに見知らぬ女性がアパート近くに待ち構えて「この人は人殺しです!誰か助けてください!」とわめく。何もしないのに再び隆太は警察のお世話になる。
警官は頭から隆太が悪いと思い込んでの態度だった。保護司が誤解を解いてくれる。
被害者の母から呼び出される。今日なら会ってもいいと。一人で出かけていくと、異常に散らかった部屋で、いきなり「誰か、助けて!」とあたかも隆太が何かしたような演技をした。はめられたと思った隆太はその場から逃げる。もう誰も信じてくれないだろう。
隆太はまた留置される前に、はっきりさせておきたことがあった。
6年前の事件の時に、証言台に立った男がなぜウソの証言をしたのだろうか。手を出したのは死んだ男の方だった。それなの・・!
隆太は証言をした男に会う。しかし、事態は思わぬ方へ。今度は隆太が刺されてしまう。
◆一度殺人を犯すと世間はなかなか許さないことを知る。家族も本人も被害者も皆が苦しむことになる。
522■ 国銅 上・下 |
Date: 2003-07-18(Fri) |
おすすめ度 ★★★★★
帚木 蓬生 著 新潮社 発行:2003年6月
743年長門周防地方で、年端も行かない国人は兄と共に穴の中に入り松明の明りを頼りに鉄槌をふるい岩を砕いていた。
3年前に襲った流行り病で両親は死んだ。人足に交じって堀場の課役についた。ところが、兄は梯から落ちて死んだ。奈良登りの銅山がつづく山麓に墓が作られた。
兄の墓参りをしていると景信という僧と知り合い、文字や薬草のことを教えてもらう。字も読めるようになった。
仕事の相方が黒虫にかわった。黒虫は耳が聞こえずことばも出ない。しかし身振り手振りで話すことが出来た。国人はこの黒丸と気があった。顔を上げると黒虫が話しかけてくる。二人は仕事も熱心にやった。白煙と共に毒気がしたとき、逃げ遅れた黒虫は死んだ。
釜屋頭のところで見た絹女と言う若い女にひかれる国人。やがて、14人の仲間と共に大仏を作る人足として都へ登ることになった。
大仏に使う銅は80万斤が用意されていると言う。大仏は土で作った型の中に銅を流し込む手法で行なわれた。下の部分からだんだんに頭部の方へ移っていった。
休みの日、若草山で薬草を取っていると山賊と出会い、小屋に招かれる。小屋には目の悪い若い娘がいた。13で奉公に出たが目を悪くして戻ってきたと言う。薬草を煎じて手当てをする方法を教える。しかし、知り合って3度ほど合ううちに亡くなってしまう。
国人は字が読めることから他の衛士からも一目置かれていた。国人に薬の知識もあることから役人の家人を救うこともできた。褒美にもらった本は国人の宝物になった。
やがて、課役がとけ郷に帰れる日がきた。4人の同胞達と都をあとにする。しかし、郷で待ちうけていたものは・・・・!
521■ 家族のいくさ |
Date: 2003-07-13(Sun) |
おすすめ度 ★★★
清水 一行 著 光文社 発行:2003年4月
敬市家族は、親戚に身を寄せた後満州に行く。父は怠け者であったが、役者のような端正な顔をしており、十歳も年下の母はそんな父に代わって働き者であった。
戦争で何もない時代に、無謀にも老舗のきものや反物を預かって奉天で店をはじめた母。それが成功したのもつかの間、終戦となり日本へ引き上げる。
列車の中で知り合った人に荻窪の離れを提供してもらい、荻窪で店を出す。だんだんと洋服化していく中、つぎつぎとその流れを取り入れて店を大きくしていく。
兄は戦争でなくした。父もまだ商売が軌道に乗らないうちに亡くなった。
服地の店はだんだんおおきくなり既製服の製造もし、千葉の駅ビル、鶴見の支店と増えていった。妻をもらい子供もできた。
母は昭和49年アルツハイマーをわずらいこの世を去る。
520■ 輝ける日々 |
Date: 2003-07-10(Thu) |
おすすめ度 ★★★
ダニエル・スティール 著 朝日出版社 発行:2003年5月
ダニエル・スティールの息子ニックが躁うつ病に侵され19歳で自ら命を絶った物語。
ダニエルは再婚し、前夫との間に生まれたニックと新たに増えた子供と暮らしていた。ニックは12歳でマリファナやLSDにやるようになり、たびたび学校から呼び出された。
他の子より特別な子として扱われた。15歳で躁うつ病と診断された。ジャンカーと名付けたバンドを組んだりして一時成功していた。
しかし、16歳では攻撃的になるものの、入退院を繰り返していた。18歳の時は5日間、1週間という入院で、何日も入院することはなかった。
19歳の時モルヒネで自らの命を絶った。自殺であった。
519■ 燃える水 |
Date: 2003-07-05(Sat) |
おすすめ度 ★★★★
高任 和夫 著 祥伝社 発行:2003年5月
ナイジェリアで天然ガス発掘のマネジメントをしていた葛西は、ひょんな事から事件に巻き込まれ東京の戻った。
日本はエネルギーの問題は深刻であった。メタンハイドレートというメタンを内包した水で、燃える水を深海から発掘しようとする計画が持ち上がる。
葛西はナイジェリアで、メタンハイドレートを手にかけるのはよく考えた方がいいと忠告してくれた男がいたことを思い出す。
環境に悪影響はないだろうか。海底が地すべりを起こす危険性はないのか。
そこ頃創刊された「ガイア」という雑誌はそのメタンハイドレートの危険性を問うものであった。雑誌は話題を呼んだ。
やがて富士山が爆発すると言う事態に発展していく。
518■ ブレイブ・ストーリー 上・下 |
Date: 2003-07-02(Wed) |
おすすめ度 ★★★★
宮部 みゆき 著 角川書店 発行:2003年3月
亘は小学5年生。神社の近くに2年間工事を中断したビルがあった。時々幽霊が出るという噂である。
ある日、ビルのオーナーの大松が様子を見に来る。幽霊を見たさに夜しのび込んだ亘と出会う。香織と言う娘と一緒だった。
亘のお父さんが他の女性と暮らすことになったので、お母さんがお父さんの弟と相談したり、千葉から祖母が出てきたりしていた。
亘も元気がなくなった。そんな折、転校してきた芦川美鶴と知り合う。幽霊ビルの階段をのぼっていると急に明るくなり、光りの渦に吸い込まれるように”幻界”に来ていた。
幻界では旅人ワタルと呼ばれ、ミツルをさがしていくうちに、さまざまな怪物や課せられた運命に立ち向かいながら進んでいく。
5つの宝玉を手に入れ、「運命の塔」をめざす。ミツルを追っていく。
亘が現実に戻された時、母がガス自殺をしようとしていた。亘は気丈にふるまい母を助ける。何日かの間にすっかり強くなった亘は、母を助けながら生きようと思う。
517■ コンタクト・ゾーン |
Date: 2003-06-27 (Fri) |
おすすめ度 ★★★★★
篠田 節子 著 毎日新聞社 発行:2003年4月
30代のOL3人組みがマニラを経由してバヤン島へ旅行する。添乗員の小島はなかなか素直に同行しない3人にへきえきしていた。3人が泊まったバヤンでクーデーターが起こり、添乗員と離れ離れになった3人娘。
ボートで懸命に脱出し難を逃れる。・・・が1晩中必死に漕いだり、潮に流されたりして遠くに来たはずが、なんと同じ島の裏側にたどり着いただけだった。
島の裏には村があり、長老が村を支配する原始的なところでもあった。住民には中国の女性と言うことで受け入れられた。
やがて、ありさは村の男タンリと結婚する。
医者のいないところで、占術を頼る風土にあって医師免許を持ちながら医師が嫌いだった祝子は血の止まらなくなった男の子の頭を縫術してやる。それ以外にも祝子は生理の始まった女の子に処置の仕方を教える。村の女たちが読み書きを禁止していることに憤慨する。
6ヶ月の間、内戦のバヤンでの生活は戦闘の繰り返しであった。村にも兵がやってきて長老は殺される。
自由奔放な真央子は国家公務員であった。世界情勢にも詳しく、日本へ買えるとすぐにNGOを経由して医薬品や文具を島へ送った。が、すぐバヤンにいこうと決心する。
516■ 観覧車 |
Date: 2003-06-23(Mon) |
おすすめ度 ★★★★★
柴田 よしき 著 祥伝社 発行:2003年5月
夫の貴之が3年前に失踪した。彼がやっていた探偵事務所を妻の唯が引き継いだ。この事務所を続けながら彼を待つことにした。
最初の客が失踪した夫遠藤祐介を探して欲しいという依頼だった。
遠藤には部下で愛人の白石和美がいた。和美も2ヶ月前に会社を辞めている。和美の尾行を続けるうちに、きちんとお化粧をして出かける先が遊園地の観覧車であった。ほぼ毎日観覧車に乗りにくる。
遠藤が都内に借りていた事務所の家宅捜査は終わっている。血痕一つ出てこなかった。
もう一度刑事の風太と共に遠藤の事務所に入り、アルバムを見つけた。そこに写っている写真を点検するうちに枝がせり出した山桜の写真があった。それはビルの屋上か何かから撮られた物だった。
白石和美の行動を追ううちに観覧車に実際に乗って手がかりを探した。あった! 山桜の木にぶら下がった人間の首吊り死体。
ほどなく白石和美も車にはねられ死んでしまう。遠藤は自殺だったのだ。
ほか6篇。探偵事務所の依頼の事件を内容にして・・・!
515■ ももこのおもしろ宝石箱 |
Date: 2003-06-20(Fri) |
おすすめ度 ★★★
さくら ももこ 著 幻冬舎 発行:2003年4月
ももこは宝石店の社長岡本さんにパライバドルマリンという宝石を買った。透き通ったブルーである。
岡本さんは「宝石の常識」と言う本も書いていた。
ルビーは鳩の血のような赤っていう意味なんだそうだ。ピジョン・ブラットというのが最高のルビーだそうでビルマ産。
サファイアはコーンフラワーブルーというカシミール産がきれい。それにスリランカ産のインカブルーというのもきれいだそうだ。
緑色のエメラルドはコロンビアのムゾー鉱山でとれたのがいい。
赤いエメラルドはアメリカ・ユタ州のワーワー山脈で採れるそうだ。
宝石にも薬の効果がある。持っているだけで、解熱や血行を良くするそうだ。
アレキダンドラ・ライトは解熱や目のつかれ、耳鳴り、血圧の低い人に良い。サファイアは精神的に落着かせる効果がある。エメラルドは目の疲れに良い。ルビーは血行によい。
514■ 検察審査会の午後 |
Date: 2003-06-16(Mon) |
おすすめ度 ★★★★★
佐野 洋 著 新潮社 発行:1995年5月
F市の選挙管理委員会から、いきなり「あなたは検察審査員候補者に選ばれました」という葉書がきた。55歳の誕生日である。
勤務先は私立高校の教師である。妻は娘の結婚を期に離婚をし、すでに別々に暮らしている。
11人の検察審査員が不起訴処分の事件を検察官が起訴しなかった事の良し悪しを審査するのを主な仕事としていた。
ホテルで会社社長が脳内出血で死亡した。一緒にいたのは社員の40歳の女性。部屋には女性の指紋はなかった。女性が言うには「ドアは社長が開け、送り出してくれる時もドアは社長が開けノブに触っていない」と主張した。不起訴処分が妥当とされた。
20万円のボケ防止のお祈りを払った。詐欺ではないかという長男。しかし、お寺は5000円の祈祷料はもらったが、20万円はもらっていないという。
迷子札をつけるのはいやがられるがお守りならすんなり身につけられる。お守りにかかれた電話番号で徘徊先から無事に保護した例もある。5000円の祈祷料は技術料でもあると主張するお寺側。一枚に厳粛に書く札は宗教家としての技術料であるともいう。
寺側の20万円の受け取りがないことが判明し不起訴になる。高齢の母が次男にこっそり援助したためであることも伺われた。
審査の内容ごとに数篇のものがたり。おなじ審査会員の女性にも引かれる。
513■ みんな閉じている |
Date: 2003-06-13(Fri) |
おすすめ度 ★★★
小川 勝己 著 新潮社 発行:2003年5月
失神から目を覚ますと、顔の上に人の肛門が見えた。目と鼻先につきつけられたその場所から汚物がみえ、ぼくの顔面に落ちた。
熱い、臭い! たまらず身をよじってそれを振り払おうとするが、両手足を縛られ、猿ぐつわをはめられている。それでも吐き気が襲い、もう胃の中に何もないので液体だけが猿ぐつわに流れ出る。
糞をした男は「うんこにまみれた君に似合の化粧だ」と毒づく。「絶対に許さない。絶対に殺してやる」と男は怒っている。
僕が愛美を殺したと言う。愛美はドアノブにスカーフを巻きつけて首をくくって寝そべるように死んでいた。
死ぬ前にこの男に、好きな男の人に嫌われているのではないかと悩みを打ち明けていた。好きな男というのが僕のことらしい。
僕は愛美が好きだった。愛美が作った料理が美味しいわけではなくても「おいしい!」と無理して食べていた。ただ、愛美に嫌われたくなかったのだ。
なのに、愛美は死んでしまった。信じられなかった。あの男は愛美がよく行く飲み屋のマスターである。自分の娘のようにかわいがっていた。
男が振り上げた斧が・・・・!
512■ ドク |
Date: 2003-06-10(Tue) |
おすすめ度 ★★★★
岡田 惠和 著 角川書店 発行:1996年12月
日本語教師とベトナム青年の愛の物語。テレビドラマのノベライズ。教師役は安田成美。ドクは香取慎吾だった。
ベトナムで縦横無尽に走るバイクの渦の中で道路を横断できないでいる日本人女性雪。それをみたドクが手をひきわたりきることが出来た。雪はお礼にお金をドクに渡す。
日本に帰った雪は日本語教師の仕事をすることになった。そこへドクが早稲田大学に学ぶために来日する。雪の通う日本語学校で事前の日本語学習をする。
雪はドクの顔を見て驚く。ドクは雪にあの時のお金を返す。お金でお礼をしようとした自分の好意を反省する雪。
やがて、ドクは雪に好意をいだく。中国人女性もドクが好きになっていく。
雪はプロポーズしてくれた日本人男性がいた。返事はまだしていない。ドクのことが気になっていた。
志し半ばであるがドクはベトナムの家が災難に合いベトナムへ戻ることになる。
511■ 沈船検死 |
Date: 2003-06-07(Thu) |
おすすめ度 ★★★
曽野 綾子 著 新潮社 発行:2003年3月
2001年12月に九州海域で沈んだ不審船が9月になって引き上げられた。船内は居住区らしいものはなく戦闘を目的に作られていた。船内には小型船の格納庫まであった。
9月11日のアメリカ同時テロ多発事件の後、多くの日本人は「すべての人間が平和を願えば実現するはずだ」「話し合えばわかる」と言うものだった。しかし、悲しいことに世界には平和などめったに存在していない。水も教育も社会保障も医療も住宅も整備されていないのが現実である。電気も水道もない洞穴の生活の貧しい生活から富める世界に対しての嫉妬にまみれた怨念である。アルカイダやタチバンのような人物が出るキーワードは貧困・無知・嫉妬である。
話し合えばわかるというが何語で話せばいいのだと言いきる。
510■ オキーフの恋人 オズワルドの追憶 上・下 |
Date: 2003-06-01 (Sat) |
おすすめ度 ★★★★
辻 仁成 著 小学館 発行:2003年4月
作家の高坂譲が失踪した。連載の小説を書きかけたばかりである。最後までかいて送ると言うが・・・。
そして第1回の小説が送られてきた。「オズワルドの追憶」である。主人公の貧乏探偵が妻と離婚後ボロビルに住み込み、猫探しや離婚の相談、子供のいじめの相談にのるというもの。
探偵は42歳。夢想探偵事務所という。金持ちの老婆から猫探しを依頼される。以後年代物の高級ワインを飲み合う仲になる。
援助交際をしていた女子高校生を助けたところ、相手は自分の学生時代の同級生だった。女子高校生はわかれたものの、夢想に夢中になる。そして、その後、ルーズソックスを履いた女子高校生ばかりが殺される事件が起きる。
金持ちの老婆も誘拐される。探偵は忙しくなった。
509■ キング |
Date: 2003-05-27 (Tue) |
おすすめ度 ★★★★
堂場 瞬一 著 実業之日本社 発行:2003年3月
オリンピックの男子マラソンの代表の座をねらう3人の男達。3人はかっては同じ大学であった。
須田は日本最高タイムを保持しているが、故障に泣かされていた。
武藤は陸連を批判しチームを去り名誉挽回に意欲を燃やしていた。
青山にはドーピングの魔の手が忍び寄っていた。2週間に1度だけ投与すればよいというダーベポエチンであった。
武藤はテープを切った直後心不全で死亡する。ドーピングの疑いも持たれた。結局薬物は検出されなかった。2位だった青山はオリンピック代表の申し出を断る。誰にも言わなかったが自分もドーピングに足を染めそうとした。だが、あの2位は自分の実力であった。
結局代表には若い男が選ばれる。
508■ 噂 |
Date: 2003-05-25 (Sun) |
おすすめ度 ★★★★★
荻原 浩 著 講談社 発行:2001年2月
渋谷の女子高校生の間で「夜中に碑文谷公園に行くと黒いレインコートをきてマスクをしたレインマンがでるんだって。殺されて足を切っちゃうんだって。足首から下を。でもミリエルという香水をつけていると狙われない」という噂がたった。
そして、目黒区と品川区にまたがる林試の森で全裸で女子高校生が殺されていた。
つづいて、ゴミ捨て場にも別の女子高校生が絞殺されていた。いずれも足首から下がなかった。
事件を調べるうちに被害者の名前もわかり、二人は同じアルバイトをしていたことを知る。そのアルバイトをしていたという女子高校生を集めて得た情報は、日当5万でミリエルという香水のモニター販売をすることだった。出来るだけ口外しないという前提で噂を広めそれを誰に喋ったかレポートを義務付ける。それによって日当が支払われるというものだった。
口コミによる大衆操作である。3週間で1800人に噂を広げた計算になった。
その犯人は切り取った足にペディキュアをぬりパンプスをはかせ興奮していた。足首は冷凍されていた。
被害者がいずれも23センチの足であること。アルバイトが同じであった共通点から、ミリエルの販売関係者だと断定される。
捕まった犯人の部屋からポラロイドで写された膨大な死体の足の部分があった。足はきれいにペディキュアされ、靴を履いているものもあった。
507■ 愛の領分 |
Date: 2003-05-20(Tue) |
おすすめ度 ★★★★
藤田 宜永 著 文芸春秋 発行:2001年5月
テーラー武蔵という背広の仕立てをしている淳蔵のところへ高校時代の友人高瀬が訪ねてくる。28年ぶりであった。
高瀬の妻美保子は淳蔵の高校時代の恋人でもあった。が駆け落ちの約束を美保子は破ってしまった。
以来淳蔵は東京で暮らしていた。高瀬は妻が筋無力症で病んでいるという。見舞いに来て欲しいという。淳蔵は誘われるままに別所温泉の高瀬の家を訪問する。
美保子は気丈に振る舞っていた。高瀬に背広を注文されたびたび別所を訪れるようになる。高瀬の娘に絵を教えているという佳世とも親しくなる。
やがて、妻の死後一人だった淳蔵は佳世との結婚を考えるようになる。
そんな折、高瀬は自分が癌であると淳蔵に打ち明ける。余命は1年と宣告されている。自分の死後には美保子を頼むと・・・。佳世はかっては高瀬の愛人であったことを知る。淳蔵と佳世の交際は計算外であったことも・・・!
506■ 桜宵 |
Date: 2003-05-18 (Sun) |
おすすめ度 ★★★★
北森 鴻 著 講談社 発行:2003年4月
短篇小説である。2編を紹介する。
「15周年」 小料理屋の15周年の祝いのパーティーの招待状が届く。その小料理屋の前身は火事にあっていた。その店には少女を描いた洋画が飾ってあった。「TUNE」とサインのある絵だった。パーティーでその絵が話題になった。すでに15年も前である。絵は有名な中村彝(つね)という画家の自画像で3000万円はするものだった。絵を盗んだあと放火された事を知る。すでに時効を迎えている。パーティーは余命の短いその家の娘のために犯人を見つけるのが目的で開かれたものだった。
「犬のお告げ」 この1年で50人がリストラされた。1割である。このリストラには湯浅部長がホームパーティーを開き、犬に噛まれたものをリストラするという噂が立った。パーティーは毎週開かれた。修も次に呼ばれていたが、急きょ犬が死んだことで開かれなかった。犬のお告げとしても馬鹿にした話である。犬が死んだあと、部長は背中を包丁で刺される。夫人が刺したという。
犬がなぜ死に、なぜ特定の人だけを噛むかと考えた。犬は塩のついたものを好んで噛んでいたのだ。愛犬家の夫人にそのことを教え、犬の命を縮めた夫に復讐したのだった。そのことを教えたのはかってのライバルで自主的に退職した野中部長だった。
505■ 七人の岡っ引き |
Date: 2003-05-14(Wed) |
おすすめ度 ★★★★
小杉 健治 著 祥伝社 発行:2001年11月
勘助は25歳の時博打で大負けをして仲間の十蔵と連れだって盗みをしていた。
その十蔵が16年ぶりに顔を見せた。十蔵は押し込みの後、連と連れだって逃げた。聞けばそのお連が病気だと言う。30両あれば助けられる。三州屋に押し入ると言う。
三州屋は娘の千代が嫁ぐ先である。市兵衛親分は勘助に十蔵に近づいてはならぬという。
16年前に吉野屋から出火、お内儀と産まれたばかりの女の子が助かったが、若旦那と老夫婦は亡くなった。店は再建されたが、親戚のものから冷たくされたあげく、お内儀と子は追い出された。
大川に身を投げようとしたところを勘助が助けたのだ。以来3人で暮らしてきた。2年前に妻が亡くなり、最近千代の婚礼が決まったばかりである。
市兵衛親分は「千代が吉野屋の娘だから三州屋の話をすすめた」と言い、何もかも知っている様子である。
追ってを逃れて勘助の家に身を隠した十蔵に「すまないが、手を貸せない」と苦しい胸のうちを話す。十蔵はつかまり、八丈に遠島になった。連れの連は養生所で亡くなった。
504■ 骨董市で家を買う |
Date: 2003-05-11(Sun) |
おすすめ度 ★★★★
服部 真澄 著 中央公論社 発行:1998年11月
骨董市で田舎の古民家が売りに出されている。250万ほどである。磨きや運賃をかけ東京に運んで家を建てると2、3千万円で建つと言う。
さっそく、福井の民家を見に行く。豪雪地帯の民家は30センチ四方の柱や板戸も肉厚の材木を使い、どっしりと建てられている。ススで光った柱。気に入ってしまった。
早速、東京に運び入れる手はずを整えた。・・・つもりであった。しかし、1本1本くぎ抜きや磨きが入り、なかなか棟上式に至らない。どうにか棟上式を行なったものの、壁は漆喰壁に、外壁も漆喰にとやっていたら、予定を遥かに通り越し1年もたって、やっと完成した。費用は4千万円。が、しかし、野にあったあの風格が都会の中にあっては違って見えた。階下は快適であるが、2階の暑さはひどいものであった。
503■ 神田堀八つ下がり |
Date: 2003-05-08(Thu) |
おすすめ度 ★★★
宇江佐 真理 著 徳間書店 発行:2003年3月
江戸米沢町の薬種屋の菊次郎と町医者の桂順は気があっていた。
旗本の5000石の青沼は養子の口を断っていた。要は金がなく礼装の費用50両がないからであった。
桂順から菊次郎にその費用を出してやれと打診される。
そんな折に、「おそめ」という店に腕のいい板前が入ったという。着流しに襷がけでいいぐらいの店だが、いつもきちんと紋付に島の袴をつけて高級料亭のようなお造りを出す。客はすぐさま増え「おそめ」は長蛇の列であった。
「島村」という料亭では、最近板前がかわったために客足が途絶えがちだという。「おそめ」にきた板前は「島村」にいた源次だとわかる。店はちがっても「島村」の流儀を守り通していた。
着る物もであるが、料理に職人の意気を感じた菊次郎。青沼の衣装一式を整えることになる。
やがて公儀のお目付け役となった青沼伝四郎は、貧しさゆえに出世がかなわぬ貧乏旗本に衣服を与え役付きにつけるよう運動しているという。
502■ リアルワールド |
Date: 2003-05-06(Tue) |
おすすめ度 ★★★★★
桐野 夏生 著 集英社 発行:2003年2月
隣りから窓ガラスの壊れるような音がした。その家から出てきた高校生の男の子は笑顔さえ見せていた。山中十四子は自分と同じ年のその彼と話をするのははじめてだった。
十四子は駅に置いた自転車と携帯が盗まれた。自分の携帯に電話してみる。電話の向こうの声はとなりの男の子であった。
隣りの奥さんが殺されていた事が夕方わかる。どうやら息子が金属バットで殴り殺したようであった。ミミズのようにひょろっとしたあの息子が。
十四子は警察には話さなかった。友達のキラリンやユウザンに相談する。ユウザンが自分の携帯と自転車をミミズに渡し、十四子の自転車と携帯は戻ってきた。ミミズは立川の公園や土手に身を隠していた。
キラリンはミミズに興味を持ち会いに行く。2人は軽井沢の空き別荘に隠れ住んだ。やがて、十四子の友達のテラウチは警察に密告する。警察の手を逃れようとタクシーに乗ったミミズとキラリンは脅していた運転手を誤って刺してしまう。直後交通事故でキラリンは死んでしまう。
テラウチはとり返しのつかない事をして逃げ回っているミミズを心底バカにしていた。なのにへらへらと2人に協力している自分が許せなかった。超リアルのなかのリアルワールドに行くと書き残して自殺する。
501■ 武蔵と小次郎 |
Date: 2003-04-23(Wed) |
おすすめ度 ★★★
津本 陽 著 角川書店 発行:2003年3月
武蔵は16歳で郷里を出奔して28歳になるまで諸国を遍歴していた。1612年、佐々木小次郎との闘いで下関と小倉の間の船島に向かっていた。
武蔵の幼名は弁之助と言った。お千と弥蔵という幼馴染と美作国吉野郡讃甘宮本村の故郷で遊んだ。13歳で人も殺した。生母は彼を産んだ後すぐ亡くなった。武蔵は平福村正覚寺と平田家をわが居住として過ごした。
吉岡家当主清十郎との果し合いには木刀で応じ、清十郎を倒してしまう。
やがて佐々木小次郎との戦いにも勝つ。
◆吉川英治の「宮本武蔵」とはまた違った物語である。
500■ 悪の華 |
Date: 2003-04-22 (Tue) |
おすすめ度 ★★★★★
新堂 冬樹 著 光文社 発行:2002年10月
ガルシアは、シチリア人の父と日本人の母の間に生まれた。父はマフィオソのボスであった。七年前、マフィオソになることを反対していた母がなくなると、父の期待に沿ってマフィオソになった。
18歳でマイケルから「将来復讐してくる可能性のある相手の血は一滴も残さない」と無抵抗な女子供も皆殺しにする方法を教えられる。6年後、妹アニータも父も殺される。殺した相手の名前を聞いたガルシアはシチリアを脱出する。生きてマイケルに復讐する為に。
以前に母から聞いていた叔父の守を頼って東京・歌舞伎町にやってきた。叔父は20年前に家族を捨てこの地に来ていた。
ガルシアはヤクザを相手に金のためならなんでもやると職探しをする。5000万円の報酬で片桐という男から誘いがかかる。
日本のヤクザと台湾マフィアの抗争の中に入り込む。
盲目のマスミという娼婦に出会ったガルシアは、妹アニータを思い出し客を取る仕事から開放してやる。妹の分をこのマスミにしてやろうとするが、これも罠だった。
499■ 天涯の船 上・下 |
Date: 2003-04-15 (Tue) |
おすすめ度 ★★★★
玉岡 かおる 著 新潮社 発行:2003年2月
明治の初め、12歳の綾子は姫路藩士の娘ミサオの身代わりとなってアメリカに船出した。自分が身代わりであることがわかったのは船が港を離れてからであった。
2年前に津田梅子が帰国したばかりだった。欧米の国と肩を並べる教育が必要と他に数人の娘達との船出であった。
実の妹が乗船していないことを知った兄の数馬は、乳母のお勝から「今日からこの娘がミサオでございます」と紹介されうろたえる。が自分の妹はすでに男の元へ身を隠したことを知らされる。
船の中ミサオとなった娘にお勝は何かときびしく当たる。
ニューヨークについたミサオは大学の近くにお勝と下宿する。やがて父の尊則が渡米し、ミサオが実の娘でないことを知る。2年後本当の娘ミサオは見つけ出されたが、これまでの疲労で肺結核にかかって死亡する。お勝もニューヨークでその悲報を知り自害する。
いったん帰国したミサオは再び、アメリカで知り合ったマックスの求婚を受けオーストリアに向かう。
498■ 交渉人 |
Date: 2003-04-04(Fri) |
おすすめ度 ★★★★★
五十嵐 貴久 著 新潮社 発行:2003年1月
特殊捜査班の研修を受けていた麻衣子はキャリア組のエリートであった。講師の石田に憧れを抱いていた。10歳も上である。
男女雇用機会均等法で麻衣子は特殊班に所属した。研修では最も優秀な成績であった。
コンビニで強盗事件があった。犯人は近くの病院に立てこもった。犯人との交渉人に麻衣子が抜擢された。
さっそく交渉の場に臨むが、たたき上げた古刑事が犯人を挑発してしまう。研修では「説得はお互いが理解しあってその上で成り立つ。怒鳴りつけることは説得にならない」と教えられた。
麻衣子は受けた研修通りに指示を下していく。犯人も心を和らげる。やがて警視庁警備部が応援に来る。
犯人は患者や看護婦・医師を人質に立てこもる。犯人は3人のようである。
この病院で石田は4歳の自分の子供を死なせていた。点滴を受けながら冷たくなっていく娘の様子を訴えるが、看護婦がろくに見もしないで「そういうことは当たり前だ」と正しい処置をしなかったため、20時間後に死んだ。
また、北山には「盲腸だ」といわれ簡単に直るといわれながら、5年間植物状態が続いた後死んだ小学6年生の息子。こうした医療ミスは年間八千件にも上るという。
犯人は警察が用意したお金をバイクに積んで逃走する。トンネルの中で人質だった看護婦は殺されていた。犯人の姿はなかった。
麻衣子には犯人が誰であるかすぐ気がついた。
497■ 殺人ライセンス |
Date: 2003-04-01(Tue) |
おすすめ度 ★★★★
今野 敏 著 メディアファクトリー 発行:2002年5月
真っ黒い画面に赤い文字で「殺人ライセンス」と書かれたホームページを見つけた。殺人請負というコーナーにハンドルネームとメールアドレスを書き込みゲームに参加する。
ある日 ヤスジという28歳の公務員と大阪で中学生が殺された。高校生のキュウはこの二人の人物があの殺人ライセンスというページのターゲットと同じだと気がついた。
麻理の父親が探偵業をやるのでホームページを作りたいという。
キュウは麻理の父親にホームページをアドバイスする。親しくなり「殺人ライセンス」のホームページと実際に起こった殺人が一致していると話す。最初の仕事だと父親は張り切って犯人を探すための協力をしてくれる。
父親は友人の刑事を相談役にして捜査に乗り出す。掲示板に書かれたハンドルネームを頼りに犯人に近づいていく。
496■ タクシー |
Date: 2003-03-25(Tue) |
おすすめ度 ★★★★★
森村 誠一 著 角川書店 発行:2002年11月
タクシードライバーの蛭間はなぜか霊に助けられたと思う瞬間があった。何者かに胸をさされた雅代は、蛭間のタクシーに乗り込み「警察や病院ではなく佐賀県につれて行って!」と分厚い封筒を手渡し息を引き取る。
蛭間はいったん自分の家に連れて行きアルコールで清めてやる。そして、封筒の中にあったメモを頼りにNTTの電話案内で雅代の父親と確認が取れ佐賀に向かった。
途中、焼津で民家の軒先で仮眠をしていると12.3歳の少女智恵子から朝食が出来ていると起こされる。聞けば母が死んで4日目になるというが目の不自由な智恵子一人ではどうしょうもなく、まだ蒲団に寝かせたままの状態であった。熊本に母の親がいるので連れていって欲しいと頼まれる。蛭間はとりあえず智恵子の母を庭に仮葬した。智恵子に別の仏様が後部座席にいることを話し九州に向かう。
途中でこのタクシーがねらわれていることに気がつく。智恵子の鋭い感覚で何度か救われ無事に大分につく。
大分では祭りの始まる時期であった。大名行列の長持ちの中に遺体を隠し堂々と雅代に実家に入り込むことが出来た。父親にお礼を言われる。
その足で熊本に向かう。智恵子の祖母を連れてまた東京に向かう。庭を掘り起こしたときまだ死んで間もないような状態に、医師は不信を抱かず死亡診断を書いた。
何日か経って蛭間の営業所に智恵子が訪ねてきた。目を手術して見えるようになっていた。
495■ 人形 ギニョル |
Date: 2003-03-19(Wed) |
おすすめ度 ★★★★★
佐藤 ラギ 著 新潮社 発行:2003年1月
飲み屋で知り合った男からギニョルというただでやらせるという男を教えられる。ギニョルは外国人の血を受けた色白の男の子だったがホームレスでもあった。
ほとんど口を利かずうつろで無表情である。16、7歳であろうか。
作家センセイは仕事場兼自宅の雑居ビルにつれていく。アザだらけの少年に興味を持った。無表情がイライラをつのらせ、ベルトで鞭打ってしまう。が声を出さず堪える少年。我に返ったセンセイはすぐに薬を買って介抱をする。
少年のお尻には無数の文字が彫り込んであった。「此奴ハ邪悪ナル世界の罪人 汝ヲ邪悪ナル世界へ連レ去ル者 正シキ世界ニ留マル者ハ彼ヲ打テ・・・・」 作家センセイは戦慄を覚える。そうはいうもののバンちゃんを呼んで二人でこの少年を檻にいれて飼ってしまう。鎖をつけて出られないようにする。
少年は口を利くようになり悪態もつく。鎖もはずしてしまう。
人形にしかみえない少年を使ってホームページに「残酷劇場 グラン・ギニョル座」を立ち上げる。同時にCD=ROMを作り発売する。ギニョルを打ち、血をながし啼かせるというグロテスクなものだった。
あちら世界でかなりの人気で売れた。
そんなとき何者かがいきなりやってきてセンセイの目の前でギニョルをめちゃくちゃに痛めつける。骨も折れぐったりした様子であるが声も出さないギニョルである。センセイもやられてしまう。
ほうほうの態で昔の我が家に戻ったセンセイ。しばらくは仕事場の近くにもいけなかった。
ギニョルもバンちゃんもいなくなった。まだ3人で分けたお金も残っていた。
そこへ携帯で途切れ途切れの声が聞こえた。数週間後ニューヨークから小包が届く。ギニョルからだった。
494■ エンブリオ |
Date: 2003-03-18 (Tue) |
おすすめ度 ★★★★★
帚木 蓬生 著 集英社 発行:2002年7月
受精2週間以上の受精卵をエンブリオという。9週目ぐらいから胎児と呼ばれる。
国際エンブリオ学会でサンビーチ病院の岸川は、男性の腹部に受精卵を移植させ15週で流産するまでの様子をスライドで発表し参加者に衝撃を与えた。
岸川の病院の地下2階でファームという名のエンブリオの貯蔵庫と胎盤を原料にした化粧品を製造していた。さらに体外受精の精子は岸川のものであった。すでに200人に提供しただろうか。
不妊に悩む夫婦は岸川の病院でエンブリオの移植により子供を持つことが出来た。
女優の春奈が浜辺で水死体で見つかる。岸川と交際があった。泳いでいるうちに心臓麻痺とされた。
その後知り合った加代という女性。学会の発表の後ザポール教授に岸川の秘密の工場の情報を流していたと思われる。近くのホテルで突然死する。
ファームの工場長の鶴も密かに情報を流している事を知る。が、交通事故死した。
体外受精の相談にきていた直子は夫を癌で亡くしやっと授かった男の子も失っていた。ふたたび体外受精を決意してサンビーチ病院を訪れる。やがて美人の直子は岸川との交際が始まる。
493■ 銀行総務特命 |
Date: 2003-03-16(Sun) |
おすすめ度 ★★★★
池井戸 潤 著 講談社 発行:2002年8月
帝都銀行の中小企業を中心にした数万件の顧客データが出まわっているとの情報が入った。
不祥事担当で特命の指宿修平が動いた。名簿は会社の売上計常利益の他に総資産の額まで書かれている。さらに名簿の端には当行がつけた信用格付の数字が並んでいた。
コンピュータのログ記録を調べ当該操作を確認したところ心当たりのないものがいた。ダウンロードした漏洩データは500万円で取引を依頼してきた。
タキザワ電器からも他の銀行取引がない一行取引をしており、漏洩元が帝都銀行しかないと言ってくる。
取引先のホテルにやってきた人物はタキザワ電器と競合する糀谷電業の木幡社長であった。糀谷電業は半年前に2回目の不渡りを出していた。
◆オムニバス風に銀行の不正を調査する特命の話が8話。
492■ こころの羅針盤 |
Date: 2003-03-14(Fri) |
おすすめ度 ★★
五木 寛之 選・日本ペンクラブ編 光文社 発行:2002年10月
30人の著名人がコラムを書いている。五木寛之氏がこれまでに出版されたものの中から選出したものである。
ビートたけし「事故の後、生きていることの価値を考えてみたが、結局は生きていくことが究極の問題で、結論が出ようが出まいが価値があるのではないか。」
「物質的な興味がなくなった。ポルシェなんかも売ってしまえ、彼女とも全然電話しない」
浅田次郎「頭がハゲた。側頭部と後頭部は剛毛に被われている。江戸時代に生きていればカサヤキを削る手間を省けて都合がよかったか。チョンマゲはいずれハゲる大多数の男たちへの用意された社会風習ではなかったか。」
491■ 虚無のオペラ |
Date: 2003-03-12 (Wed) |
おすすめ度 ★★★
小池 真理子 著 文芸春秋 発行:2003年1月
結子が30歳のとき、著名な日本画家の堂島に裸婦のモデルを頼まれた。それは結子が美大を出たことや堂島の個展を見に行ったことがきっかけであった。以来16年間も裸婦のモデルを続けている。堂島はポーズを指示する以外まったく結子に手を触れなかった。堂島は当時51歳であった。親子ほどの違いがあった。
結子は中学時代の友人のミニコンサートでピアノの伴奏をした正臣を紹介された。結子より8歳年下の正臣には盲目の妻がいた。
結子と正臣は京都に4泊の旅行をする。結子の胸のうちには正臣と決別の決心が出来ていた。正臣の妻が妊娠していた。2人目の子だと言う。彼の門出のために別れよう、しかし消え入るような別れ方はしたくなかった。
京都で4日間湯につかりながら過ごす。
画家の堂島が首に紐をかけ自殺しようとしたことがあった。妻の礼子は結子に連絡をしてきた。見舞った結子は「いつでも素っ裸になって先生に描いてもらう。早く元気になって」と励ます。その頃結子は正臣と深い関係にあった。
「淫蕩のきわみは、純潔が最後にたどり着くところに似ている」
堂島はふたたび筆をとる。
490■ BODY&MONEY |
Date: 2003-03-10(Mon) |
おすすめ度 ★★★★
鎌田 敏夫 著 新潮社 発行:2003年1月
「私、自信があるのは顔だけじゃないんです」というCMが流れると秋乃は自分のことだと思った。自分でも惚れ惚れとする身長168センチ、86センチのCカップである。
東京の大学へ進んだときにモデルにもなった。しかし着せ替え人形でも自分を表現する何かを持っているものがトップモデルにはあった。秋乃にはそれが足りなかった。
ベンチャービジネスをやろうとする男達にそそのかされて、無人島に引っ込んでしまった男をもう一度社会復帰させるために秋乃は女と言う武器を使ってそそのかしにやってきた。日本の南の島である。
ゴムボートが漂着したということにし無人島に乗り込む。案の定、男はすぐ現れた。倉橋という39歳の男である。
島は無人島で食べ物は漂着物や木の実や魚を食べる。寝るための小屋も秋乃は自分で作る。倉橋は巨額の金を持っているという。しかし、秋乃は「ある人から頼まれてきた」と話す。男は無関心を装っていたが、裸でシャワーをあびる秋乃を抱く。
やがて二人とも島を離れる。陸地に戻った秋乃をみて周りの人はその変貌ぶりに驚く。体の中からわきあがってくるエネルギーを感じさせた。
秋乃もモデルの仕事が上手くいく。秋乃は一度あったきりの無人島の男が忘れられない。男も再び成功していた。
無人島を訪れた秋乃のところへ専用のジェットをチャーターして男がやってきた。1億円の指輪を持って。二人は互いにエネルギーを与えてくれた相手だということを確認する。やがて幸せに・・・!
489■ 秋の猫 |
Date: 2003-03-08(Sat) |
おすすめ度 ★★★★
藤堂 志津子 著 集英社 発行:2002年11月
岩本の浮気を見つけた。2度目である。週に1度か10日に1度やってきて掃除をする私。33歳のときから付き合いはじめて3年。私はパンティストッキングを見つけて逆上した。
愛想が尽きた。「猫を飼おう」と思い立った。子供の頃飼ったことがあった。
「ゆずります・ゆずってください」コーナーをみて連絡をする。雌ねこをもらってくる。ロロと名付けてかわいがる。
思い立ってもう1匹ももらってきた。雄である。ミミと名付ける。
ロロはひとなつっこくてすぐ寄ってくるが、ミミはこちらを様子をうかがっているのかすねているのか、なかなかなじまない。
ロロが寝てから、ミミだけをかわいがるってみると、すっかり甘えん坊の猫になってしまった。
岩本はその後ストッキングのおねえちゃんと結婚するという。ミミの名前で祝電を打ってやろうっと。
488■ 路上ども |
Date: 2003-03-06(Thu) |
おすすめ度 ★★★
松野 大介 著 講談社 発行:2003年2月
大手の電器メーカーで企画宣伝の仕事をしていたが、最近あった友人に刺激され路上生活に踏み切る。
友人いわく、働いていりゃ金が出ていく、所得税住民税、保険料に光熱費、クリーニング代、ゴルフ代に、週末は付き合いの酒代、おまけに職場の同僚の冠婚葬祭費、そして結婚したら、子供の教育費、ローン、最後には自分の入る墓代までずっと払いっぱなし、そうまでして見かえりは何かね?くたくたになって働いてもルームランナーに乗っているみたいだ。俺はそこから降りただけ。ストレスを抱えるなら何もなくてもいい。
俺はマンションを引き払った。電化製品も家具も処分した。
預金通帳と革ジャンだけを持って新宿のコインロッカーに預けた。
信濃町の駅前のベンチにで過ごす。賞味期間切れのコンビニの弁当を友人がもらってくるのでそれを食べる。
公園のトンネルを見つけて住みつく。寝ている間にそれまでいた友人もいなくなり、コインロッカーの鍵もなくなっていた。
金もなく食べ物もなくふらつく足で渋谷の交差点の人ごみの渦となった。
487■ 邪恋 |
Date: 2003-03-04 (Tue) |
おすすめ度 ★★★★
藤田 宜永 著 毎日新聞社 発行:2001年11月
義肢装具士の笹森は麗子と付き合いはじめて5年になる。麗子の兄智久とは大学時代同級で今も仕事柄親しくしていた。
智久は妹の麗子が33になってやっと歯科医との縁談でほっとしているところだった。
智久の病院に片足を切断した女性がいた。義足を薦めて欲しいと頼まれる。美弥子は霧雨の日トラックにはねられて片方の足を失った。
やがて接見が度重なるうち心が奪われ始める。麗子の結婚後、美弥子に何彼と世話をやく笹森。義足をつけた美弥子は明るさを取り戻していた。美弥子にも笹森にもお互いに家庭があった。
密会を重ねるうちに美弥子は失った足先に官能の戦慄を感じ始める。
麗子の結婚生活が揺らぎ始める頃、兄の智久が麗子と笹森の関係を知ってしまう。結婚した今も妹は笹森を忘れられないでいると気づく。
笹森の妻もカルチャースクールの講師と一緒になりたいと離婚を申し出る。美弥子も夫との関係を修復するために去っていく。
笹森は家を出る。
486■ 帝都<切り裂きジャック>の殺人 |
Date: 2003-03-03 (Mon) |
おすすめ度 ★★★★
楠木 誠一郎 著 実業之日本社 発行:2003年1月
1888年8月、ちょうど40年前に倫敦で5人の娼婦が殺された切り裂きジャックと言われた事件があった。
昭和3年、江戸川乱歩と横溝正史が帝国ホテルにいた。切り裂きジャック研究会のメンバーから40年前に切り裂きジャックを目撃した、その名を今日明かしたいという。今日はメンバー全員が集まる日だった。
メンバーの一人植田物産取締役の植田が松坂屋銀座店屋上から墜ちて死んだ。背広のポケットに「JACK THE RIPPERに殺される」のメモが・・! そして、屋上の物置にはデパートガールの死体もあった。死体の太股に「JACK THE RIPPER 」の文字。
帝国ホテルでは東京帝国大学教授の馬場が殺された。のどがぱっくりと開き耳のあたりまで裂けているようである。右足のすねに「JACK THE RIPPER 」の文字。細い路地に着物姿の女給が下腹部を切られて死んでいた。臀部の下にまたもやJACKの文字が。
貴族議員の堂島も帝国ホテルのベットの上で腸をあふれさせるように血の海の中で死んでいた。江角はベット上でのどの下から下腹部まで縦に裂かれて臓器と言う臓器があふれて死んでいた。
そうやって8人が死んだ。メンバーの誰がやったのか。
心臓病で死期が迫っていた高橋は秘書とともに心中する。
485■ 汚名 |
Date: 2003-03-01(Sat) |
おすすめ度 ★★★
多島 斗志之 著 新潮社 発行:2003年1月
高校1年の1年間を叔母の藍子のところへ従姉の美那とドイツ語を習いに行ったことがあった。叔母は洗いっぱなしの髪に飾りけのない格好と殺風景な借家に住んでいた。花を植えるわけでもなく何か人を避けるような生き方をしていた。その叔母が53歳で亡くなった。30年前のことである。
もの書きになって叔母の亡くなった年齢をとうの越えた時、新聞社からの依頼で講演をした。その中に叔母の友達と言う人から叔母の女学生時代の無声フィルムを見せてもらう。女学生の叔母は生き生きとしていた。
30年前に遺品として引き取ったものを調べて見たいと思った。
叔母は中原滋という人に思いを寄せていた。中原はゾルゲ事件に関わり投獄され13年の懲役となり刑期の途中で獄中死していた。
やがて、叔母には中原との間に子供があったことを知る。男の子だった。子供のいない夫婦に引き取られたと言うが、食糧難で孤児もあふれていた時代に簡単に引き取り手があったというのが解せなかった。それを父に正すと、その子はなんと私であった。
叔母はあくまでも私の中では叔母であった。
484■ 天国の罠 |
Date: 2003-02-27(Thu) |
おすすめ度 ★★★★
堂場 瞬一 著 徳間書店 発行:2002年9月
代議士だった今井聡史の自叙伝を手伝うことになった広瀬は35歳。週刊誌の取材と編集を経て、事件記者を目指したこともある。
恋人が死んだことで仕事から遠ざかっていたところに、政治家の自叙伝の話が舞い込んだ。
代議士の今井は二世議員だが、大学を出てからは法曹会に身を置き父親が政界を引退してから十数年たって政治家に転身した。
話を聞きながら見たアルバムには広瀬の妻によく似た女性の写真があった。もう15年も前に撮ったという今井の娘の香奈の写真である。
なぜか15年前に家を出たきりであるという。政治家としてのスキャンダルを恐れるあまり内密にされていた。
広瀬は自叙伝を書くにあたって娘にあって話しを聞きたいと捜すことを約束する。
今井邸からの帰途「今関わっている仕事から手をひけ!」という電話を受ける。広瀬は振りきって情報を求めて会津市へ飛ぶ。
かっては一緒に暮らした磯という男にも会うが香奈はすでに長いこと戻ってこないという。
下田では「あの娘が下田週報をつぶした」という。
尾道の「ブルーローズ」という店で最近の香奈の様子がわかった。
やがて香奈に会うことが出来た。香奈は父親をひどく憎んでいた。
そして、香奈が母の死後、父親から幼い頃から性的虐待を受けていた事を知る。自分の妻に似た香奈に広瀬は思いを寄せる。が、香奈は信濃川で溺死してしまう。
広瀬はやっと今井が娘を見つける口実に、自分の自叙伝の話を持ってきたことを知る。
483■ 仇敵 |
Date: 2003-02-26(Wed) |
おすすめ度 ★★★★★
池井戸 潤 著 実業之日本社 発行:2003年1月
恋窪は役員がからむ不正融資疑惑を追っていた。ヤミ企業と結託し巨額融資の見返りに謝礼にもらっていた役員を窮地に追い込んだはずが自分が罠にかかりその責任を余儀なくされ辞職した。
銀行の企画部次長の職にあったエリート銀行マンが今は別の銀行の庶務行員である。恋窪は42歳。
融資係3年目の若い松木から何かと相談をされる。融資先の経営状態、取引の疑惑、トンネル会社の存在、役員の背任などを松木とともに関わっていく。しかし、融資後の社長の自殺や倒産が謎を解こうと恋窪が立ち向かっていく。
組織を食いものにし、かっては自分を落し入れた中島容山の存在を知る。そうする間も税理士の死である。
1億円の小切手の振込不能から端を発し、インサイダー取引の隠蔽でやっと尻尾を掴む。
482■ よく見る夢 上・下 |
Date: 2003-02-25 (Tue) |
おすすめ度 ★★★
シドニィ・シェルダン 著 アカデミー出版 発行:2003年2月
3人の男が殺された。いずれも去勢あるいは睾丸を切り取られていた。
サンフランシスコの高名な心臓外科医スティーブン・パターソンの令嬢アシュレー・パターソンが連続殺人容疑で逮捕された。
アシュレーに面会した弁護士のデビット。「濡れ衣を着せられて逮捕された」というアシュレー。
警察は殺された男性3人と去勢される前に性交渉を持っている。その体液がすべてDNA鑑定でアシュレーのものであると断定した。
精神分析医師セイラム博士によってアシュレーは多重人格者であることがわかる。裁判は無罪になる。アシュレー3人の人格を持ち狂暴な残りの2人の人格がお互いに出現していた。
入院治療をはじめるうちにお互いの人格がそれぞれの気持ちを話し合えるようになりアシュレー以外の人格は消えていった。
アシュレーは幼い頃に父から性的迫害を受けていた。その時に産まれた別の人格によって本人の知らないうちにコントロールされていた。治療の結果アシュレーも父親を許すことができるようになる。
481■ 海猫 |
Date: 2003-02-23(Sun) |
おすすめ度 ★★★★★
谷村 志穂 著 新潮社 発行:2002年9月
20歳の薫は函館の太平洋側にある南茅部の魚師の邦一24歳のところに嫁ぐ。
薫の母タミはロシア人と結婚、戦争のとき父を失いタミは薫と弟の孝志を連れて故郷の函館に引き上げてきた。薫はロシア人のあいの子であったため、目が青く肌が白い美人であった。
やがて薫と邦一の間に美輝が産まれる。そのころから、夫は別の女と遊ぶようになり夫婦仲も覚めていった。
邦一の弟広次は以前から薫に思いを寄せていた。弟の孝志が広次の部屋に入ったとき偶然、キャンパスに描かれた絵を見て驚く。薫の絵であった。
広次と薫は密かに会うようになる。そして2人目の子を産む。その頃から薫の言動はおかしくなり、日に日にやせ衰え実家に帰ろうとする。それを義母みさ子に見つかり連れ戻される。
薫は紐につながれてしまう。久しぶりに訪れた広次は2人目の子が自分の子であると確信する。広次は薫を幸せにするのは自分だと子供2人を連れて逃げる。追いかける邦一。
黒鷲岬で追いついた邦一と薫がもみ合ううちに薫が海に落ちる。助けようと荒れる海に広次が飛び込み二人とも亡くなる。
二人の子は薫の母タミのところで育てられる。
娘たちが成人し母薫と父邦一、父の弟広次の仲を知ることになる。
480■ ハゴロモ |
Date: 2003-02-21(Fri) |
おすすめ度 ★★★★
よしもと ばなな 著 (2002年8月吉本ばなな改め) 新潮社 発行:2003年1月
8年間の愛人生活を精算して、田舎に帰ってきた。 信号のところではっとした。以前にあったことがある記憶にある顔を見た。だけど思い出せない。相手の男性も驚いたような顔をしていた。
母が10歳のときになくなり、父も別のところで暮らしていた。祖母は喫茶店をしていた。
ラーメンが食べたくなってちょうちんのぶら下がった店に入った。あの信号のところであった男性がいた。この店の店主だった。父のことも祖母のこともよく知っていた。
作ってくれたラーメンはインスタントラーメンであったが、300円で安くて美味しかった。話しも弾み楽しかった。でも何処で会ったか思い出せなかった。
やがて祖母にも紹介したところ、何日かたって「肺炎になって死にかけているときに会った人だ」という。
私が小さい頃、同じ病院にいたみつるくんという男の子から「夢の中でスケートをしていたその子に赤い手袋をあげたい」といわれ手袋をもらった。その夢は不思議に自分も見ていた。スケートをした夢である。
祖母には不思議な力があった。
みつるくんの家でみた木。その木の下に何か埋めてある夢を見た。やさしいおじさんが出てきた。いそいで掘ってみる。腐りかけた木箱の中に指輪が入っていた。
体調を崩して寝込みがちだったみつるくんのお母さんへすでになくなったお父さんからの贈り物だった。お母さんはなつかしい指輪をみつけてから、どんどん元気になっていった。
479■ 妻の大往生 |
Date: 2003-02-20(Thu) |
おすすめ度 ★★★
永 六輔 著 中央公論新社 発行:2002年11月
妻の昌子さんが末期の胃がんだとわかったのが、2001年の6月であった。
「看護の主流はご家族ですよ」と医者に言われる。3人の看護婦さんと家族と医師だけが昌子さんの本当の病状を知っていた。
11月半ばから在宅介護となる。この頃から家族も本人もどんどんやせていった。永六輔も痩せた。
1月6日に昌子さん永眠。
看護によって家族が団結したこと。死への覚悟ができたこと。
「手を握る体に触れることが患者に大きな安心感を与えられる」ということ。
百か日にあたる4月15日に黒柳徹子や小沢昭一、秋山ちえ子、おすぎ・ピーコなどが集まって東京会館で「偲ぶ会」がおこなわれた。
「看取られる筈を見取って寒椿」 永六輔
478■ 屋上のあるアパート |
Date: 2003-02-18 (Tue) |
おすすめ度 ★★★★
阿川 佐和子 著 講談社 発行:2003年1月
3階建ての最上階、玄関の前を上がれば屋上に出られる。日当たりのよい場所である。1DKの天井の高い新築のアパート!
麻子はすぐに借りることに決めた。27歳ではじめての一人暮しである。
小さいプロダクションの雑誌編集の仕事である。料理研究家の作る料理を毎月写真入で紹介する。麻子は自分なりに工夫して、できるだけ食欲をそそるようなページに心がけた。
ところがまもなくこの会社が倒産して失業してしまう。
小学校の時からの友人の由香がロンドンから一時帰国してきた。麻子のアパートで共同生活が始まる。
前の会社の社長の紹介で小さい広告代理店で編集の仕事をすることになる。社長同士が知り合いであった。3人で飲み明かしたこともある。
ある日、前の社長の岡村が道を歩いていて車に引かれて死んでしまう。
由香も再びロンドンに戻ると言う。
◆仕事とアパートの様子と友達との共同生活が楽しそうである。
477■ 砂の狩人 上・下 |
Date: 2003-02-17 (Mon) |
おすすめ度 ★★★★★
大沢 在昌 著 幻冬舎 発行:2002年9月
すでに刑事もやめて千葉の方で釣りでもしながら暮らしている西野の所へ警察庁の30代の女性警視正が訪ねてきた。
表に出せない事件を手伝ってほしいという。中国人と日本のヤクザとの闘争に警察内部の人間が関わっていると言う。
久しぶりに新宿・歌舞伎町に顔を出した西野は元の警察の同僚にもあう。中国人の動きを知るためにヤクザの親分の娘サチにも会う。サチはコールガールをしていたが、会ってもいつも話しをするだけで西野もかわいがっていた。
そのサチが西野とあった翌日、自宅のマンションで殺される。西野は追われる身になる。
やがて警視正が依頼した真相は、自分の息子が中国人とヤクザの抗争の中心に居るのではないか、世間に知られる前にケリをつけたいという意図が判明する。
警視正は17歳のとき、家庭教師だった男との間に男児を設けた。それを隠す為に外国へ留学し、出産した。大学の途中で日本に帰り日本の大学を出てキャリア組の試験を受け、父の後を追って警視になる。息子の父親も同じ警察官僚となっていた。二人の間の子供が事件の核心にいるということが世間にばれないうちに手を打ちたいと・・・!
西野は危険な目に会いながら、サチを殺した犯人と中国人を操る人間に会いたいと接近していく。
しかし、抗争の末、中国人の男が死の間際に口にした言葉は意外な言葉だった。息子は犯人ではないと。
476■ 巡査 埼玉県警黒瀬南署の夏 |
Date: 2003-02-15 (Sat) |
おすすめ度 ★★★★
岩城 捷介 著 宝島社 発行:2000年6月
埼玉県黒瀬南署警ら課の巡査島野の娘由利が殺された。神社の境内にある掃除道具小屋の中で絞殺死体で見つかった。
直前まで西尾孝司と小屋の中でセックスをしていた。孝司は由利との関係を認めたが、首をしめながらセックスはしたが殺すまで絞めたとは思わないと語った。
島野は娘の事件を追うあまり失踪してしまう。西尾孝司に会い真意を聞く。孝司は薬物にも手を染めていたことから「お前が覚えていないだけで由利を殺してしまったんだ」と詰め寄る。
その直後、孝司はビルから転落自殺してしまう。
島野の上司西部統括本部警務局長の根元の息子喜久男が孝司と親しかった。島野は喜久男に会う。
あの日、喜久男が好意を寄せていた由利と孝司の一部始終を見てショックを受けた。そして先に孝司が出ていった後、小屋の中で喜久男の目が義眼であったことをあざ笑った由利にかっとして殺してしまったことを認める。
被害者が現職警官の娘、加害者が高級官僚の息子であったことに人々は驚愕した。
475■ ゲームの名は誘拐 |
Date: 2003-02-14(Fri) |
おすすめ度 ★★★★★
東野 圭吾 著 光文社 発行:2002年11月
オートモービル・パークのアイデアは廃案になった。企画を担当していた佐久間はプロジェクトから外された。新たに代案のプロジェクトも別の者に任せたいクライアント日星自動車の意向である。
偶然、日星自動車の会長の屋敷の前を通りかかった佐久間の前に、いきなり塀を乗り越える女学生がいた。
女学生は泊るところを捜している風でもあった。愛人に産ませたという樹理という娘だと名乗った。
家に帰っても居ずらいという樹理を佐久間の部屋に泊める。
そして、誘拐ゲームを企んだ2人は、自分の親から3億円を要求し無料の電子メールとプリペイド携帯で金の受け渡しを指示する。
まんまと3億円を受け取った。佐久間はそのうちの三千万円を受け取り、残りは樹理が女友達の家に隠す。
開放した直後、マスコミが樹理の誘拐報道をニュースに流す。しかし、テレビに写された映像は佐久間と一緒に居た樹理ではなかった。
あわてた佐久間は樹理と名乗った娘にだまされたことを知る。娘は愛人の子ではなく実の子であった。そして、誘拐ゲームが父親の指示に動いていたことも・・・・!
474■ さむらい |
Date: 2003-02-13(Thu) |
おすすめ度 ★★★★★
鳥羽 亮 著 祥伝社 発行:2002年12月
10歳の信助の目の前で父が処刑された。切腹であった。「侍らしく生きよ」というのが遺言であった。
母と7歳の妹との窮乏の生活が始まる。が、剣道の稽古だけは師の計らいで続けられた。
罪人の子としていじめられることもあったが、父の言葉を思い出し、剣の腕を磨く。
やがて、敵対する父を切腹にまで追い込んだ家老の酒井の下で目付けとして働くことを打診されるが、暮らし振りの安定より父の無念を思い断る。
藩内で米の不作に伴い一揆がおこる。辰之助(幼名信助)は殿を守らんと農民に「今、門を破れば領民も藩も生きてはおれない!」と諭す。それを機に殿は10年前の辰之助の父が酒井の陰謀により処刑されたことを知る。
殿の命により酒井の命は辰之助の手によって落とされた。
473■ 悪口の技術 |
Date: 2003-02-11 (Tue) |
おすすめ度 ★★★
ビートたけし 著 新潮社 発行:2003年1月
アダム・スミスが「国富論」を書いた1776年頃はまだ食えるかどうかが大問題だった。今は食べられてあたり前で問題はその先である。ちょっと頑張ればメロンが8分の1ではなくてもっと頑張れば半分食べられる。というあの頃が一番よかった。「国富論」が通用する時代は楽しくて通用しなくなったらつまらなくなった。
大阪がオリンピックの開催地に立候補してたったの6票。本当に開催したいという意図があったのか疑問である。
この他池田小学校の殺傷事件、田中真紀子さんのこと、サッカーのことなどいろいろな話題を折り込んでの悪口など。
472■ 標的走路 |
Date: 2003-02-10(Mon) |
おすすめ度 ★★★★
大沢 在昌 著 文春ネスコ 発行:2002年12月
津田智子から鳥井譲という男を捜して欲しいと依頼される。失踪人調査を商売とする佐久間はすぐ調査を開始する。
鳥井譲はジョー・カムセというラクール共和国からの留学生とわかる。大学やよく行くという喫茶店を調べるうちに、自分と同じようにカムセをさがしている中央開発の人間と名乗る2人組みの存在を知る。
カムセが軽井沢に行った事をしり、夜明けを待たず出発する。大型の台風がきそうな空模様であった。途中のスタンドで、写真を見せたところ大武ロッジに行く道を教えたと言う。
大武ロッジは6組の泊り客がいた。中年のカップルと若いカップル、そしてひとりもの、まだ顔を見ないものもいる。
やがて道路は土砂崩れのために通行不可能になり、通信も途絶えた。泊り客が縛られ犯人達の行動が激化する。
カムセのラクール共和国はクーデターがおこっているという。佐久間も殴られたあと気を失った。
471■ 倒錯のオブジェ 天井男の奇想 |
Date: 2003-02-08(Sat) |
おすすめ度 ★★★★★
折原 一 著 文芸春秋 発行:2002年10月
東十条の裏通りにある古いアパートの大家である飯塚という老婆。福祉課の職員が訪ねていくと天井に誰かが潜んでいつも見られている気がすると言う。
天井裏を調べるがその気配はない。家の中は老婆の放つ悪臭と生ゴミの臭いと安化粧品の臭いと醤油のニオイなどがまざって複雑な悪臭を放っていた。
一方、天井裏に潜む男はこの老婆に毒を盛って、なんとか人知れずやっつけてやりたいと思っていた。節穴の多い天井裏から老婆の様子をうかがっていた。
そうしているうちに2階を借りたいと言う女がやってきた。3ヶ月の前家賃と2ヶ月の敷金を取って月四万五千円で貸すことにした。
女は亭主から逃れる為に身を隠すように東京にやってきていた。
福祉課の男も安否確認に大家の飯塚を訪ねてくる。そのたびに大家は「天井に男がいる」と訴える。
あるとき、天井に続く穴を釘で打ちつけてもらった。天井男はどうして出るか思案していた。
2階の女は運悪く体調を崩し、外出もせず寝込んでしまった。
そのうち、銀行のキャッシュカードのおろした支店から東京の池袋や赤羽近くにいることがわかって、夫が捜しに来る。
何ヶ月かたって、女は白骨化した死体で見つかる。他に嬰児の死体も、さらに60歳膳後の女性の白骨化した死体も出てくる。
天井男とこの大家との関係は・・・! 2階の女性は・・・!
気味の悪さと先が知りたい思いで一気に読めた。
470■ 星宿海への道 |
Date: 2003-02-05(Wed) |
おすすめ度 ★★★
宮本 輝 著 幻冬舎 発行:2003年1月
兄雅人が失踪した。51歳になってやっと子供が生まれるという幸せな時である。
弟の紀代志は兄が消息を立ったという中国のシルクロードの端 カシュガル郊外の村まで行ってみた。そこは砂漠地帯であった。
昔、大正区のS橋の近くで物乞いをしている親子がいた。母親は盲目で32歳ぐらい。男の子は8歳ぐらいであった。親子は毎日楽しそうに物乞いをし、自らを恥かしがる様子もなかった。
車に引かれはしないかと近所のものは心配をしていた。母親が亡くなって施設に入ったあと、紀代志の家に引き取られた。
兄が血がつながらないことを口にしてはならないと一家は別のところに引っ越した。中学2年のとき、兄は中国の詳細な地図を欲しがった。星宿海という場所に興味を持ち「いつか行きたい」と話していた。
中学を卒業すると兄は尼崎の玩具店で働くようになる。全国に玩具を売って歩く仕事である。千春が17歳のとき、実家の湯田温泉にも兄は売りにきていた。お墓を建てる相談にも乗ってもらった。
千春が大学時代にアルバイトをした「ヤキヤキ」というお好み焼きの女主人は、中学の頃に話したという雅人の生立ちをよく知っていた。兄は実の母の事を調べていた。本籍地は瀬戸内海の無人島であった。大昔から人のすんだことのない島であった。
千春は実家の湯田温泉の旅館を売り払い、瀬戸内海の島で小さな旅館を作り、星宿と名付けて子供に譲ろうと決心する。
469■ 黒焦げ美人 |
Date: 2003-02-02 (Sat) |
おすすめ度 ★★★★
岩井 志麻子 著 文芸春秋 発行:2002年9月
明治天皇がお隠れになった年、晴子は姉の珠枝を訪ねた。
珠枝は17歳のとき、見習として入った料亭で尾崎に一目で気に入られ旦那を持った。 一軒家を与えられそこに住んでいた。
一家が食事にありつけるのも晴子が学校へ行けるのも姉のおかげであった。
姉のところにはたまにしか旦那が来ないこともあって、音楽の教師という藤原という美男子や東京の大学まで出たが、病気を理由に仕事をしていない大橋という男が出入りしていた。
大晦日に珠枝が殺害されたうえ、家ごと焼かれた。遺体は黒焦げであったことから記者たちから黒焦げ美人と名付けられ、地元の新聞で大きく取り上げられた。
大橋が捕まったとき晴子は「大橋さんはそんなことはしない」と思った。犯人は別の人だった。珠枝の貴金属を売り払った男がいた。
468■ ホームレス失格 |
Date: 2003-01-30(Thu) |
おすすめ度 ★★★
松井 計 著 幻冬舎 発行:2002年10月
「ホームレス作家」という本の印税が入る前に、出版社の芝田からしばらくカプセルホテルに泊れるだけの金を受け取った。
妻は新宿区役所を通じて産まれたばかりの息子と2歳の娘を預かってもらっていた。
9月初旬 「ほんパラ」というテレビ番組で「ホームレス作家」が紹介されるという。ついてはそのシュミレーションビデオを撮ることになった。真夏に真冬のオーバーを着込んだエキストラの人々とテレビ撮影に挑む。
初版部数四万部で印税が600万円であった。2割の所得税が引かれた。やっと上北沢に家賃5万円の生活を確保した。
電話もパソコンも買い、妻子との再会を夢見たが、区役所に出向くが所在を教えてくれないばかりか、DV(ドメステイックバイオレンス)の疑いさえかけられる。
区議会議員や参議院議員の計らいで、やっと妻子が品川区役所の母子寮に保護されていることを知る。が、会う事が許されなかった。おまけに妻から離婚の調停がでて、とうとう3度目の調停で親権は自分にあるものの、監護権が妻にあり、妻子に会わぬまま離婚の調停になった。
ハウスレスではなく家族レスを続けなければならなかった。
467■ 椿姫―ニンフォマニア |
Date: 2003-01-28(Tue) |
おすすめ度 ★★★★★
和田 はつ子 著 角川書店 発行:2002年12月
大学の教授をしている私のところに、生徒の失踪の知らせが入った。多額の寄付をしている鈴木松江の孫の鈴木梨花である。
そんな折、以前付き合いのあった草間佳奈子の死である。佳奈子は名門越知家の遠縁と聞いていた。
49日の法要の際に越知の息子の邦男に会い、邦男が20歳の時、12歳の佳奈子との婚約を切望したが家族に受けいられなかったという。
その後 佳奈子は芸能界に入り 椿をこよなく愛していた。そんな折に私とも付き合いがあった。
越智家の墓参りをしたときに草間佳奈子は12歳で他界していた。するとあの佳奈子は誰なのか?
生徒の失踪と佳奈子の生立ちを追う。彼女の生前の言葉から北海道にいく。
昔、結婚式をあげ幸せの絶頂に会った夫婦がいた。新郎が事故に遭いそのまま新婦の姿も消えたという話しを聞く。花嫁の顔は佳奈子に似ていたという。
夜道を白無垢でさまよう女を夕張近くで拾った好色の日向豪介は、東京に連れて帰る。鈴木松江の義理の弟の土蔵に閉じ込め、鈴木兄弟、日向、越知らのおもちゃにされていた。
女は土蔵の中で女の子を産み、その後も首を吊って死んだ。
その時、助け出された女の子は10年間、暗い土蔵で過ごしていた。女の死後はこの女の子に魔の手を伸ばした男達。
やがて、越知の子供が無くなってそれを隠す為にこの子が佳奈子と名乗って暮らしたことが分かった。
466■ 網にかかった悪夢 |
Date: 2003-01-25 (Sun) |
おすすめ度 ★★★
愛川 晶 著 光文社 発行:2002年11月
以前祖父の兄が住んでいた福島の桑名町へ去年の3月、僕と祖父で越してきた。
すでに廃家になって5年たっていた。
僕はウサギを飼っていた。ナオと名づけてかわいがっていた。
ところが、このウサギが何者かに後ろ足を切られ殺された。ちょうど泊りに来ていた愛先生と僕とで桃の木の根元に埋めた。
「ウサギがいないと生きていけないだろう」とあざ笑った級友の顔がうかんだ。
僕は気がついた時、学校の裏手にいた。昨夜は自分の部屋で寝ていたはずである。僕は「夢遊病」なのだろうか?
そんな時、またもや学校の裏で巨大な力士のような体格の真っ黒い影をみた。ペタペタと足音をさせて迫ってくる。もみ合いになり意識を失った。
体育館の裏で人が殺されたと祖父が言った。それが校長先生だと。校長先生はラバーマットと一緒に焼かれていたそうだ。
僕は僕自身がやったのかと悩み始める。
僕の母は仙台の信金に強盗が入り、たまたま居合せた母が刺し殺されたと聞かされていた。しかし、そうではなかった。
11歳のとき、ビルの屋上で一緒に死のうという母に「死ぬなら自分だけ死んで!」と拒否した為、母は頚動脈を切って自殺した。
その時の強い自責の念から、心因性健忘症になった。事件の前後の記憶を無くしていたのだった。
しかし、犯人は別にいた。
465■ 沈黙者 |
Date: 2003-01-23 (Thu) |
おすすめ度 ★★★★★
折原 一 著 文芸春秋 発行:2001年11月
久喜市で一家4人が殺される事件があった。田沼という校長先生をしていた夫婦と息子夫婦である。孫の娘は殺された母の傍らでショックのあまり動けないところを新聞配達員によって助けられる。
もう一人17歳の男の子がいるはずであったが、事件以来行方がわからなくなっていた。
当初は17歳の仕業かと思われたが、ほどなく神社の拝殿の下から背中をさされた弟の死体が見つかる。
同じ久喜市内で吉岡家の老夫婦が殺されていた。これも前回の新聞配達員が発見する。死後1週間以上経過していた。吉岡は警察署長をしたあと、警備会社に5年勤めていた。そして2年前の定年後久喜市内の1軒家を購入し、悠悠自適に暮らしていた。
昔、池袋の大型雑貨店で3000円相当の防犯用品を万引きしたことからガードマンに見つかり、警察官に引き渡す際に暴れた。住所も名前も黙秘を通しつづけた。拘置番号池袋警察署39番で裁判も行なわれた。結局実刑懲役6年で拘留された男がいた。
出所したあと、男は久喜市に戻っていった。最後まで名前も住所もわからなかった。「沈黙者」として人々の記憶に残った。
男はただひたすら「家族に迷惑がかかる」という理由で沈黙してしまった。
二つの殺人事件はつながっていた。
464■ 変態 |
Date: 2003-01-21(Tue) |
おすすめ度 ★★★
藤本 ひとみ 著 文芸春秋 発行:2002年9月
「マダム・モンデールの生涯」という小説を書き下ろすためにパリに来ていた奈子はナポレオンの妻で知られるジョセフィ-ヌに興味を持った。
ジョセフィーヌは16歳で嫁に行くがいつまでも赤ぬけないのでやがて夫から離婚を言い渡され修道院に入る。
修道院を出たジョセフィーヌは財界人に目をつけられて囲われるという生活を繰り返していた。パトロンを取り替えて生きるうちにナポレオンをも虜にしてしまったのである。
奈子自身も女の子が2人いるものの大学教授の夫は自分の研究に没頭するあまり、母親がなくなった日も葬儀を奈子に任せて早々に引き上げてしまった。
パリの図書館である回顧録を探したところ貸出し中であった。しかも日本人が1年以上も前に借りたままである。
日本に戻ってその日本人に会う。今泉という大学教授であった。
訪ねていった目の前でその回顧録は電子レンジの中で黒焦げになった。今泉が故意に燃してしまった。内容は自分の頭の中にあるという。
今泉の誘いによって自らを不感症の女の感じていた奈子は性の訓練をされる。リカちゃん人形のような奈子はなかなか成熟しなかった。やがて、性への恐怖も解け新しい世界を見出していく。
463■ 髭麻呂 |
Date: 2003-01-19(Sun) |
おすすめ度 ★★★
諸田 玲子 著 集英社 発行:2002年6月
式部卿の妻の家に賊が入り二人の娘が殺された。娘といっても27.8になっていた。 盗まれたものは宝玉である。
式部卿は別の妻に産ませた住む娘が五節舞いの舞姫の一人として選ばれた。一家の名誉でもあり、帝や高官の目にとまれば出世の糸口にもなると喜んだ。
しかし、式部卿には金がなかった。
ところが、式部卿の姫君は破産寸前とは思えぬ賢覧豪華な衣装で身を纏い、他の4人の舞姫を圧倒し人々の注目を集めた。その甲斐があって娘は帝に召されることになる。
髭麻呂は調べるうちに賊は式部卿とにらむ。式部卿はすでに帝の目がかかる人物となっていた。
462■ 疾駆する夢 |
Date: 2003-01-16(Thu) |
おすすめ度 ★★★★★
佐々木 譲 著 小学館 発行:2002年11月
15歳の時、フォードの横浜工場で組立工として働いていたことがある多門。
徴兵前に働いていた本牧の佐野自動車整備工場に行ってみる。廃材で作ったバラック小屋を引き払おうとするかっての社長夫人に会う。頼み込んでその場所を借り、「自動車修理・多門工場」の看板をかける。昭和20年10月のことである。 米軍基地の向かい側の土地である。米軍基地に出入りする車の修理が主であった。
被災した工場や基地の工場現場から戦闘機の廃材を利用して自転車にツーサイクル・ガソリン・エンジンを取り付けた原動機自転車を作った。30台も注文が来る日もあった。
ついでオートバイを作る。次にはオート三輪も造りたいと夢を持っていた。
1年半後、女房ももらい、弟子も1人でき、やがて根岸台に工場も持つ。ここではオートバイ、オート三輪の整備をする。
23年11月、多門自動車は合資会社として正式登録する。
24年1月にオート三輪の第1号が完成する。
25年8月には東京・大森に本社を持つ。株式会社多門自動車を設立した。
29年4月には第1回全日本自動車ショーに多門は4種類の乗用車を出展する。そして2年後は月間1千台の生産をするまで成長した。従業員は2500人であった。
バブルの最中、多門は銀行系の取締役に社長の座を追われるが、6年後の1994年再び社長に就任する。
2002年には本社をアメリカに移転すると発表すると同時に引退を表明する。多門自動車は年間200万台を生産する大会社になっていた。
461■ ダーク |
Date: 2003-01-13 (Mon) |
おすすめ度 ★★★★★
桐野 夏生 著 講談社 発行:2002年10月
父が錠剤を口に入れようとした直前に、私はそれを奪い取り、床に落とした。父は胸を押さえて苦しみながら死んだ。動かなくなった父を見捨て、ミロはベットの横にあった300万円も奪って逃げる。
父は小樽で久恵という女と暮らしていた。久恵は大柄で派手であったが、盲目であった。ミロと同じ年だという。父と10年間も暮らしていた。
久恵は鄭に善三の死を連絡をする。鄭は友部に連絡をする。
友部は小樽にいく旅費30万円をミロに貸していた。鄭からミロを探す代償として500万円を提示される。
ミロは朴美愛という韓国名のパスポートを作り韓国へ渡る。
徐という男の愛人になり一流ブランドのバックのコピーを売って暮らす。
友部も久恵も鄭も韓国へやってくる。最初にミロを見つけたのは友部。
ミロは自分を犯した山岸を殺して、日本に舞い戻る。
妊娠していた。潜伏生活をしながら子供を出産する。
治夫と名づける。やがて鄭とも再会する。
460■ スキッピング クリスマス |
Date: 2003-01-06(Mon) |
おすすめ度 ★★★★
ジョン・グリシャム 著 小学館 発行:2002年12月
クリスマスのイブのパーティに6000ドル浪費する事を知って愕然としたルーサーは、今年はクリスマスパーティをやめる事を決心する。その代り、3000ドルで夫婦で大型客船の旅に出ることにした。10日間のクルーズ旅である。
お義理のクリスマスカード、ツリーの代金、家中を飾る電飾。屋根に上げる雪だるま。昨年は50人も来てくれたパーティ。それらをいっさいやらないと夫婦は決心した。
クリスマスが近くなって、クリスマスをやらないことを友人・知人に話す。人々は驚いたり沈黙をする。
夫婦は笑いが止まらない。クルーズの旅に夢をめぐらしていた。
ところが、それが一変する。
娘が帰ってくるという。それも、アメリカのクリスマスを体験したいという婚約者を連れて! しかも、あと半日しか時間がない!
夫婦は急にパーティを開く準備にかかる。
それからの夫婦はてんわやんわである。
近所の人々の協力があったことはいうまでもない。
クルーズの旅は隣人夫婦にプレゼントされる。